おまじない
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「猛烈な台風の接近により……」
テレビは台風情報一色
今日は台風の影響で練習は全面中止となり
1軍メンバーでミーティングをすることになった。
ミーティングが終わり、各々解散する途中
種ヶ島さんが台風どないやろ、と
通りがかった休憩ルームでテレビをつけ
そのまま皆でテレビを見ている。
この状況、すごくレアだなと思う。
だって平等院さんですらいるんだもの。
「明日まで練習できそうにないですやん」
毛利くんが唇を尖らせ窓の外を見て呟く。
いつもなら雨の時は屋内コートやトレーニングルームで
練習をしたりしているのだけど
今回は全面使用禁止となった。
停電ともなれば、怪我をする可能性もあるからだ。
最近の災害は
“命を守る行動を“と言われるほど危険であるせいか
合宿所内も慌ただしく、スタッフさん達が万が一に備えて
非常食など準備してくれているよう。
ありがたいなあと思いつつ、私は台風が早く過ぎるのを願う。
早く練習ができればという思いもあるけど
私は台風が苦手なのだ。
幼い頃、一人で台風の最中留守番したことが
トラウマのようになっていて怖い。
本当は、こうやって皆と過ごしているほうが安心するけど
台風が怖いなんて子供っぽいことを知られたくなくて
自室に逃げてしまいたい気持ちもある。
でも今は、この場を立ち去るタイミングを
完全に逃してしまった。
誰かが立ち上がれば、私もついて行くのだけど
今日は練習できない分、きっと皆暇なのか
ずっとこの場に留まっている。
徳川くんとか
自室で筋トレするとか言いそうだとチラリと見るけど
入江さんと鬼さんと談笑しているし
君島さんも機嫌がいいのか遠野さんと話している。
(いや、遠野さんが一方的に話してる?)
うーむ。どうしよう、と悩んでいたらふと視線を感じた。
「京子ちゃんどないした?」
『え……?……なんですか?』
「なんか表情暗いな思て」
見透かされてドキッとする。
本当にこの人、種ヶ島さんは、よく人のことを見ている。
このままここにいたらバレてしまいそうだと思い
部屋に戻る決意をした瞬間、フッと電気が消えた。
「わ!停電でっせ!」
「毛利、危険だ。動くな」
「皆さん、危ないのでこのまま待機しましょう」
「スマホでライトつければいいだろぉ?」
「無闇に充電減らさねぇほうがいいし」
皆の声はするけど外も暗いので何も見えない。
どうしよう。怖い。
視界が遮断されたせいか
風の音も一段と大きく聞こえる気がする。
一人じゃないのに、皆がいるのに
ひとりぼっちになった感覚に陥って呼吸がうまくできない。
誰か助けて、と震える手を強く握りしめたその時
そっと、温もりを感じた。
「大丈夫やで。傍におる」
種ヶ島さんが、私の手を握ってくれている。
恐怖で硬く握り締めていた手から力が抜け
大きな暖かい手に包まれた。
『わかって……』
「ん。深呼吸しよか。ゆっくり息吸って吐きや」
顔色が暗いと言われたときには
既に気づかれていたのだろう。
皆に聞こえないように小声で言ってくれるのも
手の温もりも
種ヶ島さんの優しさが伝わって涙腺が弛む。
「京子ちゃん、声聞こえへんけど大丈夫やろか?」
黙り込んでいる私を心配して
毛利くんが声を掛けてくれた。
答えようにも、今話すと声が震えそう。
「そないに心配せえへんでも、俺とおるから大丈夫やで☆
なあ京子ちゃん」
『は、はい』
私が最小限の返事で済むように
皆の意識が自分に向くように
なにもかも、先を読んで配慮してくれる。
皆が気を付けろとか
種ヶ島さんにヤジを飛ばしている間に
なんとか涙を拭って気持ちを落ち着かせる。
いつ電気が復旧するかわからないのだ。
情けない姿は見せたくない。
でもきっと種ヶ島さんのことだから
私が泣いていたら
「俺がちょっかい出してもた」とか言うんだろうな。
無意識にまたぎゅっと、手を握り締めたら
覆い被さるように握られていた手が離れ
今度は手を繋ぐように握られた。
俗に言う、恋人繋ぎ。
指が絡んで、親指ですりすり、と撫でられる。
『た、種ヶ島さん……』
「力入れすぎたらあかんよ。
爪で傷つけてまうから、俺の手ぇ握っといてや」
小声で、皆に聞こえないように私の耳元で囁かれる声は
