キスをください
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『このリップ、新しく買ったんですけど
すっごくぷるぷるになってくれるんです!
似合ってますか?』
「せやなぁ。確かにぷるぷるで可愛いわぁ。
せやけど、もうちょい明るめでも似合うんとちゃう?」
『え、あぁ~、そうですね!
今度はもうちょっと明るい色にしようかなあ…』
「ピンク寄りのほうが、肌に馴染みそぉやわ。
今度一緒に選んだるわ☆」
嬉しい。
確かに嬉しい。
そして本当にリップを選びに行ったのだから
友達からは羨ましがられたし、なに一つ文句はない。
だけど、どうしてもあと一歩及ばないのだ。
どんなに頑張っても、修二さんは私にキスしてくれない。
修二さんとは付き合って半年。
かっこよくて、優しくて
面白くて、テニスが強くて
なんでもできる、スパダリ彼氏。
玉砕覚悟で告白したもののまさかのOKで
それからは清く正しいお付き合いをしている。
自分で言うのもなんだけど
けっこう、溺愛されているようだし私は幸せ者なんだ。
そう自分に言い聞かせても、好きな人とキスがしたい。
もっと、いちゃいちゃしたい。
だけど、そんなこと言えるはずもなく
私は私なりに考えて
キスしやすいムードを作ったり
そういう会話の流れにしてみたり
色々やってはいるのだけど、全て回避されてしまう。
『やっぱり、年下だから…ですかね?
子供っぽいから…』
「修さんが年下とか気にするとは思えないけど」
放課後、部活終わりの修二さんを待っていたら
先に着替えて部室から出てきた入江先輩に
少しだけ愚痴をこぼす。
修二さんが合宿に行っているときも
たまに写真とか送ってくれるから
なにかと味方をしてくれる頼りになる先輩。
…子供っぽい、は否定されなかったけど
割りとちゃんと話を聞いてくれるし
適当なことは言わないからけっこう信頼している。
『じゃあなんでキスしてくれないんだろう…』
「僕なら美樹ちゃんみたいな可愛い子に
そんなこと、言わせないのに」
『え?』
雰囲気の変わった入江先輩に思わずドキッとする。
ずいっと、身体を寄せて壁際に追いやられる。
修二さんとはまた違う綺麗な顔に
思わず見とれそうになっていたら
勢いよく、部室のドアが開いた。
「奏多、冗談でもやってええことと悪いことあんねやろ」
「ごめんごめん。でも修さんも悪いと思うけど」
そう言うと入江先輩は
なーんてね、って言いそびれちゃったと言いながら
ウィンクをして去っていった。
「…帰ろか」
『あ…はい』
普段なら今日あったこととか
昨日見たテレビの話とか
他愛のない話で盛り上がるのだけど
さっきの出来事のせいで、二人とも少しぎこちない。
というか、修二さんの機嫌が悪いような気がする。
『あの…怒ってます…?』
「ん?怒ってへんよ」
怒ってないと言いつつも雰囲気はピリついている。
なぜ怒っているのかわからないけど
だんだん、修二さんに振り回されてばかりいることに
嫌気がさしてきた。
いつもは部活帰りに公園で話して帰るのだけど
今日はもうそんな気分ではない。
『………あの、今日は帰りますね。また明日』
なんだか泣きそうになってしまい
早口で答えるとそのまま走って帰ろうとした。
「ちょい待ち。
美樹ちゃん、なんで泣きそうな顔してんねん」
『…だって、修二さんのこと、わからなくて』
「わからへんって?」
『修二さん、どうしてキスしてくれないんですか?
私のこと好きじゃないの?
