写真の中の君へ
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
『これはこっちに運んで
1年生の皆はあっちを掃除してもらえる?』
私の指示に、元気よく返事をしてくれる1年生達を見送り
私は部室の書類整理を始めた。
12月30日の今日は、部活納めの日で
午前中は練習、午後からは全員で大掃除だ。
どうやらどの部活も同じらしく
外からはこれはどうする、あれはどこいっただの
色んな声がして騒がしい。
だけど、個人的にはこの喧騒がけっこう好きだったりもする。
皆でなにかやってる感が、楽しいのだ。
『よし、さっさと整理して掃除しなくちゃ』
マネージャーである私は
顧問から部室の書類を整理をメインにやってほしいと指示されていた。
過去数年分の書類が溜まっているらしく
仕分けて、シュレッダーして、それから掃除。
けっこうやることがあるから
手際よくやっていかなければならない。
さっさとやってしまおう、そう意気込んでいたのだけど
その勢いはすぐになくなってしまった。
『うわ、これ先生かな?若い〜』
書類に紛れたアルバムを見つけて中をめくると
若い頃の顧問や
見たことない歴代の部員たちの写真が出てきた。
昔のアルバムってなんでこんなに面白いんだろう
って思いながらページをめくると、次のページで手が止まる。
『この人って……』
小麦色の肌に太陽を浴びてキラキラ光る髪。
全体的に髪は短く、元気いっぱいに笑っている。
今の妖艶な微笑みも
色気のある仕草も無縁のような雰囲気だ。
見たことのないあどけない彼の写真を見ると
私はまだまだ彼のことを知らないのだと思い知らされる。
いいなあ、この頃を知ってる人は。
私は高校2年生になってからこの舞妓坂に転入してきた。
だからこの頃の彼を知らないのだ。
この写真、こんなところにしまっておくくらいなら
いっそのこと貰いたいものだな、なんて考えていたら
ガチャリとドアが開く音がした。
「書類の整理どない〜?手伝うで……って、おぉ?」
『あっ!!こ、これはその……』
ドアを開けた状態で固まっている種ヶ島は
きょとん、とした顔をしている。
慌てて写真を隠すけど、バッチリ見られてしまったようだ。
「また懐かしいもん見てるなあ〜」
『整理してたら出てきて…』
私の隣に立つと、すっと写真を手に取り
俺若くて可愛いやん☆なんて言ってるから
見たことに関してはなんとも思ってなさそう。
私だったら昔の写真なんて見られようものなら
絶対に怒るし慌てる自信があるのに。
「この頃の俺、見たことなかったやろ?」
『うん。だからつい見ちゃって』
「どない?」
『へ?』
「なんか感想とかあらへんの?」
感想って、なんて無茶振りを、と視線を返すも
彼はいつものようにニコニコと笑って
私が口を開くのを待っている。
この感じ、逃げられそうにない。
『…ちょっとお調子者の男の子って感じで可愛いね』
「ほうほう、それで?」
『……明るい雰囲気は今と変わらないけど、元気いっぱい、って感じ』
「ほかには?」
『…他にはって……お兄さんっていうより弟感があるというか…って
もういいでしょ?何が言わせたいの?』
ただ笑みを浮かべる彼に文句を伝えると
はぁ〜と大きなため息をつかれた。
なにその態度、ムカつく。
私は余計に腹が立ってきて、種ヶ島のお腹を軽く肘でつついた。
「あらら、拗ねてしもた?」
『べつに』
「ごめんて〜。俺が聞きたかったのは
俺がどうこうっていうより
理美の気持ちが聞きたかったんよなあ」
『気持ち…?』
「どう感じた?」
種ヶ島は私の目線に合わせて屈み込み
瞳の奥を覗き込んできた。
真っ直ぐな瞳に、全てを見透かされた気がした。
彼には、きっと全部お見通しだ。
『…私は、今の種ヶ島のことしか知らない。
昔の姿を初めて見て、羨ましかった。
どんなに願っても、写真でしか見ることができない姿に
会ってみたかったなって…。
それに、私は知らなくて入江くんとか皆が知ってるのが
ずるいなって思った…』
種ヶ島と付き合いだして数ヶ月が経つ。
女子から絶大な人気を誇る彼の彼女としてやっていくのは
予想以上に大変だった。
陰口は日常茶飯事だし
種ヶ島のおかげで直接何かされることはなかったけど
それでも良く思われていない、ということが
明確にわかるのは色々ときついものがある。
種ヶ島が気遣ってくれるからいつもなら大丈夫だけど
やっぱりこういう些細な出来事で
私の彼女としての自信はなくなりそうになってしまう。
ただの、過去の写真を見ただけなのに
こんなにも気にして、いじけて、拗ねている自分が情けない。
しばらく沈黙が続き
私の身体はゆっくりと種ヶ島の腕に包まれた。
大きな身体に抱きしめられると
不思議と落ち着くし、安堵感があって
胸の奥がきゅうっと締め付けられるような感じがした。
「ホンマに強情ちゃんなんやから」
『だって、写真見ただけでいじけてたとかメンヘラじゃん』
「別にそうは思わへんし、俺は嬉しいねんで〜。
俺愛されてるってことやん☆」
『そうだけど…』
だんだん恥ずかしくなってきて
彼の胸に顔を押し付ける。
すると、腕にぎゅっと、力がこもった。
「過去のことは、変えられへんし実際には見られへん。
でもそれは俺も同じなんやで?
