野菜天丼
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「野菜天丼、好きやろか?」
唐突な寿三郎からの問いかけに
私は疑問を抱きつつも、好きだよと答えた。
海老が乗ってる豪華なものより
野菜だけのほうが好きなのは事実。
彼は私の答えを聞くと
キラキラと目を輝かせて
「遥さん明日の夜、予定明けといて!頼んます!」
と、言い去って行った。
なんなんだろう?
寿三郎と出会って1年が経つ。
合宿所のマネージャーとしてここへ来て
徐々にみんなが受け入れてくれて
今ではかなり、打ち解けたと思う。
寿三郎は特に私に懐いている、らしい。
歳も1つしか違うし、話しやすいのか
よく私のところに顔を出してくれる。
三津谷くんからは
「懐いているだけじゃないと思うけどね」
と言われたけど
きっと女子一人なのを気遣ってくれているのだろう。
寿三郎は優しいから。
その日、お風呂からあがると
談話室で先輩達が
なにやら盛り上がっている姿が見えた。
「おっ!遥ちゃんやん、お疲れちゃん☆」
『お疲れ様です。盛り上がっていますね』
「これ見てたんだし」
種ヶ島先輩と大曲先輩、そして奏多くんから
渡されたのはスポーツ雑誌。
そこにはU-17のメンバーが“次世代を担う高校生“と
小さくだが紹介されていた。
「プロフィールが載ってるんだけどね
僕達が見ていたのはここ」
奏多くんに言われて見てみると
好みのタイプや行きたいデートスポット等の回答があった。
「アツの答えが最高なんよ!
好きなタイプは“血色の良い女“
大切な人へのプレゼントは“心臓を捧げてやろうか“って
こんなオモロイ回答ないやろ!」
本当だ。ブレてなさすぎてすごい。
これ、記事にした人どんな気持ちだったんだろう。
大笑いしている種ヶ島先輩は
好きなタイプ
“夢の国でいっしょにはしゃげる子“
大切な人へのプレゼントは
“似合う服とバッグ選んだるわ☆“
ちなみに行きたいデートスポットが“ナイトプール“。
『…先輩の回答も種ヶ島先輩って、感じですね…』
派手で明るい陽キャそのものって感じだ。
私は少しこのノリが苦手だったりする。
「遥の言うとおりだし。
おまえの回答、見た目そのままだな。チャラい」
「えー、ひどない?
竜次の好みのタイプやって人のこと言われへんで」
その通り。大曲先輩の好みのタイプは
“ポリアモリーの考えをもつ人“。
うん、なかなかハードル高い。
大切な人へのプレゼントが
“お揃いの指輪“っていうのはちょっと良いかも。
奏多くんの好きなタイプは“素直に驚いてくれる人“で
行きたいデートスポットは“コンサートホール“
これは可愛らしいし、高校生らしさがある。
越知先輩のも素敵だ。
好きなタイプは“沈黙が気にならない子“
大切な人へのプレゼントは“言葉で感謝を伝えたい“って
純粋すぎて眩しいくらいだけど
高感度がめちゃくちゃあがる。
何人か見ていて、寿三郎の記事に目が止まる。
好みのタイプ“柔らかい子“
大切な人へのプレゼント
“お手製の野菜天丼をあーんしやる“
「毛利くんのも彼らしいよね。
彼の明るくておっとりした雰囲気には
柔らかい子が似合いそうだね」
奏多くんの言葉が何故かズシッと響いた。
柔らかい子、かあ。
確かに優しくて、あったかくて
いつもにこにこしている寿三郎には
そんな子がぴったりだなあと思う。
…このモヤモヤはなんだろう。
弟を取られた姉の気持ち、みたいなものかな。
ひとしきり全員のプロフィールを見て楽しんだあと
部屋へと戻ると、スマホが震えた。
“明日の夜は、一緒にご飯食べるんで
キッチンに来てください!
