毛利くんと私(中編作品)
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クリスマス、初詣、バレンタイン、ホワイトデーと
行事が目白押しだったのだけど
この短期間で恋人になってとしてのイベントは
制覇してしまったような気がする。
これから先はしばらくそういうイベントがないので
ちょっぴり寂しいけど
今は少しふたりでゆっくりしたい気持ちもある。
だって、ゆっくりできるのも今だけ。
4月になったら、私は3年生だ。
夏頃から本格的な受験モードに突入する。
一応進路は考えていて、隣の県の
大学を受験しようかとは思ってはいるが
寿三郎くんも合宿で忙しそうだから
なかなか進学の話をする機会がない。
そんな中で寿三郎くんから
U-17W杯の日本代表に選ばれたという朗報を聞いた。
『すごい!おめでとう!!』
「選ばれたんは嬉しいんやけど、ちゃんと勝たないかんね」
応援に行きたいけど、さすがに現地まで行くことはできず
私は日本からの応援になる。
せめて、空港まではお見送りしようと思ってると伝えると
先輩らに自慢しやります!と
紹介宣言されたので緊張しそうだ。
本当はここで進学の話をするチャンスだったのだけど
また練習が忙しくなる彼に伝えるのは気が引けてしまって
私はタイミングを逃したままになっていた。
そして寿三郎くんが
少し寂しそうな顔をしていることに気づかないまま
W杯の決戦の場へ向かう日がやって来たのだった。
空港へと向かう途中
この数ヶ月の出来事を思い出していた。
4月に寿三郎くんと出会って
委員会や体育祭、文化祭
思えば学校での行事のときはいつも彼がいて
次第に惹かれていって、恋人という関係になって・・・
まだ先輩後輩としての関係性の時間のほうが多いけど
これから先も
私は彼と一緒に過ごしたいと思ってしまっているのは
まだ早いだろうか。
そのくらい、私は寿三郎くんのことが好き。
というより、大切な存在なのだ。
遠くへ行ってしまうことの寂しさ
何もできない無力さ
これから先の進路や未来への不安。
いろんな感情が渦巻いているけど
今は笑って、全力で送り出してあげたい。
空港へと着き、どこにいるのかわかるかな、と
不安になっていたのもつかの間。
寿三郎くんはすぐに見つけられた。
というか、スーツを着たイケメンの集団がいて
目立ちまくっている。
「千里さん!!来てくれはったんやね!」
寿三郎くんが叫ぶものだから
集団が一斉にこちらを向いて注目を浴びることになった。
あの寿三郎くんより大きい人が“月光さん“で
“モテる先輩方”と“物知りな後輩“はどの人だろう、と
思っていたら
寿三郎くんが駆け寄ってきた。
「あの!俺、千里さんに話したいことあって」
『…私も、話さなきゃいけないことがあって……』
出発までまだ時間があるということで
私たちは飛び立つ飛行機が見える
展望デッキへと移動することにした。
あのクリスマスのときのように
寿三郎くんは少しぎこちない。
何かを言いたいようで、言葉を選んでいる、そんな雰囲気だ。
「あの…俺、千里さんとおんなじ気持ちになれて
付き合えて、ホンマに幸せなんです。
いっぱい笑わかして、いっぱい一緒におりたい。
でも俺、テニスばっかでこれから一緒に過ごせる時間
少なくなると思うんです…」
寿三郎くんの声はだんだん小さくなっていく。
「千里さんに寂しい思いもさせて
…俺から離れて行きんさったらって思うたら
つらくなってしもうて…。
ワガママやけど、連絡ちゃんとしやるから
俺のこと好きでいて欲しいんです」
ここまで聞いて、ん?と何か寿三郎くんが
勘違いというか、彼が何を言いたいのか話がよく見えない。
『え?あの、寿三郎くん、話が見えないというか
話の流れがちょっと…』
「…千里さん、暗い顔してはったから
俺合宿でいつもおらへんし、また遠くに行ってまうから
…俺と付き合うの、つまらへんのかなって…」
ここまで聞いて
私は自分の気持ちをちゃんと伝えなかったことを後悔した。
そういう風に、思わせてしまっていたのか。
私は寿三郎くんの頭を両手で自分の胸に抱き寄せた。
『違うよ!そんなこと、思ってないの』
「・・・せやったら、なんで気まずそうな顔、してたんです?」
『いろんな感情が溢れちゃって、うまく言えないんだけど・・・
寿三郎くんが遠い存在になっちゃうような気がして。
