きみはクラスメート(中編小説)
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試合会場の裏に木々に覆われた森、というか
公園があって、私達は人気の少ない場所まで歩いた。
公園らしいが、日本の公園とは印象の異なる
遊具も何もない木々が綺麗に整理された場所だ。
「さて、と。にしても、ホンマに驚いたわ」
きっと私がオーストラリアに来たとこを指しているのか
種ヶ島は困ったように笑っている。
『…姉が、こっちで留学してるの。
今は姉のところに泊まってて、明日には帰るから』
「なら、ホンマに応援するためだけに来てくれたんやな。
感激やわ〜」
『そうよ』
真っ直ぐに種ヶ島を見据えて答えると
彼は少し驚いたような表情をした。
普段だったら
”何都合の良いように言ってるの“と答えを濁すけど
今日はもう、そんなことはしない。
私の様子がいつもと違うことに
流石の種ヶ島は気づいているようで
それ以上、茶化すようなことは言わなかった。
『あのね、どうしても種ヶ島と
話がしたくてここまで来た』
「……」
言いたいこと、伝えたいことは、たくさんある。
不安なことも、不満なことも、たくさんある。
でも今はとにかく私の想いを伝えたい。
『…種ヶ島のことが、好きです』
種ヶ島は目を見開いて
ひゅっ、と小さく息を吸い込んだ。
私は不安と恐怖で下を向きそうになるのをぐっと堪えて
種ヶ島をただ見つめる。
こういう時、恥じらいつつ言うのが
可愛いのかもしれないけど
視線なんて反らしてやるものか。
素顔を隠して、猫かぶって
正面から人とぶつかったことのなかった私が
ここまで変わった姿を見てほしい。
あなたのおかげで変われたのだと見てほしい。
そんな想いをぶつける。
「…触れても、えぇ?」
『え、あ、うん』
すっと伸びた褐色の手に、私の手は包まれる。
さっきまでラケットを握っていた手だと思うと
私のほうが握ってあげたい気持ちになるのに。
「…転校して来た日、廊下ですれ違ってん。
転校生とは思えへんほど堂々としてて
凛としてて…どないな子か気になってた。
同じクラスになって、からかったろ
くらいにしか思うてへんかったんやけど」
私の手を見つめていた種ヶ島の視線が
私へと向けられる。
「話せば話すほど、惹かれていった」
ドクン、と胸が高鳴った。
『…前も話したけど、私いつも転校してて
友達もその場限りの友達ばかり。
ここに来てもすぐいなくなるかもしれないし
何するにも深入りしないように
自分が傷つかないように予防線張ってた。
でも、種ヶ島と話していくうちに
どんどん私、色んなことに欲張りになってて…
話すたび、種ヶ島を知るたびに、好きになった』
正直なところ、付き合うとかそういうのは
深く考えていなくて
とにかく好きだと、伝えたかった。
だからこの先どうまとめて良いか悩んでいたら
種ヶ島が片手を挙げて、待った、という
ジェスチャーをする。
「俺としたことが先越されてもうたから
ここからは俺に話させてな。
まず、いくつか聞きたいんやけど…
奏多とは、何もないん?」
『へ?何もって…?
種ヶ島のこと相談したりはしてたけど』
「ほんなら、いきなり帰ったときあったやん?
