幼馴染の憂鬱
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「珠紀さんってさ、種ヶ島くんと付き合ってるの?」
もう何度目になるかわからないこの台詞に
いいえ違います、付き合っていません
ただの幼馴染です
と、いつものテンプレートで回答する。
こう答えると大抵は嬉しそうな反応をするのだけど
今回は吐き捨てるように
「紛らわしいんだけど。うろうろしないでよね」
って攻撃的に返されて
何もしてないのに何でモヤッとするような
嫌な思いをしてるんだろう私、ってなった。
私がこんな理不尽な思いをする原因は
モテる幼馴染、種ヶ島修二のせいだ。
中学生の頃まではそうでもなかった。
それが高校に進学してから
ちょっとずつ周りの反応が変わり始めた。
1年生の頃はまだ幼さもあって
お調子者の元気な男子って感じで可愛いと人気だったのが
調子の良いところに色気が足され
さらに気遣いと配慮のできるスマートさが合わさり
しかも身長も伸びて顔も良いもんだから
そりゃ女子が騒ぐわけで。
だから幼馴染である私は
修二と、修二のファンに振り回される日々なのだ。
「おーい、[#dc=2#]~。頼む!お金貸してや」
『また来たの?しかもお金って財布は?』
「財布忘れてもーた☆」
じとっと睨めばちょこっと舌を出してウィンクしてくる。
可愛いって少し思う自分に腹立つ。
『1,000円で良い?足りる?』
「飲みもん買うだけやから小銭でええで」
『部活帰りにいつもなんか買ってるでしょ。
明日返してくれれば良いから』
「あらあら、流石は理解ある幼馴染珠紀様☆
俺のことわかってるやん」
『うるさーい。授業始まるからもう早く行って』
おーきにな、と去っていく修二を見てため息を付く。
修二とは違うクラスなのだけど
こうやって毎日必ず1回は私のクラスにやってきて
何か借りていったりするのだ。
なるべく目立つことはしてほしくないのに。
しかも私の席は廊下側の端っこで、窓側だ。
だから、修二はよく私のいる席の窓を空けてやってくる。
私は自分の席に座り
修二は廊下側の窓から身を乗り出して私と話す
そんな構図だから教室の皆にも
廊下を通る他の生徒からも
私達が話している様子は見られていて
そのせいで「付き合っているのか」と問われるのだ。
「もういっそのこと付き合っちゃえばいいのに」
『他人事だからって簡単に言っちゃって』
「その通り。ボクにとっては他人事」
売店で遭遇した入江に
巻き込まれ事案についての愚痴をこぼすと
サラッと、とんでもない発言をされた。
こんなことを
また修二のファンに聞かれでもしたらと思うとヒヤヒヤする。
「だって、修さんとここまで相性の良い人って
珠紀さんしかいないんじゃない?」
『いや、相性というかただの腐れ縁というか…』
「なんでも良いけど、ボクはお似合いだと思うよ」
入江は頑張ってね、言って去って行った。
お似合い、と言われて嫌な気はしない。
だって、私は修二のことが好きだから。
きっと入江は私の気持ちをわかってて
あんなふうに言ったんだろう。
だけど幼馴染って関係性が出来上がると
なかなか前に進めないし
修二の気持ちは読めないし
ファンからやられそうだし、もう色々と面倒なのだ。
だからこのままで良い。
自販機で買ったジュースを飲みながら教室へと戻っていると
ふと、視線を感じた。
視線の方へと目をやれば
今朝私に修二の周りをうろうろするな、と
攻撃的に言ってきた子が友達数人と一緒にこちらを見ている。
ああ、もうすっごい面倒くさい。
絶対何か言ってる。
そばを通るのが嫌だけど逃げるのは癪に触るし
私はさっさと通ってしまうことにしたのだけど