詳しいことは明日のお楽しみでっせ!“
楽しみにしてるね、とだけ返信をして
私は眠りについた。
翌日、約束の時間になったので
キッチンへと行くと、そわそわしている寿三郎がいた。
「遥さん!こっちです!」
目が合うと、思い切り笑って手を振ってくれる。
『ごめんね、待たせちゃったかな?』
「俺は準備してただけやから。
よし、タイミングばっちしですやん。
座っといてください」
寿三郎の意図がよく掴めずにいたけど
なにやら良い匂いがする。
黙って座っていると、お盆を持って寿三郎が現れた。
「じゃーん!お手製の野菜天丼でっせ!」
『え!すごい!作ったの!?』
どんぶりに盛られた具だくさんの野菜天丼。
そうか、だから野菜天丼が
好きかどうか聞いてきたのか、と今更ながら繋がった。
「遥さんに、俺の作った野菜天丼食べて欲しくて。
こう見えても、家庭菜園趣味やし
料理もけっこうできるんですよ!」
『すごいね…!天ぷらって難しいのに
寿三郎は器用なんだね。
家庭的な人って素敵だと思うよ!』
「………!そないに言われると、嬉しいわ…」
照れている姿が可愛らしいなあと思いながら
早く食べたくて、いただきます、と手を合わせたら
ちょい待ち!と慌てて止められてしまった。
「遥さん、あーん」
『………えっ!』
「お手製の野菜天丼、あーんしやるよ。
ずっと、遥さんに食べて欲しい思うてた」
『じゃ、じゃあ…』
あーんと、食べさせてもらいながら
ふと思い出してしまった。
寿三郎の“大切な人へのプレゼント“。
徐々に身体が熱くなり、頬が火照る。
自惚れて良いのか、単なる日頃の感謝なのか。
美味しいですと
小声で答えて寿三郎の顔を見ると
私と同じように顔を赤くして、はにかんでいる。
その優しい笑顔は、私を自惚れさせるには十分だった。
(野菜天丼、俺も食べたかったなあ☆)
(え!え!?なんで知って…!)
(キッチンにいるお二人を遠野くんが見たそうですよ)
(遥のやつ、顔赤くしてやがって
随分と血色が良さそうだったなぁ!)
(アツの好きなタイプやん☆)
(ちょ、ちょっと遠野先輩、そないな理由で
遥さんのこと好きになるのやめんせーね!)
(好きとは言ってねえし。遠野もからかってやるな)
(からかってねえ!それにしてもよお、食べさせてやるって
随分と餓鬼みてえなことしてやがったな)
(おやおや、寿三郎。よかったですね)
(毛利のお手製野菜天丼あーんは
“大切な人へのプレゼント“やろ☆)
(そうですけど!……遥さんは何も知らんから
もうええんです!自己満足ってやつなんです!)
(毛利、遥は既に雑誌を見ている。だから……毛利?)
(あーぁ。ツッキー、知らへんで。毛利固まってもうたやん)
(……なにか問題だったのだろうか?)
唐突な寿三郎からの問いかけに
私は疑問を抱きつつも、好きだよと答えた。
海老が乗ってる豪華なものより
野菜だけのほうが好きなのは事実。
彼は私の答えを聞くと
キラキラと目を輝かせて
「遥さん明日の夜、予定明けといて!頼んます!」
と、言い去って行った。
なんなんだろう?
寿三郎と出会って1年が経つ。
合宿所のマネージャーとしてここへ来て
徐々にみんなが受け入れてくれて
今ではかなり、打ち解けたと思う。
寿三郎は特に私に懐いている、らしい。
歳も1つしか違うし、話しやすいのか
よく私のところに顔を出してくれる。
三津谷くんからは
「懐いているだけじゃないと思うけどね」
と言われたけど
きっと女子一人なのを気遣ってくれているのだろう。
寿三郎は優しいから。
その日、お風呂からあがると
談話室で先輩達が
なにやら盛り上がっている姿が見えた。
「おっ!遥ちゃんやん、お疲れちゃん☆」
『お疲れ様です。盛り上がっていますね』
「これ見てたんだし」
種ヶ島先輩と大曲先輩、そして奏多くんから
渡されたのはスポーツ雑誌。
そこにはU-17のメンバーが“次世代を担う高校生“と
小さくだが紹介されていた。
「プロフィールが載ってるんだけどね
僕達が見ていたのはここ」
奏多くんに言われて見てみると
好みのタイプや行きたいデートスポット等の回答があった。
「アツの答えが最高なんよ!
好きなタイプは“血色の良い女“
大切な人へのプレゼントは“心臓を捧げてやろうか“って
こんなオモロイ回答ないやろ!」
本当だ。ブレてなさすぎてすごい。
これ、記事にした人どんな気持ちだったんだろう。
大笑いしている種ヶ島先輩は
好きなタイプ
“夢の国でいっしょにはしゃげる子“
大切な人へのプレゼントは
“似合う服とバッグ選んだるわ☆“
ちなみに行きたいデートスポットが“ナイトプール“。
『…先輩の回答も種ヶ島先輩って、感じですね…』
派手で明るい陽キャそのものって感じだ。
私は少しこのノリが苦手だったりする。
「遥の言うとおりだし。
おまえの回答、見た目そのままだな。チャラい」
「えー、ひどない?
