『デジャヴ……』





この感覚、本当にデジャヴ。
種ヶ島に男子テニス部の練習試合を頼まれたのと
同じ状況下にいる。
いや、あの時と比べ物にならないほどの
規模の大きさ……というか
お遊びですまされない場所にいるのだけども。
整備されたテニスコートも
見たことがないほど充実したトレーニングルームも
レストラン、カフェ、図書室、モニタールーム。
施設が、すごすぎる。

2mを越えているであろう背の高いコーチの人に
一通り案内されたあと
仕事内容の説明を受けた。
場違いさを感じていたのだけど
やることは主に掃除洗濯などの雑用や
ドリンクを作ったり
まあなんとか出来そうなことではあった。




だけどまあ、懸念していることもある。
そしてその懸念要因は
高校生メンバーに挨拶している時に起きた。




「男のために来る馬鹿がいるとはな。
種ヶ島、どういうつもりだ。遊びじゃねぇんだぞ」




凄みのある、お頭と呼ばれるその人に
盛大に睨まれる。
そりゃそうだ。
いくら人手不足とは言っても
自分の彼女を連れてくるなんて
きっと指揮が下がるし、種ヶ島の体裁も悪い。




「羨ましいん？」

「種ヶ島…いいいい加減に」

『遊びで引き受けたわけではありません。
邪魔はしませんし、それなりの責務は全うします。
皆さんの試合を見て、間近で力になりたいと
思ったのは事実ですから』





確かに、一緒に過ごす時間を作りたいという
やましい気持ちはあるけれど
あのオーストラリアでの試合を見て
感銘を受けたのは確かだ。
私がここで弱気に見られたら
きっと種ヶ島の立場も、私の立場も悪くなる。
そう思って凄みのある顔に歯向かうように視線を向けた。

　


「……フンッ」




何かまた言われるかと思って身構えいたけど
私を鼻で笑ったあと去って行った。





『……何あの態度、ちょっとムカつくわね』




小声でポソっと呟くと
予想以上に声が大きかったのか
近くにいた毛利くんと名乗った長身の男の子と
綺麗な長髪の遠野くんが笑いだした。
種ヶ島が皆に
えぇ女やろ〜と自慢しているのは恥ずかしかったけど
なんとなく、皆と馴染めたような気がして嬉しかった。