きみはクラスメート(中編小説)
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『けっこう暑いのね…』
「そりゃオーストラリアだからね」
初めて訪れるオーストラリアは
思っていた以上に暑くて
愚痴をこぼす私を見て、姉は笑った。
「にしても、あんたの行動力には驚かされるわ」
『…迷惑掛けてごめん』
「別に迷惑なんて誰も思っちゃないわよ。
ホストファミリーの皆なんて逆に喜んでるし」
高校生一人で海外に行くなんて
親も反対するだろうし、本来現実的ではない話だけど
大学生の姉がオーストラリアに短期間留学していたので
今回私の計画は、何の障害もなくうまくいった。
『お父さんなんて、良い経験だ!なんて
張り切っちゃって…ちょっと後ろめたい気持ちが…』
「別に動機なんてなんでも良いのよ。
日本では見られないこと
感じられないことがここにはたくさんある。
お父さんの言うように良い経験になるから楽しみな」
私は、姉のさっぱりしていて
真っ直ぐなところが、密かに憧れだったりする。
ありがとう、と小さく呟けば
頭をわしわしと乱暴に撫でられた。
妹としてはちょっとがさつなところは
直したほうが良いとは思うけど
3つ年上の姉の存在は
今の私にとって大きな支えになっていた。
ドイツと日本の試合は明日。
どこに泊まっているか等の情報は入江くんに聞いている。
ただ、問題はここから。
どのタイミングで種ヶ島に会いに行こうか。
試合の前夜である今日は邪魔だろうし
明日はもし負けてしまったら…
いや。あの男が負けるはずはない。
そう信じているけど万が一を考えると
私の行動はただの自己満足で、はた迷惑だ。
…どのタイミングでも、迷惑かもしれないけど。
ここに来て悩んでいても仕方がないので
とりあえず明日の試合会場の下見に行くことにした。
歩いている人達を見ると
ただ歩いているだけなのに日本人より
堂々としていて、楽しそうに見えるから不思議。
周りの目なんて、気にしていないような
楽しげな笑い声も聞こえてきて
こちらも勝手に元気を分けてもらえるような
そんな気がした。
『ここね…』
今は何も試合が行われていなかったので
勝手に入ることはできず
私は外からぼんやりと会場を眺めていた。
するとどこからか、帽子が飛んできて
手に取ると、少し離れたところから
日本人らしき男の子が走ってきた。
『これ、君の?』
「そっス……どうも」
『日本人?』
「そうだけど、アンタも?」
背丈は私よりも小さいし
きっと年下なのだろうけど
初対面でアンタ呼ばわりはなかなかなの強者だ。
『そう。…ねぇ、もしかして、明日テニスの試合出るの?』
ラケットバッグを持っていたので
もしかしたら、種ヶ島の知り合いかもしれない。
「俺は明日は出ないけど…
もしかして誰かの応援に来たの?」
『まあ、そんなところね』
「ふーん」
そう言えば
帽子がトレードマークの生意気な中学生がいるって
種ヶ島が言ってたっけ。
左利きだって話してたけど、帽子を受け取った時
この子左手で受け取っていた。
きっとこの子だ。確か変わったあだ名で…
『あ、思い出した。リョマ吉くん!』
「ちょっと、なんでアンタが知ってんの」
『あはは。やっぱり君がそうだったのね。
種ヶ島から話聞いててね…。強い中学生がいるって』
「種ヶ島さんの知り合いなんだ」
しまった。
種ヶ島に私が来ていることがバレてしまう。
まだどう話すか決めていなかったのに。
「じゃあ、映画好きで転校のスペシャリストで
種ヶ島さんのアドバイザーってアンタのこと?」
『ちょっと、なにそれ。多分私だろうけど…』
「アンタの話、よくしてるよ。
あの人のアドバイザーってすごいじゃん」
アドバイザーって
図書室の出来事を言っているのだろうか。
私の知らないところで
私の話をしていることが
嬉しいようで、恥ずかしい。
だけど、そのくらい
私という存在は、種ヶ島の中に少しは影響しているらしい。
それが知ることができてよかった。
『……あのさ、実はここに来てるの
まだ種ヶ島には言ってないのよね。
だから内緒にしといてくれる?』
「別に良いけど。
来たって言ったほうが喜ぶんじゃないの?」
『明日、勝ったら伝えたいことがあるのよ。
だからそれまでは……』
「安心しなよ。勝つからさ」
帽子を深く被って、リョマ吉くんは去って行った。
ここまで来て、私は入江くんを始めに
姉やリョマ吉くん
色んな人に背中を押されて来たことを実感する。
