それが私にできること
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『は?え?か、からかってます?』
ドイツ戦前夜。
種ヶ島先輩から言われた唐突な言葉に
我ながらとんでもなくアホっぽい声が出た。
「ハハッ!声裏返ってもうてるやん」
『い、いや、だってそんなの……
そんなのいきなり言われたら…』
私はたまたま出くわした種ヶ島先輩と
明日のドイツ戦の話をしていた。
ドイツは手強い、どんな人と試合するのか等
至って真面目な話をしていた。
そして別れ際に
“そういえば思い出した"みたいなノリで
「せや、成実ちゃん。
明日の試合勝ったら、俺と付き合うてくれへん?」
そう言われて冒頭に至る。
当の本人はいつもと変わらない表情をしているけど
言われた私はパニックだ。
しどろもどろになっていたら
「考えといてな☆」
と言って去って行ってしまった。
ただでさえマネージャーのくせに
明日の試合に緊張していた私は
また別の意味でも緊張することになったのだった。
そして迎えたドイツ戦。
種ヶ島先輩は切原くんとペアを組み
攻撃と守備に特化したペアが誕生した。
相手も、どうやらこちらと同じタイプのペアみたいで
切原くんとミハエルさん。
種ヶ島先輩とビスマルクさん。
それぞれ、闘志がぶつかっているのが見て取れる。
長年、マネージャーをしていると
なんとくこの試合は長引きそうな
波乱になるような、そんな気がしていた。
負ける気は、しない。
だけど相手も、強い。
あのミハエルさんも、切原くんに感化されてどう化けるか
そしてビスマルクさんは、読めない。
種ヶ島先輩同様、何かを隠している。
“能ある鷹は爪を隠す“
お互いそのタイプだ。
私の予感は的中し、この試合は波乱となった。
切原くんとミハエルさんのシングルスが始まり
相討ちのように、動けなくなった二人の代わりに
今度は種ヶ島先輩とビスマルクさんの
リターンゲームが始まった。
タイブレークになれば勝てるかもしれない。
勝ってほしい。
あなたが負ける姿は見たくない。
胸の前でぎゅっと、両手を握りしめていると
乾くんが、嫌なデータを口にする。
「ビスマルクは…タイブレークの勝率100%だ」
乾くんのデータは正しいのか
ビスマルクさんはタイブレークに入ってから
初めて打つサーブを見せたり
まだまだ余裕で技をも隠し持ってる感じだ。
でもそれに対しても種ヶ島先輩は冷静で
こちらもあまり打たないキックサーブで対抗する。
呼吸をすることを、忘れてしまうかのような試合。
お願い、勝って。
「フォルト!!」
種ヶ島先輩がサーブをミスした。
タイブレークでの1ポイントは重く
この試合に負ければ、日本の敗退が決まってしまう。
種ヶ島先輩には、相当な重圧が掛かっているのだ。
中学生の彼らにはまだチャンスはあるが
高校生の先輩達にとってはこれが最後である。
皆の2年間が、ここで終わってしまう。
そんなの、嫌だ。
あの種ヶ島先輩が試合ではなく
重圧に負け、自分に負ける姿は、一番見たくない。
『種ヶ島先輩……!
勝てなくてもいい……絶対、負けないで!!』
気がついたら、私は涙目になりながら叫んでいた。
種ヶ島先輩や他の先輩達が
一瞬驚いたような表情を見せる。
ふと、種ヶ島先輩と目が合った。
目だけを細めて、私に笑いかけてくれた。
その瞳には、まだまだ闘志が残っている。
「戴き☆」
ミスは相手を欺くためだったのか
種ヶ島先輩は先ほどの重圧をものともせずプレーを続ける。
それからは
ドイツの勝利が確定したかと思えぱ
意識のない切原くんがボールを返して種ヶ島先輩に繋ぎ
そして、切原くんとミハエルさんが動けるようになり
やっと、ここからダブルスが始まる。
ファイナルセットは日本のペースで始まったものの
『能力共鳴』と『同調』で流れはドイツのもとなり
一時日本が不利になった。
だけど最後は
二人の見事なコンビネーションで日本が勝利を得た。
攻撃と守備のペア。
この両極端な二人だからこそできた試合だった。
次の平等院さんの試合が始まる前に
少しでも声を掛けたくて
私は、種ヶ島先輩のもとへと駆け寄る。
「成実ちゃん、おーきにな。さっきの声、届いたで。
まさか自分が言われる側になるとはなあ」
“お疲れ様です“
“おめでとうございます“
“いい試合でした“
どれもうまく言葉にできなくて
こんな言葉じゃ足りなくて
私は種ヶ島先輩に思い切り抱きついた。
「ちょっ!
