負けない男の勝てない相手
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「ん?あんな所に種ヶ島さんが」
徳川、入江、三津谷が食堂からふと外を見ると
ベンチで種ヶ島が一人で座っていた。
彼が星を眺めるなんてことはしないだろうと思いつつ
しばらく観察していると
今まで見たことがないような、穏やかな顔をして
電話をしているようだった。
「あぁ、あの顔は
きっと澪ちゃんに電話しているんだろうね」
「澪ちゃん、とは?」
「修さんの彼女だよ。2つ年下の子なんだ」
「特定の彼女さんがいらしたんですね。
これは良いデータが取れそうだ」
三津谷がサラッと"特定の"と言ったが
種ヶ島が一人の女性と付き合うような
タイプに見えないからだろう。
合コン好きを称しているし
千石と可愛い女の子談義をしているのもよく目にする。
「修さんは彼女と付き合い始めてかなり変わったよ。
いや・・・付き合う前から、かな」
種ヶ島は澪に電話をするときは
決まって外に出て話すことにしていた。
誰にも邪魔されない空間で、澄んだ彼女の声が聞きたい。
なんの喧騒もない、穏やかな空間で話がしたいのだ。
『もしもし?』
ずっと聞きたかった声。
本当は毎日でも電話したいところだったが
年上の余裕を見せたい、という
ちっぽけなプライドが邪魔をしていた。
「ええ子にしとる?」
『ええ子に決まってるじゃないです。
修ニさんこそ、ええ子にしてましたか?』
澪はたまにこうやって自分の口調を真似てくるが
それが可愛くてたまらなかった。
「俺はいつでもええ子やで。
せやからちゃーんと褒めたってな」
『はいはい。偉いですね。
格好いいし、面白いし、テニスは強いし
こんなに素敵な彼氏がいて、幸せ者ですよ~』
「軽っ!めっちゃ軽っ!もうちょい照れてや~」
ふふふ、と笑う顔が見られないのが悔しい。
「・・・今なにしてたん?
なんか電話の音、いつもとちゃうけど」
『あ、やっぱり違います?実はお風呂に入ってます。
掛かってくるタイミングわからなくて
お風呂まで、スマホ持って来ちゃいました』
種ヶ島は頭を抱えた。
耳をすませば、ちゃぷん、と水音は聞こえてくるし
反響している声が風呂場であることの想像をかきたたせる。
自分は何も気にしていない。
むしろ恥ずかしがらせてやろうかと思っていると
『私が裸なの、想像しちゃいました?』
そうきたか、と種ヶ島はまた頭を抱えた。
彼女には、いつまでたっても勝てない。
飄々としていて、掴みどころのない自由なキャラが
彼女を前にすると崩れてしまう。
「澪ちゃーん、からかわんといてー。
俺、健全な男子高校生やねん。頭ん中ピンクやねん。
想像っちゅーか、妄想してもうて眠られへんよ今日」
『ふふっ、ごめんなさい。
・・・今日友達が彼氏と出掛けてるの見たんですけど
羨ましく思っちゃって。
修ニさんに会いたくなって…。
声聞いたら嬉しくて
ちょっと、はしゃいじゃいました』
会いたいと、声を聞きたいと思っていたのは
自分だけではないことに安心する。
「友達が彼氏と一緒におるの見たから、会いたなったん?
いつもはそうでもないん?