あれから避けられてるて感じてたんやけど」
『それは…中庭で、種ヶ島が…』
「あー…見られてもうてたか」
忘れたくても忘れられないあの光景を思い出して
私はぐっと唇を噛み締める。
もしあの子と付き合っているなら
私の手を握るなんて思わせぶりなことは
辞めてほしいのに。
『……彼女いるのに
期待させるような行動はしないでよ』
「タンマ!わかった!俺らホンマにすれ違ってる!」
『へ?』
「…俺は玲ちゃんが
奏多のこと好きなんかと思いはじめてた。
ほんで、玲ちゃんは俺が告白されたの見て
彼女ができたと勘違いした、と」
『え?入江くんのこと好きじゃないよ。
それに、あれ…でも抱き合ってて…』
「断ったんたやけどな、いきなり抱きつかれて。
気持ちはありがたかったからお礼は言うたけど
そのあとすぐ引き離したで」
勘違いであったことが
嬉しいけれど早とちりしてしまって恥ずかしい。
「せやから彼女はおれへんよ。今からできるけどな」
どういう意味か訪ねようとしたら
ぐいっとそのまま手を引かれて
私は種ヶ島の身体にすっぽりと包まれた。
「好きや。まっすぐな姿勢も、凛としたとこも
意外と照れ屋で不器用なとこも全部。
玲ちゃんよりも先に、俺のほうが好きやったんやで。
俺と、付き合うてほしい」
聞き間違いかと思ったけど
種ヶ島の抱き締める体温と腕の力が
間違いではないことを物語らせる。
『ほんと、に?』
「嘘やあらへん。
ホンマは試合全部勝ってから言おうと思うてたんやけど
先越されてしもたなあ」
『私のこと、好きなの…?』
「信じられへんのやったら、なんべんでも言うたるよ。
好き。ホンマに好きや。
ずっと俺のそばにおってほしい」
何度も頷きながら
私は種ヶ島の胸に顔を押し付けて
年甲斐もなく涙を流した。
種ヶ島は私が泣き止むまで
ずっと優しく抱き締めてくれていたのだった。
『ごめん…涙とか、鼻水とか付いちゃったかも』
なんとか落ち着いた私は種ヶ島を離れると
彼の胸元を見る。
あぁ、赤いユニフォームに点々と染みができている。
恥ずかしい。
「好きな子の涙も鼻水も大歓迎やで☆」
『もう…』
「俺も試合後やったから汗の臭いしたやろ 。
堪忍な。つい抱き締めてしもて」
『そんなことないよ。それに種ヶ島の匂い、好きだから』
「…そっちもやるやないか」
種ヶ島が照れたポイントが少しわからなかったけど
手で口許を隠す仕草が可愛らしい。
「あ、もういっこ、聞きたいことあったんや」
『なに?』
「俺、海外行くって言うたやん。そのとき…」
『それ!違うの!』
思わず大きな声が出て、種ヶ島も驚いているようだった。
本当は先にこの誤解を伝えたかったのに
好きな気持ちが高まってしまって
順番が逆になってしまっていた。
『私“そんなこと”って言ったけど違うの。
種ヶ島からあの時
“彼女ができた”って言われると思ってた。
だから海外に行くって言われたときホッとして…
テニス、頑張るんだなって。
まだ好きでいても良いんだなって思ってつい…』
それを聞くと種ヶ島はしゃがみこんでしまった。
「あぁ~。そーゆーこと。
もう俺らホンマに勘違いしまくってるやん。
俺もな、悪いんよな。
告白する前に試すようなこと言うて
ずるいことしたなって思うねんけど」
『試すって?』
「俺、すこーしは脈アリやと思うててん。
せやけど高校卒業したら海外行くって
遠距離なるってことやん?
玲ちゃんがどないな反応するか
先に見ときたくなって聞いたんや」
種ヶ島はしゃがんだまま
手を合わせてごめんのポーズ。
なにがごめん、なのだろう。
『種ヶ島が言いたいことがイマイチ掴めてないんだけど…
遠距離になるのは仕方ないし
そこまで問題ないというか。
好きなことは変わりないし
これからも気持ちは変わらない。
会えなくはなるけど、それでも、好きだよ』
「…敵わんなぁ。ホンマに。