いつもより低くて甘い。
ダイレクトに伝わる声色と吐息を感じて
恐怖なんてどこかへ行ってしまって
さっきから胸の鼓動が高鳴っている。
今は手だけ触れているけど
少し腕を動かせば、きっともっと触れてしまう。
どうしよう。
どうしたんだろう。
もっと、触れたいという感情が芽生えて
どうしたら良いかわからない。
とん、と肩が触れた。
種ヶ島さんが私に寄り掛かるように身体を預けてきて
左肩も、左腕も、太腿までもが
ぴったりと種ヶ島さんに触れている。
驚いて思わず彼の方を見るけど
表情なんてわからないし、考えだってわからない。
「キスしてまいそうな距離やなあ」
予想外の声の近さで気がついた。
これだけ隣にくっついているのだから
そりゃ近いに決まっている。
距離感を想像して、離れようとしたその時
一瞬、パッと電気が復旧して
目の前には
意地悪な、でもどこか嬉しそうな笑みを浮かべた
種ヶ島さんがいた。
息を飲んで、その視線から目が逸らせずにいると
また電気が消えて暗闇に包まれた。
「あらら。また消えてもうたな。京子ちゃん怖いやろ?」
『い、いえ……もう大丈夫、です』
「強がらんでもええのに。声震えてるで?」
『そ、そんなんじゃなくて…』
種ヶ島さんが触れるから、とは言えずに口をつぐむと
くっく、と喉を鳴らして小さく笑われた。
「ほんなら、俺のおまじないしたろな 」
おでこに熱く、柔らかいものが触れた。
「これで今夜一人で寝るときも
これから台風来た時も大丈夫やで。
嫌でも俺のこと、思い出してまうな」
種ヶ島さんの唇だとわかった瞬間
身体中の体温が一気に上がった気がした。
唇が触れたおでこも、耳も、頬も、手も全部が熱い。
『こ、効力がきれたら、どうすればいいんですか?』
さっきから、されてばかりで
少しだけ悔しかった私は、決死の思いで聞いてみた。
「……もっと効力強いやつあんねんけど、してみる?」
見えないことをいいことに、小さく頷いて
私はまだしばらくこのままでいたいと、 願ったのだった。
(京子ちゃん、来週また台風くるかもなんやて)
(そ、そうなんですか……)
(また停電とかならんならええなあ)
(そうですね…)
(効力、一週間続かへんかもしれへんし)
(……だったら、種ヶ島さんが傍にいてくれたら
いいんじゃないんですか……)
(……おまじない効果、絶大やな)
(え?)
(俺のこと、好きになるおまじない☆)
(え?えっ!?)
(あれ?まだ効果あらへんかった?
ほんなら、強めのやつしとこか)
(えっ、いや、ちょっと待って下さいっ!!)
テレビは台風情報一色
今日は台風の影響で練習は全面中止となり
1軍メンバーでミーティングをすることになった。
ミーティングが終わり、各々解散する途中
種ヶ島さんが台風どないやろ、と
通りがかった休憩ルームでテレビをつけ
そのまま皆でテレビを見ている。
この状況、すごくレアだなと思う。
だって平等院さんですらいるんだもの。
「明日まで練習できそうにないですやん」
毛利くんが唇を尖らせ窓の外を見て呟く。
いつもなら雨の時は屋内コートやトレーニングルームで
練習をしたりしているのだけど
今回は全面使用禁止となった。
停電ともなれば、怪我をする可能性もあるからだ。
最近の災害は
“命を守る行動を“と言われるほど危険であるせいか
合宿所内も慌ただしく、スタッフさん達が万が一に備えて
非常食など準備してくれているよう。
ありがたいなあと思いつつ、私は台風が早く過ぎるのを願う。
早く練習ができればという思いもあるけど
私は台風が苦手なのだ。
幼い頃、一人で台風の最中留守番したことが
トラウマのようになっていて怖い。
本当は、こうやって皆と過ごしているほうが安心するけど
台風が怖いなんて子供っぽいことを知られたくなくて
自室に逃げてしまいたい気持ちもある。
でも今は、この場を立ち去るタイミングを
完全に逃してしまった。
誰かが立ち上がれば、私もついて行くのだけど
今日は練習できない分、きっと皆暇なのか
ずっとこの場に留まっている。
徳川くんとか
自室で筋トレするとか言いそうだとチラリと見るけど
入江さんと鬼さんと談笑しているし
君島さんも機嫌がいいのか遠野さんと話している。
(いや、遠野さんが一方的に話してる?)