案の定、私の悪口が聞こえてきた。
こういうのは慣れているのでスルーするのが一番
そう思っていたのだけど
「入江くんにも手ぇ出すとか信じらんない」
その一言にカチン、ときた。
『入江は友達。
友達と話をするのさえ文句言われなきゃいけないの?』
さっき、入江は私の愚痴を聞いてくれて
頑張れって言ってくれた。
友達との時間を貶すような言い方は頭にくる。
彼女たちは、私の反論が予想外だったのか
少し萎縮している。
ただ、あの今朝の彼女はどうやら気が強いらしく
盛大に私にぶつかり
「ただの幼馴染のくせに」と吐き捨てて行った。
『あー…もう……』
ぶつかった拍子に手にしていたジュースが溢れ
制服に染みを作った。
ベタベタするし、ぶつかった肩は痛いし
何やってるんだろう。
カッターシャツの染みのように
どんどん嫌な気持ちが広がっていくのを感じて
自分の中が、心が、黒く、汚れていく気がする。
泣きそうになるのを堪えていたら
バサッと上から何かが落ちてきた。
「盛大なドジっ子がおるなあと思ったら」
上から落ちてきたのは修二のカーディガン。
ジュースまみれの姿を隠すようにと
無理矢理羽織らさせる。
『ありがと…ちょっとよろけたの』
「あの子けっこう体格良かったもんなあ。
そら華奢な珠紀は負けてまうわ」
見てたのか、と思うと色々と苛立ってきた。
『誰のせいでこんな目にあってると思ってんのよ…
いつもいつも幼馴染って理由でやっかみ受けて
嫌なことばっかり…。もう、幼馴染なんてやめたい』
今まで色んな女の子たちに修二との関係を聞かれ
ただの幼馴染、と答えるたびに
自分自身が傷ついていた。
私と修二の関係をことさら鮮明に自覚させられて
それ以上でも、それ以下でもない間柄に
私はどうすることもできなかった。
傷つくし嫌な思いするくらいなら
もう、やめてしまえばいいんだ。
そばにいられなくなるかもしれないけど
きっとその方が楽なんだ。
「なら、幼馴染やめよか」
自分で言ったくせに
修二の口からはっきりと言われるとすごく悲しくなった。
やめるって、どうするんだろう。
もう教室に来なくなるってことだよね。
一緒に帰ったり
部活の応援に行ったり
帰りにゲーセンで遊んだり
そういうことも、しなくなるってこと。
そう思うと、寂しいと思ってしまった。
「寂しくないん?俺が会いに行かへんの」
『………寂しい、かも』
「かもってなんやの。俺は寂しいで。
珠紀がおらんと物足りひん」
『………』
「せやから、幼馴染はもうやめにして
彼女になったらええやん?」
『は?』
何の冗談かと思い顔を上げると
口元は笑ってはいるものの
真剣な眼差しの修二と目が合う。
『い、いや…何言ってるの。
そうなったらもっと色々言われるだろうし
それに、幼馴染だからってそこまでしなくても…
好きじゃ、ないんだし…』
「周りには色々言わせへんよ。
彼女やったらもっと堂々と守れるし
幼馴染特典で言うてるわけでもない。
ええ加減素直にならへん?俺のこと好きやろ?」
『わ、私は…』
「俺は好きやで。
珠紀のこと幼馴染やなんて思うたことあらへん。
俺にとっては、ずっと好きな人やった。
せやから、これからは
俺に彼氏として珠紀のこと守らせてや」
私が逃げないようにか、ガシッと逞しい腕に捕まえられ
返事は?と耳元で囁かれる。
手の体温と、耳元の吐息と
カーディガンから香る修二の香りに
くらくらしながら
私は喜びに震える声で彼に気持ちを伝えたのだった。
(付き合いだして見られることはあっても
色々言われることは本当になくなったわ…)
(せやろなぁ〜)
(なんかした?)
(ん〜?なんもしとらんで)
(だってこんなに静かになるなんて)
(勝ち目ないって思うほど、お似合いなんとちゃう?
