きみはクラスメート(中編小説)
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『ふわ〜。いいお湯……』
広々とした大浴場を独り占めしながら
盛大な独り言を呟く。
3日間のお手伝いはあっという間に過ぎて
明日のお昼には私はここを去る。
女子が物珍しいのか
種ヶ島の彼女だからなのか
中学生の子達も話しかけてくれたし
高校生達もほぼ同い年ということもあり
けっこう気さくに話せるようになった。
種ヶ島の提案を聞いたとき
どうなることかと思ったけど
色んな人と話すことは純粋に楽しかったし
色んなことが勉強になった。
人と接することを
ゲームの攻略感覚で楽しんでいた頃の私は
なんて失礼で、情けなくて、弱くて
小さな人間だったのだろうと自嘲する。
きっと、人と深く関わることが怖かったのだ。
私を変えてくれた種ヶ島に
私は何かしてあげられているのだろうか。
『気持ちよかった〜』
入口で背伸びをしていたら
後ろからカッカッカッ、と笑い声がする。
「随分と盛大な独り言だったな」
『あ、越前…さん?』
年齢のよくわからないこの彼は
なんとあのリョマ吉くんのお兄さんで
彼とだけは、なぜかこの期間で話したことはなかった。
「リョーガでいいぜ。
ここの風呂、上は男湯と繋がってるからな。
独り言は控えたがいいぜ……って
明日にはもういねぇんだっけ?」
『え、最悪……。いままでけっこう言ってたわ…』
思い返せば鼻歌とか歌ってた気がする。
うわ、恥ずかしい。
「それにしても、あんたよくこんなとこに来たな」
リョーガくんの言い方に嫌味はなく
ストレートで、サッパリとした話し方が好ましい。
どことなく、飄々としたところが
種ヶ島に似ている気がして勝手に親近感を覚えた。
『まぁ、種ヶ島の姿を近くで見られるってこともあるけど
色んな経験が出来るし
テニスの世界に魅入られたのは確かだから』
「そういうことじゃねえよ」
『ん?』
「こーんな男だらけのところに来るなんざ
危機感ねぇなあって」
リョーガくんとの距離が縮まる。
顔はリョマ吉くんに似ているのに
彼にはない色気というか、大人な男性
という雰囲気に当てられそうになる。
「無防備にも程があるぜ。
ここには野郎しかいねぇんだからな」
腰に手を当てられて一気に距離が増す。
しまった。親近感を抱いている場合ではない。
危機感を抱くべきだった。
とにかく離れようとしても私の力は非力で
彼の鍛えられた身体はびくともしない。
選手の身体を傷つけずどうやって振りほどこうか。
「逃げねぇのか?」
『怪我させずに逃げる方法を考えてた』
そう告げると一瞬驚いたようにリョーガくんは固まり
そして私と彼の間に、見慣れた褐色の腕が伸びてきた。
「いくら玲がえぇ女やからって
人の彼女に手ぇ出したらアカンやろ〜」
『種ヶ島…』
種ヶ島は私達を引き離すと
リョーガくんから隠すかのように
私を自分の後ろに追いやった。
広い背中から
守られているという感じが伝わってくる。
「本当に良い女だな」
「せやろ〜。でもな、俺の大事な彼女やねん。
…からかったり、触ったりせんといてや」
「もうしねぇよ。あんたは敵に回したくねぇからな」
リョーガくんは後ろ手に手をヒラヒラとさせて
去って行った。
彼の姿を見送ったあと
私は無言の種ヶ島に手を引かれて
種ヶ島の部屋に連れて来られた。
これは、もしかするとちょっと、不機嫌なのかもしれない。
私の勘はちゃんと当たっていたようで
部屋に着くとすぐに強めに抱きしめられた。
『あ、あの…種ヶ島。お、大曲くん戻って来るんじゃ…』
「えぇから」
『えぇっと、この状況見たら困っちゃうよ…』
「触られたんは、ここ?」
リョーガくんに触れられていた腰辺りを
つぅっと、ひと撫でされる。
『そ、だけど…少し触れられただけでそんな…』
「他には?」
『触られてないっ』
そう答えても種ヶ島は離してくれなくて
抱き締めながら、私の身体を大きな手が這う。
じっとりと、纏わりつくような手つきに身体が反応して
次第に力が抜けてしまう。
『怒ってる、の?』
「んー。まぁ、少しな」
『私のせい?』
「ちゃうちゃう」
そう言うと種ヶ島は手を止めて私の肩に顔を埋めた。
「極力一人にさせへんようにしてたのに
風呂上がりに一人にさせて
よりにもよってあのリョーガに絡まれて
守れてへんなあって、自分に腹立ってん」
『守ってくれたじゃん』
「触られてしもてるやん」
『今消毒してくれたでしょ?』
「したけどしたりひんわぁ」
ヤキモチというものを、この男も妬くのかと思うと
ものすごく嬉しい。
人気者で、女子からモテる種ヶ島に
嫉妬しているのは私だけだと思っていたから。
そういえば、“よりによってあのリョーガ”と言っていたけど
私がリョーガくんと話したことがなかったのは
種ヶ島がそれとなく話さないように
誘導していたのかもしれない。
そう思うと、策士だけど少し子供っぽくて
可愛いとも思った。
そのまま抱き締められた状態でいたら