竜次の好みのタイプやって人のこと言われへんで」
その通り。大曲先輩の好みのタイプは
“ポリアモリーの考えをもつ人“。
うん、なかなかハードル高い。
大切な人へのプレゼントが
“お揃いの指輪“っていうのはちょっと良いかも。
奏多くんの好きなタイプは“素直に驚いてくれる人“で
行きたいデートスポットは“コンサートホール“
これは可愛らしいし、高校生らしさがある。
越知先輩のも素敵だ。
好きなタイプは“沈黙が気にならない子“
大切な人へのプレゼントは“言葉で感謝を伝えたい“って
純粋すぎて眩しいくらいだけど
高感度がめちゃくちゃあがる。
何人か見ていて、寿三郎の記事に目が止まる。
好みのタイプ“柔らかい子“
大切な人へのプレゼント
“お手製の野菜天丼をあーんしやる“
「毛利くんのも彼らしいよね。
彼の明るくておっとりした雰囲気には
柔らかい子が似合いそうだね」
奏多くんの言葉が何故かズシッと響いた。
柔らかい子、かあ。
確かに優しくて、あったかくて
いつもにこにこしている寿三郎には
そんな子がぴったりだなあと思う。
…このモヤモヤはなんだろう。
弟を取られた姉の気持ち、みたいなものかな。
ひとしきり全員のプロフィールを見て楽しんだあと
部屋へと戻ると、スマホが震えた。
“明日の夜は、一緒にご飯食べるんで
キッチンに来てください!
詳しいことは明日のお楽しみでっせ!“
楽しみにしてるね、とだけ返信をして
私は眠りについた。
翌日、約束の時間になったので
キッチンへと行くと、そわそわしている寿三郎がいた。
「遥さん!こっちです!」
目が合うと、思い切り笑って手を振ってくれる。
『ごめんね、待たせちゃったかな?』
「俺は準備してただけやから。
よし、タイミングばっちしですやん。
座っといてください」
寿三郎の意図がよく掴めずにいたけど
なにやら良い匂いがする。
黙って座っていると、お盆を持って寿三郎が現れた。
「じゃーん!お手製の野菜天丼でっせ!」
『え!すごい!作ったの!?』
どんぶりに盛られた具だくさんの野菜天丼。
そうか、だから野菜天丼が
好きかどうか聞いてきたのか、と今更ながら繋がった。
「遥さんに、俺の作った野菜天丼食べて欲しくて。
こう見えても、家庭菜園趣味やし
料理もけっこうできるんですよ!」
『すごいね…!天ぷらって難しいのに
寿三郎は器用なんだね。
家庭的な人って素敵だと思うよ!』
「………!そないに言われると、嬉しいわ…」
照れている姿が可愛らしいなあと思いながら
早く食べたくて、いただきます、と手を合わせたら
ちょい待ち!と慌てて止められてしまった。
「遥さん、あーん」
『………えっ!』
「お手製の野菜天丼、あーんしやるよ。
ずっと、遥さんに食べて欲しい思うてた」
『じゃ、じゃあ…』
あーんと、食べさせてもらいながら
ふと思い出してしまった。
寿三郎の“大切な人へのプレゼント“。
徐々に身体が熱くなり、頬が火照る。
自惚れて良いのか、単なる日頃の感謝なのか。
美味しいですと
小声で答えて寿三郎の顔を見ると
私と同じように顔を赤くして、はにかんでいる。
その優しい笑顔は、私を自惚れさせるには十分だった。
(野菜天丼、俺も食べたかったなあ☆)
(え!え!?なんで知って…!)
(キッチンにいるお二人を遠野くんが見たそうですよ)
(遥のやつ、顔赤くしてやがって
随分と血色が良さそうだったなぁ!)
(アツの好きなタイプやん☆)
(ちょ、ちょっと遠野先輩、そないな理由で
遥さんのこと好きになるのやめんせーね!)
(好きとは言ってねえし。遠野もからかってやるな)
(からかってねえ!それにしてもよお、食べさせてやるって
随分と餓鬼みてえなことしてやがったな)
(おやおや、寿三郎。よかったですね)
(毛利のお手製野菜天丼あーんは
“大切な人へのプレゼント“やろ☆)
(そうですけど!……遥さんは何も知らんから
もうええんです!自己満足ってやつなんです!)
(毛利、遥は既に雑誌を見ている。だから……毛利?)
(あーぁ。ツッキー、知らへんで。毛利固まってもうたやん)
(……なにか問題だったのだろうか?)