私は普通の女の子
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「せやなあ……あ、清水さんはどう思う?」
ざわめく休み時間中に起きた唐突な会話のパス。
聞き間違いかと思ったけれど
はっきりと名前は呼ばれたし
彼は笑顔でこちらを見ている。
何が何だかわからないでいると
種ヶ島くんは雑誌を見せてきた。
「今な、この中やったら
どれが似合うかって話してたんやけど
清水さん的に俺にはどれが似合うと思う?」
ご丁寧に説明してくれたけど
私を含め、種ヶ島くんの周りにいた男子も
え、なんで?って顔をしている。
そりゃそうだよね。だって、種ヶ島くんとなんて
話したことすらないんだもん。
とはいえ、話をふられたのだから
ちゃんと答えなければと思い
緊張する手で雑誌のページを指さした。
『えっと、この水色のやつ、とか…?』
「おぉ!俺もこれええなあって思ってた!
俺水色好きやねん。趣味合うなあ〜」
『あ、ど、どうも…?』
不自然な私の返答を気にもせず明るく笑う種ヶ島くんは
また男子たちとおしゃべりを続けた。
なんだったんだろう。
人気者の気まぐれ、みたいなものだったのだろうと
思うことにしていたのだけど
これを皮切りに
種ヶ島くんがやたらと絡んでくるようになったのだ。
「なぁ、ここの解き方教えてくれへん?」
「おはようさん☆今日雨降んねんて。傘持ってきた?」
「清水さんのお弁当、うまそやなあ!
え?自分で作ってるん?すごいなあ」
種ヶ島くんの絡み方は本当に唐突で驚くけど
私が困るようなことは一切言わないし
いつもさっぱりしていて
一言二言会話したらすぐに去っていく。
彼の話し方には嫌味がなくて
唐突なのに、すっと
人の心に入ってくるような不思議人だと思う。
どうして、私に話しかけるんだろう。
変な期待は、まずあり得ないから抱いてすらいない。
本当に理由もなく気まぐれなのかもしれないけど
私はこのちょっとした会話が楽しいと感じているから
話しかけてくれてありがとう
って言ってみたい気持ちにすらなっている。
…言えるかわかんないけど。
『あ……』
種ヶ島くんのことを考えながら帰っていたら
ちょうどテニスコートの前に男子テニス部がいた。
今から皆帰るようだけど
集まった状態で話している。どうしよう。
なんだかあの前を通るのが、すごく通りにくい。
俯き気味にサッと歩いてしまおうと思ったとき
人だかりの中、種ヶ島くんと目が合った。
彼はいつもの笑顔を向けてくれて
周りにいた部員達に何か言っているようだ。
すると皆帰り出し、種ヶ島くんだけが
私の元へと歩いてきた。
「今から帰るん?けっこう遅くまで残ってたんやな」
『えっ、あ…うん。委員会が長引いちゃって』
「さよか。ならちょうど良かったわ。一緒帰ろや」
種ヶ島くんと話すようになって1ヶ月くらいが経ったけど
正直彼と話すのは未だに慣れていない。
そんな彼と一緒に帰るなんて
会話が持つかどうか不安だった。
だけど、授業の話や部活の話をしていくうちに
徐々にそんな不安はどこかへいってしまうほど
穏やかに、会話を楽しめていた。
「清水さん、やっと笑ってくれるようになったなあ」
『え、そんなに笑ってなかった?』
「警戒してます!って顔してたで〜。
まあいきなり話しかけたから、そら警戒するか」
『……あの、ずっと聞きたかったんだけど…』
そこまで言って、ふと思った。
どうして私に話し掛けるの?って
かなり自意識過剰な質問な気がする。
「なんで自分に話し掛けるんって?」
言い当てられて思わず立ち止まる。
種ヶ島くんを見れば、そんな私の反応が面白かったのか
小さく吹き出し、お腹を抱えて笑っている。
『そんなに笑わなくても…』
「ごめんて…!
いや〜、ホンマに顔に出やすいなあって思ってな」
顔に出やすいことは親からも友達からも
言われているので図星過ぎで恥ずかしくなってきた。
「話し掛ける理由なんやけど、純粋に気になってん」
『…私何かした?』
私は種ヶ島くんとは違って
至って平凡で、普通で、何の取り柄もない
どこにもいる女の子だ。
容姿が良いわけでも、勉強ができるわけでも
スポーツができるわけでもない。
唯一委員会には所属しているけど
部活だってしてないし
彼が気になるような要素はひとつもないのだ。
「2,3ヶ月前に図書室の本、修復してたやろ?
