おんぶの体温
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明るくて、優しくて、いつでも楽しそうにしていて
誰と接するときも態度を変えない。
笑った顔は可愛いのに
テニスをしているときは格好いい。
あの人、毛利先輩はずるい。
格好いいのに、可愛くて、たまにあざとくて
性格もいいなんて、ずるすぎる。
ずるいくらい素敵な人な先輩に、私は片想いをしている。
「それで。お前は俺にどうして欲しいんだ」
『いや、なにもしなくていいの。
ただ聞いて欲しいだけなの』
若干鼻にかけるように笑いながら
柳は私に呆れたような視線を向ける。
1年生のときから柳とは同じクラスで
また私は立海男子テニス部のマネージャーでもあるから
比較的仲が良いのだ。
とはいっても
仲が良いと思っているのは私だけかもしれないけど。
「俺には、あの人のどこが良いか理解できない」
『そりゃ色々あったけど・・・
柳も今の毛利先輩と話してみたら素敵な人だって思うよ』
柳には、いつも毛利先輩の話を聞いてもらっているけど
彼は、毛利先輩のことを嫌っている。
あのとき、テニスがしたくてもできない幸村くんを尻目に
いつも練習をサボっていたばかりの
毛利先輩が許せないのだ。
柳が毛利先輩に厳しい態度を取るからか
毛利先輩は私にもどこかよそよそしいので
あからさまな態度はやめてほしいんだけど、無理そう。
「・・・似ているタイプなら、他にもいるだろう」
『例えば?』
「のんびりしているところは千歳と似ている。
明るく元気でコミュニケーション能力が高いところは
丸井と近いだろう」
千歳くんは毛利先輩のような
素直でキラキラした目はしてないし
丸井はどこかアイドル的要素があるから系統が少し違う。
そう告げると、柳はため息をついて去って行ってしまった。
柳が去った後
私はマネージャーとしての仕事に取り掛かることにした。
一応、このU-17の合宿についてきている身なのだから
少しは役にたたなければ。
コートに置きっぱなしになったままのボールのカゴを抱え
備品庫に運ぼうと一歩踏み出したとき
私は落としたボールに足を取られて
バランスを崩してしまった。
カゴの中身をぶちまけて倒れる、と痛みに覚悟した瞬間
ボフッと、顔からなにかにぶつかった。
「おっとっと、ギリギリセーフやね」
目の前で支えてくれたのは、なんと毛利先輩。
『えっ、あっ、すみませんっ!』
「あっ!今手ぇ離したら・・・」
恥ずかしいことに
緊張してとっさに持っていたカゴを落としてしまい
辺りにテニスボールが転がった。
「あらら。逆に驚かせてしもたね」
そう言って笑うと、毛利先輩はボールを拾い始める。
『い、いえ!私の不注意なので・・・!
私拾いますから、先輩はしなくていいです!』
「二人でやったが速いやんけ。
それに俺らが使こたもんなんやし」
嫌な顔ひとつせず
毛利先輩は楽しそうにボールを拾ってくれる。
これが千歳くんだったら手伝ってはくれるけど
ちょっと困ったように笑いそうだし
丸井だったら「何やってるんだろぃ」って言いそう。
しかも私が気まずくないよう
合宿はどうだとか、大変じゃないかとか
話しかけてまでくれる。
緊張しつつも会話ははずみ
あっという間に拾い終わってしまった。
「よし。これで全部やね!これ備品庫に持って行くんけ?」
『はい、そうです』
「ほなら一緒に持って行こか」
『え!いやいやいや!申し訳ないです!』
「ええから。たまには先輩っぽいことしてやりたいやんけ」
毛利先輩は軽くカゴを抱えると軽快に歩き出したかと思えば
そのまま少し歩いたところでピタッと足を止めた。
『どうかしましたか?』
「ほのかちゃん、ここで待ってて。すぐ戻ってきやるから」
『え?あ、ちょっと…!』
なぜか毛利先輩は走って行ってしまった。
追いかけようにも、追い付けるはずがなく
とりあえず戻って来るのを待つことにしたけど
ものの数分で毛利先輩は戻ってきた。
「次はほのかちゃんの番やね」
毛利先輩が腰を少し屈めたかと思うと
唐突に浮遊感に襲われた。
『え!?えぇ!?いや、何してるんですかっ!』
「怪我人は暴れたらダメでっせ」
『え…なんで…』
さっき、転けそうになったとき、少しだけ足を挫いた。
それでも歩けはするし
そこまで痛くないから黙っていたのだけどバレていた。
「これでも一応スポーツマンやからね。
歩き方おかしいなぁって思うてたんよ」
『あ、あの、歩けはするので…降ろしてください』
「あとから酷くなるかもしれんから、動かしたらアカンよ 」
『で、でも、重いし…』
「寧ろ、もうちょい太ったほうがええんとちゃう?
