羨望のダブルスペア
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「琴音〜!寂しかったで〜☆」
はいはい、私も、と適当に返事をすれば
冷たいとの抗議の声があがる。
合宿から帰ってくるたびに
毎回やっているこのやりとりは
私にとって修二が帰ってきたときのセオリーで
密かな楽しみだ。
『怪我とかしてない?ちゃんと食べてた?』
「オカンみたいなこと言わんといて。
もっと彼氏彼女らしいことしよや☆」
そう言って、サッと私の手を取り指を絡める。
こうやってすぐに修二のペースに飲まれるから
いつも悔しいのだけど
内心は嬉しくて、嬉しくて、仕方がない。
しかも今回は海外にも行っていたので
余計に長く遠くに感じていたから
修二の顔を見たとき泣きそうになるくらい
会えたことが嬉しかった。
ちらりと修二の顔を見上げると
甘い顔でどうしたのかと、首を傾ける仕草をしていて
愛しさが込み上げてくる。
「いつものカフェでええの?」
『うん、…良いよ』
一緒ならどこでも良いよって言いたかったのに
やっぱり恥ずかしくて言えなかった。
修二なら、簡単に言ってしまえるんだろうけど
私には難易度が高すぎる。
いつになったら、素直な言葉が言えるんだろう。
カフェに着いて、窓際の一番奥の席に座る。
ここはよく修二と来るお気に入りの場所だ。
ラテを飲みながら合宿の話を聞いたり
学校の話をしたりして
久しぶりに会えた日は
いつも1、2時間ずっと話しっぱなしになる。
お互い会えなかった時間を埋めるかのように
それぞれ見たモノ、過ごした時間を共有するかのように
ふたりとも、おしゃべりに夢中になるのだ。
「あ、そういえば竜次がな…」
そこまで聞いて、出たぞと思った。
ダブルスペア、大曲竜次くんの話。
「やんちゃな中学生がおんねんけど
そいつが図書室の本をめちゃくちゃにしてもうて。
竜次徹夜して本の修繕してたんやで。すごない?」
『そうなんだ。本が好きって言ってたもんね』
「しかもそのあとよっぽどムカついたんやろな。
本の整理するの、そのやんちゃな奴にも手伝わせとったわ」
『へぇ〜、でもちゃんと手伝うんだね』
「悪いことしたって自覚はあったみたいやな。
そのあとも……」
ひとしきり話し終えるといつもこう。
修二は大曲くんが大好きだから
私にいつも大曲くんの話をする。
大曲くんは修二と同い年。
群馬の出身で、ちょっと神経質で本好きな人らしい。
テニスはラケット二刀流使いで
いつもヘアバンドしてて
たい焼きが好きで、誕生日は10月。
…おかげで会ったこともないのに
会ったことがあるような気がしてくるほど
私は大曲くん情報を知ってる。
『ほんと、仲良いよね』
「最初はそうでもなかったんやけどなぁ」
昔を思い出しているのか
修二はちょっと遠くを見つめるような目をした。
あぁ、ずるいなあ。
楽しそうな顔だけじゃなくて
大曲くんのこと考えてそんな顔もするなんてずるい。
いつも一緒にいて
私の知らない修二をいっぱい知っててずるい。
私は、たまにしか会えないのに。
『羨ましい…』
「羨ましいって?」
慌てて口を閉じるも、修二には丸聞こえだし
なんか嬉しそうにニヤけている。
『な、なんでもない』
「そうなん?てっきり竜次に妬いてもうたんかと思ったのに」
『妬いてたら、どう?』
「そんなん、嬉しいに決まってるやん」
修二はそう言うと
テーブルの上から手を伸ばし、私の頬に触れた。
まるで私から言葉を紡ぎ出させるかのように
修二の手は、優しく頰を撫でる。
『……ヤキモチ、妬いた。
だって、大曲くんのこと話す修二の顔
好きな人のことを想う顔してたもん』
「ハハッ!好きな人て!」
『会うたびにいつも大曲くんの話じゃない。