理美がどんな姿やったのか、どんなふうに過ごしてたのか
俺だって知りたいのに、知られへんのはもどかしい」
『私の過去、気になるの?』
「そら気になるわ。好きなんやから」
種ヶ島の言葉で、さっきまでのモヤモヤとした気持ちが
すっかり、消え去ってしまった。
『種ヶ島の、昔の話聞きたい』
「ええで。いーっぱい聞かせたるよ。
お互い知らんのなら、これから知ればええ。
理美のことも聞かせてな」
『うん!』
いつかの未来、今日のことを思い出して
そんな過去もあったねと
ふたりで笑い合っていたら良いなって思った。
その時までに、素敵な思い出となる「過去」を
ふたりでつくっていきたい。
私は今から歩む未来を思い浮かべて
彼の腕の中で目を閉じたのだった。
(理美ちゃん達、片付けどう……って、はぁ)
(奏汰ぁ〜、ええとこやったのに。ノックくらいしてや)
(まさか部室でいちゃつくなんて思ってもなかったからね)
(い、入江くん!?ごめんね!!)
(いいよ、どうせ修さんが邪魔したんでしょ?)
(俺への扱いぞんざいやな〜)
(それにしても随分懐かしい写真だね。
あぁ、そういえばこの時のマネージャー
修さんのこと好きだったよね)
(ふーん)
(ちょ、奏汰くん?なんで今言うた?)
(昔のことだからいいかなって。
あ、僕はお邪魔だったね。じゃあ片付け頑張ってね)
(後で覚えときや…って、理美?理美さん?
そっぽ向かんとこっち向いてやあ〜)
1年生の皆はあっちを掃除してもらえる?』
私の指示に、元気よく返事をしてくれる1年生達を見送り
私は部室の書類整理を始めた。
12月30日の今日は、部活納めの日で
午前中は練習、午後からは全員で大掃除だ。
どうやらどの部活も同じらしく
外からはこれはどうする、あれはどこいっただの
色んな声がして騒がしい。
だけど、個人的にはこの喧騒がけっこう好きだったりもする。
皆でなにかやってる感が、楽しいのだ。
『よし、さっさと整理して掃除しなくちゃ』
マネージャーである私は
顧問から部室の書類を整理をメインにやってほしいと指示されていた。
過去数年分の書類が溜まっているらしく
仕分けて、シュレッダーして、それから掃除。
けっこうやることがあるから
手際よくやっていかなければならない。
さっさとやってしまおう、そう意気込んでいたのだけど
その勢いはすぐになくなってしまった。
『うわ、これ先生かな?若い〜』
書類に紛れたアルバムを見つけて中をめくると
若い頃の顧問や
見たことない歴代の部員たちの写真が出てきた。
昔のアルバムってなんでこんなに面白いんだろう
って思いながらページをめくると、次のページで手が止まる。
『この人って……』
小麦色の肌に太陽を浴びてキラキラ光る髪。
全体的に髪は短く、元気いっぱいに笑っている。
今の妖艶な微笑みも
色気のある仕草も無縁のような雰囲気だ。
見たことのないあどけない彼の写真を見ると
私はまだまだ彼のことを知らないのだと思い知らされる。
いいなあ、この頃を知ってる人は。
私は高校2年生になってからこの舞妓坂に転入してきた。
だからこの頃の彼を知らないのだ。
この写真、こんなところにしまっておくくらいなら
いっそのこと貰いたいものだな、なんて考えていたら
ガチャリとドアが開く音がした。
「書類の整理どない〜?手伝うで……って、おぉ?」
『あっ!!こ、これはその……』
ドアを開けた状態で固まっている種ヶ島は
きょとん、とした顔をしている。
慌てて写真を隠すけど、バッチリ見られてしまったようだ。
「また懐かしいもん見てるなあ〜」
『整理してたら出てきて…』
私の隣に立つと、すっと写真を手に取り
俺若くて可愛いやん☆なんて言ってるから
見たことに関してはなんとも思ってなさそう。
私だったら昔の写真なんて見られようものなら
絶対に怒るし慌てる自信があるのに。
「この頃の俺、見たことなかったやろ?」
『うん。だからつい見ちゃって』
「どない?」
『へ?』
「なんか感想とかあらへんの?」
