特効薬はあなたの愛情
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体質って厄介。
乾くんみたいに、お腹が痛くなりやすかったり
切原くんみたいに、目が充血しやすかったり
芥川くんみたいに、どこでも眠くなっちゃったり。
私の場合、悩ましいのはこの片頭痛。
雨が降る前や気圧の変化にすごく敏感で
台風が近づいているときなんて、一番最悪。
ズキン、というよりも、ズクン、と疼くような
鈍い痛みに悩まされる。
今日も起きたときから頭痛がして調子が悪い。
なんとか痛みに堪えながら
皆が練習しているコートへと向かう。
「あれ?詩穂ちゃん、朝食の時おった?」
『えっ?あ、あぁ、いたよ。
端っこに座ってたしすぐ食べたから』
「・・・さよか~」
種ヶ島に声を掛けられて咄嗟に出た嘘。
本当は頭痛がひどすぎて
吐き気までしていたから何も食べていない。
探るような視線だったから
もしかして私の嘘なんて見透かされているかもしれないけど
それ以上追求はされずに済んだ。
午後になるといくぶん痛みがマシになってきたけど
私の場合、波があるから油断はできない。
とりあえず動けるうちに片付けやらなんやら
マネージャーとしての仕事をこなさないと。
「詩穂、悪いがテーピングを頼む」
『わかった。すぐやるね』
「詩穂さん、このグリップテープまだありますやろか?」
『あるよ!取ってくるね』
「ドリンクねぇし」
『え、もうなくなった!?ごめん、すぐ作る!』
バタバタと動いていたら、ふいに訪れた痛みに顔をしかめる。
練習が終わるまであと1時間。
なんとか乗り切りたいが、ちょっと痛みがひどい。
私はいつも持ち歩いている常備薬を飲もうと思い
ポケットに手をやるも、・・・やってしまった。
部屋に忘れてきた。
取りに戻ると時間が掛かるし、あともう少しだし
なんとか頑張ろう、と意気込んでいたら
ふいに目の前が暗くなった。
『えっ!?何っ!?誰・・・って種ヶ島でしょ!』
褐色の手が後ろから伸びてきて、私の目は覆われ
そのままポスッと、彼の胸に背中を預ける体勢になった。
「ちゃい☆バレてもうたか。
だーれだ、ってしよかと思うてたのに」
『こんなことするの、種ヶ島くらいでしょ。
私まだやることあるから離してよ』
補充で作ったドリンクを
皆のところに持って行かなければならない。
急がなきゃ、という気持ちと頭痛のせいで
種ヶ島の相手をする余裕がなく、つい口調がきつくなり
無理やり種ヶ島の手を退ける。
「ドリンクなら、俺が運んだろ。
詩穂ちゃんはそこのベンチに座っとき」
『何言ってるの、そんな暇ないしさっさとどいてよ。
マネージャーが休んでどうする、の……』
「詩穂」
種ヶ島の雰囲気が変わった。
いつものおどけた態度はなく
少しピリッとした空気になり、私は思わず言いよどむ。
ぐいっと手を引かれてベンチに座らされ
彼は私の作ったドリンクを持って、そのまま去って行った。
体調悪いのバレてたのかな。
今戻ったら怖いから
しばらく時間を空けてから戻るか
と少し気を抜いた瞬間
思っていた以上に限界だったのだと気がついた。
…………種ヶ島に甘えて
少しだけ目蓋を閉じて休んでいよう。
しばらくして、ふと目を開けると
視界の端に見慣れた赤いジャージがあった。
右肩には温もり。
ハッとして体勢を整えると、隣には種ヶ島が座っていた。
『ご、ごめん!私、寝ちゃってた!』
「ええよええよ。役得やったしな☆」
聞きたいことや言いたいことはあったのだが
肩を借りてしまっていたことと
先程の雰囲気のせいで少し話すのが気まずい。
「ドリンクなら持って行ったし
詩穂ちゃんは用事でしばらく戻れへん言うてきた。
言い方きつなってたんは気にしてへんし
肩で寝てたんもホンマ役得や思うてるから気にせんで」
『ごめん・・・』
私が考えていたことは全て先に答えられ
種ヶ島はスッと、缶コーヒーと
飲むタイプのゼリーを渡してくれた。
「頭痛にはカフェインがええらしいで。
何も食べてへん状態でいきなりコーヒーは胃に悪いから
まずはこっちのゼリーからな」
食べていないのも、頭が痛いのも
何もかもが種ヶ島にはお見通しだった。
『ごめん。わかってたんだね……。
流石というか、めざといというか、よく気づいたね』
「俺に嘘つくんは100年早いで~。
詩穂ちゃん、顔に出やすいしなあ」