めちゃくちゃ嬉しいねんけどタンマ!俺今汗だくやで!」
『そんなの、どうでもいいです…!言葉に、できなくて…
色々伝えたいのに、なんて言ったらいいか、わかんなくて』
「ほんなら、俺頑張ってたやろか?」
『はい。めちゃくちゃ』
「格好良かった?」
『…はい。格好良かった、です』
「惚れてもうた?」
『……そんなの、最初からですけど』
種ヶ島先輩から離れて顔を見上げてみると
意外にも、顔が少しだけ、赤くなっていた。
顔を見られていることに気がついた先輩は片手で口元を覆う。
『えっ?もしかして、照れてます?』
「…成実ちゃん、いきなりデレるんはズルいて。
修さんもびっくりやで」
『そんな顔、するんですね』
「そらするやろ。
好きな子からの特別サービスフルコンボやもん」
特別サービスフルコンボに思わず笑っていると
真剣な顔つきで私の手をとる。
「ほんで、勝ったんやけど俺と付き合うてくれるん?」
『勝っても負けても、私の答えはひとつです。
こんな私で良ければ、よろしくお願いします』
「成実ちゃんやないと、俺はダメやねんで」
嬉しそうに笑う種ヶ島先輩の手を握り返すと
勝利を祝う声と、冷やかしの声に包まれた。
あなたが、自分に負けそうなときは私が支えよう。
それが私にできること。
(俺もけっこう頑張ったんスけど、忘れられてませんかね?)
(おお。頑張ったし。偉いぞ)
(切原、かっこよかったやんけ!)
(勝利への執念は見事だった)
(へへっ…!あざっす!)
(流石は高校生。赤也の扱いが上手いな)
(赤也を制御できる人が増えて俺達も助かる)
(ちょっと!先輩らも少しは褒めて下さいよー!)
ドイツ戦前夜。
種ヶ島先輩から言われた唐突な言葉に
我ながらとんでもなくアホっぽい声が出た。
「ハハッ!声裏返ってもうてるやん」
『い、いや、だってそんなの……
そんなのいきなり言われたら…』
私はたまたま出くわした種ヶ島先輩と
明日のドイツ戦の話をしていた。
ドイツは手強い、どんな人と試合するのか等
至って真面目な話をしていた。
そして別れ際に
“そういえば思い出した"みたいなノリで
「せや、成実ちゃん。
明日の試合勝ったら、俺と付き合うてくれへん?」
そう言われて冒頭に至る。
当の本人はいつもと変わらない表情をしているけど
言われた私はパニックだ。
しどろもどろになっていたら
「考えといてな☆」
と言って去って行ってしまった。
ただでさえマネージャーのくせに
明日の試合に緊張していた私は
また別の意味でも緊張することになったのだった。
そして迎えたドイツ戦。
種ヶ島先輩は切原くんとペアを組み
攻撃と守備に特化したペアが誕生した。
相手も、どうやらこちらと同じタイプのペアみたいで
切原くんとミハエルさん。
種ヶ島先輩とビスマルクさん。
それぞれ、闘志がぶつかっているのが見て取れる。
長年、マネージャーをしていると
なんとくこの試合は長引きそうな
波乱になるような、そんな気がしていた。
負ける気は、しない。
だけど相手も、強い。
あのミハエルさんも、切原くんに感化されてどう化けるか
そしてビスマルクさんは、読めない。
種ヶ島先輩同様、何かを隠している。
“能ある鷹は爪を隠す“
お互いそのタイプだ。
私の予感は的中し、この試合は波乱となった。
切原くんとミハエルさんのシングルスが始まり
相討ちのように、動けなくなった二人の代わりに
今度は種ヶ島先輩とビスマルクさんの
リターンゲームが始まった。
タイブレークになれば勝てるかもしれない。
勝ってほしい。
あなたが負ける姿は見たくない。
胸の前でぎゅっと、両手を握りしめていると
乾くんが、嫌なデータを口にする。
「ビスマルクは…タイブレークの勝率100%だ」
乾くんのデータは正しいのか
ビスマルクさんはタイブレークに入ってから
初めて打つサーブを見せたり
まだまだ余裕で技をも隠し持ってる感じだ。
でもそれに対しても種ヶ島先輩は冷静で
こちらもあまり打たないキックサーブで対抗する。
呼吸をすることを、忘れてしまうかのような試合。
お願い、勝って。
「フォルト!!」
種ヶ島先輩がサーブをミスした。
タイブレークでの1ポイントは重く
この試合に負ければ、日本の敗退が決まってしまう。
種ヶ島先輩には、相当な重圧が掛かっているのだ。
中学生の彼らにはまだチャンスはあるが
高校生の先輩達にとってはこれが最後である。
皆の2年間が、ここで終わってしまう。
そんなの、嫌だ。
あの種ヶ島先輩が試合ではなく
重圧に負け、自分に負ける姿は、一番見たくない。
『種ヶ島先輩……!