なのに私はここにいて、なにもできなくて。
一緒にいたいけど
3年になったら受験で忙しくなっちゃうし
好きなのに、好きすぎて
大切すぎて色々不安になっちゃって…』
言いながら、私の目からは涙が溢れて
胸の前で抱きしめている寿三郎くんの頬を濡らす。
私の涙に気がついた寿三郎くんは
私から身体を離し、今度は私が
彼に抱きしめられるかたちになった。
「俺と付き合うんが、嫌になったわけとちゃうんですね?」
『うん』
「ただ不安になっただけなんですね?」
『うん』
「俺のこと、好きでいてくれますやろか?」
『ずっと、この先もずっと好きだよ』
「俺も、ずっと千里さんのことが、好きです」
ここが空港であることをすっかり忘れていた私達は
ちょっとだけ注目を浴びることになってしまったけど
胸のつっかえが取れて清々しい気持ちで手を繋ぎ
やっぱり、お互い言いたいことを
我慢するのはよくないと笑い合う。
『あのね、私隣の県にある大学を目指そうと思ってるの。
寿三郎くんに勉強を教えたことがきっかけで
教師になりたいと思って。
電車で一時間くらいだからそんなに離れてはいないから』
「ええね!ええ夢ですやん!ほなら俺生徒第一号やね」
『まずは大学に合格しなきゃだけどね』
「千里さんなら大丈夫でっせ。
せや、一人暮らしはしやるん?」
『気が早いよ。
でもそうだね、いずれは一人暮らししたいな』
「俺のお泊りセット、常備しとかないかんね」
寿三郎くんが一緒だと
先の不安なんてちっぽけなことに思えた。
何を、うじうじと悩んでいたのだろう。
一緒に話して、一緒に悩んで、一緒に笑って
一緒に前に進んでくれる人がいる。
この人のために、私は私にできることをしてあげたい。
『寿三郎くん。私にできることってなにかないかな?』
「せやね・・・
絶対てっぺんとってきやるから、信じててほしいです。
あと、笑顔でお帰りって言うてください。
[#dc=2]さんがおんさったら、強くなれますやん」
『うん!』
高校2年生の冬。
私は背が高くて
人懐っこくて
優しくて
お陽さまみたいにあったかい人と恋をした。
この恋は、私にとってかけがえのないもので
これから先もずっと忘れられない大切な恋。
まだ子供な私たちに将来のことなんてわからないけど
なんとなく、ずっと彼が私の隣にいてくれるそんな気がした。
行事が目白押しだったのだけど
この短期間で恋人になってとしてのイベントは
制覇してしまったような気がする。
これから先はしばらくそういうイベントがないので
ちょっぴり寂しいけど
今は少しふたりでゆっくりしたい気持ちもある。
だって、ゆっくりできるのも今だけ。
4月になったら、私は3年生だ。
夏頃から本格的な受験モードに突入する。
一応進路は考えていて、隣の県の
大学を受験しようかとは思ってはいるが
寿三郎くんも合宿で忙しそうだから
なかなか進学の話をする機会がない。
そんな中で寿三郎くんから
U-17W杯の日本代表に選ばれたという朗報を聞いた。
『すごい!おめでとう!!』
「選ばれたんは嬉しいんやけど、ちゃんと勝たないかんね」
応援に行きたいけど、さすがに現地まで行くことはできず
私は日本からの応援になる。
せめて、空港まではお見送りしようと思ってると伝えると
先輩らに自慢しやります!と
紹介宣言されたので緊張しそうだ。
本当はここで進学の話をするチャンスだったのだけど
また練習が忙しくなる彼に伝えるのは気が引けてしまって
私はタイミングを逃したままになっていた。
そして寿三郎くんが
少し寂しそうな顔をしていることに気づかないまま
W杯の決戦の場へ向かう日がやって来たのだった。
空港へと向かう途中
この数ヶ月の出来事を思い出していた。
4月に寿三郎くんと出会って
委員会や体育祭、文化祭
思えば学校での行事のときはいつも彼がいて
次第に惹かれていって、恋人という関係になって・・・
まだ先輩後輩としての関係性の時間のほうが多いけど
これから先も
私は彼と一緒に過ごしたいと思ってしまっているのは
まだ早いだろうか。
そのくらい、私は寿三郎くんのことが好き。
というより、大切な存在なのだ。
遠くへ行ってしまうことの寂しさ
何もできない無力さ
これから先の進路や未来への不安。
いろんな感情が渦巻いているけど
今は笑って、全力で送り出してあげたい。
空港へと着き、どこにいるのかわかるかな、と
不安になっていたのもつかの間。
寿三郎くんはすぐに見つけられた。