この先もう玲ちゃんほど
ええ人に出逢うことないし
もうこの薬指、予約しとこかな」
種ヶ島はしゃがみこんだ姿勢を崩して片膝を着き
私の左手薬指にキスをした。
『な!?なにキザったらしいことしてるのよっ!?』
「キザったらしいって~。気持ちはホンマやのに」
『い、いいからもう、立って!』
彼を引っ張って立たせると
種ヶ島は満面の笑みを見せてくれた。
「言うたやろ?俺とは一生の付き合いしよか、て」
それはあの日、放課後の教室でぼんやりとしていたとき
種ヶ島に言われた言葉。
あの時、まさかこうなるなんて思いもしなかったけど
種ヶ島は全て、見透かして予想していたのかもしれない。
そう思うと悔しい気持ちもあるけれど
今は、幸せな気持ちでいっぱいだから
とりあえず、思い切り種ヶ島に抱きついたのだった。
公園があって、私達は人気の少ない場所まで歩いた。
公園らしいが、日本の公園とは印象の異なる
遊具も何もない木々が綺麗に整理された場所だ。
「さて、と。にしても、ホンマに驚いたわ」
きっと私がオーストラリアに来たとこを指しているのか
種ヶ島は困ったように笑っている。
『…姉が、こっちで留学してるの。
今は姉のところに泊まってて、明日には帰るから』
「なら、ホンマに応援するためだけに来てくれたんやな。
感激やわ〜」
『そうよ』
真っ直ぐに種ヶ島を見据えて答えると
彼は少し驚いたような表情をした。
普段だったら
”何都合の良いように言ってるの“と答えを濁すけど
今日はもう、そんなことはしない。
私の様子がいつもと違うことに
流石の種ヶ島は気づいているようで
それ以上、茶化すようなことは言わなかった。
『あのね、どうしても種ヶ島と
話がしたくてここまで来た』
「……」
言いたいこと、伝えたいことは、たくさんある。
不安なことも、不満なことも、たくさんある。
でも今はとにかく私の想いを伝えたい。
『…種ヶ島のことが、好きです』
種ヶ島は目を見開いて
ひゅっ、と小さく息を吸い込んだ。
私は不安と恐怖で下を向きそうになるのをぐっと堪えて
種ヶ島をただ見つめる。
こういう時、恥じらいつつ言うのが
可愛いのかもしれないけど
視線なんて反らしてやるものか。
素顔を隠して、猫かぶって
正面から人とぶつかったことのなかった私が
ここまで変わった姿を見てほしい。
あなたのおかげで変われたのだと見てほしい。
そんな想いをぶつける。
「…触れても、えぇ?」
『え、あ、うん』
すっと伸びた褐色の手に、私の手は包まれる。
さっきまでラケットを握っていた手だと思うと
私のほうが握ってあげたい気持ちになるのに。
「…転校して来た日、廊下ですれ違ってん。
転校生とは思えへんほど堂々としてて
凛としてて…どないな子か気になってた。
同じクラスになって、からかったろ
くらいにしか思うてへんかったんやけど」
私の手を見つめていた種ヶ島の視線が
私へと向けられる。
「話せば話すほど、惹かれていった」
ドクン、と胸が高鳴った。
『…前も話したけど、私いつも転校してて
友達もその場限りの友達ばかり。
ここに来てもすぐいなくなるかもしれないし
何するにも深入りしないように
自分が傷つかないように予防線張ってた。
でも、種ヶ島と話していくうちに
どんどん私、色んなことに欲張りになってて…
話すたび、種ヶ島を知るたびに、好きになった』
正直なところ、付き合うとかそういうのは
深く考えていなくて
とにかく好きだと、伝えたかった。
だからこの先どうまとめて良いか悩んでいたら
種ヶ島が片手を挙げて、待った、という
ジェスチャーをする。
「俺としたことが先越されてもうたから
ここからは俺に話させてな。
まず、いくつか聞きたいんやけど…
奏多とは、何もないん?」
『へ?何もって…?
種ヶ島のこと相談したりはしてたけど』
「ほんなら、いきなり帰ったときあったやん?
