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負けない男、種ヶ島修二が負けた。
しかもW杯決勝を賭けた試合で
絶対に勝つだろうと思っていた
大曲・遠山ペアに負けたのだ。
彼、遠山くんの成長ぶりは凄まじかった。
まだ中学1年生。
伸びしろだらけで、磨けば磨くほど
光っていく宝石の原石のよう。
種ヶ島先輩も大曲先輩も、白石くんも
皆が遠山くんへ託したかのような試合だった。
タオル、持っといてや☆と
試合前に渡された種ヶ島先輩のタオルを握りしめて
私はただただ
試合を見守ることしかできなかったのだった。
試合が終わってからも
しばらく呆然と立ち尽くしていたけど
タオル渡さなきゃ、と思って
私は種ヶ島先輩の姿を探した。
途中見かけた大曲先輩に声を掛けようかと思ったけど
静かに涙を流されていたようで、とてもじゃないけど
近くによることすらできなかった。
しばらく歩いていると、コートから離れた水飲み場で
顔を洗っている種ヶ島先輩を見つけた。
頭から水をかぶっていたようで、表情は見えない。
「持ってきてくれたんやな。おーきに☆」
私の気配を感じ取ったのか、濡れた髪を掻き上げて
いつもの笑顔を見せてくれた、が、その表情は
少しだけ痛々しく見えた。
『・・・試合、お疲れ様でした』
「おん。負けてもうたけどな。
負けない男って、もう言われへんやんなあ」
種ヶ島先輩は、すごく、先を見通して行動する人だ。
今回の試合、自分たちが勝てば
自分と育てた後輩の白石くんが出場できる。
負ければ、自分は出場できないが
ライバルであり
パートナーでもある大曲先輩が出場できる。
しかも、この試合のおかげで
遠山くんは目に見えて成長した。
たくさんのことを見据えて
種ヶ島先輩は負けを認めたのだ。
『私、種ヶ島先輩しか、こんなことできないと思います』
「・・・大げさやん。
俺は俺のやりたいようにやっただけやで。
買いかぶり過ぎとちゃう?」
『これでも、ず、ずっと皆さんの傍に居たので
種ヶ島先輩のことだって、わかります、よ・・・』
言いながら、涙ぐむ。
私が泣く権利なんてないのに。
ずっと、U-17の代表メンバーのマネージャーをしてきた。
だから大曲先輩が出場できることだって嬉しい。
それなのに、色んな感情がこみ上げてきてしまった。
「絢ちゃん、泣かんといてや。
俺が泣かしたみたいやん」
『ごめ、なさい・・・、でも、
種ヶ島先輩も、つらそうだから・・・』
種ヶ島先輩が目を見開く。
笑ったり、冗談を交えてはいるが
無理をしているのは手にとるようにわかる。
「かなわへんなあ・・・」
頭をガシガシと乱暴に掻いて
種ヶ島先輩は俯いてしまった。
その様子を見て
私はここに来るべきではなかったのではないかと
ふと気づく。
タオルを渡さないと、何か話さないと、と思って
深く考えずに来たものの
状況的に本当は一人でいたかったのではないだろうか。
『あの、すみません。
私、空気読めてなかったですね。コートに戻ります』
「・・・ここにおってくれへん?」
『え?』
「そばにおって欲しい」
真っ直ぐに見つめられると動けなくて
どうしたらいいのかわからず
ただ黙って立っていると
種ヶ島先輩が近づいてくる。
『私に何ができますか?』
「……肩、貸してくれへん?」
そう言うと、すっと手を差し出して私の手を握る。
そのまま少し前屈みになって
私の肩におでこをつけるようにして、頭を擦り寄せて来た。
いつもと違う、少し弱々しい姿。
本当は、最後まで隠し通すつもりだったのだろう。
普段の彼からは、全く想像できない。
私は種ヶ島先輩の、少しキシッとした髪を撫でる。
『種ヶ島先輩、私は本当にあなたを尊敬しています』
「……」
『誰にでも、出来ることじゃありません』
「……」
『本当に、格好良かった。
私が好きになった人は、誰よりも1番、輝いています』
「ちょーお、いまそれ言うんはズルない?」
ほんまにかなわへんわ、種ヶ島先輩は呟く。
そのまま、抱き合うでもなく
私の肩に頭を乗せた先輩を、ずっと撫でていた。
(絢ちゃん、おーきになぁ。ちょっと整理ついたわ)
(良かったです)
(やっぱ、好きな子ぉによしよしされたら元気でるわ)
(そうですか……ん?え、好き?)
(やっぱタオル渡しといて正解やったなあ)
(え、ちょっと待ってください。
もしかして…最初から予想してました?)
(うん?)
(私が励ましに来て、こうなるって思ってました?)