というか、スーツを着たイケメンの集団がいて
目立ちまくっている。
「千里さん!!来てくれはったんやね!」
寿三郎くんが叫ぶものだから
集団が一斉にこちらを向いて注目を浴びることになった。
あの寿三郎くんより大きい人が“月光さん“で
“モテる先輩方”と“物知りな後輩“はどの人だろう、と
思っていたら
寿三郎くんが駆け寄ってきた。
「あの!俺、千里さんに話したいことあって」
『…私も、話さなきゃいけないことがあって……』
出発までまだ時間があるということで
私たちは飛び立つ飛行機が見える
展望デッキへと移動することにした。
あのクリスマスのときのように
寿三郎くんは少しぎこちない。
何かを言いたいようで、言葉を選んでいる、そんな雰囲気だ。
「あの…俺、千里さんとおんなじ気持ちになれて
付き合えて、ホンマに幸せなんです。
いっぱい笑わかして、いっぱい一緒におりたい。
でも俺、テニスばっかでこれから一緒に過ごせる時間
少なくなると思うんです…」
寿三郎くんの声はだんだん小さくなっていく。
「千里さんに寂しい思いもさせて
…俺から離れて行きんさったらって思うたら
つらくなってしもうて…。
ワガママやけど、連絡ちゃんとしやるから
俺のこと好きでいて欲しいんです」
ここまで聞いて、ん?と何か寿三郎くんが
勘違いというか、彼が何を言いたいのか話がよく見えない。
『え?あの、寿三郎くん、話が見えないというか
話の流れがちょっと…』
「…千里さん、暗い顔してはったから
俺合宿でいつもおらへんし、また遠くに行ってまうから
…俺と付き合うの、つまらへんのかなって…」
ここまで聞いて
私は自分の気持ちをちゃんと伝えなかったことを後悔した。
そういう風に、思わせてしまっていたのか。
私は寿三郎くんの頭を両手で自分の胸に抱き寄せた。
『違うよ!そんなこと、思ってないの』
「・・・せやったら、なんで気まずそうな顔、してたんです?」
『いろんな感情が溢れちゃって、うまく言えないんだけど・・・
寿三郎くんが遠い存在になっちゃうような気がして。
なのに私はここにいて、なにもできなくて。
一緒にいたいけど
3年になったら受験で忙しくなっちゃうし
好きなのに、好きすぎて
大切すぎて色々不安になっちゃって…』
言いながら、私の目からは涙が溢れて
胸の前で抱きしめている寿三郎くんの頬を濡らす。
私の涙に気がついた寿三郎くんは
私から身体を離し、今度は私が
彼に抱きしめられるかたちになった。
「俺と付き合うんが、嫌になったわけとちゃうんですね?」
『うん』
「ただ不安になっただけなんですね?」
『うん』
「俺のこと、好きでいてくれますやろか?」
『ずっと、この先もずっと好きだよ』
「俺も、ずっと千里さんのことが、好きです」
ここが空港であることをすっかり忘れていた私達は
ちょっとだけ注目を浴びることになってしまったけど
胸のつっかえが取れて清々しい気持ちで手を繋ぎ
やっぱり、お互い言いたいことを
我慢するのはよくないと笑い合う。
『あのね、私隣の県にある大学を目指そうと思ってるの。
寿三郎くんに勉強を教えたことがきっかけで
教師になりたいと思って。
電車で一時間くらいだからそんなに離れてはいないから』
「ええね!ええ夢ですやん!ほなら俺生徒第一号やね」
『まずは大学に合格しなきゃだけどね』
「千里さんなら大丈夫でっせ。
せや、一人暮らしはしやるん?」
『気が早いよ。
でもそうだね、いずれは一人暮らししたいな』
「俺のお泊りセット、常備しとかないかんね」
寿三郎くんが一緒だと
先の不安なんてちっぽけなことに思えた。
何を、うじうじと悩んでいたのだろう。
一緒に話して、一緒に悩んで、一緒に笑って
一緒に前に進んでくれる人がいる。
この人のために、私は私にできることをしてあげたい。
『寿三郎くん。私にできることってなにかないかな?』
「せやね・・・
絶対てっぺんとってきやるから、信じててほしいです。
あと、笑顔でお帰りって言うてください。
[#dc=2]さんがおんさったら、強くなれますやん」
『うん!』
高校2年生の冬。
私は背が高くて
人懐っこくて
優しくて
お陽さまみたいにあったかい人と恋をした。
この恋は、私にとってかけがえのないもので
これから先もずっと忘れられない大切な恋。
まだ子供な私たちに将来のことなんてわからないけど
なんとなく、ずっと彼が私の隣にいてくれるそんな気がした。