恋の吉凶
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『竜次先輩、こっちの本の修繕終わりました』
「おう、ありがとよ。
あとはこの辺片すだけだからよ、お前はもう部屋戻れし」
『まだ手伝います!』
「そ、そーかよ。じゃあこれを…」
相棒が、後輩の女の子に懐かれてる。
しかもとびきり可愛い女の子。
ええなー。仲良しやん。と、恨めしそうな目で視線を送ると
竜次は居心地の悪そうな顔をした。
彼女、麻紀ちゃんはこの合宿のマネージャーで高校1年生。
可愛らしい見た目に反して
少しクールな性格がええギャップで
高校生からも中学生からも人気がある。
俺もそのギャップにやられた一人で
彼女と仲良くなりたいんやけど…
麻紀ちゃんは、いつの間にか竜次リスペクトになってて
あんな感じでいつも竜次のそばにおる。
ちょこちょこ本を抱えて
作業している麻紀ちゃんは可愛らしくて微笑ましいねんけど
やっぱり、面白くはない。
「竜次先輩〜、俺にも構って☆」
麻紀ちゃんが図書室の奥の方へ整理に行った隙に
竜次の側に寄る。
「あぁ?構ってもらいたいのは俺にじゃねーだろ」
クイッと顎で麻紀ちゃんのいる方を指す竜次には全部お見通し。
そら部屋でも羨ましいてずっと言ってるもんな俺。
ええチャンスなんやろうけど彼女を追いかけるのは気が引けた。
一応空気の読める男やから
彼女が俺を苦手としていることはなんとなくわかるし
なんなら俺は、今絶対邪魔な存在やろうしなあ。
そんな俺の様子を見て、竜次はため息をついて
その辺にあった本数冊を俺に渡してきた。
「悪い、これあいつに渡すの忘れてたわ。
持ってってくれや」
作られたきっかけが吉と出るか凶と出るか。
相棒の気遣いを素直に受け取り
俺は彼女の元へと向かった。
「麻紀ちゃん、この本もこっちの分なんやって〜」
せっせと本を並べ替えてる麻紀ちゃんは
俺を見ると一瞬驚いたような表情をした。
あ、やっぱりアカンかったか、と思いながらも
彼女の様子を観察していると
俺から本を受け取るとすぐにうーん、と考え込んでいた。
「どないしたん?」
『あっ、いえっ!この本ってジャンルが微妙だなって思って…
竜次先輩はなんでこの本をこっちにって
言ったんだろうって』
「そーなん?
竜次なんも言ってへんかったわ。聞いてこよか?」
『いえ!考えてみたいので、ちょっと内容パラッと見てみます』
そう言うと、その辺の椅子に座った麻紀ちゃんは俯き
本をパラパラと捲りはじめた。
肩に着かないくらいの髪がはらりと落ちて
項が色っぽいなあなんて下心ありありでその様子を見ていたら
伏し目がちに彼女は顔を上げた。
『あ、あの…戻られても大丈夫ですよ?』
「俺、やっぱ邪魔やった?」
気遣いの言葉やとは思うけど
拒絶された気がして少し嫌味っぽい発言が出てしもた。
俺感じ悪いなあ、って自分に呆れてたら
麻紀ちゃんはぶんぶんと首を振って
そんなに見られると恥ずかしいので、と小さく呟く。
うわ、やっぱこの子可愛いわ。
「ハハッ!麻紀ちゃんが可愛いから見惚れてしもたわ☆」
『そういうことを…いや、なんでもないです』
照れ隠しで背中を向けられる。
どうやら拒絶されていたわけではなく
思っていたよりも彼女の反応が良くて顔が緩む。
「竜次といつの間に仲良くなったん?」
『えっと…初めてここの図書室に来た時に
竜次さんが亜久津さんに注意してて…』
ああ、あの時かと思った。
図書室でのマナーを注意したら
亜久津がキレて本を落とし、竜次が徹夜で本を修繕したあの時。
どうやら彼女は近くでそのやり取りを見ていたらしい。
『それで、少しだけ修繕を手伝ったんですが…