大曲くんのこと嫌いなわけではないし
話も楽しいんだけど、その…』
素直になって言ったものの
会ったこともない男の子相手にヤキモチを妬くなんて
心の狭い面倒な女になってるのでは、と
ちょっと我ながら呆れてしまう。
自分自身がやだなって思っていたら
修二はやりすぎてもうたなって言って笑った。
『やりすぎって?』
「やっぱ気づいてへんよな〜
ヤキモチ妬いてもらうために
わざと竜次の話ばっかりしてたんやで」
『えっ…!?』
「もやもやしとる顔、可愛かったわあ」
『えっ、なんで…!』
「照れ隠しで自分の気持ち隠してばっかやから
ちょっとした意地悪やったっちゅーこと」
ジワジワと頬が熱くなる。
まんまと彼の策略にはまり
私が前々から大曲くんの話を聞いて
羨ましく思っていたのを、修二は全部わかっていたのだ。
「意地悪すぎて嫌いになってもーた?」
『……嫌われたって思ってないくせに、ほんとに意地悪。
……でも、好き。大好き』
私の言葉を聞いて
修二は満足気な笑みを浮かべてくれた。
いつもみたいに余裕そうに見えたけど
よく見ると耳が少し赤くなっていて
わかりにくいけど、どうやら照れているようだ。
だったらこれから反撃開始。
もう勘弁してって言うくらい、愛を伝えよう。
自分の気持ちを隠さず、伝えよう。
私がどれだけ貴方を好きか、全力で伝えるから
受けとめてよね、と私は修二を見つめたのだった。
(俺の好きな人同士の初対面☆)
(なんだし、好きな人同士って)
(は、はじめまして…?)
(はじめましてな気がしねぇし)
(私も修二から話よく聞いてたから
なんだか話したことがある気がして…)
(俺もよく話聞いてるし。こいつ惚気てばっかだからよ)
(え?惚気…?)
(スマホのロック画面も、暗証番号もあんた絡みだし)
(あ〜!竜次、余計なこと言うたらアカンて!)
(この前なんて寝言で名前呼んでたし)
(えっ、うそっ、恥ずかしい…)
(いやいや待って、俺のほうが恥ずかしいねん)
はいはい、私も、と適当に返事をすれば
冷たいとの抗議の声があがる。
合宿から帰ってくるたびに
毎回やっているこのやりとりは
私にとって修二が帰ってきたときのセオリーで
密かな楽しみだ。
『怪我とかしてない?ちゃんと食べてた?』
「オカンみたいなこと言わんといて。
もっと彼氏彼女らしいことしよや☆」
そう言って、サッと私の手を取り指を絡める。
こうやってすぐに修二のペースに飲まれるから
いつも悔しいのだけど
内心は嬉しくて、嬉しくて、仕方がない。
しかも今回は海外にも行っていたので
余計に長く遠くに感じていたから
修二の顔を見たとき泣きそうになるくらい
会えたことが嬉しかった。
ちらりと修二の顔を見上げると
甘い顔でどうしたのかと、首を傾ける仕草をしていて
愛しさが込み上げてくる。
「いつものカフェでええの?」
『うん、…良いよ』
一緒ならどこでも良いよって言いたかったのに
やっぱり恥ずかしくて言えなかった。
修二なら、簡単に言ってしまえるんだろうけど
私には難易度が高すぎる。
いつになったら、素直な言葉が言えるんだろう。
カフェに着いて、窓際の一番奥の席に座る。
ここはよく修二と来るお気に入りの場所だ。
ラテを飲みながら合宿の話を聞いたり
学校の話をしたりして
久しぶりに会えた日は
いつも1、2時間ずっと話しっぱなしになる。
お互い会えなかった時間を埋めるかのように
それぞれ見たモノ、過ごした時間を共有するかのように
ふたりとも、おしゃべりに夢中になるのだ。
「あ、そういえば竜次がな…」
そこまで聞いて、出たぞと思った。
ダブルスペア、大曲竜次くんの話。
「やんちゃな中学生がおんねんけど
そいつが図書室の本をめちゃくちゃにしてもうて。
竜次徹夜して本の修繕してたんやで。すごない?」
