おめでとうって言ってほしい(2024年誕生祭)
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「明日は修さんの誕生日だね」
練習メニューを見直していた矢先、唐突に掛けられた一言。
振り向くとそこには
にこにこと、可愛らしい笑顔を浮かべた入江くんがいた。
『そ、そうね…。皆でお祝いするんでしょ?』
毎回誰かの誕生日の時は、律儀にお祝いをする。
皆もう高校生だし誕生日なんてどうでも良い、と
思ってそうだと思っていたので
私的にはちょっと意外だった。
あのお頭も騒ぎすぎるな、とは言うけど
ちゃんとお祝いの席には来るし
皆の息抜きのために容認しているのかもしれない。
「うん。皆ではもちろんね」
皆では、のところをやたらと強調されたのは気のせいか。
『種ヶ島、皆でわいわい集まるの好きだし
きっと喜んでくれるだろうね』
「小柳さんが祝ってくれたら
もっと喜んでくれると思うけど?」
『…だから、明日皆と一緒に祝うよ』
逃げるように入江くんの元から去る。
言われなくても、お膳立てされなくても
いつかはちゃんと、伝えたいとは思っている。
だけど、それはきっと今じゃない。
私は私のこの気持ちを
どう消化すれば良いのかわからず
この二年をただのマネージャーとして過ごしてきたのだ。
種ヶ島のことを、好きだという気持ちを隠して。
「お〜きにな〜!」
翌日”本日の主役“という襷を下げて
ピースサインをする種ヶ島は嬉しそうに笑っている。
毎回誕生日を迎えた人を
簡単なパーティー形式で祝うのだけど
種ヶ島の人柄のせいか
いつの間にか中学生の子達も来て
たくさんの人が集まっていた。
私はお菓子のゴミを片付けながら
遠目でその様子を眺める。
この距離感で良い。
好きだなんて言葉で、あの笑顔を曇らせたくはないし
何より拒否された場合どんな顔をして過ごせば良いのか。
こんなんじゃ、一歩も前に踏み出すこともなく
私の片思いは終わってしまいそうだ。
そんなことを思っていたら
種ヶ島がキョロキョロと誰かを探し始めた。
誰を探しているのだろう、と目で追っていると
バチッと、目が合う。
しまった見すぎたと反射的に目を反らし
ゴミを捨ててくるね、と近くにいた徳川くんに声を掛けて
そそくさとその場を離れた。
逃げてばかりじゃないか、とため息をつく。
お風呂からあがり、自販機に向かう間
今日のことを振り返る。
結局あのあと、そのまま皆の輪に戻ることはなく
自室にこもってしまって今に至るのだけど
我ながらなんとも意気地がなくて呆れる。
…おめでとうって、言いたかった。
皆と一緒にではなく、ちゃんと私の言葉で伝えたかった。
後悔のせいか、喉に何かつっかえたような
気持ちの悪さを感じて
買ったばかりのミネラルウォーターを流し込む。
『おめでとう……』
言えなかった言葉をぽそりと呟くと
後ろから小さな笑い声が聞こえた。
「女の子の一人歩きはアカンで〜」
『あっ…えっ!た、種ヶ島…』
予想外の当人の登場に、一瞬でいろんなことが頭を巡る。
お風呂上がりのだらしない格好を見られたことと
今日目が合ったこと
そして、今の独り言を聞かれていないか。
色んなことで頭がいっぱいになって
言葉が出ずにいたらスッとジャージを差し出された。
「ジャージ、羽織っとき。
身体冷えてまうし、ホンマ無防備なんやから」
『えっ、あ…ありがとう……』
咄嗟に受け取ったものの
羽織るとふわっと香る種ヶ島の香りに
どうしようもなく胸が高鳴って彼の顔が見れない。
種ヶ島は、最初からジャージを手にを持っていた。
同じようにお風呂あがりで脱いでいたのか
ただ邪魔だったから手に持っていただけかもしれないけど
もしかして、私を見かけて来てくれたのかな