軽すぎでっせ」
これは絶対に降ろしてくれないらしい。
諦めるしかなさそうだけど
距離は近いし、毛利先輩に触れられて頭が沸騰しそう。
「身体強ばってるけど、高いの怖いんけ?」
身体が強ばってるのは、あなたのせいです。
ドキドキしすぎて、好きすぎてパニックです。
なんて言えないので
適当に、浮遊感がちょっと、とか誤魔化す。
「ほなら、おんぶの方がええね!」
毛利先輩は壊れ物を扱うかのように
丁寧に降ろしてくれて
今度は屈んで背中に乗れと促される。
あ、これなら顔見られないしいいかも。
『じゃ、じゃあ失礼します…』
そっと、毛利先輩の背中に触れて
ゆっくり体重を預けていると
あれ、これはやばいのでは?と
お姫様抱っこのせいで失っていた冷静さを取り戻してきた。
密着度が、やばい。
おんぶって、後ろから抱きついているようなもの。
なんで承諾したんだろう私。
しがみつく、なんてことはできずに
手だけを肩に乗せて身体はなるべく触れないように
なんとか体勢を保つ。
「危ないから、こうしときんせーね」
よっと、と器用に片手を離して
私の手をぐいっと引っ張る。
引っ張られたことでバランスを崩しそうになって
私は毛利先輩の首もとに
ぎゅっと顔を埋めるように抱きついた。
『これ…恥ずかしい、です…』
「……嫌やろか?」
『嫌じゃ、ないです。嬉しい…です』
「俺も嬉しいやんけ」
それってどういうことって聞きたかったけど
毛利先輩の耳が赤くなっていることに気がついて
今はもうこのままでいいやと思った。
保健室に着き
毛利先輩は手際よく湿布とテーピングをしてくれた。
ここで想いを伝えてしまおうかと思っていたら
勢いよくドアが開いて、そこには柳が立っていた。
どうやら私達のツーショットは
至るところで目撃されており
心配になったのか、柳は来てくれたみたいだけど
私の気持ちを知っているのなら
放っておいてくれたらよかったのに、と心の中で悪態をつく。
案の定、毛利先輩は柳の登場にたじたじになっているし
いつかこの二人が和解してくれたらなあと
そのために間を取り持とうと、密かに思うのであった。
(ほのかがお世話になりました)
(え、ええんよ!)
(それにしても、異性を抱えるのは…)
(ス、スマン!はよ手当てしてやらんとって思って)
(…感謝はしています)
(柳…!)
(ですが、年下の異性を抱えて
顔を赤らめるのはいかがなものかと)
(み、見てたん!?
その~、ほのかちゃんええ匂いするな、とか
柔らかいなあとか思ってたらだんだん照れきよって…)
(ほぅ…)
(あ。いや、今のは冗談やって。
そんな冷たい視線向けるんはやめんせーね!)
誰と接するときも態度を変えない。
笑った顔は可愛いのに
テニスをしているときは格好いい。
あの人、毛利先輩はずるい。
格好いいのに、可愛くて、たまにあざとくて
性格もいいなんて、ずるすぎる。
ずるいくらい素敵な人な先輩に、私は片想いをしている。
「それで。お前は俺にどうして欲しいんだ」
『いや、なにもしなくていいの。
ただ聞いて欲しいだけなの』
若干鼻にかけるように笑いながら
柳は私に呆れたような視線を向ける。
1年生のときから柳とは同じクラスで
また私は立海男子テニス部のマネージャーでもあるから
比較的仲が良いのだ。
とはいっても
仲が良いと思っているのは私だけかもしれないけど。
「俺には、あの人のどこが良いか理解できない」
『そりゃ色々あったけど・・・
柳も今の毛利先輩と話してみたら素敵な人だって思うよ』
柳には、いつも毛利先輩の話を聞いてもらっているけど
彼は、毛利先輩のことを嫌っている。
あのとき、テニスがしたくてもできない幸村くんを尻目に
いつも練習をサボっていたばかりの
毛利先輩が許せないのだ。
柳が毛利先輩に厳しい態度を取るからか
毛利先輩は私にもどこかよそよそしいので
あからさまな態度はやめてほしいんだけど、無理そう。
「・・・似ているタイプなら、他にもいるだろう」
『例えば?』
「のんびりしているところは千歳と似ている。
明るく元気でコミュニケーション能力が高いところは
丸井と近いだろう」
千歳くんは毛利先輩のような
素直でキラキラした目はしてないし
丸井はどこかアイドル的要素があるから系統が少し違う。
そう告げると、柳はため息をついて去って行ってしまった。
柳が去った後
私はマネージャーとしての仕事に取り掛かることにした。
一応、このU-17の合宿についてきている身なのだから
少しは役にたたなければ。
コートに置きっぱなしになったままのボールのカゴを抱え
備品庫に運ぼうと一歩踏み出したとき
私は落としたボールに足を取られて
バランスを崩してしまった。
カゴの中身をぶちまけて倒れる、と痛みに覚悟した瞬間
ボフッと、顔からなにかにぶつかった。
「おっとっと、ギリギリセーフやね」
目の前で支えてくれたのは、なんと毛利先輩。
『えっ、あっ、すみませんっ!』
「あっ!今手ぇ離したら・・・」
恥ずかしいことに
緊張してとっさに持っていたカゴを落としてしまい
辺りにテニスボールが転がった。
「あらら。逆に驚かせてしもたね」
そう言って笑うと、毛利先輩はボールを拾い始める。
『い、いえ!私の不注意なので・・・!