私下手くそで。
竜次さんに上手な修繕の方法とか聞いたりしてたら
仲良くなったというか』
じゃあ竜次はなんも言わへんかったけど
図書室でちょいちょい会ってたっていうことか。
俺が麻紀ちゃん気に入ってるの知ってるから
気まずかったやろうなあ。
彼女は背を向けたままやから
どないな表情で話してるのかはわからない。
せやから、今しかないと思って
気になっていたことを口にした。
「竜次のことが、好きなん?」
肯定の言葉が来たらどないしよか、と思いつつも
どうしても、聞いてみたかった。
竜次はええ奴やけど、ポリアモリー気質や。
つらい恋になるんやないかと、勝手に心配になる。
俺だって特技が合コンやから人のこと言えへんけど
好きな人には、つらい思いをしてほしくはない。
そこまで考えて、俺はけっこう彼女に本気なんだと自覚した。
麻紀ちゃんは、俺の顔を窺うように
一瞬、振り向いた。
その顔は真っ赤になっていて
こりゃ失恋確定やな、なんてため息をつく。
彼女はまたパッと俺に背を向けて
呼吸を整えているようや。
『好きな人は、別にいます』
「………ん!?」
予想外の言葉に一瞬思考が遅れた。
好きか好きじゃないか、どちらかと思うてたから
まさか他にいるとくるとは。
『竜次先輩のことは尊敬してます。
本を大切にする姿勢とか素敵だなって。
この本だって、ジャンルが微妙って言いましたけど
竜次先輩はちゃんとわかってるんです。
そういうところが、すごいなって思って
師匠というか、兄というか、そういう気持ちで慕っています』
麻紀ちゃんの答えに、拍子抜けしてしまう。
なんや、そうやったんか。
せやけど安堵した気持ちと同時に
じゃあ相手は誰や?という疑問が浮かぶ。
「なら、好きな人は誰なん?」
ぴくっと、肩を揺らした麻紀ちゃんは
そのまま固まり言いあぐねている感じや。
『さ、さっきから私ばかりでズルくありません?』
「ごめんごめん。気になっててなあ」
『…種ヶ島先輩は、好きな人…いるんですか?』
このまま、麻紀ちゃんが好きやと
言ってしまいたい気もするけど
肝心な言葉はグッと我慢して飲み込む。
「好きな人はおるよ。
ずっとその子が、俺の相棒のことを好きやと思ってたんやけど
そうじゃないってわかってな〜。
今からが頑張り時やなって意気込んだとこやで。
せやから、片思いやねん」
そう言うと、背中合わせになるように座り
彼女の小さくて華奢な背中に、自分の背中を預ける。
驚いたように彼女の身体が跳ねたが
ゆっくりと、力が抜けていくのを感じて安心する。
温もりが、心地良い。
『それって……その……どういう、意味ですか…?』
「どういう意味やと思う?」
『だから、ズルいですって』
「これでも確証がないと動けへん小心者なタイプやねんで」
『絶対嘘ですよね』
「本気やとこうなんねん」
顔は見えへんくても
背中の熱が上がったのを感じて
これはイケるんやないか
麻紀ちゃんの好きな人は、俺なんとちゃうかって期待する。
確証は、あってもなくても俺は諦めへんよ。
絶対に振り向いてみせる。
背中の温もりを感じつつ
相棒のくれたきっかけは、吉と出たんとちゃうかなって
嬉しくなって口もとを押さえたのだった。
(竜次!俺うまくいきそうや☆)
(へいへい。そりゃよかったな)
(…もしかして、竜次、麻紀ちゃんの好きな人知ってるん?)
(さあな。知ってたとしても言わねぇし)
(そらそうか)
(…告るんなら、ちゃんとやれよ。合コンとか行くなし)
(わかってるわ!行くわけないやろ〜?
そもそも麻紀ちゃん好きになってからは行ってへんよ)
(なら良いし)
(え?竜次、もしかして兄心芽生えたん?)