なんて甘い期待を抱く。
ちらり、と彼を見上げれば
いつもの、飄々とした笑顔で真相はわからないけど。
「そろそろ部屋戻らな風引いてまうで。行こか」
『あっ…あのっ!』
つい呼び止めてしまい、頭の中はパニックだ。
呼び止めるつもりなんてなかったから
この先を、考えていなかった。
種ヶ島は何も言わずに私が話すのを待ってくれているようで
何か話さなきゃと無理やり口を開く。
『あ、えっと…ジュ、ジュース奢ってあげる!』
何言ってるんだろう私。
ここは素直に誕生日おめでとうって
言える流れだったのに自分でぶち壊してどうする。
私が噛んだせいなのか種ヶ島は
お腹を押さえて“ちょ、タンマ”と笑っているしもう最悪だ。
「笑うつもりなかったんやけど…ごめんな、オモロすぎて。
ほんならお言葉に甘えて奢ってもらお☆」
種ヶ島はいつも飲んでる
ちょっとクセのある炭酸を選んでボタンを押したのだけど
ジュースを取ろうとしてピタッと動きを止めた。
『どうしたの?間違えた?』
「…いや。
瑠衣ちゃん、良かったらジュース俺に渡してくれへん?」
『?いいけど』
よくわからないけど、言われるがまま
ジュースを取って種ヶ島に渡した。
すると彼は私の手ごと
ぎゅっと両手でジュースを握りしめた。
「渡してもろたほうが、プレゼント感あるやん?」
甘えたような彼の表情が、胸をくすぐる。
あぁ、もうどうしよう。
好きな人の香りに包まれて
手には彼の温もりもあって
私の視界には、今種ヶ島しかいない。
こんなの幸せすぎて、気持ちが溢れすぎて、だめだ。
『好き……種ヶ島が好き…』
漏れ出た言葉に種ヶ島の手がぴくりと反応した。
自販機の音が、静寂に低く響いて
なんだか時が止まったかのように長く感じる。
「…ホンマに?」
黙ってコクン、と頷く。
否定的な言葉しか思いつかず
勝手に泣きそうになっていると
小さな声で“アカン、めっちゃ嬉しい”と聞こえた。
聞き間違いかと訝しげに顔を上げると
今まで見たことないような赤い顔した種ヶ島がいた。
『え…?』
「え?ってなんやねん。
そら好きな子にいきなり告白されたら
嬉しいに決まってるやん」
『好きな子…』
「好きな子。俺の好きな人は、瑠衣ちゃんなんやけど。
気づいてへんかった?」
俄に信じられず言葉を失っていたら
ペシッと軽く小突かれた。
『き、気づいていませんでした…』
「ハハッ!なんで敬語やねん。
誕生日やのに徳川とおってこっち来てくれへんし
その後もどこにもおらんし
おったと思ったらこんなとこにそんな格好で…
ホンマ、焦らしの天才なんやから」
キョロキョロと誰かを探していたのは
私のことを探してくれていて
今も、私のためだけに来てくれていたのだと知り
両思いなのだという実感がジワジワと湧いてくる。
種ヶ島は、そんな私の様子を見て満足気に微笑み
私の両肩に手を置いて
こつん、と自分のおでこを私のおでこに寄せる。
「なぁ、1番聞きたい言葉あんねんけど言うてくれへん?」
『あ……誕生日、おめでとう』
「おーきに。最高のプレゼントやな」
種ヶ島は今まで見たことないほどの
眩しい笑顔を見せてくれた。
来年も再来年も、あなたのそばで
5月29日をお祝いしたい。
生まれてきてくれて、ありがとう。大好き。
(ホンマ予想外のことしてくれるから驚きやわ〜)
(え?なにか変なことした…?)
(引き止めてくれたときにおめでとうって
言われるもんやと思うてたらまさかのジュースで
ツボってもうたわ)
(あ!だからあんなに笑って…)
(せやで。それに今度こそおめでとうって
言われる思たら告白やなんて…
心の準備が間に合わへんかったで)
(そ、それは…だって種ヶ島が手握るし
良い匂いするし格好良いしで
色々気持ちが溢れて…ってどうしたの?)