感想って、なんて無茶振りを、と視線を返すも
彼はいつものようにニコニコと笑って
私が口を開くのを待っている。
この感じ、逃げられそうにない。
『…ちょっとお調子者の男の子って感じで可愛いね』
「ほうほう、それで?」
『……明るい雰囲気は今と変わらないけど、元気いっぱい、って感じ』
「ほかには?」
『…他にはって……お兄さんっていうより弟感があるというか…って
もういいでしょ?何が言わせたいの?』
ただ笑みを浮かべる彼に文句を伝えると
はぁ〜と大きなため息をつかれた。
なにその態度、ムカつく。
私は余計に腹が立ってきて、種ヶ島のお腹を軽く肘でつついた。
「あらら、拗ねてしもた?」
『べつに』
「ごめんて〜。俺が聞きたかったのは
俺がどうこうっていうより
理美の気持ちが聞きたかったんよなあ」
『気持ち…?』
「どう感じた?」
種ヶ島は私の目線に合わせて屈み込み
瞳の奥を覗き込んできた。
真っ直ぐな瞳に、全てを見透かされた気がした。
彼には、きっと全部お見通しだ。
『…私は、今の種ヶ島のことしか知らない。
昔の姿を初めて見て、羨ましかった。
どんなに願っても、写真でしか見ることができない姿に
会ってみたかったなって…。
それに、私は知らなくて入江くんとか皆が知ってるのが
ずるいなって思った…』
種ヶ島と付き合いだして数ヶ月が経つ。
女子から絶大な人気を誇る彼の彼女としてやっていくのは
予想以上に大変だった。
陰口は日常茶飯事だし
種ヶ島のおかげで直接何かされることはなかったけど
それでも良く思われていない、ということが
明確にわかるのは色々ときついものがある。
種ヶ島が気遣ってくれるからいつもなら大丈夫だけど
やっぱりこういう些細な出来事で
私の彼女としての自信はなくなりそうになってしまう。
ただの、過去の写真を見ただけなのに
こんなにも気にして、いじけて、拗ねている自分が情けない。
しばらく沈黙が続き
私の身体はゆっくりと種ヶ島の腕に包まれた。
大きな身体に抱きしめられると
不思議と落ち着くし、安堵感があって
胸の奥がきゅうっと締め付けられるような感じがした。
「ホンマに強情ちゃんなんやから」
『だって、写真見ただけでいじけてたとかメンヘラじゃん』
「別にそうは思わへんし、俺は嬉しいねんで〜。
俺愛されてるってことやん☆」
『そうだけど…』
だんだん恥ずかしくなってきて
彼の胸に顔を押し付ける。
すると、腕にぎゅっと、力がこもった。
「過去のことは、変えられへんし実際には見られへん。
でもそれは俺も同じなんやで?
理美がどんな姿やったのか、どんなふうに過ごしてたのか
俺だって知りたいのに、知られへんのはもどかしい」
『私の過去、気になるの?』
「そら気になるわ。好きなんやから」
種ヶ島の言葉で、さっきまでのモヤモヤとした気持ちが
すっかり、消え去ってしまった。
『種ヶ島の、昔の話聞きたい』
「ええで。いーっぱい聞かせたるよ。
お互い知らんのなら、これから知ればええ。
理美のことも聞かせてな」
『うん!』
いつかの未来、今日のことを思い出して
そんな過去もあったねと
ふたりで笑い合っていたら良いなって思った。
その時までに、素敵な思い出となる「過去」を
ふたりでつくっていきたい。
私は今から歩む未来を思い浮かべて
彼の腕の中で目を閉じたのだった。
(理美ちゃん達、片付けどう……って、はぁ)
(奏汰ぁ〜、ええとこやったのに。ノックくらいしてや)
(まさか部室でいちゃつくなんて思ってもなかったからね)
(い、入江くん!?ごめんね!!)
(いいよ、どうせ修さんが邪魔したんでしょ?)
(俺への扱いぞんざいやな〜)
(それにしても随分懐かしい写真だね。
あぁ、そういえばこの時のマネージャー
修さんのこと好きだったよね)
(ふーん)
(ちょ、奏汰くん?なんで今言うた?)
(昔のことだからいいかなって。
あ、僕はお邪魔だったね。じゃあ片付け頑張ってね)
(後で覚えときや…って、理美?理美さん?
そっぽ向かんとこっち向いてやあ〜)