(………)
(あ、図星やん)
「おう、ありがとよ。
あとはこの辺片すだけだからよ、お前はもう部屋戻れし」
『まだ手伝います!』
「そ、そーかよ。じゃあこれを…」
相棒が、後輩の女の子に懐かれてる。
しかもとびきり可愛い女の子。
ええなー。仲良しやん。と、恨めしそうな目で視線を送ると
竜次は居心地の悪そうな顔をした。
彼女、麻紀ちゃんはこの合宿のマネージャーで高校1年生。
可愛らしい見た目に反して
少しクールな性格がええギャップで
高校生からも中学生からも人気がある。
俺もそのギャップにやられた一人で
彼女と仲良くなりたいんやけど…
麻紀ちゃんは、いつの間にか竜次リスペクトになってて
あんな感じでいつも竜次のそばにおる。
ちょこちょこ本を抱えて
作業している麻紀ちゃんは可愛らしくて微笑ましいねんけど
やっぱり、面白くはない。
「竜次先輩〜、俺にも構って☆」
麻紀ちゃんが図書室の奥の方へ整理に行った隙に
竜次の側に寄る。
「あぁ?構ってもらいたいのは俺にじゃねーだろ」
クイッと顎で麻紀ちゃんのいる方を指す竜次には全部お見通し。
そら部屋でも羨ましいてずっと言ってるもんな俺。
ええチャンスなんやろうけど彼女を追いかけるのは気が引けた。
一応空気の読める男やから
彼女が俺を苦手としていることはなんとなくわかるし
なんなら俺は、今絶対邪魔な存在やろうしなあ。
そんな俺の様子を見て、竜次はため息をついて
その辺にあった本数冊を俺に渡してきた。
「悪い、これあいつに渡すの忘れてたわ。
持ってってくれや」
作られたきっかけが吉と出るか凶と出るか。
相棒の気遣いを素直に受け取り
俺は彼女の元へと向かった。
「麻紀ちゃん、この本もこっちの分なんやって〜」
せっせと本を並べ替えてる麻紀ちゃんは
俺を見ると一瞬驚いたような表情をした。
あ、やっぱりアカンかったか、と思いながらも
彼女の様子を観察していると
俺から本を受け取るとすぐにうーん、と考え込んでいた。
「どないしたん?」
『あっ、いえっ!この本ってジャンルが微妙だなって思って…
竜次先輩はなんでこの本をこっちにって
言ったんだろうって』
「そーなん?
竜次なんも言ってへんかったわ。聞いてこよか?」
『いえ!考えてみたいので、ちょっと内容パラッと見てみます』
そう言うと、その辺の椅子に座った麻紀ちゃんは俯き
本をパラパラと捲りはじめた。
肩に着かないくらいの髪がはらりと落ちて
項が色っぽいなあなんて下心ありありでその様子を見ていたら
伏し目がちに彼女は顔を上げた。
『あ、あの…戻られても大丈夫ですよ?』
「俺、やっぱ邪魔やった?」
気遣いの言葉やとは思うけど
拒絶された気がして少し嫌味っぽい発言が出てしもた。
俺感じ悪いなあ、って自分に呆れてたら
麻紀ちゃんはぶんぶんと首を振って
そんなに見られると恥ずかしいので、と小さく呟く。
うわ、やっぱこの子可愛いわ。
「ハハッ!麻紀ちゃんが可愛いから見惚れてしもたわ☆」
『そういうことを…いや、なんでもないです』
照れ隠しで背中を向けられる。
どうやら拒絶されていたわけではなく
思っていたよりも彼女の反応が良くて顔が緩む。
「竜次といつの間に仲良くなったん?」
『えっと…初めてここの図書室に来た時に
竜次さんが亜久津さんに注意してて…』
ああ、あの時かと思った。
図書室でのマナーを注意したら
亜久津がキレて本を落とし、竜次が徹夜で本を修繕したあの時。
どうやら彼女は近くでそのやり取りを見ていたらしい。
『それで、少しだけ修繕を手伝ったんですが…
私下手くそで。
竜次さんに上手な修繕の方法とか聞いたりしてたら