あれから避けられてるて感じてたんやけど」
『それは…中庭で、種ヶ島が…』
「あー…見られてもうてたか」
忘れたくても忘れられないあの光景を思い出して
私はぐっと唇を噛み締める。
もしあの子と付き合っているなら
私の手を握るなんて思わせぶりなことは
辞めてほしいのに。
『……彼女いるのに
期待させるような行動はしないでよ』
「タンマ!わかった!俺らホンマにすれ違ってる!」
『へ?』
「…俺は玲ちゃんが
奏多のこと好きなんかと思いはじめてた。
ほんで、玲ちゃんは俺が告白されたの見て
彼女ができたと勘違いした、と」
『え?入江くんのこと好きじゃないよ。
それに、あれ…でも抱き合ってて…』
「断ったんたやけどな、いきなり抱きつかれて。
気持ちはありがたかったからお礼は言うたけど
そのあとすぐ引き離したで」
勘違いであったことが
嬉しいけれど早とちりしてしまって恥ずかしい。
「せやから彼女はおれへんよ。今からできるけどな」
どういう意味か訪ねようとしたら
ぐいっとそのまま手を引かれて
私は種ヶ島の身体にすっぽりと包まれた。
「好きや。まっすぐな姿勢も、凛としたとこも
意外と照れ屋で不器用なとこも全部。
玲ちゃんよりも先に、俺のほうが好きやったんやで。
俺と、付き合うてほしい」
聞き間違いかと思ったけど
種ヶ島の抱き締める体温と腕の力が
間違いではないことを物語らせる。
『ほんと、に?』
「嘘やあらへん。
ホンマは試合全部勝ってから言おうと思うてたんやけど
先越されてしもたなあ」
『私のこと、好きなの…?』
「信じられへんのやったら、なんべんでも言うたるよ。
好き。ホンマに好きや。
ずっと俺のそばにおってほしい」
何度も頷きながら
私は種ヶ島の胸に顔を押し付けて
年甲斐もなく涙を流した。
種ヶ島は私が泣き止むまで
ずっと優しく抱き締めてくれていたのだった。
『ごめん…涙とか、鼻水とか付いちゃったかも』
なんとか落ち着いた私は種ヶ島を離れると
彼の胸元を見る。
あぁ、赤いユニフォームに点々と染みができている。
恥ずかしい。
「好きな子の涙も鼻水も大歓迎やで☆」
『もう…』
「俺も試合後やったから汗の臭いしたやろ 。
堪忍な。つい抱き締めてしもて」
『そんなことないよ。それに種ヶ島の匂い、好きだから』
「…そっちもやるやないか」
種ヶ島が照れたポイントが少しわからなかったけど
手で口許を隠す仕草が可愛らしい。
「あ、もういっこ、聞きたいことあったんや」
『なに?』
「俺、海外行くって言うたやん。そのとき…」
『それ!違うの!』
思わず大きな声が出て、種ヶ島も驚いているようだった。
本当は先にこの誤解を伝えたかったのに
好きな気持ちが高まってしまって
順番が逆になってしまっていた。
『私“そんなこと”って言ったけど違うの。
種ヶ島からあの時
“彼女ができた”って言われると思ってた。
だから海外に行くって言われたときホッとして…
テニス、頑張るんだなって。
まだ好きでいても良いんだなって思ってつい…』
それを聞くと種ヶ島はしゃがみこんでしまった。
「あぁ~。そーゆーこと。
もう俺らホンマに勘違いしまくってるやん。
俺もな、悪いんよな。
告白する前に試すようなこと言うて
ずるいことしたなって思うねんけど」
『試すって?』
「俺、すこーしは脈アリやと思うててん。
せやけど高校卒業したら海外行くって
遠距離なるってことやん?
玲ちゃんがどないな反応するか
先に見ときたくなって聞いたんや」
種ヶ島はしゃがんだまま
手を合わせてごめんのポーズ。
なにがごめん、なのだろう。
『種ヶ島が言いたいことがイマイチ掴めてないんだけど…
遠距離になるのは仕方ないし
そこまで問題ないというか。
好きなことは変わりないし
これからも気持ちは変わらない。
会えなくはなるけど、それでも、好きだよ』
「…敵わんなぁ。ホンマに。
この先もう玲ちゃんほど
ええ人に出逢うことないし
もうこの薬指、予約しとこかな」
種ヶ島はしゃがみこんだ姿勢を崩して片膝を着き
私の左手薬指にキスをした。
『な!?なにキザったらしいことしてるのよっ!?』
「キザったらしいって~。気持ちはホンマやのに」
『い、いいからもう、立って!』
彼を引っ張って立たせると
種ヶ島は満面の笑みを見せてくれた。
「言うたやろ?俺とは一生の付き合いしよか、て」
それはあの日、放課後の教室でぼんやりとしていたとき
種ヶ島に言われた言葉。
あの時、まさかこうなるなんて思いもしなかったけど
種ヶ島は全て、見透かして予想していたのかもしれない。
そう思うと悔しい気持ちもあるけれど
今は、幸せな気持ちでいっぱいだから
とりあえず、思い切り種ヶ島に抱きついたのだった。