…今だって、機嫌悪いし…私修二さんのことわかんない…』
話ながら、ポロポロと溢れた涙は
頬を伝いそのまま乾いたアスファルトに染みをつくる。
「美樹ちゃん、修さんとお話ししよか」
修二さんは私の目線に合わせて微笑み
そっと私の手を取って、公園のベンチまで手をひいてくれた。
「まずは、泣かせてもうて堪忍な」
『……っ…』
泣き出すと、止まらなくなった。
本当はずっと不安だったのだ。
私とは面白半分で付き合ってるのではないか
飽きたらスッと、離れていくのではないか
このまま、別れてしまうのではないか。
「今からホンマにかっこわるい独り言言うで。
年下の彼女がな、可愛くて大切すぎて手ぇ出す勇気なくて」
『………』
「大切やのに他の男とおる姿見たらイライラして
態度に出して不安にさせた。
しかも泣かせてもうて、俺のこともう呆れてへんかな嫌いになってへんかなって
気になって気になって、しゃーないねん」
顔をあげて修二さんを見ると
眉を下げて、少し困ったような表情を浮かべている。
『……私も、独り言、言いますね。
自分に魅力がないのかな
遊びで付き合ってるのかな
このまま、フラれてしまうのかなって不安で。
そのくらい、好きだから
…嫌いになんて、なるわけないです』
私が話し終わると、ぎゅっと、大きな身体に包まれた。
フワッと広がるいつもの彼の香りの中に
ほのかに制汗剤の香りがする。
私と会うから意識して準備してくれたのかなと
そんな些細なことにさえ嬉しくなる。
「美樹ちゃんの涙は、ホンマに心臓に悪いわ」
『修二さんの不機嫌も、心臓に悪いです』
だんだん、おかしくなってきて
目が合うと二人とも吹き出してしまった。
「泣き止んでくれてよかったわ」
『もう、大丈夫です』
修二さんは背伸びをすると
勢いよく、座っていたベンチから降りた。
名残惜しいけれどそろそろ帰らなきゃ、と
鞄を持って立とうとしたら
目の前に手を差し伸べられた。
見上げるとそこには優しい笑顔の修二さんがいて
大事にされているんだな、と呑気に考え手を重ねる。
すると、思わぬ力で手を引っ張らてしまい
修二さんの胸に倒れるーっと思った瞬間
気がついたら、綺麗な顔が目の前にあった。
唇には柔らかくて、心地の良い体温が残る。
『えっ…えぇ?い、今…』
「ファーストキス、戴きぃ☆」
いつものようにけらけらと笑う姿に
文句でも言おうかと思ったけど
髪から覗く耳が赤く染まっていたので
私はただただ、嬉しさと恥ずかしさを噛み締めることにした。
(あんなに、キスしてくれなかったのに)
(男には、色々タイミングがあるんやで)
(…タイミングって?)
(ひ・み・つ☆)
(なんですか。もう…)
(せやけど、女の子が“キスして“なんて言うたらアカンよ)
(はしたない…?)
(ちゃうちゃう。可愛すぎて歯止め効かへんくなるやん)
(え??)
(ホンマは腰抜けるほど、深くて、甘いキスしたいねん。
息継ぎなんてさせへんからな)
(…もう言いません)
すっごくぷるぷるになってくれるんです!
似合ってますか?』
「せやなぁ。確かにぷるぷるで可愛いわぁ。
せやけど、もうちょい明るめでも似合うんとちゃう?」
『え、あぁ~、そうですね!
今度はもうちょっと明るい色にしようかなあ…』
「ピンク寄りのほうが、肌に馴染みそぉやわ。
今度一緒に選んだるわ☆」
嬉しい。
確かに嬉しい。
そして本当にリップを選びに行ったのだから
友達からは羨ましがられたし、なに一つ文句はない。
だけど、どうしてもあと一歩及ばないのだ。
どんなに頑張っても、修二さんは私にキスしてくれない。
修二さんとは付き合って半年。
かっこよくて、優しくて
面白くて、テニスが強くて
なんでもできる、スパダリ彼氏。
玉砕覚悟で告白したもののまさかのOKで
それからは清く正しいお付き合いをしている。
自分で言うのもなんだけど
けっこう、溺愛されているようだし私は幸せ者なんだ。
そう自分に言い聞かせても、好きな人とキスがしたい。
もっと、いちゃいちゃしたい。
だけど、そんなこと言えるはずもなく
私は私なりに考えて
キスしやすいムードを作ったり
そういう会話の流れにしてみたり
色々やってはいるのだけど、全て回避されてしまう。
『やっぱり、年下だから…ですかね?
