飛行機嫌いの苦悩
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“本来は1軍なのに
飛行機が嫌いで海外遠征に行かなかった種ヶ島修二”
そんな長ったらしい異名が付いて
長い長い、とツッコミながら
なんとか笑いに持ってく自分が情けない。
今や俺の飛行機嫌いに関して誰もなんも言わへんけど
最初の頃は皆心底驚いてたし
中には呆れとる奴もおったし
No.2やからって調子乗っとる、とか言うやつもおった。
調子乗っとる、は
どうやらまだ言うやつもおるみたいで
今回の遠征に行かへんかったことも
陰で色々言われてるようやった。
まあ、そんなこと言うやつには負けへんから
好きに言うたってって感じやねんけど。
好きで、乗らへんわけやない。
俺だって普通に遠征行きたい。
行ったとしても、一人だけ船で特別扱いしてもらうんも
申し訳ないと思ってる。
せやから、結果だけはちゃんと残さなアカンと思って
絶対にNo.2は譲らへんって
俺以外が遠征行っとる間も、日本で出来る限りの努力はしてた。
せやけど、帰ってきた面々を見たら
すぐに追い越されてまうんやないかって
ガラにもなく焦ってしまう。
「俺のメンタル7はどこに行ってもうたんや〜」
自室のベッドに寝転がり
一人で盛大な独り言を言い放つ。
メンタルには、というより自分のメンタルを
安定させることには自信がある。
焦ってるんも、弱ってるんも
他人にはバレへんように取り繕うのは得意や。
得意やけども、たまに気を抜いたらブレてまうから
こういうときは自室に籠もって
ただ色んなことを考えて瞑想して気持ちを固める。
そうすれば、明日にはいつもの俺が戻ってくる。
「明日から竜次との相部屋やし
今日まで一人部屋で良かったわ」
相棒であり、ライバルである竜次も
きっとまた強くなっているはずだ。
俺は、強くなれているんやろうか。
その時、コンコンと部屋のドアがノックされ
俺を呼ぶ声がした。
こんな時間にどうしたんだろうかと思いながらドアを開けると
マネージャーである一つ歳下の神奈ちゃんが立っていた。
『すみません、お休み中でしたか?』
「いや、大丈夫やで。どないしたん?」
何か連絡事項があったのだろうかと思っていたら
彼女は手にしていたビニール袋から
ガサッと大きな袋を取り出した。
『これどうぞ。遠征先のお土産です』
「お土産?俺に?」
はい、と差し出され受け取ると、それは韓国のりの大袋。
『韓国のり、お好きでしたよね?
せっかくの韓国なのに、皆さん先輩がいないから
って言ってて…
つい買ってしまいました』
「わざわざ買うてきてくれたん…。俺行かへんやったのに」
『何言ってるんですか?
先輩の場合行かないっていうか、行けなかった、でしょう?』
きょとんとしている彼女の言葉に
不覚にも胸が掴まれるような感覚に陥った。
「そうやな。行けへんかった、な」
『どうしたんですか?
なんか種ヶ島先輩らしくないというか、元気ないです?』
「ん〜、まあ色々考え事。
それより、遠征どないやったん?」
誤魔化すように聞けば
彼女は向こうでの様子を語ってくれた。
せやけどすぐに聞いたことを後悔するほど
他のメンバーの活躍は甚だしく
俺はまた得も言われぬ焦燥感に駆られてしまう。
アカン、うまく笑えてへんかも
そう思ったとき、彼女の手が俺の頭に触れた。
「えっと…どういう状況?」
『すみません、つい。
…痛そうというか、つらそうに見えたので。
少しお疲れなんじゃないですか?』
だからと言って、頭を撫でられるのは予想外すぎて
少し天然な彼女らしい行動に
徐々に面白くなってきた。
子供やあらへんのに、子供を心配するような視線に
耐えられなくなって俺は腹を抱えて笑いしゃがみ込んだ。
『え!?具合悪いんですか…!?』
「ちゃうちゃう…子供相手みたいに
神奈ちゃん心配してくれんねんなあっておもろなって」
失礼だと思いますが、子供みたいな顔をされてましたよ?』
俺が変に焦ってるのも、劣等感を感じているのも
いくら格好つけようが、どうやら彼女にはお見通しのようだ。
そう思うと、一気に気が緩んできた。
「飛行機乗れへんのも、つらいわあ」
『怖いものは、誰にだってありますから。
克服は難しくても
種ヶ島先輩は先輩なりにそれをカバーする努力をされているから
すごいなっていつも尊敬しています』
声が胸に、頭に響く。
『今回だって、こっちで
人一倍メニューこなされてますよね?