せやったら、修さん寂しいなぁ」
『・・・いつでも会いたいに決まってるじゃないですか。
仕返しですか・・・?意地悪~』
「ははっ!ちょっと意地悪してもうたな。
澪はあんま寂しいとか、会いたいとか言わへんやん。
せやから澪の口から聞きたなってん」
彼女は、良く理解していた。
種ヶ島自身、縛られない自由なタイプの人間だから
甘えたり、催促するような言葉は発しなかった。
今までの種ヶ島だったら、そのほうが好ましかったのだが
澪相手では、寧ろ逆だった。
『そういうの、重いかなって思って・・・
ほ、本当はいつでも会いたいし
毎日でも、声聞きたいです。
たまに送ってくれる写真とか、よく見てるんですよ。
大曲さんって人はいつも写ってて羨ましいって思うし…
あ、入江さんもたまに写真送ってくれるんですよ』
「奏多の奴、変な写真送ってへんやろうな…」
『あれ?なんか今も送られて…………』
「ん?どないした?」
彼女の本音が聞けて満足していたのだったが
案外入江と連絡を取り合っていることに
少しだけムッとする。
『修二さん、私と電話するとき
こんな顔してたんですね。ふふっ、嬉しい』
どういう意味だ、と思っていたら窓を叩く音がした。
入江、徳川、三津谷の三人が
食堂からこっちを見ている。
「やられたわ。奏多め、盗撮しよったな……」
『怒ったら駄目ですよ。
この写真めちゃくちゃ嬉しいですから』
ロック画面にしちゃおうかな、と
素直に喜んでいる彼女に免じて許してやろう。
最後に邪魔は入ったけど
種ヶ島にとっては、彼女の本音を聞けたいい機会だった。
「……俺も、毎日会いたいって思うとるし
毎日声聞きたいって思ってる。
もっと甘えてくれてもええのに、とも思うとる。
寂しい思いさせて、堪忍なあ」
『ううん。同じ気持ちってわかったし
それに、帰ってきたらいっぱい甘えますから
覚悟しておいて下さいね』
「ははっ!期待しとくわ☆」
電話を切ったあと、種ヶ島の胸には
穏やかな気持ちが広がった。
そういえば入江が送った写真の見返りを貰おう。
いまの彼女の写真を催促しよう。
そうじゃないと、フェアじゃない。
しばらくたって送られてきた写真を見て
種ヶ島は再び頭を抱えた。
(いまの写真言うたけど、湯上がりの姿送るんはズルいやろっ
キャミソール見えてるやんっ
あぁ、もう、これ計算なん?天然なん?
ほんま勝てへんねんけどっ)
(ね。修さんが一途なのわかったでしょ?)
(ちょっと意外だったよ)
(よく表情が変わる人ではあるが
照れたりする姿は初めて見る)
(後でなんの話したのか澪ちゃんに聞いてみようかな。
3回も頭抱えて・・・修さんほんと本気なんだなぁ)
(データの取りがいがあるな・・・
彼女さんに話を聞いてみたくなるよ)
(それは絶対やめておいたほうが良いよ)
徳川、入江、三津谷が食堂からふと外を見ると
ベンチで種ヶ島が一人で座っていた。
彼が星を眺めるなんてことはしないだろうと思いつつ
しばらく観察していると
今まで見たことがないような、穏やかな顔をして
電話をしているようだった。
「あぁ、あの顔は
きっと澪ちゃんに電話しているんだろうね」
「澪ちゃん、とは?」
「修さんの彼女だよ。2つ年下の子なんだ」
「特定の彼女さんがいらしたんですね。
これは良いデータが取れそうだ」
三津谷がサラッと"特定の"と言ったが
種ヶ島が一人の女性と付き合うような
タイプに見えないからだろう。
合コン好きを称しているし
千石と可愛い女の子談義をしているのもよく目にする。
「修さんは彼女と付き合い始めてかなり変わったよ。
いや・・・付き合う前から、かな」
種ヶ島は澪に電話をするときは
決まって外に出て話すことにしていた。
誰にも邪魔されない空間で、澄んだ彼女の声が聞きたい。
なんの喧騒もない、穏やかな空間で話がしたいのだ。
『もしもし?』
ずっと聞きたかった声。
本当は毎日でも電話したいところだったが
年上の余裕を見せたい、という
ちっぽけなプライドが邪魔をしていた。
「ええ子にしとる?」
『ええ子に決まってるじゃないです。
修ニさんこそ、ええ子にしてましたか?』
澪はたまにこうやって自分の口調を真似てくるが
それが可愛くてたまらなかった。
「俺はいつでもええ子やで。
せやからちゃーんと褒めたってな」
『はいはい。偉いですね。
格好いいし、面白いし、テニスは強いし
こんなに素敵な彼氏がいて、幸せ者ですよ~』
「軽っ!めっちゃ軽っ!もうちょい照れてや~」
ふふふ、と笑う顔が見られないのが悔しい。
「・・・今なにしてたん?