『えっ……そ、そんなに?』
「嘘つくん、めちゃくちゃヘタくそやん」
バッサリ言われてちょっとショックだったけど
楽しそうに笑ってくれている種ヶ島を見ると安心した。
『気圧の変化に弱いみたいで。
いつもは薬持ち歩いてるんだけど
今日は部屋に置いてきちゃって……心配かけてごめんね』
「前から痛いの我慢してるんやろなあて思うてた。
皆のおらんとこで薬も飲んでたみたいやし
心配かけへんようにしてくれてたんやろ。
せやけど、無理したらアカンよ」
『うん。ごめんね』
見たことないような優しい顔で、頭をぽんぽんと撫でられた。
あれ?なんかドキドキする。
「さっきから、謝ってばかりやん。
修さんとしては、お礼のほうが嬉しいんやけど~」
『ごめ、あ…………ふふっ、ありがとう』
にっこりと満足げな笑顔を見て
たまにはこうやって誰かに甘えるのも良いなと感じた。
しばらく話をしていたらコーヒーのおかげか
それとも種ヶ島のおかげか
薬はいらないくらいに頭痛は落ち着いてきた。
種ヶ島なりに色々調べてくれていたのか
味噌汁がいいだの、チョコレートはよくないだの
豆知識まで教えてくれる。
「そろそろ戻ろか?夕方になると冷えてくるし」
そうだね、と言おうと思ったのだけど
この穏やかな時間を手放すのが惜しいと思ってしまって
まだ少し甘えたい気持ちが芽生える。
「それとも、まだ一緒におる?」
顔を上げれば、種ヶ島はニヤっとしていて
ああ、また私顔に出たんだなって恥ずかしくなったけど
この男に隠し事なんて不可能なんだ。
どうせなら、ここぞとばかりに甘えてやろうと
彼の肩に再び頭を寄せてみた。
驚いたかのように
少しだけ彼の身体がピクッと反応したけど
すぐに私の手に、そっと種ヶ島の手が重ねられ
種ヶ島を探しに来た大曲に見つかるまでの間
しばらく、そうやっていた。
(あっぶな~。
俺としたことが危うくポロッと
好きや言うてまうとこやったわ。
あそこで甘えてくるなんて、ズルない?
詩穂ちゃんが甘えてくるて
えげつないほどの破壊力やん。
あれ素でやっとるからほんまタチ悪いわ。
”よく気づいたね”て、そらいつも見とるからなあ。
思うてたより手応えはありそやけど
本人は気づいてへんみたいやから、手強い相手やな)
乾くんみたいに、お腹が痛くなりやすかったり
切原くんみたいに、目が充血しやすかったり
芥川くんみたいに、どこでも眠くなっちゃったり。
私の場合、悩ましいのはこの片頭痛。
雨が降る前や気圧の変化にすごく敏感で
台風が近づいているときなんて、一番最悪。
ズキン、というよりも、ズクン、と疼くような
鈍い痛みに悩まされる。
今日も起きたときから頭痛がして調子が悪い。
なんとか痛みに堪えながら
皆が練習しているコートへと向かう。
「あれ?詩穂ちゃん、朝食の時おった?」
『えっ?あ、あぁ、いたよ。
端っこに座ってたしすぐ食べたから』
「・・・さよか~」
種ヶ島に声を掛けられて咄嗟に出た嘘。
本当は頭痛がひどすぎて
吐き気までしていたから何も食べていない。
探るような視線だったから
もしかして私の嘘なんて見透かされているかもしれないけど
それ以上追求はされずに済んだ。
午後になるといくぶん痛みがマシになってきたけど
私の場合、波があるから油断はできない。
とりあえず動けるうちに片付けやらなんやら
マネージャーとしての仕事をこなさないと。
「詩穂、悪いがテーピングを頼む」
『わかった。すぐやるね』
「詩穂さん、このグリップテープまだありますやろか?」
『あるよ!取ってくるね』
「ドリンクねぇし」
『え、もうなくなった!?ごめん、すぐ作る!』
バタバタと動いていたら、ふいに訪れた痛みに顔をしかめる。
練習が終わるまであと1時間。
なんとか乗り切りたいが、ちょっと痛みがひどい。
私はいつも持ち歩いている常備薬を飲もうと思い
ポケットに手をやるも、・・・やってしまった。
部屋に忘れてきた。
取りに戻ると時間が掛かるし、あともう少しだし
なんとか頑張ろう、と意気込んでいたら
ふいに目の前が暗くなった。
『えっ!?何っ!?誰・・・って種ヶ島でしょ!』
褐色の手が後ろから伸びてきて、私の目は覆われ
そのままポスッと、彼の胸に背中を預ける体勢になった。
「ちゃい☆バレてもうたか。
だーれだ、ってしよかと思うてたのに」
『こんなことするの、種ヶ島くらいでしょ。