幼馴染で両思いとか最強やん☆)
(静かで良いんだけど…なんか男子がよそよそしいのよね)
(そら牽制はしとるからやな…とは言わんどこ)
もう何度目になるかわからないこの台詞に
いいえ違います、付き合っていません
ただの幼馴染です
と、いつものテンプレートで回答する。
こう答えると大抵は嬉しそうな反応をするのだけど
今回は吐き捨てるように
「紛らわしいんだけど。うろうろしないでよね」
って攻撃的に返されて
何もしてないのに何でモヤッとするような
嫌な思いをしてるんだろう私、ってなった。
私がこんな理不尽な思いをする原因は
モテる幼馴染、種ヶ島修二のせいだ。
中学生の頃まではそうでもなかった。
それが高校に進学してから
ちょっとずつ周りの反応が変わり始めた。
1年生の頃はまだ幼さもあって
お調子者の元気な男子って感じで可愛いと人気だったのが
調子の良いところに色気が足され
さらに気遣いと配慮のできるスマートさが合わさり
しかも身長も伸びて顔も良いもんだから
そりゃ女子が騒ぐわけで。
だから幼馴染である私は
修二と、修二のファンに振り回される日々なのだ。
「おーい、[#dc=2#]~。頼む!お金貸してや」
『また来たの?しかもお金って財布は?』
「財布忘れてもーた☆」
じとっと睨めばちょこっと舌を出してウィンクしてくる。
可愛いって少し思う自分に腹立つ。
『1,000円で良い?足りる?』
「飲みもん買うだけやから小銭でええで」
『部活帰りにいつもなんか買ってるでしょ。
明日返してくれれば良いから』
「あらあら、流石は理解ある幼馴染珠紀様☆
俺のことわかってるやん」
『うるさーい。授業始まるからもう早く行って』
おーきにな、と去っていく修二を見てため息を付く。
修二とは違うクラスなのだけど
こうやって毎日必ず1回は私のクラスにやってきて
何か借りていったりするのだ。
なるべく目立つことはしてほしくないのに。
しかも私の席は廊下側の端っこで、窓側だ。
だから、修二はよく私のいる席の窓を空けてやってくる。
私は自分の席に座り
修二は廊下側の窓から身を乗り出して私と話す
そんな構図だから教室の皆にも
廊下を通る他の生徒からも
私達が話している様子は見られていて
そのせいで「付き合っているのか」と問われるのだ。
「もういっそのこと付き合っちゃえばいいのに」
『他人事だからって簡単に言っちゃって』
「その通り。ボクにとっては他人事」
売店で遭遇した入江に
巻き込まれ事案についての愚痴をこぼすと
サラッと、とんでもない発言をされた。
こんなことを
また修二のファンに聞かれでもしたらと思うとヒヤヒヤする。
「だって、修さんとここまで相性の良い人って
珠紀さんしかいないんじゃない?」
『いや、相性というかただの腐れ縁というか…』
「なんでも良いけど、ボクはお似合いだと思うよ」
入江は頑張ってね、言って去って行った。
お似合い、と言われて嫌な気はしない。
だって、私は修二のことが好きだから。
きっと入江は私の気持ちをわかってて
あんなふうに言ったんだろう。
だけど幼馴染って関係性が出来上がると
なかなか前に進めないし
修二の気持ちは読めないし
ファンからやられそうだし、もう色々と面倒なのだ。
だからこのままで良い。
自販機で買ったジュースを飲みながら教室へと戻っていると
ふと、視線を感じた。
視線の方へと目をやれば
今朝私に修二の周りをうろうろするな、と
攻撃的に言ってきた子が友達数人と一緒にこちらを見ている。
ああ、もうすっごい面倒くさい。
絶対何か言ってる。
そばを通るのが嫌だけど逃げるのは癪に触るし
私はさっさと通ってしまうことにしたのだけど
案の定、私の悪口が聞こえてきた。
こういうのは慣れているのでスルーするのが一番
そう思っていたのだけど
