ただいま遠距離恋愛中3
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
『やっと終わった……』
あれから施設の掃除やら洗濯やらしていたら
時間が過ぎるのはあっという間だった。
ここのスタッフさん、すごい…。
めちゃくちゃ疲れた…。
夕食まで少し時間があるから
ロビーで少し休憩することにした。
「随分と働いていたな」
『あ、柳に幸村くん。お疲れ様』
ポン、と私が好きなジュースを渡される。
流石はデータマン。
私の好みも把握済みのよう。
「すごく手慣れていたね。
高等部でテニス部のマネージャーを
引き受けて欲しいくらいだよ」
『残念ながら高等部でも弓道一筋なので』
「ふふっ。心変わりしてくれるのを待ってるよ」
本当に同級生なのだろうかと
疑いたくなるような雰囲気。
クラスメート達が幸村くんを見て
騒いでいる気持ちがやっとわかった気がした。
「美山、昨日の話を聞いても良いだろうか?」
『昨日の話って?』
「毛利先輩との馴れ初めだ」
予想外の言葉に驚く。
丸井くんとか、切原くんとかは
聞いてきそうだなと思っていたけど
まさか柳が聞いてくるなんて。
どことなく、幸村くんも驚いているように見える。
『……そうね、出会ったのは・・・』
寿三郎さんと出会ったのは、私が1年生の時。
夏だった。
その時私は弓道部のエースで、1年生なのに
次期部長と言われていていた。
厳しい練習の中、エースと呼ばれるからには
結果を残さなければならない。
加えて、生徒会にも所属していて
こちらも次期生徒会長候補と言われていて
かなりのプレッシャーの中にいた。
いつの間にか出来上がっていた自分の位置。
全てをこなさなきゃって
躍起になって、少し無理をしていたのか
私は自主練の途中で倒れてしまった。
『……ん』
「あ!目ぇ覚めたんやね!よかったわ!
先生呼びに行こ思てたとこやったんよ」
『あれ……私……』
「自分、練習中に倒れたんや」
倒れた拍子にぶつけたのか、身体のあちこちが痛む。
見ればポカリと氷嚢と団扇が転がっていて
この人が処置してくれたのは一目瞭然だった。
『あの!助けてくれて、ありがとうございます』
「助けたなんて大袈裟やん。
熱中症かなぁ思うて
氷嚢と団扇は、勝手にそこから取らせてもろたよ」
夏用に置いてある冷蔵庫から取ったらしいが
的確な処置だった。
それにしても、この弓道部の練習場は
なかなか通る場所ではない。
なぜこの人は私が倒れたことに気付けたのだろうか。
『あの…よく気付きましたね。私が倒れたの』
「あっ、えーと………」
頭を掻きながら、彼はうつ向く。
おそらく上級生なのだろうが
仕草が少し子供っぽい。
「前な、たまたま自分の練習姿見たことあって…
めっちゃ綺麗やなー思うて
たまに、見させてもろうてたんよ。
しゃんとしとる姿見て、俺も頑張らなあかんなーって
励まされるなーって」
引かんといてな、ストーカーとかちゃうから!
って慌てる彼の姿を見て思わず笑った。
私の姿を見て
そう思ってくれてる人がいることが嬉しい。
それと同時に、涙が溢れてしまった。
「え!えぇ!ちょぉ……どっか痛いん?