子供っぽいから…』
「修さんが年下とか気にするとは思えないけど」
放課後、部活終わりの修二さんを待っていたら
先に着替えて部室から出てきた入江先輩に
少しだけ愚痴をこぼす。
修二さんが合宿に行っているときも
たまに写真とか送ってくれるから
なにかと味方をしてくれる頼りになる先輩。
…子供っぽい、は否定されなかったけど
割りとちゃんと話を聞いてくれるし
適当なことは言わないからけっこう信頼している。
『じゃあなんでキスしてくれないんだろう…』
「僕なら美樹ちゃんみたいな可愛い子に
そんなこと、言わせないのに」
『え?』
雰囲気の変わった入江先輩に思わずドキッとする。
ずいっと、身体を寄せて壁際に追いやられる。
修二さんとはまた違う綺麗な顔に
思わず見とれそうになっていたら
勢いよく、部室のドアが開いた。
「奏多、冗談でもやってええことと悪いことあんねやろ」
「ごめんごめん。でも修さんも悪いと思うけど」
そう言うと入江先輩は
なーんてね、って言いそびれちゃったと言いながら
ウィンクをして去っていった。
「…帰ろか」
『あ…はい』
普段なら今日あったこととか
昨日見たテレビの話とか
他愛のない話で盛り上がるのだけど
さっきの出来事のせいで、二人とも少しぎこちない。
というか、修二さんの機嫌が悪いような気がする。
『あの…怒ってます…?』
「ん?怒ってへんよ」
怒ってないと言いつつも雰囲気はピリついている。
なぜ怒っているのかわからないけど
だんだん、修二さんに振り回されてばかりいることに
嫌気がさしてきた。
いつもは部活帰りに公園で話して帰るのだけど
今日はもうそんな気分ではない。
『………あの、今日は帰りますね。また明日』
なんだか泣きそうになってしまい
早口で答えるとそのまま走って帰ろうとした。
「ちょい待ち。
美樹ちゃん、なんで泣きそうな顔してんねん」
『…だって、修二さんのこと、わからなくて』
「わからへんって?」
『修二さん、どうしてキスしてくれないんですか?
私のこと好きじゃないの?
…今だって、機嫌悪いし…私修二さんのことわかんない…』
話ながら、ポロポロと溢れた涙は
頬を伝いそのまま乾いたアスファルトに染みをつくる。
「美樹ちゃん、修さんとお話ししよか」
修二さんは私の目線に合わせて微笑み
そっと私の手を取って、公園のベンチまで手をひいてくれた。
「まずは、泣かせてもうて堪忍な」
『……っ…』
泣き出すと、止まらなくなった。
本当はずっと不安だったのだ。
私とは面白半分で付き合ってるのではないか
飽きたらスッと、離れていくのではないか
このまま、別れてしまうのではないか。
「今からホンマにかっこわるい独り言言うで。
年下の彼女がな、可愛くて大切すぎて手ぇ出す勇気なくて」
『………』
「大切やのに他の男とおる姿見たらイライラして
態度に出して不安にさせた。
しかも泣かせてもうて、俺のこともう呆れてへんかな嫌いになってへんかなって
気になって気になって、しゃーないねん」
顔をあげて修二さんを見ると
眉を下げて、少し困ったような表情を浮かべている。
『……私も、独り言、言いますね。
自分に魅力がないのかな
遊びで付き合ってるのかな
このまま、フラれてしまうのかなって不安で。
そのくらい、好きだから
…嫌いになんて、なるわけないです』
私が話し終わると、ぎゅっと、大きな身体に包まれた。
フワッと広がるいつもの彼の香りの中に
ほのかに制汗剤の香りがする。
私と会うから意識して準備してくれたのかなと
そんな些細なことにさえ嬉しくなる。
「美樹ちゃんの涙は、ホンマに心臓に悪いわ」
『修二さんの不機嫌も、心臓に悪いです』
だんだん、おかしくなってきて
目が合うと二人とも吹き出してしまった。
「泣き止んでくれてよかったわ」
『もう、大丈夫です』
修二さんは背伸びをすると
勢いよく、座っていたベンチから降りた。
名残惜しいけれどそろそろ帰らなきゃ、と
鞄を持って立とうとしたら
目の前に手を差し伸べられた。
見上げるとそこには優しい笑顔の修二さんがいて
大事にされているんだな、と呑気に考え手を重ねる。
すると、思わぬ力で手を引っ張らてしまい
修二さんの胸に倒れるーっと思った瞬間
気がついたら、綺麗な顔が目の前にあった。
唇には柔らかくて、心地の良い体温が残る。
『えっ…えぇ?い、今…』
「ファーストキス、戴きぃ☆」
いつものようにけらけらと笑う姿に
文句でも言おうかと思ったけど
髪から覗く耳が赤く染まっていたので
私はただただ、嬉しさと恥ずかしさを噛み締めることにした。
(あんなに、キスしてくれなかったのに)
(男には、色々タイミングがあるんやで)
(…タイミングって?)
(ひ・み・つ☆)
(なんですか。もう…)
(せやけど、女の子が“キスして“なんて言うたらアカンよ)
(はしたない…?)
(ちゃうちゃう。可愛すぎて歯止め効かへんくなるやん)
(え??)
(ホンマは腰抜けるほど、深くて、甘いキスしたいねん。
息継ぎなんてさせへんからな)
(…もう言いません)