私まだやることあるから離してよ』
補充で作ったドリンクを
皆のところに持って行かなければならない。
急がなきゃ、という気持ちと頭痛のせいで
種ヶ島の相手をする余裕がなく、つい口調がきつくなり
無理やり種ヶ島の手を退ける。
「ドリンクなら、俺が運んだろ。
詩穂ちゃんはそこのベンチに座っとき」
『何言ってるの、そんな暇ないしさっさとどいてよ。
マネージャーが休んでどうする、の……』
「詩穂」
種ヶ島の雰囲気が変わった。
いつものおどけた態度はなく
少しピリッとした空気になり、私は思わず言いよどむ。
ぐいっと手を引かれてベンチに座らされ
彼は私の作ったドリンクを持って、そのまま去って行った。
体調悪いのバレてたのかな。
今戻ったら怖いから
しばらく時間を空けてから戻るか
と少し気を抜いた瞬間
思っていた以上に限界だったのだと気がついた。
…………種ヶ島に甘えて
少しだけ目蓋を閉じて休んでいよう。
しばらくして、ふと目を開けると
視界の端に見慣れた赤いジャージがあった。
右肩には温もり。
ハッとして体勢を整えると、隣には種ヶ島が座っていた。
『ご、ごめん!私、寝ちゃってた!』
「ええよええよ。役得やったしな☆」
聞きたいことや言いたいことはあったのだが
肩を借りてしまっていたことと
先程の雰囲気のせいで少し話すのが気まずい。
「ドリンクなら持って行ったし
詩穂ちゃんは用事でしばらく戻れへん言うてきた。
言い方きつなってたんは気にしてへんし
肩で寝てたんもホンマ役得や思うてるから気にせんで」
『ごめん・・・』
私が考えていたことは全て先に答えられ
種ヶ島はスッと、缶コーヒーと
飲むタイプのゼリーを渡してくれた。
「頭痛にはカフェインがええらしいで。
何も食べてへん状態でいきなりコーヒーは胃に悪いから
まずはこっちのゼリーからな」
食べていないのも、頭が痛いのも
何もかもが種ヶ島にはお見通しだった。
『ごめん。わかってたんだね……。
流石というか、めざといというか、よく気づいたね』
「俺に嘘つくんは100年早いで~。
詩穂ちゃん、顔に出やすいしなあ」
『えっ……そ、そんなに?』
「嘘つくん、めちゃくちゃヘタくそやん」
バッサリ言われてちょっとショックだったけど
楽しそうに笑ってくれている種ヶ島を見ると安心した。
『気圧の変化に弱いみたいで。
いつもは薬持ち歩いてるんだけど
今日は部屋に置いてきちゃって……心配かけてごめんね』
「前から痛いの我慢してるんやろなあて思うてた。
皆のおらんとこで薬も飲んでたみたいやし
心配かけへんようにしてくれてたんやろ。
せやけど、無理したらアカンよ」
『うん。ごめんね』
見たことないような優しい顔で、頭をぽんぽんと撫でられた。
あれ?なんかドキドキする。
「さっきから、謝ってばかりやん。
修さんとしては、お礼のほうが嬉しいんやけど~」
『ごめ、あ…………ふふっ、ありがとう』
にっこりと満足げな笑顔を見て
たまにはこうやって誰かに甘えるのも良いなと感じた。
しばらく話をしていたらコーヒーのおかげか
それとも種ヶ島のおかげか
薬はいらないくらいに頭痛は落ち着いてきた。
種ヶ島なりに色々調べてくれていたのか
味噌汁がいいだの、チョコレートはよくないだの
豆知識まで教えてくれる。
「そろそろ戻ろか?夕方になると冷えてくるし」
そうだね、と言おうと思ったのだけど
この穏やかな時間を手放すのが惜しいと思ってしまって
まだ少し甘えたい気持ちが芽生える。
「それとも、まだ一緒におる?」
顔を上げれば、種ヶ島はニヤっとしていて
ああ、また私顔に出たんだなって恥ずかしくなったけど
この男に隠し事なんて不可能なんだ。
どうせなら、ここぞとばかりに甘えてやろうと
彼の肩に再び頭を寄せてみた。
驚いたかのように
少しだけ彼の身体がピクッと反応したけど
すぐに私の手に、そっと種ヶ島の手が重ねられ
種ヶ島を探しに来た大曲に見つかるまでの間
しばらく、そうやっていた。
(あっぶな~。
俺としたことが危うくポロッと
好きや言うてまうとこやったわ。
あそこで甘えてくるなんて、ズルない?
詩穂ちゃんが甘えてくるて
えげつないほどの破壊力やん。
あれ素でやっとるからほんまタチ悪いわ。
”よく気づいたね”て、そらいつも見とるからなあ。
思うてたより手応えはありそやけど
本人は気づいてへんみたいやから、手強い相手やな)