こういうの、いいな。
『あ、リョマ吉の名前聞きそびれちゃった』
「そりゃオーストラリアだからね」
初めて訪れるオーストラリアは
思っていた以上に暑くて
愚痴をこぼす私を見て、姉は笑った。
「にしても、あんたの行動力には驚かされるわ」
『…迷惑掛けてごめん』
「別に迷惑なんて誰も思っちゃないわよ。
ホストファミリーの皆なんて逆に喜んでるし」
高校生一人で海外に行くなんて
親も反対するだろうし、本来現実的ではない話だけど
大学生の姉がオーストラリアに短期間留学していたので
今回私の計画は、何の障害もなくうまくいった。
『お父さんなんて、良い経験だ!なんて
張り切っちゃって…ちょっと後ろめたい気持ちが…』
「別に動機なんてなんでも良いのよ。
日本では見られないこと
感じられないことがここにはたくさんある。
お父さんの言うように良い経験になるから楽しみな」
私は、姉のさっぱりしていて
真っ直ぐなところが、密かに憧れだったりする。
ありがとう、と小さく呟けば
頭をわしわしと乱暴に撫でられた。
妹としてはちょっとがさつなところは
直したほうが良いとは思うけど
3つ年上の姉の存在は
今の私にとって大きな支えになっていた。
ドイツと日本の試合は明日。
どこに泊まっているか等の情報は入江くんに聞いている。
ただ、問題はここから。
どのタイミングで種ヶ島に会いに行こうか。
試合の前夜である今日は邪魔だろうし
明日はもし負けてしまったら…
いや。あの男が負けるはずはない。
そう信じているけど万が一を考えると
私の行動はただの自己満足で、はた迷惑だ。
…どのタイミングでも、迷惑かもしれないけど。
ここに来て悩んでいても仕方がないので
とりあえず明日の試合会場の下見に行くことにした。
歩いている人達を見ると
ただ歩いているだけなのに日本人より
堂々としていて、楽しそうに見えるから不思議。
周りの目なんて、気にしていないような
楽しげな笑い声も聞こえてきて
こちらも勝手に元気を分けてもらえるような
そんな気がした。
『ここね…』
今は何も試合が行われていなかったので
勝手に入ることはできず
私は外からぼんやりと会場を眺めていた。
するとどこからか、帽子が飛んできて
手に取ると、少し離れたところから
日本人らしき男の子が走ってきた。
『これ、君の?』
「そっス……どうも」
『日本人?』
「そうだけど、アンタも?」
背丈は私よりも小さいし
きっと年下なのだろうけど
初対面でアンタ呼ばわりはなかなかなの強者だ。
『そう。…ねぇ、もしかして、明日テニスの試合出るの?』
ラケットバッグを持っていたので
もしかしたら、種ヶ島の知り合いかもしれない。
「俺は明日は出ないけど…
もしかして誰かの応援に来たの?」
『まあ、そんなところね』
「ふーん」
そう言えば
帽子がトレードマークの生意気な中学生がいるって
種ヶ島が言ってたっけ。
左利きだって話してたけど、帽子を受け取った時
この子左手で受け取っていた。
きっとこの子だ。確か変わったあだ名で…
『あ、思い出した。リョマ吉くん!』
「ちょっと、なんでアンタが知ってんの」
『あはは。やっぱり君がそうだったのね。
種ヶ島から話聞いててね…。強い中学生がいるって』
「種ヶ島さんの知り合いなんだ」
しまった。
種ヶ島に私が来ていることがバレてしまう。
まだどう話すか決めていなかったのに。
「じゃあ、映画好きで転校のスペシャリストで
種ヶ島さんのアドバイザーってアンタのこと?」
『ちょっと、なにそれ。多分私だろうけど…』
「アンタの話、よくしてるよ。
あの人のアドバイザーってすごいじゃん」
アドバイザーって
図書室の出来事を言っているのだろうか。
私の知らないところで
私の話をしていることが
嬉しいようで、恥ずかしい。
だけど、そのくらい
私という存在は、種ヶ島の中に少しは影響しているらしい。
それが知ることができてよかった。
『……あのさ、実はここに来てるの
まだ種ヶ島には言ってないのよね。
だから内緒にしといてくれる?』
「別に良いけど。
来たって言ったほうが喜ぶんじゃないの?」
『明日、勝ったら伝えたいことがあるのよ。
だからそれまでは……』
「安心しなよ。勝つからさ」
帽子を深く被って、リョマ吉くんは去って行った。
ここまで来て、私は入江くんを始めに
姉やリョマ吉くん
色んな人に背中を押されて来たことを実感する。
こういうの、いいな。
『あ、リョマ吉の名前聞きそびれちゃった』