(ちゃい☆)
(ううっ……ここまで見通されてたなんて……)
((ほんまはこの流れで好きや言うたら
断れへんやろなって思うてたんやけど……
まさか絢ちゃんから言うてくれるなんて
思うてへんかったわ。
ほーんと、かなわへんなあ)
しかもW杯決勝を賭けた試合で
絶対に勝つだろうと思っていた
大曲・遠山ペアに負けたのだ。
彼、遠山くんの成長ぶりは凄まじかった。
まだ中学1年生。
伸びしろだらけで、磨けば磨くほど
光っていく宝石の原石のよう。
種ヶ島先輩も大曲先輩も、白石くんも
皆が遠山くんへ託したかのような試合だった。
タオル、持っといてや☆と
試合前に渡された種ヶ島先輩のタオルを握りしめて
私はただただ
試合を見守ることしかできなかったのだった。
試合が終わってからも
しばらく呆然と立ち尽くしていたけど
タオル渡さなきゃ、と思って
私は種ヶ島先輩の姿を探した。
途中見かけた大曲先輩に声を掛けようかと思ったけど
静かに涙を流されていたようで、とてもじゃないけど
近くによることすらできなかった。
しばらく歩いていると、コートから離れた水飲み場で
顔を洗っている種ヶ島先輩を見つけた。
頭から水をかぶっていたようで、表情は見えない。
「持ってきてくれたんやな。おーきに☆」
私の気配を感じ取ったのか、濡れた髪を掻き上げて
いつもの笑顔を見せてくれた、が、その表情は
少しだけ痛々しく見えた。
『・・・試合、お疲れ様でした』
「おん。負けてもうたけどな。
負けない男って、もう言われへんやんなあ」
種ヶ島先輩は、すごく、先を見通して行動する人だ。
今回の試合、自分たちが勝てば
自分と育てた後輩の白石くんが出場できる。
負ければ、自分は出場できないが
ライバルであり
パートナーでもある大曲先輩が出場できる。
しかも、この試合のおかげで
遠山くんは目に見えて成長した。
たくさんのことを見据えて
種ヶ島先輩は負けを認めたのだ。
『私、種ヶ島先輩しか、こんなことできないと思います』
「・・・大げさやん。
俺は俺のやりたいようにやっただけやで。
買いかぶり過ぎとちゃう?」
『これでも、ず、ずっと皆さんの傍に居たので
種ヶ島先輩のことだって、わかります、よ・・・』
言いながら、涙ぐむ。
私が泣く権利なんてないのに。
ずっと、U-17の代表メンバーのマネージャーをしてきた。
だから大曲先輩が出場できることだって嬉しい。
それなのに、色んな感情がこみ上げてきてしまった。
「絢ちゃん、泣かんといてや。
俺が泣かしたみたいやん」
『ごめ、なさい・・・、でも、
種ヶ島先輩も、つらそうだから・・・』
種ヶ島先輩が目を見開く。
笑ったり、冗談を交えてはいるが
無理をしているのは手にとるようにわかる。
「かなわへんなあ・・・」
頭をガシガシと乱暴に掻いて
種ヶ島先輩は俯いてしまった。
その様子を見て
私はここに来るべきではなかったのではないかと
ふと気づく。
タオルを渡さないと、何か話さないと、と思って
深く考えずに来たものの
状況的に本当は一人でいたかったのではないだろうか。
『あの、すみません。
私、空気読めてなかったですね。コートに戻ります』
「・・・ここにおってくれへん?」
『え?』
「そばにおって欲しい」
真っ直ぐに見つめられると動けなくて
どうしたらいいのかわからず
ただ黙って立っていると
種ヶ島先輩が近づいてくる。
『私に何ができますか?』
「……肩、貸してくれへん?」
そう言うと、すっと手を差し出して私の手を握る。
そのまま少し前屈みになって
私の肩におでこをつけるようにして、頭を擦り寄せて来た。
いつもと違う、少し弱々しい姿。
本当は、最後まで隠し通すつもりだったのだろう。
普段の彼からは、全く想像できない。
私は種ヶ島先輩の、少しキシッとした髪を撫でる。
『種ヶ島先輩、私は本当にあなたを尊敬しています』
「……」
『誰にでも、出来ることじゃありません』
「……」
『本当に、格好良かった。
私が好きになった人は、誰よりも1番、輝いています』
「ちょーお、いまそれ言うんはズルない?」
ほんまにかなわへんわ、種ヶ島先輩は呟く。
そのまま、抱き合うでもなく
私の肩に頭を乗せた先輩を、ずっと撫でていた。
(絢ちゃん、おーきになぁ。ちょっと整理ついたわ)
(良かったです)
(やっぱ、好きな子ぉによしよしされたら元気でるわ)
(そうですか……ん?え、好き?)
(やっぱタオル渡しといて正解やったなあ)
(え、ちょっと待ってください。
もしかして…最初から予想してました?)
(うん?)
(私が励ましに来て、こうなるって思ってました?)
(ちゃい☆)
(ううっ……ここまで見通されてたなんて……)
((ほんまはこの流れで好きや言うたら
断れへんやろなって思うてたんやけど……
まさか絢ちゃんから言うてくれるなんて
思うてへんかったわ。
ほーんと、かなわへんなあ)