毛利くんと私(中編作品)
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水族館を出ると
今度はオシャレなカフェに案内してくれた。
彼は事前に調べてくれていたようで
オススメまで教えてくれて
デザートにケーキがセットになっている
クリスマス限定メニューを二人で頼んだ。
「千里さんのケーキも美味しそうやね」
寿三郎くんはチョコレートケーキ
私はイチゴのタルトを選んでいた。
『一口食べてみる?』
「え!ええんです?やった!」
言ってみたものの
どうやって取り分けようかと考えていたら
寿三郎くんは満面の笑みであーん、と口を開ける。
一瞬フリーズしてしまったけど
“わくわく“と言った感じで彼は待っているので
いいのかな、と思いつつケーキを一口分すくう。
『えっと……はい、どうぞ』
「だめですやん。ちゃんと“あーん“って言うて下さいよ」
『………あーん』
食べさせるという行為と
“あーん“と発言することが恥ずかしすぎたけど
クリスマスだからなんだか許される気がしてくる。
夏祭りの時みたいに
いつもと違う日常のおかげで
私は普段より、少しだけ素直になれている。
「お返しでっせ。千里さん、“あーん“」
素直になれている、と思ったけど
これは……される側はもっと恥ずかしい。
『えっ、いや、私は大丈…………あーん』
断ろうと思ったのに
寿三郎くんが子犬のように眉を下げて
悲しげな表情をするから、つい負けてしまった。
もぐもぐとケーキを食べながら彼を見ると
両手で頬杖をついてニコニコしているから
また余計に恥ずかしくなった。
『ご飯もケーキも美味しかったね』
「せやね!喜んでもらえてよかったです」
カフェを出ると、辺りは暗くなり始めていて
雪がちらついていた。
ケーキの箱を持った人や
身を寄せあって歩くカップル
雪にはしゃぐ子供達の声がして
なんだか、幸せな気持ちになる。
ふいに、手に温もりを感じて顔をあげると
寿三郎くんが手を握っていた。
「寒いかもしれへんのですけど…
ちょっと、イルミネーション見に行きません?」
いつもなら、ニコニコ笑顔で言ってくれそうなのに
その表情はなんだかぎこちなくて
つられて私もうまく笑えず
ただ、こくん、と頷いた。
『わあ、綺麗だね』
「ホンマやね」
クリスマスイベントをしている広場に来て
イルミネーションを並んで見る。
少し口数の少ない寿三郎くんに戸惑い
チラチラ彼を見ていたら
すれ違った男の人にぶつかりそうになり
寿三郎くんに手を引かれた。
「人多いですし、ちょっとだけ離れたとこに座りましょ」
『うん、ごめんね』
ベンチに座り、離れた位置からイルミネーションを見ると
喧騒はなく静寂が訪れる。
寿三郎くんの雰囲気が違うので
なんとなく落ち着かない。
寒いし、具合でも悪いのだろうか 。
『寿三郎くん、寒いんじゃない?
私何か温かい飲み物買ってくるよ』
そう伝えて立ち上がろうとしたけど
寿三郎くんに手を握られたままなので動けずにいた。
「…千里さん、ここにおって下さい。
ちょっとだけ、時間もらえますやろか?」
『うん…』
強く、握られた手は少しだけ痛いけど
私はそのまま待つことにした。
彼が、何かを伝えようとしてくれている。
「俺図書室で会う前から
千里さんのこと知ってたんです」
『え?そうなの?』
「……まだ中学ん時、部活の後輩が病気で入院してたから
よくお見舞いに行ってたんよ。
その時に、いつも見かける女の子がおんさって
その子もお見舞いに来てる感じやった」
『…………』
「いつもニコニコしてはって
雰囲気の柔らかい人やなって思うてたんやけど
ある日、泣き腫らした目で
看護婦さん達に挨拶してるの見て……
それからは、病院で見かけることなくなって。
せやから、図書室で起こされたときビックリしてしもうた」
寿三郎くんが言ってるのは
お母さんが入院していた時のことだ。
『そうだったんだね』
あの時、起こされたことに驚いていただけでなく
私を見ても驚いていたのかと合点が行く。
「見ず知らずの後輩のために怒ってくれて
しかも一緒に頭下げてもくれはって。
ええ人やなって、思ってて…」
握られた手が、かすかに震えている。
「会うたびに、優しく微笑んでくれて
初めは“優しい先輩“やったのに
千里さんのこと知るたびに
だんだん惹かれていって“大切な人“になったんです」
胸が、きゅっと、締め付けられる感覚がする。
寿三郎くんが、すぅっと息を吸う音がして
反対に私の呼吸は止まる。
彼の言葉を聞き逃したくない。
「千里さん……好き、です。
俺年下で頼りないかもしれへんのですけど
誰よりも千里さんのことが好きで、大切です。
せやから、俺と、付き合うてもらえませんか……?」
まっすぐに見つめてくる寿三郎くんの表情は
今までに、見たことがないほど真剣だ。
私で、良いのだろうか。
