きみはクラスメート(中編小説)
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大学3年生の夏。
私はドイツに来ていた。
修二は最初ニューヨークにいたのだけど
昨年から拠点をドイツに移して活動している。
どうやら、以前の大会で出会った選手と意気投合して
その人と同じチームで練習しているらしい。
修二とは、年に数回の頻度で会っている。
私の通う大学では、短期留学が盛んに行われているので
うまい具合に留学を利用して彼に会っていた。
なので今も絶賛留学中である。
英文科でもないのに、毎年留学していることを
友人たちは不思議に思っていたけれど
まさか彼氏が海外にいるとは思ってはいないようだった。
もちろん、ちゃんと勉強もしているから
修二のためだけに来ているわけではないのだけれど。
「あらま、えらい別嬪さんがおるなあと思うたら」
いつもの調子の良い声が響く。
振り向くと、そこには少し髪の伸びた修二がいた。
『相変わらず、元気そうね』
「……玲は会うたびに変わってくなあ」
『変わってないけど?』
まあええから、と
にっこり笑うだけ笑ってはぐらかされたのが引っかかるけど
とにかく会いたくてたまらなかったから
今は何を言われたとしても嬉しいと思ってしまう。
国際電話はけっこうお金が掛かってしまうので
通信アプリでやり取りしたり、写真を送ったり
たまには手紙を書いたりもしていたけど
やっぱり、会いたくて、触れたくなって
寂しくなっていたから。
「今回も2週間くらいおるん?」
『うん。普通に学校行くから会えるのは夕方とかになるけど』
「さよか〜。あー、俺もまた一緒に授業とか受けたいわぁ。
あ、せや。こっちおる間同じチームの奴ら紹介するな。
ビスっちって言うんやけど
そいつの彼女ちゃんも一緒に飯でも行こか☆…って
何で笑ってるん?」
『ふふっ…よく喋るなあって思って。
修二、寂しかった?』
修二は、きょとんとしたあと
口元を押さえて少しだけ顔を赤くさせた。
「そら寂しかったに決まってるやん。
「玲は平気やったん?」
素直な言葉に頬が緩む。
『平気じゃないよ…寂しかったし会いたかった』
「まだしばらく寂しい思いさせてまうけど
もうちょいお互いがんばろな。
卒業したら、嫌って思うほど一緒におるから」
『帰ってくるの?』
「ちゃうちゃう。玲そのうちこっち来るやろ?
何回も留学して準備はできとるんやし」
『えっ!?なんで私が移住することになってるのよっ』
「え~?
哲学学べて、留学できて
語学力身に付けられる大学選んだんとちゃうん?
俺とこっちで暮らすために☆」
密かに企んでいた私のもくろみがバレていた。
修二の言う通り、哲学科で専門的に学ぶためだけではなく
いつか、彼について行っても恥じないように
せめて英語だけでもきちんと話せるようになりたかった。
だから、両方叶えられる大学を選んだのだった。
『バレてたのね・・・』
「勘違いやなくてよかったわあ。
思い違いで、これ渡すなんて恥ずかしすぎるで」
『え・・・?』
そう言って渡されたのは小さな箱。
開けて欲しいと催促されたので開けてみると
中には透明感のある水色の宝石が入っていた。
『綺麗・・・』
「アクアマリン。
俺の好きな色でもあって、玲の好きな色でもあるし
この石、幸せな結婚の象徴らしいで。
指輪はまだ早いから、予約っちゅーことで。
受け取ってもらえるやろか?」
『受け取るに決まってる…うん、うん…!
ありがとう…。どうしよう、嬉しい…!』
「ホンマは渡すタイミング伺ってたんやけど
会うたびに綺麗になってもうてて
今渡さなって、ちょっと焦ってもうたわ」
会うたびに変わってくって
そういう意味だったのかと今わかった。
よく見れば、修二の指は小さく震えていて
飄々としているように見えて緊張していたのが伺える。
大好き。本当に心から愛しい。
修二の胸に飛び込んだら
確かめるかのように、強く、強く、抱きしめられた。
ーこの先も、ずっとあなたの傍に。
(この石使こて婚約指輪作ろな☆)
(婚約指輪に?)
(趣味やなかった?)
(ううん。好きだよ。
でも婚約指輪ってあんまり付けることないっていうから…)
(なになに?ずっと付けられる結婚指輪のほうがええって?)
(うん。こんなに嬉しいんだもの。
この日のこと大事にしたいからずっと付けたいな)
(ホンマたまに急に素直になんねんから…)