皆さん、気づいていますよ。
NO.2を守るために、追い越されないために、
強くなるために努力されているの、格好いいです』
彼女は先程からずっと欲しかった言葉をくれた。
俺は情けないほど自分の弱みに対して卑屈になっていて
自分では気が付かないほど
人の言葉に傷ついていたことを思い知らされた。
「メンタル7も、まだまだやな」
『やっぱり弱ってたんです?』
「そうみたいや。自分でも気づけへんなんてアカンなあ」
『そういうのって、自分で気が付けないものですよ。
私が自分で疲れていることに気付けないとき
種ヶ島先輩がいつも声かけてくれるじゃないですか。
それと一緒です』
「神奈ちゃん自分のことには鈍感やもんな。俺も同じやったってことか。
似たもん同士やん、俺ら」
そうかも、と笑う彼女の笑顔は優しくて
ずっと見ていたいと思えるほど美しかった。
俺はしゃがみこんだままの体制だったので
神奈ちゃんに手を伸ばすと、よいしょ、と
声をあげて俺を引っ張り立たせてくれた。
そのとき、反動で彼女の小さな体は俺の胸にぽすん、と収まり
必然的に抱きしめるような体制になる。
『わっ!!ご、ごめんなさい・・・!』
普段照れる様子などなかなか見られないほど
彼女は比較的落ち着いているタイプなのだが
俺に触れて、わたわたと照れる姿は珍しくて、可愛らしい。
「照れてるん?かーわいい」
『そりゃ照れるに決まってるじゃないですか・・・!
って、離して下さいよっ』
「えぇ~?俺弱ってるし、ちょっとくらいええやん?」
弱ってる、というと大人しく抱きしめられてくれる彼女は
耳まで真っ赤になっていて
ずるいよなあと思いつつも彼女の温もりに甘える。
じゃあちょっとだけ、と言って
腰辺りにおずおずと手を回されて
俺は自分の顔が破顔するのがわかった。
自分で自分を見失ったときは
彼女の存在がきっと俺を支えてくれる。
今はマネージャーとしてかもしれないが
いつかは、俺だけを支えてくれる存在になってほしいと
本気で思ったのだった。
(いや~竜次が通りかかってくれて良かったわあ。
危うく部屋に連れ込んでまうとこやったわ☆)
(お前、勘弁しろし。何手ぇ出してんだ)
(せやけど神奈ちゃんが可愛いのが悪いねん。
あれは誰でもぐらっとくるで)
(じゃあ気を付けねえとな。
じゃねぇとすぐ誰かに取られちまうぞ)
(竜次、狙ろうてるん?)
(さあ。どうだかな。ま、頑張れや。
お前にお土産買っていこうなんて言ってたのは
あいつぐらいだしよ)
(もうなんなん。あの子可愛過ぎんねんけど)
飛行機が嫌いで海外遠征に行かなかった種ヶ島修二”
そんな長ったらしい異名が付いて
長い長い、とツッコミながら
なんとか笑いに持ってく自分が情けない。
今や俺の飛行機嫌いに関して誰もなんも言わへんけど
最初の頃は皆心底驚いてたし
中には呆れとる奴もおったし
No.2やからって調子乗っとる、とか言うやつもおった。
調子乗っとる、は
どうやらまだ言うやつもおるみたいで
今回の遠征に行かへんかったことも
陰で色々言われてるようやった。
まあ、そんなこと言うやつには負けへんから
好きに言うたってって感じやねんけど。
好きで、乗らへんわけやない。
俺だって普通に遠征行きたい。
行ったとしても、一人だけ船で特別扱いしてもらうんも
申し訳ないと思ってる。
せやから、結果だけはちゃんと残さなアカンと思って
絶対にNo.2は譲らへんって
俺以外が遠征行っとる間も、日本で出来る限りの努力はしてた。
せやけど、帰ってきた面々を見たら
すぐに追い越されてまうんやないかって
ガラにもなく焦ってしまう。
「俺のメンタル7はどこに行ってもうたんや〜」
自室のベッドに寝転がり
一人で盛大な独り言を言い放つ。
メンタルには、というより自分のメンタルを
安定させることには自信がある。
焦ってるんも、弱ってるんも
他人にはバレへんように取り繕うのは得意や。
得意やけども、たまに気を抜いたらブレてまうから
こういうときは自室に籠もって
ただ色んなことを考えて瞑想して気持ちを固める。
そうすれば、明日にはいつもの俺が戻ってくる。
「明日から竜次との相部屋やし
今日まで一人部屋で良かったわ」
相棒であり、ライバルである竜次も
きっとまた強くなっているはずだ。
俺は、強くなれているんやろうか。
その時、コンコンと部屋のドアがノックされ
俺を呼ぶ声がした。
こんな時間にどうしたんだろうかと思いながらドアを開けると
マネージャーである一つ歳下の神奈ちゃんが立っていた。
『すみません、お休み中でしたか?』
「いや、大丈夫やで。どないしたん?」
何か連絡事項があったのだろうかと思っていたら
彼女は手にしていたビニール袋から
ガサッと大きな袋を取り出した。
『これどうぞ。遠征先のお土産です』
「お土産?俺に?」
はい、と差し出され受け取ると、それは韓国のりの大袋。
『韓国のり、お好きでしたよね?
