毛利くんと私(中編作品)
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毛利くんから突然、お願いがあるとの連絡がきた。
何事かと思えば、勉強を教えて欲しいということで
テストが近いからか、彼は焦っているようだった。
弟がお世話にもなったし
私もお世話になっているし
日頃の感謝を込めて、勉強を教えることになった。
どちらかというと
勉強は嫌いではないので、成績も悪い方ではないが
教える、ということに不安はある。
ちゃんと、教えられるかな。
初めは学校で教えるのだと思っていたのだけど
彼から指定されたのは
土曜日のお昼、学校から少し離れた図書館で
とのことだった。
学校だと、私の友人のように
冷やかす人もいるかもしれないし
私が家事をしていることへの配慮なのかもしれない。
外で会うのは初めてだ。
何を着たら良いのだろうか。
当日はよく晴れており、陽射しが眩しい。
13時より早く着いたのだけど
すでに毛利くんが図書館の入り口に立っていた。
何やら、おばあさんと話している。
おばあさんは会釈をして離れていき
私に気がついた毛利くんが手を振る。
『ごめんね、お待たせしました』
「待ってへんから、大丈夫でっせ」
毛利くんは白いTシャツにパーカー、ジーンズという
ラフなスタイルだ。
制服かジャージ姿しか見たことがなかったから新鮮だ。
ラフな格好なのに、スタイルが良いからかモデルさんのよう。
「先輩の私服、初めて見ますけど
なんや新鮮な感じで、その、照れますやん」
『え?なんで毛利くんが照れるの』
「え、いやぁ、その…」
私の服装なんて、何も変化はないのに。
『毛利くんだって私服姿新鮮だよ。格好いい』
「………!」
見れば毛利くんは顔を赤くしている。
つい格好いいって言っちゃったのが
今更ながら恥ずかしくなってきて
つられて私も赤くなる。
誤魔化すように図書館へ入ると
さっきのおばあさんがやって来て
私と毛利くんにジュースをくれた。
どうやら毛利くんが道案内をしたらしくそのお礼だという。
私まで頂いてすみません、と言うと
「彼女さんは美人さんねえ」と微笑まれ
また二人して顔が赤くなったのだった。
『そうそう。それでここにこの公式を当てはめれば…』
「おぉ…!清水先輩、教え方天才ですやん…!
ほなら、こっちの問題はこうすればええんやね」
『そう!正解』
毛利くんは勉強が苦手というわけではなさそう。
数学は公式を覚えてしまえば飲み込みが早く
これならテストも問題なさそう。
ちょっと休憩しようということになり
一旦図書館から出てロビーのベンチに座る。
おばあさんに貰ったジュースを飲んでいると
毛利くんが何やら落ち着きがなく、そわそわしている。
「…さっき、すんません。
その…彼女って勘違いされてもうて…」
『気にしてないよ?ちょっと恥ずかしくなっただけだから』
そこまで答えてハッする。
毛利くん、彼女いないのかな。
さすがにいたら、休日に勉強教えてとは言わないよね?
と思いつつ、心配になったので聞いてみた。
「え!?おらへんよ!?」
『そっか、よかった』
「よ、よかったって…?」
『ん?だって彼女さんいたら
今日のこと勘違いさせちゃうじゃない』
「あ、そーゆー意味…」
そわそわしているかと思えば
今度はちょっと、しゅんとしている。
コロコロと変わる表情を見ていると
この人と一緒にいたら楽しいなあと素直に思えた。
「先輩は、彼氏…おらへんの?」
『いないよ。いると思ってたの?』
「…先輩、かわええから。モテはるやろうし」
可愛いの一言に、顔が一気に熱をもつ。
いつもなら冗談でしょ、と言い返すのに
毛利くんに言われたら何も言えなくなってしまった。
「…照れてはるん?…千里先輩」
『……!名前…!』
不意に呼ばれた名前に驚いて彼を見ると
にこにこと、嬉しそうな顔をしている。
異性に、名前を呼ばれたのは初めてだ。
今絶対、顔が赤くなっていると思う。
私ばかり照れているのが悔しくなったから
ちょっとした反撃に出る。
『…寿三郎、くん』
呼んだものの恥ずかしくて顔が見れないでいると
あまりにも反応がない。
ちらりと彼を見ると、口を少し開けた状態で
顔を真っ赤にさせていた。
それからはお互い少しだけギクシャクしたけど
無事に英語の勉強も終えた。
帰り際に
今度から、名前で呼びんせーねと言われたので
小さく名前を呟いたけど
慣れないせいか
名前を呼ぶ度に胸の鼓動が速くなった気がした。