もっと他にも素敵な女の子はいるのに
こんなにも何も取り柄のない
普通すぎる私で彼に釣り合うのだろうか。
“たまには甘えて、自分の気持ちに素直にならんとね“
ふと、あの日。熱を出した日に
寿三郎くんに言われた言葉を思い出した。
自分の気持ちに素直になろう。
私は私の気持ちを、伝えたい。
『…私ね、あの図書室で声を掛けたあと
自己紹介なんてしても、これから話すこともなければ
関わることなんてないと思ってた。
だけど、寿三郎くんから話しかけてくれて
笑い掛けてくれて、私のこと、支えてくれて…
話していくうちに、私も寿三郎くんに惹かれてた。
あ、あのね…私も……寿三郎くんのことが、好きだよ』
しっかり目を見て伝えたかったのに
最後の言葉を言うときは、下を向いて目をそらしてしまった。
しかも気持ちは伝えたけど
付き合っての返事をするまでの余裕がなく
今からどう伝えて良いか迷っていると
握られていた手がくいっと、引かれた。
「好きって、ちゃんと異性としてってことですよね?」
『もちろん…』
「やっぱり後輩にしか見えへんってのはなしでっせ?」
『わ、わかってるよ…後輩とは、思ってない。
一人の、男性として好きって意味で…』
「あ〰️。アカン。むっちゃくちゃ嬉しい!」
ぎゅむっと、強く抱き締められて
私は緊張と恥ずかしさと嬉しさとで固まってしまう。
その様子を感じ取ったのか
寿三郎くんは慌てて離してくれたのだけど
つい抱き締めてもうた、と呟き
本人が少しパニックになっている。
「あ、あの……それで……
彼女に、なってもらえますやろか…?」
先程、好きだと伝えた時は
目を見て彼に伝えることはできなかった。
だから今度はちゃんと伝えよう。
『もちろん。私でよければ彼女にしてください。
大好きだよ、寿三郎くん!』
そう伝えて今度は私から抱きつけば
彼はしばらく固まっていたけど
おずおずと、背中に手を回してくれた。
笑顔の可愛い、背の高い後輩は
私を支えてくれる素敵な彼氏。
にやける頬を彼の胸で隠して
明日からの日々を、寿三郎くんと過ごすこれからを
大切にしていきたいと思ったのだった。
今度はオシャレなカフェに案内してくれた。
彼は事前に調べてくれていたようで
オススメまで教えてくれて
デザートにケーキがセットになっている
クリスマス限定メニューを二人で頼んだ。
「千里さんのケーキも美味しそうやね」
寿三郎くんはチョコレートケーキ
私はイチゴのタルトを選んでいた。
『一口食べてみる?』
「え!ええんです?やった!」
言ってみたものの
どうやって取り分けようかと考えていたら
寿三郎くんは満面の笑みであーん、と口を開ける。
一瞬フリーズしてしまったけど
“わくわく“と言った感じで彼は待っているので
いいのかな、と思いつつケーキを一口分すくう。
『えっと……はい、どうぞ』
「だめですやん。ちゃんと“あーん“って言うて下さいよ」
『………あーん』
食べさせるという行為と
“あーん“と発言することが恥ずかしすぎたけど
クリスマスだからなんだか許される気がしてくる。
夏祭りの時みたいに
いつもと違う日常のおかげで
私は普段より、少しだけ素直になれている。
「お返しでっせ。千里さん、“あーん“」
素直になれている、と思ったけど
これは……される側はもっと恥ずかしい。
『えっ、いや、私は大丈…………あーん』
断ろうと思ったのに
寿三郎くんが子犬のように眉を下げて
悲しげな表情をするから、つい負けてしまった。
もぐもぐとケーキを食べながら彼を見ると
両手で頬杖をついてニコニコしているから
また余計に恥ずかしくなった。
『ご飯もケーキも美味しかったね』
「せやね!喜んでもらえてよかったです」
カフェを出ると、辺りは暗くなり始めていて
雪がちらついていた。
ケーキの箱を持った人や
身を寄せあって歩くカップル
雪にはしゃぐ子供達の声がして
なんだか、幸せな気持ちになる。
ふいに、手に温もりを感じて顔をあげると
寿三郎くんが手を握っていた。
「寒いかもしれへんのですけど…
ちょっと、イルミネーション見に行きません?」
いつもなら、ニコニコ笑顔で言ってくれそうなのに
その表情はなんだかぎこちなくて
つられて私もうまく笑えず
ただ、こくん、と頷いた。
『わあ、綺麗だね』
「ホンマやね」
クリスマスイベントをしている広場に来て
イルミネーションを並んで見る。
少し口数の少ない寿三郎くんに戸惑い
チラチラ彼を見ていたら
すれ違った男の人にぶつかりそうになり
寿三郎くんに手を引かれた。
「人多いですし、ちょっとだけ離れたとこに座りましょ」
『うん、ごめんね』
ベンチに座り、離れた位置からイルミネーションを見ると
喧騒はなく静寂が訪れる。
寿三郎くんの雰囲気が違うので
なんとなく落ち着かない。
寒いし、具合でも悪いのだろうか 。
『寿三郎くん、寒いんじゃない?