(敵わんわぁ…)
練習メニューを見直していた矢先、唐突に掛けられた一言。
振り向くとそこには
にこにこと、可愛らしい笑顔を浮かべた入江くんがいた。
『そ、そうね…。皆でお祝いするんでしょ?』
毎回誰かの誕生日の時は、律儀にお祝いをする。
皆もう高校生だし誕生日なんてどうでも良い、と
思ってそうだと思っていたので
私的にはちょっと意外だった。
あのお頭も騒ぎすぎるな、とは言うけど
ちゃんとお祝いの席には来るし
皆の息抜きのために容認しているのかもしれない。
「うん。皆ではもちろんね」
皆では、のところをやたらと強調されたのは気のせいか。
『種ヶ島、皆でわいわい集まるの好きだし
きっと喜んでくれるだろうね』
「小柳さんが祝ってくれたら
もっと喜んでくれると思うけど?」
『…だから、明日皆と一緒に祝うよ』
逃げるように入江くんの元から去る。
言われなくても、お膳立てされなくても
いつかはちゃんと、伝えたいとは思っている。
だけど、それはきっと今じゃない。
私は私のこの気持ちを
どう消化すれば良いのかわからず
この二年をただのマネージャーとして過ごしてきたのだ。
種ヶ島のことを、好きだという気持ちを隠して。
「お〜きにな〜!」
翌日”本日の主役“という襷を下げて
ピースサインをする種ヶ島は嬉しそうに笑っている。
毎回誕生日を迎えた人を
簡単なパーティー形式で祝うのだけど
種ヶ島の人柄のせいか
いつの間にか中学生の子達も来て
たくさんの人が集まっていた。
私はお菓子のゴミを片付けながら
遠目でその様子を眺める。
この距離感で良い。
好きだなんて言葉で、あの笑顔を曇らせたくはないし
何より拒否された場合どんな顔をして過ごせば良いのか。
こんなんじゃ、一歩も前に踏み出すこともなく
私の片思いは終わってしまいそうだ。
そんなことを思っていたら
種ヶ島がキョロキョロと誰かを探し始めた。
誰を探しているのだろう、と目で追っていると
バチッと、目が合う。
しまった見すぎたと反射的に目を反らし
ゴミを捨ててくるね、と近くにいた徳川くんに声を掛けて
そそくさとその場を離れた。
逃げてばかりじゃないか、とため息をつく。
お風呂からあがり、自販機に向かう間
今日のことを振り返る。
結局あのあと、そのまま皆の輪に戻ることはなく
自室にこもってしまって今に至るのだけど
我ながらなんとも意気地がなくて呆れる。
…おめでとうって、言いたかった。
皆と一緒にではなく、ちゃんと私の言葉で伝えたかった。
後悔のせいか、喉に何かつっかえたような
気持ちの悪さを感じて
買ったばかりのミネラルウォーターを流し込む。
『おめでとう……』
言えなかった言葉をぽそりと呟くと
後ろから小さな笑い声が聞こえた。
「女の子の一人歩きはアカンで〜」
『あっ…えっ!た、種ヶ島…』
予想外の当人の登場に、一瞬でいろんなことが頭を巡る。
お風呂上がりのだらしない格好を見られたことと
今日目が合ったこと
そして、今の独り言を聞かれていないか。
色んなことで頭がいっぱいになって
言葉が出ずにいたらスッとジャージを差し出された。
「ジャージ、羽織っとき。
身体冷えてまうし、ホンマ無防備なんやから」
『えっ、あ…ありがとう……』
咄嗟に受け取ったものの
羽織るとふわっと香る種ヶ島の香りに
どうしようもなく胸が高鳴って彼の顔が見れない。
種ヶ島は、最初からジャージを手にを持っていた。
同じようにお風呂あがりで脱いでいたのか
ただ邪魔だったから手に持っていただけかもしれないけど
もしかして、私を見かけて来てくれたのかな
なんて甘い期待を抱く。
ちらり、と彼を見上げれば
いつもの、飄々とした笑顔で真相はわからないけど。