『そうなんだ。本が好きって言ってたもんね』
「しかもそのあとよっぽどムカついたんやろな。
本の整理するの、そのやんちゃな奴にも手伝わせとったわ」
『へぇ〜、でもちゃんと手伝うんだね』
「悪いことしたって自覚はあったみたいやな。
そのあとも……」
ひとしきり話し終えるといつもこう。
修二は大曲くんが大好きだから
私にいつも大曲くんの話をする。
大曲くんは修二と同い年。
群馬の出身で、ちょっと神経質で本好きな人らしい。
テニスはラケット二刀流使いで
いつもヘアバンドしてて
たい焼きが好きで、誕生日は10月。
…おかげで会ったこともないのに
会ったことがあるような気がしてくるほど
私は大曲くん情報を知ってる。
『ほんと、仲良いよね』
「最初はそうでもなかったんやけどなぁ」
昔を思い出しているのか
修二はちょっと遠くを見つめるような目をした。
あぁ、ずるいなあ。
楽しそうな顔だけじゃなくて
大曲くんのこと考えてそんな顔もするなんてずるい。
いつも一緒にいて
私の知らない修二をいっぱい知っててずるい。
私は、たまにしか会えないのに。
『羨ましい…』
「羨ましいって?」
慌てて口を閉じるも、修二には丸聞こえだし
なんか嬉しそうにニヤけている。
『な、なんでもない』
「そうなん?てっきり竜次に妬いてもうたんかと思ったのに」
『妬いてたら、どう?』
「そんなん、嬉しいに決まってるやん」
修二はそう言うと
テーブルの上から手を伸ばし、私の頬に触れた。
まるで私から言葉を紡ぎ出させるかのように
修二の手は、優しく頰を撫でる。
『……ヤキモチ、妬いた。
だって、大曲くんのこと話す修二の顔
好きな人のことを想う顔してたもん』
「ハハッ!好きな人て!」
『会うたびにいつも大曲くんの話じゃない。
大曲くんのこと嫌いなわけではないし
話も楽しいんだけど、その…』
素直になって言ったものの
会ったこともない男の子相手にヤキモチを妬くなんて
心の狭い面倒な女になってるのでは、と
ちょっと我ながら呆れてしまう。
自分自身がやだなって思っていたら
修二はやりすぎてもうたなって言って笑った。
『やりすぎって?』
「やっぱ気づいてへんよな〜
ヤキモチ妬いてもらうために
わざと竜次の話ばっかりしてたんやで」
『えっ…!?』
「もやもやしとる顔、可愛かったわあ」
『えっ、なんで…!』
「照れ隠しで自分の気持ち隠してばっかやから
ちょっとした意地悪やったっちゅーこと」
ジワジワと頬が熱くなる。
まんまと彼の策略にはまり
私が前々から大曲くんの話を聞いて
羨ましく思っていたのを、修二は全部わかっていたのだ。
「意地悪すぎて嫌いになってもーた?」
『……嫌われたって思ってないくせに、ほんとに意地悪。
……でも、好き。大好き』
私の言葉を聞いて
修二は満足気な笑みを浮かべてくれた。
いつもみたいに余裕そうに見えたけど
よく見ると耳が少し赤くなっていて
わかりにくいけど、どうやら照れているようだ。
だったらこれから反撃開始。
もう勘弁してって言うくらい、愛を伝えよう。
自分の気持ちを隠さず、伝えよう。
私がどれだけ貴方を好きか、全力で伝えるから
受けとめてよね、と私は修二を見つめたのだった。
(俺の好きな人同士の初対面☆)
(なんだし、好きな人同士って)
(は、はじめまして…?)
(はじめましてな気がしねぇし)
(私も修二から話よく聞いてたから
なんだか話したことがある気がして…)
(俺もよく話聞いてるし。こいつ惚気てばっかだからよ)
(え?惚気…?)
(スマホのロック画面も、暗証番号もあんた絡みだし)
(あ〜!竜次、余計なこと言うたらアカンて!)
(この前なんて寝言で名前呼んでたし)
(えっ、うそっ、恥ずかしい…)
(いやいや待って、俺のほうが恥ずかしいねん)