仲良くなったというか』
じゃあ竜次はなんも言わへんかったけど
図書室でちょいちょい会ってたっていうことか。
俺が麻紀ちゃん気に入ってるの知ってるから
気まずかったやろうなあ。
彼女は背を向けたままやから
どないな表情で話してるのかはわからない。
せやから、今しかないと思って
気になっていたことを口にした。
「竜次のことが、好きなん?」
肯定の言葉が来たらどないしよか、と思いつつも
どうしても、聞いてみたかった。
竜次はええ奴やけど、ポリアモリー気質や。
つらい恋になるんやないかと、勝手に心配になる。
俺だって特技が合コンやから人のこと言えへんけど
好きな人には、つらい思いをしてほしくはない。
そこまで考えて、俺はけっこう彼女に本気なんだと自覚した。
麻紀ちゃんは、俺の顔を窺うように
一瞬、振り向いた。
その顔は真っ赤になっていて
こりゃ失恋確定やな、なんてため息をつく。
彼女はまたパッと俺に背を向けて
呼吸を整えているようや。
『好きな人は、別にいます』
「………ん!?」
予想外の言葉に一瞬思考が遅れた。
好きか好きじゃないか、どちらかと思うてたから
まさか他にいるとくるとは。
『竜次先輩のことは尊敬してます。
本を大切にする姿勢とか素敵だなって。
この本だって、ジャンルが微妙って言いましたけど
竜次先輩はちゃんとわかってるんです。
そういうところが、すごいなって思って
師匠というか、兄というか、そういう気持ちで慕っています』
麻紀ちゃんの答えに、拍子抜けしてしまう。
なんや、そうやったんか。
せやけど安堵した気持ちと同時に
じゃあ相手は誰や?という疑問が浮かぶ。
「なら、好きな人は誰なん?」
ぴくっと、肩を揺らした麻紀ちゃんは
そのまま固まり言いあぐねている感じや。
『さ、さっきから私ばかりでズルくありません?』
「ごめんごめん。気になっててなあ」
『…種ヶ島先輩は、好きな人…いるんですか?』
このまま、麻紀ちゃんが好きやと
言ってしまいたい気もするけど
肝心な言葉はグッと我慢して飲み込む。
「好きな人はおるよ。
ずっとその子が、俺の相棒のことを好きやと思ってたんやけど
そうじゃないってわかってな〜。
今からが頑張り時やなって意気込んだとこやで。
せやから、片思いやねん」
そう言うと、背中合わせになるように座り
彼女の小さくて華奢な背中に、自分の背中を預ける。
驚いたように彼女の身体が跳ねたが
ゆっくりと、力が抜けていくのを感じて安心する。
温もりが、心地良い。
『それって……その……どういう、意味ですか…?』
「どういう意味やと思う?」
『だから、ズルいですって』
「これでも確証がないと動けへん小心者なタイプやねんで」
『絶対嘘ですよね』
「本気やとこうなんねん」
顔は見えへんくても
背中の熱が上がったのを感じて
これはイケるんやないか
麻紀ちゃんの好きな人は、俺なんとちゃうかって期待する。
確証は、あってもなくても俺は諦めへんよ。
絶対に振り向いてみせる。
背中の温もりを感じつつ
相棒のくれたきっかけは、吉と出たんとちゃうかなって
嬉しくなって口もとを押さえたのだった。
(竜次!俺うまくいきそうや☆)
(へいへい。そりゃよかったな)
(…もしかして、竜次、麻紀ちゃんの好きな人知ってるん?)
(さあな。知ってたとしても言わねぇし)
(そらそうか)
(…告るんなら、ちゃんとやれよ。合コンとか行くなし)
(わかってるわ!行くわけないやろ〜?
そもそも麻紀ちゃん好きになってからは行ってへんよ)
(なら良いし)
(え?竜次、もしかして兄心芽生えたん?)
(………)
(あ、図星やん)