なんか電話の音、いつもとちゃうけど」
『あ、やっぱり違います?実はお風呂に入ってます。
掛かってくるタイミングわからなくて
お風呂まで、スマホ持って来ちゃいました』
種ヶ島は頭を抱えた。
耳をすませば、ちゃぷん、と水音は聞こえてくるし
反響している声が風呂場であることの想像をかきたたせる。
自分は何も気にしていない。
むしろ恥ずかしがらせてやろうかと思っていると
『私が裸なの、想像しちゃいました?』
そうきたか、と種ヶ島はまた頭を抱えた。
彼女には、いつまでたっても勝てない。
飄々としていて、掴みどころのない自由なキャラが
彼女を前にすると崩れてしまう。
「澪ちゃーん、からかわんといてー。
俺、健全な男子高校生やねん。頭ん中ピンクやねん。
想像っちゅーか、妄想してもうて眠られへんよ今日」
『ふふっ、ごめんなさい。
・・・今日友達が彼氏と出掛けてるの見たんですけど
羨ましく思っちゃって。
修ニさんに会いたくなって…。
声聞いたら嬉しくて
ちょっと、はしゃいじゃいました』
会いたいと、声を聞きたいと思っていたのは
自分だけではないことに安心する。
「友達が彼氏と一緒におるの見たから、会いたなったん?
いつもはそうでもないん?
せやったら、修さん寂しいなぁ」
『・・・いつでも会いたいに決まってるじゃないですか。
仕返しですか・・・?意地悪~』
「ははっ!ちょっと意地悪してもうたな。
澪はあんま寂しいとか、会いたいとか言わへんやん。
せやから澪の口から聞きたなってん」
彼女は、良く理解していた。
種ヶ島自身、縛られない自由なタイプの人間だから
甘えたり、催促するような言葉は発しなかった。
今までの種ヶ島だったら、そのほうが好ましかったのだが
澪相手では、寧ろ逆だった。
『そういうの、重いかなって思って・・・
ほ、本当はいつでも会いたいし
毎日でも、声聞きたいです。
たまに送ってくれる写真とか、よく見てるんですよ。
大曲さんって人はいつも写ってて羨ましいって思うし…
あ、入江さんもたまに写真送ってくれるんですよ』
「奏多の奴、変な写真送ってへんやろうな…」
『あれ?なんか今も送られて…………』
「ん?どないした?」
彼女の本音が聞けて満足していたのだったが
案外入江と連絡を取り合っていることに
少しだけムッとする。
『修二さん、私と電話するとき
こんな顔してたんですね。ふふっ、嬉しい』
どういう意味だ、と思っていたら窓を叩く音がした。
入江、徳川、三津谷の三人が
食堂からこっちを見ている。
「やられたわ。奏多め、盗撮しよったな……」
『怒ったら駄目ですよ。
この写真めちゃくちゃ嬉しいですから』
ロック画面にしちゃおうかな、と
素直に喜んでいる彼女に免じて許してやろう。
最後に邪魔は入ったけど
種ヶ島にとっては、彼女の本音を聞けたいい機会だった。
「……俺も、毎日会いたいって思うとるし
毎日声聞きたいって思ってる。
もっと甘えてくれてもええのに、とも思うとる。
寂しい思いさせて、堪忍なあ」
『ううん。同じ気持ちってわかったし
それに、帰ってきたらいっぱい甘えますから
覚悟しておいて下さいね』
「ははっ!期待しとくわ☆」
電話を切ったあと、種ヶ島の胸には
穏やかな気持ちが広がった。
そういえば入江が送った写真の見返りを貰おう。
いまの彼女の写真を催促しよう。
そうじゃないと、フェアじゃない。
しばらくたって送られてきた写真を見て
種ヶ島は再び頭を抱えた。
(いまの写真言うたけど、湯上がりの姿送るんはズルいやろっ
キャミソール見えてるやんっ
あぁ、もう、これ計算なん?天然なん?
ほんま勝てへんねんけどっ)
(ね。修さんが一途なのわかったでしょ?)
(ちょっと意外だったよ)
(よく表情が変わる人ではあるが
照れたりする姿は初めて見る)
(後でなんの話したのか澪ちゃんに聞いてみようかな。
3回も頭抱えて・・・修さんほんと本気なんだなぁ)
(データの取りがいがあるな・・・
彼女さんに話を聞いてみたくなるよ)
(それは絶対やめておいたほうが良いよ)