私何か温かい飲み物買ってくるよ』
そう伝えて立ち上がろうとしたけど
寿三郎くんに手を握られたままなので動けずにいた。
「…千里さん、ここにおって下さい。
ちょっとだけ、時間もらえますやろか?」
『うん…』
強く、握られた手は少しだけ痛いけど
私はそのまま待つことにした。
彼が、何かを伝えようとしてくれている。
「俺図書室で会う前から
千里さんのこと知ってたんです」
『え?そうなの?』
「……まだ中学ん時、部活の後輩が病気で入院してたから
よくお見舞いに行ってたんよ。
その時に、いつも見かける女の子がおんさって
その子もお見舞いに来てる感じやった」
『…………』
「いつもニコニコしてはって
雰囲気の柔らかい人やなって思うてたんやけど
ある日、泣き腫らした目で
看護婦さん達に挨拶してるの見て……
それからは、病院で見かけることなくなって。
せやから、図書室で起こされたときビックリしてしもうた」
寿三郎くんが言ってるのは
お母さんが入院していた時のことだ。
『そうだったんだね』
あの時、起こされたことに驚いていただけでなく
私を見ても驚いていたのかと合点が行く。
「見ず知らずの後輩のために怒ってくれて
しかも一緒に頭下げてもくれはって。
ええ人やなって、思ってて…」
握られた手が、かすかに震えている。
「会うたびに、優しく微笑んでくれて
初めは“優しい先輩“やったのに
千里さんのこと知るたびに
だんだん惹かれていって“大切な人“になったんです」
胸が、きゅっと、締め付けられる感覚がする。
寿三郎くんが、すぅっと息を吸う音がして
反対に私の呼吸は止まる。
彼の言葉を聞き逃したくない。
「千里さん……好き、です。
俺年下で頼りないかもしれへんのですけど
誰よりも千里さんのことが好きで、大切です。
せやから、俺と、付き合うてもらえませんか……?」
まっすぐに見つめてくる寿三郎くんの表情は
今までに、見たことがないほど真剣だ。
私で、良いのだろうか。
もっと他にも素敵な女の子はいるのに
こんなにも何も取り柄のない
普通すぎる私で彼に釣り合うのだろうか。
“たまには甘えて、自分の気持ちに素直にならんとね“
ふと、あの日。熱を出した日に
寿三郎くんに言われた言葉を思い出した。
自分の気持ちに素直になろう。
私は私の気持ちを、伝えたい。
『…私ね、あの図書室で声を掛けたあと
自己紹介なんてしても、これから話すこともなければ
関わることなんてないと思ってた。
だけど、寿三郎くんから話しかけてくれて
笑い掛けてくれて、私のこと、支えてくれて…
話していくうちに、私も寿三郎くんに惹かれてた。
あ、あのね…私も……寿三郎くんのことが、好きだよ』
しっかり目を見て伝えたかったのに
最後の言葉を言うときは、下を向いて目をそらしてしまった。
しかも気持ちは伝えたけど
付き合っての返事をするまでの余裕がなく
今からどう伝えて良いか迷っていると
握られていた手がくいっと、引かれた。
「好きって、ちゃんと異性としてってことですよね?」
『もちろん…』
「やっぱり後輩にしか見えへんってのはなしでっせ?」
『わ、わかってるよ…後輩とは、思ってない。
一人の、男性として好きって意味で…』
「あ〰️。アカン。むっちゃくちゃ嬉しい!」
ぎゅむっと、強く抱き締められて
私は緊張と恥ずかしさと嬉しさとで固まってしまう。
その様子を感じ取ったのか
寿三郎くんは慌てて離してくれたのだけど
つい抱き締めてもうた、と呟き
本人が少しパニックになっている。
「あ、あの……それで……
彼女に、なってもらえますやろか…?」
先程、好きだと伝えた時は
目を見て彼に伝えることはできなかった。
だから今度はちゃんと伝えよう。
『もちろん。私でよければ彼女にしてください。
大好きだよ、寿三郎くん!』
そう伝えて今度は私から抱きつけば
彼はしばらく固まっていたけど
おずおずと、背中に手を回してくれた。
笑顔の可愛い、背の高い後輩は
私を支えてくれる素敵な彼氏。
にやける頬を彼の胸で隠して
明日からの日々を、寿三郎くんと過ごすこれからを
大切にしていきたいと思ったのだった。