うーむ。どうしよう、と悩んでいたらふと視線を感じた。
「京子ちゃんどないした?」
『え……?……なんですか?』
「なんか表情暗いな思て」
見透かされてドキッとする。
本当にこの人、種ヶ島さんは、よく人のことを見ている。
このままここにいたらバレてしまいそうだと思い
部屋に戻る決意をした瞬間、フッと電気が消えた。
「わ!停電でっせ!」
「毛利、危険だ。動くな」
「皆さん、危ないのでこのまま待機しましょう」
「スマホでライトつければいいだろぉ?」
「無闇に充電減らさねぇほうがいいし」
皆の声はするけど外も暗いので何も見えない。
どうしよう。怖い。
視界が遮断されたせいか
風の音も一段と大きく聞こえる気がする。
一人じゃないのに、皆がいるのに
ひとりぼっちになった感覚に陥って呼吸がうまくできない。
誰か助けて、と震える手を強く握りしめたその時
そっと、温もりを感じた。
「大丈夫やで。傍におる」
種ヶ島さんが、私の手を握ってくれている。
恐怖で硬く握り締めていた手から力が抜け
大きな暖かい手に包まれた。
『わかって……』
「ん。深呼吸しよか。ゆっくり息吸って吐きや」
顔色が暗いと言われたときには
既に気づかれていたのだろう。
皆に聞こえないように小声で言ってくれるのも
手の温もりも
種ヶ島さんの優しさが伝わって涙腺が弛む。
「京子ちゃん、声聞こえへんけど大丈夫やろか?」
黙り込んでいる私を心配して
毛利くんが声を掛けてくれた。
答えようにも、今話すと声が震えそう。
「そないに心配せえへんでも、俺とおるから大丈夫やで☆
なあ京子ちゃん」
『は、はい』
私が最小限の返事で済むように
皆の意識が自分に向くように
なにもかも、先を読んで配慮してくれる。
皆が気を付けろとか
種ヶ島さんにヤジを飛ばしている間に
なんとか涙を拭って気持ちを落ち着かせる。
いつ電気が復旧するかわからないのだ。
情けない姿は見せたくない。
でもきっと種ヶ島さんのことだから
私が泣いていたら
「俺がちょっかい出してもた」とか言うんだろうな。
無意識にまたぎゅっと、手を握り締めたら
覆い被さるように握られていた手が離れ
今度は手を繋ぐように握られた。
俗に言う、恋人繋ぎ。
指が絡んで、親指ですりすり、と撫でられる。
『た、種ヶ島さん……』
「力入れすぎたらあかんよ。
爪で傷つけてまうから、俺の手ぇ握っといてや」
小声で、皆に聞こえないように私の耳元で囁かれる声は
いつもより低くて甘い。
ダイレクトに伝わる声色と吐息を感じて
恐怖なんてどこかへ行ってしまって
さっきから胸の鼓動が高鳴っている。
今は手だけ触れているけど
少し腕を動かせば、きっともっと触れてしまう。
どうしよう。
どうしたんだろう。
もっと、触れたいという感情が芽生えて
どうしたら良いかわからない。
とん、と肩が触れた。
種ヶ島さんが私に寄り掛かるように身体を預けてきて
左肩も、左腕も、太腿までもが
ぴったりと種ヶ島さんに触れている。
驚いて思わず彼の方を見るけど
表情なんてわからないし、考えだってわからない。
「キスしてまいそうな距離やなあ」
予想外の声の近さで気がついた。
これだけ隣にくっついているのだから
そりゃ近いに決まっている。
距離感を想像して、離れようとしたその時
一瞬、パッと電気が復旧して
目の前には
意地悪な、でもどこか嬉しそうな笑みを浮かべた
種ヶ島さんがいた。
息を飲んで、その視線から目が逸らせずにいると
また電気が消えて暗闇に包まれた。
「あらら。また消えてもうたな。京子ちゃん怖いやろ?」
『い、いえ……もう大丈夫、です』
「強がらんでもええのに。声震えてるで?」
『そ、そんなんじゃなくて…』
種ヶ島さんが触れるから、とは言えずに口をつぐむと
くっく、と喉を鳴らして小さく笑われた。
「ほんなら、俺のおまじないしたろな 」
おでこに熱く、柔らかいものが触れた。
「これで今夜一人で寝るときも
これから台風来た時も大丈夫やで。
嫌でも俺のこと、思い出してまうな」
種ヶ島さんの唇だとわかった瞬間
身体中の体温が一気に上がった気がした。
唇が触れたおでこも、耳も、頬も、手も全部が熱い。
『こ、効力がきれたら、どうすればいいんですか?』
さっきから、されてばかりで
少しだけ悔しかった私は、決死の思いで聞いてみた。
「……もっと効力強いやつあんねんけど、してみる?」
見えないことをいいことに、小さく頷いて
私はまだしばらくこのままでいたいと、 願ったのだった。
(京子ちゃん、来週また台風くるかもなんやて)
(そ、そうなんですか……)
(また停電とかならんならええなあ)
(そうですね…)
(効力、一週間続かへんかもしれへんし)
(……だったら、種ヶ島さんが傍にいてくれたら
いいんじゃないんですか……)
(……おまじない効果、絶大やな)
(え?)
(俺のこと、好きになるおまじない☆)
(え?えっ!?)
(あれ?まだ効果あらへんかった?
ほんなら、強めのやつしとこか)
(えっ、いや、ちょっと待って下さいっ!!)