「入江くんにも手ぇ出すとか信じらんない」
その一言にカチン、ときた。
『入江は友達。
友達と話をするのさえ文句言われなきゃいけないの?』
さっき、入江は私の愚痴を聞いてくれて
頑張れって言ってくれた。
友達との時間を貶すような言い方は頭にくる。
彼女たちは、私の反論が予想外だったのか
少し萎縮している。
ただ、あの今朝の彼女はどうやら気が強いらしく
盛大に私にぶつかり
「ただの幼馴染のくせに」と吐き捨てて行った。
『あー…もう……』
ぶつかった拍子に手にしていたジュースが溢れ
制服に染みを作った。
ベタベタするし、ぶつかった肩は痛いし
何やってるんだろう。
カッターシャツの染みのように
どんどん嫌な気持ちが広がっていくのを感じて
自分の中が、心が、黒く、汚れていく気がする。
泣きそうになるのを堪えていたら
バサッと上から何かが落ちてきた。
「盛大なドジっ子がおるなあと思ったら」
上から落ちてきたのは修二のカーディガン。
ジュースまみれの姿を隠すようにと
無理矢理羽織らさせる。
『ありがと…ちょっとよろけたの』
「あの子けっこう体格良かったもんなあ。
そら華奢な珠紀は負けてまうわ」
見てたのか、と思うと色々と苛立ってきた。
『誰のせいでこんな目にあってると思ってんのよ…
いつもいつも幼馴染って理由でやっかみ受けて
嫌なことばっかり…。もう、幼馴染なんてやめたい』
今まで色んな女の子たちに修二との関係を聞かれ
ただの幼馴染、と答えるたびに
自分自身が傷ついていた。
私と修二の関係をことさら鮮明に自覚させられて
それ以上でも、それ以下でもない間柄に
私はどうすることもできなかった。
傷つくし嫌な思いするくらいなら
もう、やめてしまえばいいんだ。
そばにいられなくなるかもしれないけど
きっとその方が楽なんだ。
「なら、幼馴染やめよか」
自分で言ったくせに
修二の口からはっきりと言われるとすごく悲しくなった。
やめるって、どうするんだろう。
もう教室に来なくなるってことだよね。
一緒に帰ったり
部活の応援に行ったり
帰りにゲーセンで遊んだり
そういうことも、しなくなるってこと。
そう思うと、寂しいと思ってしまった。
「寂しくないん?俺が会いに行かへんの」
『………寂しい、かも』
「かもってなんやの。俺は寂しいで。
珠紀がおらんと物足りひん」
『………』
「せやから、幼馴染はもうやめにして
彼女になったらええやん?」
『は?』
何の冗談かと思い顔を上げると
口元は笑ってはいるものの
真剣な眼差しの修二と目が合う。
『い、いや…何言ってるの。
そうなったらもっと色々言われるだろうし
それに、幼馴染だからってそこまでしなくても…
好きじゃ、ないんだし…』
「周りには色々言わせへんよ。
彼女やったらもっと堂々と守れるし
幼馴染特典で言うてるわけでもない。
ええ加減素直にならへん?俺のこと好きやろ?」
『わ、私は…』
「俺は好きやで。
珠紀のこと幼馴染やなんて思うたことあらへん。
俺にとっては、ずっと好きな人やった。
せやから、これからは
俺に彼氏として珠紀のこと守らせてや」
私が逃げないようにか、ガシッと逞しい腕に捕まえられ
返事は?と耳元で囁かれる。
手の体温と、耳元の吐息と
カーディガンから香る修二の香りに
くらくらしながら
私は喜びに震える声で彼に気持ちを伝えたのだった。
(付き合いだして見られることはあっても
色々言われることは本当になくなったわ…)
(せやろなぁ〜)
(なんかした?)
(ん〜?なんもしとらんで)
(だってこんなに静かになるなんて)
(勝ち目ないって思うほど、お似合いなんとちゃう?
幼馴染で両思いとか最強やん☆)
(静かで良いんだけど…なんか男子がよそよそしいのよね)
(そら牽制はしとるからやな…とは言わんどこ)