毛利くんと私(中編作品)
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
夏祭り当日。
友人のお母さんに浴衣を着付けてもらい、神社へと向かう。
浴衣を着たのは何年ぶりか。
洋服で行くと言っていたのに
急に浴衣を着ると言い出した私に
友人はニヤニヤしていたけど、私は知らんぷりを通した。
いくつになっても、夏祭りって
非日常的でドキドキしてしまう。
浮き足立つ、というのか
焼きそばとか、焼きとうもろこしとか
見慣れている食べ物も
夏祭りだと特別に見えるから不思議。
今日はクラスでの集まりなので
男女10人くらいが集合し
なんとなく皆でブラブラと屋台を巡り
それから花火を見る、という流れになっていた。
寿三郎くんも、友達数人と来ているらしく
お互いタイミングを見計らって
少しだけ会おうということになっている。
「清水さん、浴衣、似合うね」
唐突に話し掛けられて振り向くと
クラスでもあまり話したことのない男子だった。
『そうかな?ありがとう』
最近寿三郎くんとばかり話していたから
同級生と話すのは久しぶりな感じがする。
でも普段話さない人だから
何を話したら良いのやら。
そういえば、寿三郎くんと話すときは
何話そう、とか考えたことがなかったなと気づく。
それだけ波長が合うということだろうか。
…寿三郎くんに、いつのタイミングで会えるだろう。
「あの、さ……あとで一緒に花火見ない?」
『?ことあと皆で打ち上げ会場に移動するよね?』
「そ、そうじゃなくて…ふたりで、見たいなって…」
彼の照れたような顔見て
どう返事をしたらいいか悩んでいたら
突如大きな人影が、私と彼の間に現れた。
「すんませんけど、ふたりで見るんはナシでっせ」
『寿三郎くん!』
私に背を向けているので、表情はわからないけど
いつもより低いトーンの声に少し戸惑う。
寿三郎くんは振り返ることなく
私の手を引いて歩き出した。
『じゅ、寿三郎くん…!ごめん、歩くのちょっと速い…』
「えっ!?あっ、す、すんません!!」
寿三郎くんの歩幅に
浴衣と下駄のせいで上手くついて行けずに
恐る恐る声を掛ける。
低いトーンの声に少し驚いていたけど
いつもの柔らかい雰囲気の彼に安心する。
だけどなんとなく気まずくて
話し掛ける言葉を選んでいると
ドンッと、大きな音がした。
「わっ!始まってもうた!」
寿三郎くんは、あまりよく考えずに歩いていたようで
打ち上げ会場から離れてしまっていたけど
ここからだと全体が見えてとても綺麗だ。
それに人の往来も少ない。
『ここで一緒に見よう?』
「……せやね」
打ち上げ花火を、ゆっくり眺めるなんていつぶりだろう。
前は家族と来た。
その時はまだお母さんもいて
そういえば帰り道に弟が転んだんだった。
あの時は、自分を取り巻く環境が
こんなにも変わるなんてこと、思ってもみなかった。
ふと、手の甲が、彼に触れる。
咄嗟に、私は寿三郎くんの手を握ってしまった。
いや、私、何してるの。
付き合ってもないのに、異性の手を握るって
引っ張って歩くのとは違うでしょと
自問自答してすぐに離そうと手を緩める。
「…このままが、ええんですけど」
『えっ、あ……う、うん』
離さない、と言わんばかりにぎゅっと、握られて
じわじわと、体温が上がっていく。
「千里さん、さっき……邪魔でした?」
一瞬なんのことを言われているのわからなかったけど
恐らく、クラスメートから誘われていたことを
言っているのだろう。
『邪魔なわけないじゃない。
私、寿三郎くんと一緒に花火見たかったから…嬉しいよ』
「俺も、千里さんと一緒に見たかったんです。
せやから、誘われてはるの見て焦ってもうた」
『来てくれて、ありがとう』
「いつでも参上しまっせ!
