きみはクラスメート(中編小説)
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どんよりとした気分で登校すると
朝イチで行われた席替えに面食らった。
席に着く前に渡されたくじ引きの箱から
取り出した番号は
無常にも種ヶ島と離れた番号だった。
確かに今隣は気まずいけれど
昨日の誤解を解くには隣の席のままのほうが
話しやすかったのに。
何もこんなタイミングでやらなくても、と
ため息をつきながら私は新しい席へと移動した。
それからは種ヶ島と話がしたいのに
ことごとく色んな邪魔が入ってしまい
結局何もないまま一週間が過ぎ
いつの間にか、種ヶ島は合宿へと戻って行った。
聞いた話によると
世界大会でドイツと試合をするらしい。
だから、しばらくは戻ってこない。
『はぁ……』
放課後の図書室でぱらぱらと本をめくる。
気休めに恋愛小説でも読もうかと思ったのだけど
実際、小説のようには上手くはいかないのだ
そう思うと虚しくなってきて私は本を閉じた。
人が疎らな図書室の静けさは
今の私には余計なことを考えさせてしまって
一人の空間が、空気が、重い、冷たい、痛い。
そういえばあの日、種ヶ島が真剣な顔をして
本を読んでいたなと思い出した。
いつもと様子が違って
悩んでいるように見えて
素人の私が変にアドバイスなんかしちゃって…
あの時、何を読んでいたんだっけ。
『あ、これか』
【六祖壇経の教え】
そう書かれた分厚い本を取り出す。
もしや漢文で書かれているのでは、と身構えたけど
中は現代語訳されていたので安心した。
“相手に手の内を見せへんように
執着も、感情も、思考も、存在をも無にする。
せやけどたまにな、これでええんかって
思うてまうんよなあ”
頭に反芻するのは、あの日の種ヶ島の言葉。
普段は飄々としていて本心を見せないくせに
あの時だけは私に自分の弱い本心を吐き出して
手の内を見せてくれた。
種ヶ島は私のことを信頼してくれていたのだ。
それが愛とか、恋とかそう呼べるものなのかは
わからないけど、人として頼ってくれた。
だからこそ私に
海外に行く決心をしたのだと伝えてくれたのだ。
それに対して、“そんなこと”発言をされて
今怒っているだろうか。
呆れているだろうか。
少しでも、私がいないことを寂しいと感じているだろうか。
数ページ読んでみて、ある文章で目が止まる。
“人は、人の道に従って生きていても
心は自由自在であり、他人に惑乱されない“
そう。
心は自由自在なのだ。
種ヶ島が今どう思っていても
私のことを好きでも嫌いでも
例の彼女と付き合っていても
私の心は、自由なのだ。
他人に惑わされる必要なんてない。
種ヶ島のことが、好きなことは変わらない。
『よしっ!』
本を閉じると私は思い切り立ち上がり、背伸びをした。
この本のおかげで色んなことが吹っ切れたのだ。
さて、そうともなれば
いまから作戦を考えなければならない。
幸い協力者の目処はついている。
頑張れ、私。
そう鼓舞しながら、お守り代わりに
この【六祖壇経の教え】を借りていくことにした。
朝イチで行われた席替えに面食らった。
席に着く前に渡されたくじ引きの箱から
取り出した番号は
無常にも種ヶ島と離れた番号だった。
確かに今隣は気まずいけれど
昨日の誤解を解くには隣の席のままのほうが
話しやすかったのに。
何もこんなタイミングでやらなくても、と
ため息をつきながら私は新しい席へと移動した。
それからは種ヶ島と話がしたいのに
ことごとく色んな邪魔が入ってしまい
結局何もないまま一週間が過ぎ
いつの間にか、種ヶ島は合宿へと戻って行った。
聞いた話によると
世界大会でドイツと試合をするらしい。
だから、しばらくは戻ってこない。
『はぁ……』
放課後の図書室でぱらぱらと本をめくる。
気休めに恋愛小説でも読もうかと思ったのだけど
実際、小説のようには上手くはいかないのだ
そう思うと虚しくなってきて私は本を閉じた。
人が疎らな図書室の静けさは
今の私には余計なことを考えさせてしまって
一人の空間が、空気が、重い、冷たい、痛い。
そういえばあの日、種ヶ島が真剣な顔をして
本を読んでいたなと思い出した。
いつもと様子が違って
悩んでいるように見えて
素人の私が変にアドバイスなんかしちゃって…
あの時、何を読んでいたんだっけ。
『あ、これか』
【六祖壇経の教え】
そう書かれた分厚い本を取り出す。
もしや漢文で書かれているのでは、と身構えたけど
中は現代語訳されていたので安心した。
“相手に手の内を見せへんように
執着も、感情も、思考も、存在をも無にする。
せやけどたまにな、これでええんかって
思うてまうんよなあ”
頭に反芻するのは、あの日の種ヶ島の言葉。
普段は飄々としていて本心を見せないくせに
あの時だけは私に自分の弱い本心を吐き出して
手の内を見せてくれた。
種ヶ島は私のことを信頼してくれていたのだ。
それが愛とか、恋とかそう呼べるものなのかは
わからないけど、人として頼ってくれた。
だからこそ私に
海外に行く決心をしたのだと伝えてくれたのだ。
それに対して、“そんなこと”発言をされて
今怒っているだろうか。
呆れているだろうか。
少しでも、私がいないことを寂しいと感じているだろうか。
数ページ読んでみて、ある文章で目が止まる。
“人は、人の道に従って生きていても
心は自由自在であり、他人に惑乱されない“
そう。
心は自由自在なのだ。
種ヶ島が今どう思っていても
私のことを好きでも嫌いでも
例の彼女と付き合っていても
私の心は、自由なのだ。
他人に惑わされる必要なんてない。
種ヶ島のことが、好きなことは変わらない。
『よしっ!』
本を閉じると私は思い切り立ち上がり、背伸びをした。
この本のおかげで色んなことが吹っ切れたのだ。
さて、そうともなれば
いまから作戦を考えなければならない。
幸い協力者の目処はついている。
頑張れ、私。
そう鼓舞しながら、お守り代わりに
この【六祖壇経の教え】を借りていくことにした。