私拾いますから、先輩はしなくていいです!』
「二人でやったが速いやんけ。
それに俺らが使こたもんなんやし」
嫌な顔ひとつせず
毛利先輩は楽しそうにボールを拾ってくれる。
これが千歳くんだったら手伝ってはくれるけど
ちょっと困ったように笑いそうだし
丸井だったら「何やってるんだろぃ」って言いそう。
しかも私が気まずくないよう
合宿はどうだとか、大変じゃないかとか
話しかけてまでくれる。
緊張しつつも会話ははずみ
あっという間に拾い終わってしまった。
「よし。これで全部やね!これ備品庫に持って行くんけ?」
『はい、そうです』
「ほなら一緒に持って行こか」
『え!いやいやいや!申し訳ないです!』
「ええから。たまには先輩っぽいことしてやりたいやんけ」
毛利先輩は軽くカゴを抱えると軽快に歩き出したかと思えば
そのまま少し歩いたところでピタッと足を止めた。
『どうかしましたか?』
「ほのかちゃん、ここで待ってて。すぐ戻ってきやるから」
『え?あ、ちょっと…!』
なぜか毛利先輩は走って行ってしまった。
追いかけようにも、追い付けるはずがなく
とりあえず戻って来るのを待つことにしたけど
ものの数分で毛利先輩は戻ってきた。
「次はほのかちゃんの番やね」
毛利先輩が腰を少し屈めたかと思うと
唐突に浮遊感に襲われた。
『え!?えぇ!?いや、何してるんですかっ!』
「怪我人は暴れたらダメでっせ」
『え…なんで…』
さっき、転けそうになったとき、少しだけ足を挫いた。
それでも歩けはするし
そこまで痛くないから黙っていたのだけどバレていた。
「これでも一応スポーツマンやからね。
歩き方おかしいなぁって思うてたんよ」
『あ、あの、歩けはするので…降ろしてください』
「あとから酷くなるかもしれんから、動かしたらアカンよ 」
『で、でも、重いし…』
「寧ろ、もうちょい太ったほうがええんとちゃう?
軽すぎでっせ」
これは絶対に降ろしてくれないらしい。
諦めるしかなさそうだけど
距離は近いし、毛利先輩に触れられて頭が沸騰しそう。
「身体強ばってるけど、高いの怖いんけ?」
身体が強ばってるのは、あなたのせいです。
ドキドキしすぎて、好きすぎてパニックです。
なんて言えないので
適当に、浮遊感がちょっと、とか誤魔化す。
「ほなら、おんぶの方がええね!」
毛利先輩は壊れ物を扱うかのように
丁寧に降ろしてくれて
今度は屈んで背中に乗れと促される。
あ、これなら顔見られないしいいかも。
『じゃ、じゃあ失礼します…』
そっと、毛利先輩の背中に触れて
ゆっくり体重を預けていると
あれ、これはやばいのでは?と
お姫様抱っこのせいで失っていた冷静さを取り戻してきた。
密着度が、やばい。
おんぶって、後ろから抱きついているようなもの。
なんで承諾したんだろう私。
しがみつく、なんてことはできずに
手だけを肩に乗せて身体はなるべく触れないように
なんとか体勢を保つ。
「危ないから、こうしときんせーね」
よっと、と器用に片手を離して
私の手をぐいっと引っ張る。
引っ張られたことでバランスを崩しそうになって
私は毛利先輩の首もとに
ぎゅっと顔を埋めるように抱きついた。
『これ…恥ずかしい、です…』
「……嫌やろか?」
『嫌じゃ、ないです。嬉しい…です』
「俺も嬉しいやんけ」
それってどういうことって聞きたかったけど
毛利先輩の耳が赤くなっていることに気がついて
今はもうこのままでいいやと思った。
保健室に着き
毛利先輩は手際よく湿布とテーピングをしてくれた。
ここで想いを伝えてしまおうかと思っていたら
勢いよくドアが開いて、そこには柳が立っていた。
どうやら私達のツーショットは
至るところで目撃されており
心配になったのか、柳は来てくれたみたいだけど
私の気持ちを知っているのなら
放っておいてくれたらよかったのに、と心の中で悪態をつく。
案の定、毛利先輩は柳の登場にたじたじになっているし
いつかこの二人が和解してくれたらなあと
そのために間を取り持とうと、密かに思うのであった。
(ほのかがお世話になりました)
(え、ええんよ!)
(それにしても、異性を抱えるのは…)
(ス、スマン!はよ手当てしてやらんとって思って)
(…感謝はしています)
(柳…!)
(ですが、年下の異性を抱えて
顔を赤らめるのはいかがなものかと)
(み、見てたん!?
その~、ほのかちゃんええ匂いするな、とか
柔らかいなあとか思ってたらだんだん照れきよって…)
(ほぅ…)
(あ。いや、今のは冗談やって。
そんな冷たい視線向けるんはやめんせーね!)