……あと、浴衣姿、むっちゃ似合うてはる。
綺麗で、可愛くて……独り占めしたなりますやん」
『ふふっ、なにそれ』
浴衣を着てよかった。
お世辞でも、好きな人から
可愛いと言われるのはやっぱり嬉しい。
手も繋いでいるし
話し声が花火の音にかき消されないようにと
自然と距離が近くなる。
普段なら、恥ずかしさで離れてしまいそうだけど
いつもと違う夜のおかげで
私はしばらくの間、寿三郎くんの体温を感じていた。
ふと、寿三郎くんが
何かを言った気がして顔を見たけど
照れたように笑うだけでうまく聞き取れなかった。
後から各々友人達と合流したのだけど
そこまで追求されることはなかった。
ただ、“罪な女“とからかわれてしまい
“年下キラー“といい
最近変な称号が増えてきた気がする。
友人のお母さんに浴衣を着付けてもらい、神社へと向かう。
浴衣を着たのは何年ぶりか。
洋服で行くと言っていたのに
急に浴衣を着ると言い出した私に
友人はニヤニヤしていたけど、私は知らんぷりを通した。
いくつになっても、夏祭りって
非日常的でドキドキしてしまう。
浮き足立つ、というのか
焼きそばとか、焼きとうもろこしとか
見慣れている食べ物も
夏祭りだと特別に見えるから不思議。
今日はクラスでの集まりなので
男女10人くらいが集合し
なんとなく皆でブラブラと屋台を巡り
それから花火を見る、という流れになっていた。
寿三郎くんも、友達数人と来ているらしく
お互いタイミングを見計らって
少しだけ会おうということになっている。
「清水さん、浴衣、似合うね」
唐突に話し掛けられて振り向くと
クラスでもあまり話したことのない男子だった。
『そうかな?ありがとう』
最近寿三郎くんとばかり話していたから
同級生と話すのは久しぶりな感じがする。
でも普段話さない人だから
何を話したら良いのやら。
そういえば、寿三郎くんと話すときは
何話そう、とか考えたことがなかったなと気づく。
それだけ波長が合うということだろうか。
…寿三郎くんに、いつのタイミングで会えるだろう。
「あの、さ……あとで一緒に花火見ない?」
『?ことあと皆で打ち上げ会場に移動するよね?』
「そ、そうじゃなくて…ふたりで、見たいなって…」
彼の照れたような顔見て
どう返事をしたらいいか悩んでいたら
突如大きな人影が、私と彼の間に現れた。
「すんませんけど、ふたりで見るんはナシでっせ」
『寿三郎くん!』
私に背を向けているので、表情はわからないけど
いつもより低いトーンの声に少し戸惑う。
寿三郎くんは振り返ることなく
私の手を引いて歩き出した。
『じゅ、寿三郎くん…!ごめん、歩くのちょっと速い…』
「えっ!?あっ、す、すんません!!」
寿三郎くんの歩幅に
浴衣と下駄のせいで上手くついて行けずに
恐る恐る声を掛ける。
低いトーンの声に少し驚いていたけど
いつもの柔らかい雰囲気の彼に安心する。
だけどなんとなく気まずくて
話し掛ける言葉を選んでいると
ドンッと、大きな音がした。
「わっ!始まってもうた!」
寿三郎くんは、あまりよく考えずに歩いていたようで
打ち上げ会場から離れてしまっていたけど
ここからだと全体が見えてとても綺麗だ。
それに人の往来も少ない。
『ここで一緒に見よう?』
「……せやね」
打ち上げ花火を、ゆっくり眺めるなんていつぶりだろう。
前は家族と来た。
その時はまだお母さんもいて
そういえば帰り道に弟が転んだんだった。
あの時は、自分を取り巻く環境が
こんなにも変わるなんてこと、思ってもみなかった。
ふと、手の甲が、彼に触れる。
咄嗟に、私は寿三郎くんの手を握ってしまった。
いや、私、何してるの。
付き合ってもないのに、異性の手を握るって
引っ張って歩くのとは違うでしょと
自問自答してすぐに離そうと手を緩める。
「…このままが、ええんですけど」
『えっ、あ……う、うん』
離さない、と言わんばかりにぎゅっと、握られて
じわじわと、体温が上がっていく。
「千里さん、さっき……邪魔でした?」
一瞬なんのことを言われているのわからなかったけど
恐らく、クラスメートから誘われていたことを
言っているのだろう。
『邪魔なわけないじゃない。
私、寿三郎くんと一緒に花火見たかったから…嬉しいよ』
「俺も、千里さんと一緒に見たかったんです。
せやから、誘われてはるの見て焦ってもうた」
『来てくれて、ありがとう』
「いつでも参上しまっせ!
……あと、浴衣姿、むっちゃ似合うてはる。
綺麗で、可愛くて……独り占めしたなりますやん」
『ふふっ、なにそれ』
浴衣を着てよかった。
お世辞でも、好きな人から
可愛いと言われるのはやっぱり嬉しい。
手も繋いでいるし
話し声が花火の音にかき消されないようにと
自然と距離が近くなる。
普段なら、恥ずかしさで離れてしまいそうだけど
いつもと違う夜のおかげで
私はしばらくの間、寿三郎くんの体温を感じていた。
ふと、寿三郎くんが
何かを言った気がして顔を見たけど
照れたように笑うだけでうまく聞き取れなかった。
後から各々友人達と合流したのだけど
そこまで追求されることはなかった。
ただ、“罪な女“とからかわれてしまい
“年下キラー“といい
最近変な称号が増えてきた気がする。