清水さんが破いたわけちゃうのに」
図書室の本と言われて
完全に忘れていた記憶を思い出した。
図書室で本を読んでいたとき
本棚にぶつかった男子が一冊の本を落とし
そのまま過ぎ去って行った。
私はその本を拾ったのだけど
落とした拍子に背表紙が敗れてしまったようで
持っていたセロハンテープで修繕したのだ。
「拾って本棚に戻すか、図書委員とかに渡せばええのに
ああ、この子は自分の手で治すんやなって。
しかもなんか楽しそうに修繕してたから
目ぇ離せへんくなった」
『見られてたんだ…恥ずかしい』
「恥ずかしがらんでええやん。
誰にでもできることとちゃうよ。
せやから気になって、話したくなった」
何の取り柄もない自分が、たまに嫌になるときもあった。
だけど、種ヶ島くんの
誰にでもできることとちゃうよって一言が
お守りのように感じて、胸があったかくなる。
種ヶ島くんは、じっと私の目を見つめる。
茶化すことなく話す彼は
いつもより優しく笑っていて
種ヶ島くんってこんなに優しい目をしているんだなって
私は今気がついた。
『種ヶ島くん、あのね、私に話しかけてくれてありがとう』
「ほんなら俺は、俺と話してくれてありがとう、やな」
気まぐれじゃなくて
私と話したいと思ってくれたことが嬉しくて
思わず言ったありがとうの言葉を
種ヶ島くんはちゃんと受け止めてくれた。
言うことはないだろうと思っていたのに
すんなりと言えたのは、きっと彼のおかげ。
この時間がずっと続けばいいな、なんて思いながら
いつもよりもゆっくり歩いて帰ったのだった。
(俺のダブルスペアがな
よう合宿所の図書室の本を修繕してんねん)
(そうなんだ)
(図書室の本って、ジャンルごとに分かれてるやん?
あれもちゃんとしてないと気になるみたいでな
いっつも整理してるんよ)
(几帳面で本を大事にする人なんだろうね。
会ってみたいな)
(……でも見た目ヤンキーやで?ヒゲあるし)
(わあ、ギャップがあって良いね)
(……会わせるんはなしやな)
ざわめく休み時間中に起きた唐突な会話のパス。
聞き間違いかと思ったけれど
はっきりと名前は呼ばれたし
彼は笑顔でこちらを見ている。
何が何だかわからないでいると
種ヶ島くんは雑誌を見せてきた。
「今な、この中やったら
どれが似合うかって話してたんやけど
清水さん的に俺にはどれが似合うと思う?」
ご丁寧に説明してくれたけど
私を含め、種ヶ島くんの周りにいた男子も
え、なんで?って顔をしている。
そりゃそうだよね。だって、種ヶ島くんとなんて
話したことすらないんだもん。
とはいえ、話をふられたのだから
ちゃんと答えなければと思い
緊張する手で雑誌のページを指さした。
『えっと、この水色のやつ、とか…?』
「おぉ!俺もこれええなあって思ってた!
俺水色好きやねん。趣味合うなあ〜」
『あ、ど、どうも…?』
不自然な私の返答を気にもせず明るく笑う種ヶ島くんは
また男子たちとおしゃべりを続けた。
なんだったんだろう。
人気者の気まぐれ、みたいなものだったのだろうと
思うことにしていたのだけど
これを皮切りに
種ヶ島くんがやたらと絡んでくるようになったのだ。
「なぁ、ここの解き方教えてくれへん?」
「おはようさん☆今日雨降んねんて。傘持ってきた?」
「清水さんのお弁当、うまそやなあ!