「そろそろ部屋戻らな風引いてまうで。行こか」
『あっ…あのっ!』
つい呼び止めてしまい、頭の中はパニックだ。
呼び止めるつもりなんてなかったから
この先を、考えていなかった。
種ヶ島は何も言わずに私が話すのを待ってくれているようで
何か話さなきゃと無理やり口を開く。
『あ、えっと…ジュ、ジュース奢ってあげる!』
何言ってるんだろう私。
ここは素直に誕生日おめでとうって
言える流れだったのに自分でぶち壊してどうする。
私が噛んだせいなのか種ヶ島は
お腹を押さえて“ちょ、タンマ”と笑っているしもう最悪だ。
「笑うつもりなかったんやけど…ごめんな、オモロすぎて。
ほんならお言葉に甘えて奢ってもらお☆」
種ヶ島はいつも飲んでる
ちょっとクセのある炭酸を選んでボタンを押したのだけど
ジュースを取ろうとしてピタッと動きを止めた。
『どうしたの?間違えた?』
「…いや。
瑠衣ちゃん、良かったらジュース俺に渡してくれへん?」
『?いいけど』
よくわからないけど、言われるがまま
ジュースを取って種ヶ島に渡した。
すると彼は私の手ごと
ぎゅっと両手でジュースを握りしめた。
「渡してもろたほうが、プレゼント感あるやん?」
甘えたような彼の表情が、胸をくすぐる。
あぁ、もうどうしよう。
好きな人の香りに包まれて
手には彼の温もりもあって
私の視界には、今種ヶ島しかいない。
こんなの幸せすぎて、気持ちが溢れすぎて、だめだ。
『好き……種ヶ島が好き…』
漏れ出た言葉に種ヶ島の手がぴくりと反応した。
自販機の音が、静寂に低く響いて
なんだか時が止まったかのように長く感じる。
「…ホンマに?」
黙ってコクン、と頷く。
否定的な言葉しか思いつかず
勝手に泣きそうになっていると
小さな声で“アカン、めっちゃ嬉しい”と聞こえた。
聞き間違いかと訝しげに顔を上げると
今まで見たことないような赤い顔した種ヶ島がいた。
『え…?』
「え?ってなんやねん。
そら好きな子にいきなり告白されたら
嬉しいに決まってるやん」
『好きな子…』
「好きな子。俺の好きな人は、瑠衣ちゃんなんやけど。
気づいてへんかった?」
俄に信じられず言葉を失っていたら
ペシッと軽く小突かれた。
『き、気づいていませんでした…』
「ハハッ!なんで敬語やねん。
誕生日やのに徳川とおってこっち来てくれへんし
その後もどこにもおらんし
おったと思ったらこんなとこにそんな格好で…
ホンマ、焦らしの天才なんやから」
キョロキョロと誰かを探していたのは
私のことを探してくれていて
今も、私のためだけに来てくれていたのだと知り
両思いなのだという実感がジワジワと湧いてくる。
種ヶ島は、そんな私の様子を見て満足気に微笑み
私の両肩に手を置いて
こつん、と自分のおでこを私のおでこに寄せる。
「なぁ、1番聞きたい言葉あんねんけど言うてくれへん?」
『あ……誕生日、おめでとう』
「おーきに。最高のプレゼントやな」
種ヶ島は今まで見たことないほどの
眩しい笑顔を見せてくれた。
来年も再来年も、あなたのそばで
5月29日をお祝いしたい。
生まれてきてくれて、ありがとう。大好き。
(ホンマ予想外のことしてくれるから驚きやわ〜)
(え?なにか変なことした…?)
(引き止めてくれたときにおめでとうって
言われるもんやと思うてたらまさかのジュースで
ツボってもうたわ)
(あ!だからあんなに笑って…)
(せやで。それに今度こそおめでとうって
言われる思たら告白やなんて…
心の準備が間に合わへんかったで)
(そ、それは…だって種ヶ島が手握るし
良い匂いするし格好良いしで
色々気持ちが溢れて…ってどうしたの?)
(敵わんわぁ…)