せっかくの韓国なのに、皆さん先輩がいないから
って言ってて…
つい買ってしまいました』
「わざわざ買うてきてくれたん…。俺行かへんやったのに」
『何言ってるんですか?
先輩の場合行かないっていうか、行けなかった、でしょう?』
きょとんとしている彼女の言葉に
不覚にも胸が掴まれるような感覚に陥った。
「そうやな。行けへんかった、な」
『どうしたんですか?
なんか種ヶ島先輩らしくないというか、元気ないです?』
「ん〜、まあ色々考え事。
それより、遠征どないやったん?」
誤魔化すように聞けば
彼女は向こうでの様子を語ってくれた。
せやけどすぐに聞いたことを後悔するほど
他のメンバーの活躍は甚だしく
俺はまた得も言われぬ焦燥感に駆られてしまう。
アカン、うまく笑えてへんかも
そう思ったとき、彼女の手が俺の頭に触れた。
「えっと…どういう状況?」
『すみません、つい。
…痛そうというか、つらそうに見えたので。
少しお疲れなんじゃないですか?』
だからと言って、頭を撫でられるのは予想外すぎて
少し天然な彼女らしい行動に
徐々に面白くなってきた。
子供やあらへんのに、子供を心配するような視線に
耐えられなくなって俺は腹を抱えて笑いしゃがみ込んだ。
『え!?具合悪いんですか…!?』
「ちゃうちゃう…子供相手みたいに
神奈ちゃん心配してくれんねんなあっておもろなって」
失礼だと思いますが、子供みたいな顔をされてましたよ?』
俺が変に焦ってるのも、劣等感を感じているのも
いくら格好つけようが、どうやら彼女にはお見通しのようだ。
そう思うと、一気に気が緩んできた。
「飛行機乗れへんのも、つらいわあ」
『怖いものは、誰にだってありますから。
克服は難しくても
種ヶ島先輩は先輩なりにそれをカバーする努力をされているから
すごいなっていつも尊敬しています』
声が胸に、頭に響く。
『今回だって、こっちで
人一倍メニューこなされてますよね?
皆さん、気づいていますよ。
NO.2を守るために、追い越されないために、
強くなるために努力されているの、格好いいです』
彼女は先程からずっと欲しかった言葉をくれた。
俺は情けないほど自分の弱みに対して卑屈になっていて
自分では気が付かないほど
人の言葉に傷ついていたことを思い知らされた。
「メンタル7も、まだまだやな」
『やっぱり弱ってたんです?』
「そうみたいや。自分でも気づけへんなんてアカンなあ」
『そういうのって、自分で気が付けないものですよ。
私が自分で疲れていることに気付けないとき
種ヶ島先輩がいつも声かけてくれるじゃないですか。
それと一緒です』
「神奈ちゃん自分のことには鈍感やもんな。俺も同じやったってことか。
似たもん同士やん、俺ら」
そうかも、と笑う彼女の笑顔は優しくて
ずっと見ていたいと思えるほど美しかった。
俺はしゃがみこんだままの体制だったので
神奈ちゃんに手を伸ばすと、よいしょ、と
声をあげて俺を引っ張り立たせてくれた。
そのとき、反動で彼女の小さな体は俺の胸にぽすん、と収まり
必然的に抱きしめるような体制になる。
『わっ!!ご、ごめんなさい・・・!』
普段照れる様子などなかなか見られないほど
彼女は比較的落ち着いているタイプなのだが
俺に触れて、わたわたと照れる姿は珍しくて、可愛らしい。
「照れてるん?かーわいい」
『そりゃ照れるに決まってるじゃないですか・・・!
って、離して下さいよっ』
「えぇ~?俺弱ってるし、ちょっとくらいええやん?」
弱ってる、というと大人しく抱きしめられてくれる彼女は
耳まで真っ赤になっていて
ずるいよなあと思いつつも彼女の温もりに甘える。
じゃあちょっとだけ、と言って
腰辺りにおずおずと手を回されて
俺は自分の顔が破顔するのがわかった。
自分で自分を見失ったときは
彼女の存在がきっと俺を支えてくれる。
今はマネージャーとしてかもしれないが
いつかは、俺だけを支えてくれる存在になってほしいと
本気で思ったのだった。
(いや~竜次が通りかかってくれて良かったわあ。
危うく部屋に連れ込んでまうとこやったわ☆)
(お前、勘弁しろし。何手ぇ出してんだ)
(せやけど神奈ちゃんが可愛いのが悪いねん。
あれは誰でもぐらっとくるで)
(じゃあ気を付けねえとな。
じゃねぇとすぐ誰かに取られちまうぞ)
(竜次、狙ろうてるん?)
(さあ。どうだかな。ま、頑張れや。
お前にお土産買っていこうなんて言ってたのは
あいつぐらいだしよ)
(もうなんなん。あの子可愛過ぎんねんけど)