え?自分で作ってるん?すごいなあ」
種ヶ島くんの絡み方は本当に唐突で驚くけど
私が困るようなことは一切言わないし
いつもさっぱりしていて
一言二言会話したらすぐに去っていく。
彼の話し方には嫌味がなくて
唐突なのに、すっと
人の心に入ってくるような不思議人だと思う。
どうして、私に話しかけるんだろう。
変な期待は、まずあり得ないから抱いてすらいない。
本当に理由もなく気まぐれなのかもしれないけど
私はこのちょっとした会話が楽しいと感じているから
話しかけてくれてありがとう
って言ってみたい気持ちにすらなっている。
…言えるかわかんないけど。
『あ……』
種ヶ島くんのことを考えながら帰っていたら
ちょうどテニスコートの前に男子テニス部がいた。
今から皆帰るようだけど
集まった状態で話している。どうしよう。
なんだかあの前を通るのが、すごく通りにくい。
俯き気味にサッと歩いてしまおうと思ったとき
人だかりの中、種ヶ島くんと目が合った。
彼はいつもの笑顔を向けてくれて
周りにいた部員達に何か言っているようだ。
すると皆帰り出し、種ヶ島くんだけが
私の元へと歩いてきた。
「今から帰るん?けっこう遅くまで残ってたんやな」
『えっ、あ…うん。委員会が長引いちゃって』
「さよか。ならちょうど良かったわ。一緒帰ろや」
種ヶ島くんと話すようになって1ヶ月くらいが経ったけど
正直彼と話すのは未だに慣れていない。
そんな彼と一緒に帰るなんて
会話が持つかどうか不安だった。
だけど、授業の話や部活の話をしていくうちに
徐々にそんな不安はどこかへいってしまうほど
穏やかに、会話を楽しめていた。
「清水さん、やっと笑ってくれるようになったなあ」
『え、そんなに笑ってなかった?』
「警戒してます!って顔してたで〜。
まあいきなり話しかけたから、そら警戒するか」
『……あの、ずっと聞きたかったんだけど…』
そこまで言って、ふと思った。
どうして私に話し掛けるの?って
かなり自意識過剰な質問な気がする。
「なんで自分に話し掛けるんって?」
言い当てられて思わず立ち止まる。
種ヶ島くんを見れば、そんな私の反応が面白かったのか
小さく吹き出し、お腹を抱えて笑っている。
『そんなに笑わなくても…』
「ごめんて…!
いや〜、ホンマに顔に出やすいなあって思ってな」
顔に出やすいことは親からも友達からも
言われているので図星過ぎで恥ずかしくなってきた。
「話し掛ける理由なんやけど、純粋に気になってん」
『…私何かした?』
私は種ヶ島くんとは違って
至って平凡で、普通で、何の取り柄もない
どこにもいる女の子だ。
容姿が良いわけでも、勉強ができるわけでも
スポーツができるわけでもない。
唯一委員会には所属しているけど
部活だってしてないし
彼が気になるような要素はひとつもないのだ。
「2,3ヶ月前に図書室の本、修復してたやろ?
清水さんが破いたわけちゃうのに」
図書室の本と言われて
完全に忘れていた記憶を思い出した。
図書室で本を読んでいたとき
本棚にぶつかった男子が一冊の本を落とし
そのまま過ぎ去って行った。
私はその本を拾ったのだけど
落とした拍子に背表紙が敗れてしまったようで
持っていたセロハンテープで修繕したのだ。
「拾って本棚に戻すか、図書委員とかに渡せばええのに
ああ、この子は自分の手で治すんやなって。
しかもなんか楽しそうに修繕してたから
目ぇ離せへんくなった」
『見られてたんだ…恥ずかしい』
「恥ずかしがらんでええやん。
誰にでもできることとちゃうよ。
せやから気になって、話したくなった」
何の取り柄もない自分が、たまに嫌になるときもあった。
だけど、種ヶ島くんの
誰にでもできることとちゃうよって一言が
お守りのように感じて、胸があったかくなる。
種ヶ島くんは、じっと私の目を見つめる。
茶化すことなく話す彼は
いつもより優しく笑っていて
種ヶ島くんってこんなに優しい目をしているんだなって
私は今気がついた。
『種ヶ島くん、あのね、私に話しかけてくれてありがとう』
「ほんなら俺は、俺と話してくれてありがとう、やな」
気まぐれじゃなくて
私と話したいと思ってくれたことが嬉しくて
思わず言ったありがとうの言葉を
種ヶ島くんはちゃんと受け止めてくれた。
言うことはないだろうと思っていたのに
すんなりと言えたのは、きっと彼のおかげ。
この時間がずっと続けばいいな、なんて思いながら
いつもよりもゆっくり歩いて帰ったのだった。
(俺のダブルスペアがな
よう合宿所の図書室の本を修繕してんねん)
(そうなんだ)
(図書室の本って、ジャンルごとに分かれてるやん?
あれもちゃんとしてないと気になるみたいでな
いっつも整理してるんよ)
(几帳面で本を大事にする人なんだろうね。
会ってみたいな)
(……でも見た目ヤンキーやで?ヒゲあるし)
(わあ、ギャップがあって良いね)
(……会わせるんはなしやな)