大曲くんが部屋に戻ってきて
盛大なタメ息と「勘弁しろし」の一言を
浴びせられたのだった。
広々とした大浴場を独り占めしながら
盛大な独り言を呟く。
3日間のお手伝いはあっという間に過ぎて
明日のお昼には私はここを去る。
女子が物珍しいのか
種ヶ島の彼女だからなのか
中学生の子達も話しかけてくれたし
高校生達もほぼ同い年ということもあり
けっこう気さくに話せるようになった。
種ヶ島の提案を聞いたとき
どうなることかと思ったけど
色んな人と話すことは純粋に楽しかったし
色んなことが勉強になった。
人と接することを
ゲームの攻略感覚で楽しんでいた頃の私は
なんて失礼で、情けなくて、弱くて
小さな人間だったのだろうと自嘲する。
きっと、人と深く関わることが怖かったのだ。
私を変えてくれた種ヶ島に
私は何かしてあげられているのだろうか。
『気持ちよかった〜』
入口で背伸びをしていたら
後ろからカッカッカッ、と笑い声がする。
「随分と盛大な独り言だったな」
『あ、越前…さん?』
年齢のよくわからないこの彼は
なんとあのリョマ吉くんのお兄さんで
彼とだけは、なぜかこの期間で話したことはなかった。
「リョーガでいいぜ。
ここの風呂、上は男湯と繋がってるからな。
独り言は控えたがいいぜ……って
明日にはもういねぇんだっけ?」
『え、最悪……。いままでけっこう言ってたわ…』
思い返せば鼻歌とか歌ってた気がする。
うわ、恥ずかしい。
「それにしても、あんたよくこんなとこに来たな」
リョーガくんの言い方に嫌味はなく
ストレートで、サッパリとした話し方が好ましい。
どことなく、飄々としたところが
種ヶ島に似ている気がして勝手に親近感を覚えた。
『まぁ、種ヶ島の姿を近くで見られるってこともあるけど
色んな経験が出来るし
テニスの世界に魅入られたのは確かだから』
「そういうことじゃねえよ」
『ん?』
「こーんな男だらけのところに来るなんざ
危機感ねぇなあって」
リョーガくんとの距離が縮まる。
顔はリョマ吉くんに似ているのに
彼にはない色気というか、大人な男性
という雰囲気に当てられそうになる。
「無防備にも程があるぜ。
ここには野郎しかいねぇんだからな」
腰に手を当てられて一気に距離が増す。
しまった。親近感を抱いている場合ではない。
危機感を抱くべきだった。
とにかく離れようとしても私の力は非力で
彼の鍛えられた身体はびくともしない。
選手の身体を傷つけずどうやって振りほどこうか。
「逃げねぇのか?」
『怪我させずに逃げる方法を考えてた』
そう告げると一瞬驚いたようにリョーガくんは固まり
そして私と彼の間に、見慣れた褐色の腕が伸びてきた。
「いくら玲がえぇ女やからって
人の彼女に手ぇ出したらアカンやろ〜」
『種ヶ島…』
種ヶ島は私達を引き離すと
リョーガくんから隠すかのように
私を自分の後ろに追いやった。
広い背中から
守られているという感じが伝わってくる。
「本当に良い女だな」
「せやろ〜。でもな、俺の大事な彼女やねん。
…からかったり、触ったりせんといてや」
「もうしねぇよ。あんたは敵に回したくねぇからな」
リョーガくんは後ろ手に手をヒラヒラとさせて
去って行った。
彼の姿を見送ったあと
私は無言の種ヶ島に手を引かれて
種ヶ島の部屋に連れて来られた。
これは、もしかするとちょっと、不機嫌なのかもしれない。
私の勘はちゃんと当たっていたようで
部屋に着くとすぐに強めに抱きしめられた。
『あ、あの…種ヶ島。お、大曲くん戻って来るんじゃ…』
「えぇから」
『えぇっと、この状況見たら困っちゃうよ…』
「触られたんは、ここ?」
リョーガくんに触れられていた腰辺りを
つぅっと、ひと撫でされる。
『そ、だけど…少し触れられただけでそんな…』
「他には?」
『触られてないっ』
そう答えても種ヶ島は離してくれなくて
抱き締めながら、私の身体を大きな手が這う。
じっとりと、纏わりつくような手つきに身体が反応して
次第に力が抜けてしまう。
『怒ってる、の?』
「んー。まぁ、少しな」
『私のせい?』
「ちゃうちゃう」
そう言うと種ヶ島は手を止めて私の肩に顔を埋めた。
「極力一人にさせへんようにしてたのに
風呂上がりに一人にさせて
よりにもよってあのリョーガに絡まれて
守れてへんなあって、自分に腹立ってん」
『守ってくれたじゃん』
「触られてしもてるやん」
『今消毒してくれたでしょ?』
「したけどしたりひんわぁ」
ヤキモチというものを、この男も妬くのかと思うと
ものすごく嬉しい。
人気者で、女子からモテる種ヶ島に
嫉妬しているのは私だけだと思っていたから。
そういえば、“よりによってあのリョーガ”と言っていたけど
私がリョーガくんと話したことがなかったのは
種ヶ島がそれとなく話さないように
誘導していたのかもしれない。
そう思うと、策士だけど少し子供っぽくて
可愛いとも思った。
そのまま抱き締められた状態でいたら
大曲くんが部屋に戻ってきて
盛大なタメ息と「勘弁しろし」の一言を
浴びせられたのだった。