きみはクラスメート(中編小説)
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『なにこの試合……』
思わず口にしてしまうほど
常軌を逸した試合の展開に頭がついていかない。
最初のシングルスの試合から
常識を逸脱しているとは思っていたけれども
種ヶ島が戦っている場が
こんなにも凄まじい場所だとは思ってもみなかった。
試合は一見有利に思えたけれど
取って、取られて
攻めて、攻められての繰り返し。
ダブルスなのにいつの間にか
切原くんという中学生の子と相手選手が
シングルスをしていたり
そうこうしていたらタイブレークになり
今度は種ヶ島と相手のビスマルク選手の
一騎打ちになったり
本当に、これはテニスなのかと疑いたくなる試合。
順調に点数を重ねていたのだけど
一球一球が重要だというこのタイブレークで
種ヶ島がはじめてミスをした。
彼の肩には、日本の勝利と
動けなくなった後輩から託された想いと
すべての想いが今のしかかっている。
きっと、とてつもないプレッシャー。
種ヶ島は、いつも笑っていたのに
なんて世界にいるんだろう。
私なんか踏み込めないような世界の中で
なんて輝いて見えるんだろう。
私と種ヶ島の間に、大きな壁のようなものを感じる。
今までの私なら、雰囲気を読んで
一線引いてどこか他人事のように振る舞っていたけど
今は、違う。
あなたの傍にいってみたい。
あなたの傍にいたい。
同じものを見てみたい。
……自分の気持ちを、大事にしたい。
お願い、勝って。
見つめた先に、種ヶ島の瞳があった。
会場が静まり返ったのかと錯覚するほど
周囲の喧騒がなにも聞こえなくなる。
私と、種ヶ島のふたりの間が
糸か何かで繋がったような、そんな感覚がした。
”見とき“
あの練習試合のときのように
口パクで伝えられた言葉に息を呑む。
ミスは相手を欺くためだったようで
ここから、本当のダブルスが始まった。
最後の最後まで目が離せなかったこの試合は
ギリギリのところで日本が勝利を収めた。
種ヶ島が、勝ったのだ。
しばらく放心状態で、ただコートを見つめていたら
いつの間にか次の試合まで終わっていて
日本は、ドイツに勝った。
コートでは選手同士挨拶をしていて
清々しい種ヶ島の姿を見て、私は我に返る。
やばい。
このあとどうしよう。
普通に考えて、試合終わったら
チームの皆とホテルに帰るよね?
ホテルに押しかける?
というか、私が来ていることバレてるなら
今話に行くべき?
でも疲れてるだろうし仲間たちと
勝利の余韻に「まーた余計なこと考えてんとちゃう?」
顔をあげると、そこには種ヶ島がいた。
正面に立ち、私の座る応援席の背もたれに両の手を着く。
『えっ!?い、いつの間に……って、近いっ…!』
「こうでもせんと、また逃げられてまうかなって」
種ヶ島は笑ってはいるけど
その笑みにいつもの余裕はない。
『……逃げない。逃げたくないから、ここまで来た』
「さよか。……よし、場所変えよか」
そう言われて、桜乃ちゃんたち中学生組から
注目を浴びていることに気づき
私は慌てて種ヶ島を押しのけた。
そしてそのまま、種ヶ島に手を引かれて
会場を後にしたのだった。
思わず口にしてしまうほど
常軌を逸した試合の展開に頭がついていかない。
最初のシングルスの試合から
常識を逸脱しているとは思っていたけれども
種ヶ島が戦っている場が
こんなにも凄まじい場所だとは思ってもみなかった。
試合は一見有利に思えたけれど
取って、取られて
攻めて、攻められての繰り返し。
ダブルスなのにいつの間にか
切原くんという中学生の子と相手選手が
シングルスをしていたり
そうこうしていたらタイブレークになり
今度は種ヶ島と相手のビスマルク選手の
一騎打ちになったり
本当に、これはテニスなのかと疑いたくなる試合。
順調に点数を重ねていたのだけど
一球一球が重要だというこのタイブレークで
種ヶ島がはじめてミスをした。
彼の肩には、日本の勝利と
動けなくなった後輩から託された想いと
すべての想いが今のしかかっている。
きっと、とてつもないプレッシャー。
種ヶ島は、いつも笑っていたのに
なんて世界にいるんだろう。
私なんか踏み込めないような世界の中で
なんて輝いて見えるんだろう。
私と種ヶ島の間に、大きな壁のようなものを感じる。
今までの私なら、雰囲気を読んで
一線引いてどこか他人事のように振る舞っていたけど
今は、違う。
あなたの傍にいってみたい。
あなたの傍にいたい。
同じものを見てみたい。
……自分の気持ちを、大事にしたい。
お願い、勝って。
見つめた先に、種ヶ島の瞳があった。
会場が静まり返ったのかと錯覚するほど
周囲の喧騒がなにも聞こえなくなる。
私と、種ヶ島のふたりの間が
糸か何かで繋がったような、そんな感覚がした。
”見とき“
あの練習試合のときのように
口パクで伝えられた言葉に息を呑む。
ミスは相手を欺くためだったようで
ここから、本当のダブルスが始まった。
最後の最後まで目が離せなかったこの試合は
ギリギリのところで日本が勝利を収めた。
種ヶ島が、勝ったのだ。
しばらく放心状態で、ただコートを見つめていたら
いつの間にか次の試合まで終わっていて
日本は、ドイツに勝った。
コートでは選手同士挨拶をしていて
清々しい種ヶ島の姿を見て、私は我に返る。
やばい。
このあとどうしよう。
普通に考えて、試合終わったら
チームの皆とホテルに帰るよね?
ホテルに押しかける?
というか、私が来ていることバレてるなら
今話に行くべき?
でも疲れてるだろうし仲間たちと
勝利の余韻に「まーた余計なこと考えてんとちゃう?」
顔をあげると、そこには種ヶ島がいた。
正面に立ち、私の座る応援席の背もたれに両の手を着く。
『えっ!?い、いつの間に……って、近いっ…!』
「こうでもせんと、また逃げられてまうかなって」
種ヶ島は笑ってはいるけど
その笑みにいつもの余裕はない。
『……逃げない。逃げたくないから、ここまで来た』
「さよか。……よし、場所変えよか」
そう言われて、桜乃ちゃんたち中学生組から
注目を浴びていることに気づき
私は慌てて種ヶ島を押しのけた。
そしてそのまま、種ヶ島に手を引かれて
会場を後にしたのだった。