勝てなくてもいい……絶対、負けないで!!』
気がついたら、私は涙目になりながら叫んでいた。
種ヶ島先輩や他の先輩達が
一瞬驚いたような表情を見せる。
ふと、種ヶ島先輩と目が合った。
目だけを細めて、私に笑いかけてくれた。
その瞳には、まだまだ闘志が残っている。
「戴き☆」
ミスは相手を欺くためだったのか
種ヶ島先輩は先ほどの重圧をものともせずプレーを続ける。
それからは
ドイツの勝利が確定したかと思えぱ
意識のない切原くんがボールを返して種ヶ島先輩に繋ぎ
そして、切原くんとミハエルさんが動けるようになり
やっと、ここからダブルスが始まる。
ファイナルセットは日本のペースで始まったものの
『能力共鳴』と『同調』で流れはドイツのもとなり
一時日本が不利になった。
だけど最後は
二人の見事なコンビネーションで日本が勝利を得た。
攻撃と守備のペア。
この両極端な二人だからこそできた試合だった。
次の平等院さんの試合が始まる前に
少しでも声を掛けたくて
私は、種ヶ島先輩のもとへと駆け寄る。
「成実ちゃん、おーきにな。さっきの声、届いたで。
まさか自分が言われる側になるとはなあ」
“お疲れ様です“
“おめでとうございます“
“いい試合でした“
どれもうまく言葉にできなくて
こんな言葉じゃ足りなくて
私は種ヶ島先輩に思い切り抱きついた。
「ちょっ!
めちゃくちゃ嬉しいねんけどタンマ!俺今汗だくやで!」
『そんなの、どうでもいいです…!言葉に、できなくて…
色々伝えたいのに、なんて言ったらいいか、わかんなくて』
「ほんなら、俺頑張ってたやろか?」
『はい。めちゃくちゃ』
「格好良かった?」
『…はい。格好良かった、です』
「惚れてもうた?」
『……そんなの、最初からですけど』
種ヶ島先輩から離れて顔を見上げてみると
意外にも、顔が少しだけ、赤くなっていた。
顔を見られていることに気がついた先輩は片手で口元を覆う。
『えっ?もしかして、照れてます?』
「…成実ちゃん、いきなりデレるんはズルいて。
修さんもびっくりやで」
『そんな顔、するんですね』
「そらするやろ。
好きな子からの特別サービスフルコンボやもん」
特別サービスフルコンボに思わず笑っていると
真剣な顔つきで私の手をとる。
「ほんで、勝ったんやけど俺と付き合うてくれるん?」
『勝っても負けても、私の答えはひとつです。
こんな私で良ければ、よろしくお願いします』
「成実ちゃんやないと、俺はダメやねんで」
嬉しそうに笑う種ヶ島先輩の手を握り返すと
勝利を祝う声と、冷やかしの声に包まれた。
あなたが、自分に負けそうなときは私が支えよう。
それが私にできること。
(俺もけっこう頑張ったんスけど、忘れられてませんかね?)
(おお。頑張ったし。偉いぞ)
(切原、かっこよかったやんけ!)
(勝利への執念は見事だった)
(へへっ…!あざっす!)
(流石は高校生。赤也の扱いが上手いな)
(赤也を制御できる人が増えて俺達も助かる)
(ちょっと!先輩らも少しは褒めて下さいよー!)