やっぱ保健の先生呼んで…」
『違うん…です…』
「どないしたん?俺なんかしてもうた?」
『違う……私っ……』
泣きながら、私は初対面の人に
私の今の状況を話した。
どうしても誰かに「きつい」ってことを
話したくなってしまったのだ。
私の話は支離滅裂だったと思うが
黙って背中を擦って、話を聞いてくれた。
『いきなり・・・すみま、せん・・・泣いてしまって』
「ええんよ。泣きたい時は思い切り泣いたらええ。
・・・少し、頑張りすぎたんとちゃうかな。
ほら、心呼吸してみんせーね。
ひっひっふーって」
『・・・ふふっ、それ、違います』
「お、笑いんさった。
ええね。笑顔が一番やん」
優しい笑顔で、ぽんぽんと、頭を撫でられる。
徐々に、触れられたことと
泣いてしまったことに対して羞恥心が出でくる。
『ありがとうございます・・・。
すみません、取り乱してしまって。
少し、すっきりしました』
「がんばり屋さんなんやろうけど
たまには発散せんときついやん。
俺で良かったら、いつでも話聞きまっせ。
あ、せや。自己紹介しとらんね。
2年の毛利寿三郎言います。よろしゅう」
『美山舞です。よろしくお願いします』
その日から、
寿三郎さんはよく私の部活を見に来るようになった。
徐々に仲は深まり、学校で姿を見かければ話したり
サボり癖のある寿三郎さんに注意したり
売店で奢ってもらったり。
幸村くんの、お見舞いにもついて行ったこともある。
お見舞いといってもただ、スポーツドリンクを届けるだけ。
その時だけは、普段と違う寿三郎さんの雰囲気に
なにか、触れてはいけない気がして
ただ黙ってついて行っただけだった。
それから寿三郎さんが卒業する日に告白されて
付き合うことになったのだった。
『・・・・と、まぁこんな感じだね』
私が話し終えると、柳と幸村くんは
心底驚いているようだった。
「ほう・・・意外だった。
そんなことがあったのだな」
「美山さんはいつもしっかりして見えるから
俺もちょっと驚いたよ」
実は私自身も驚いたのだ。
元々人に愚痴を言ったり弱音を吐いたりしない…
というか
しないようにしていたから
初対面の先輩に、あんなに話すなんて
自分で自分がわからなかった。
そんなに切羽詰まっていたのか、それとも
「…余程、毛利先輩が話しやすい雰囲気だったのだろうな」
柳に考えを読まれていてドキッとする。
『そうかもね 』
柳達と話を終えて、寿三郎さん達と合流して食事をする。
終始種ヶ島さんが話しかけてくるのには困ったけど
寿三郎さんと大曲さんが
ちょくちょく助けてくれたので助かった。
そのまま休憩室へ移動して
皆で談笑していたのだったが
寿三郎さんの様子がいつもとは違うことに気がついた。
『寿三郎さん、どうかしましたか?』
「えっ!い、いや、なんもあらへんよ」
明らかに様子がおかしい。
具合が悪いのかもしれないと思い
部屋に戻ろうと言おうとした瞬間
種ヶ島さんにぐいっと肩を後ろに引かれた。
思わぬ動きに反応できず
ポスッと、種ヶ島さんに寄りかかってしまった。
そのまま肩を掴まれて動けない。
『わっ!ご、ごめんなさい!』
「舞ちゃんget☆」
わたわたしていると
寿三郎さんに腕を引かれて救い出される。
「……何してますん。触らんといて下さい」
聞いたことのないような声のトーンにビクッとする。
そのまま手を引かれて休憩室を出る。
後ろで大曲さんが種ヶ島さんを怒る声が聞こえた。
あれから施設の掃除やら洗濯やらしていたら
時間が過ぎるのはあっという間だった。
ここのスタッフさん、すごい…。
めちゃくちゃ疲れた…。
夕食まで少し時間があるから
ロビーで少し休憩することにした。
「随分と働いていたな」
『あ、柳に幸村くん。お疲れ様』
ポン、と私が好きなジュースを渡される。
流石はデータマン。
私の好みも把握済みのよう。
「すごく手慣れていたね。
高等部でテニス部のマネージャーを
引き受けて欲しいくらいだよ」
『残念ながら高等部でも弓道一筋なので』
「ふふっ。心変わりしてくれるのを待ってるよ」
本当に同級生なのだろうかと
疑いたくなるような雰囲気。
クラスメート達が幸村くんを見て
騒いでいる気持ちがやっとわかった気がした。
「美山、昨日の話を聞いても良いだろうか?」
『昨日の話って?』
「毛利先輩との馴れ初めだ」
予想外の言葉に驚く。
丸井くんとか、切原くんとかは
聞いてきそうだなと思っていたけど
まさか柳が聞いてくるなんて。
どことなく、幸村くんも驚いているように見える。
『……そうね、出会ったのは・・・』
寿三郎さんと出会ったのは、私が1年生の時。
夏だった。
その時私は弓道部のエースで、1年生なのに
次期部長と言われていていた。
厳しい練習の中、エースと呼ばれるからには
結果を残さなければならない。
加えて、生徒会にも所属していて
こちらも次期生徒会長候補と言われていて
かなりのプレッシャーの中にいた。
いつの間にか出来上がっていた自分の位置。
全てをこなさなきゃって
躍起になって、少し無理をしていたのか
私は自主練の途中で倒れてしまった。
『……ん』
「あ!目ぇ覚めたんやね!よかったわ!
先生呼びに行こ思てたとこやったんよ」
『あれ……私……』
「自分、練習中に倒れたんや」
倒れた拍子にぶつけたのか、身体のあちこちが痛む。
見ればポカリと氷嚢と団扇が転がっていて
この人が処置してくれたのは一目瞭然だった。
『あの!助けてくれて、ありがとうございます』
「助けたなんて大袈裟やん。
熱中症かなぁ思うて
氷嚢と団扇は、勝手にそこから取らせてもろたよ」
夏用に置いてある冷蔵庫から取ったらしいが
的確な処置だった。
それにしても、この弓道部の練習場は
なかなか通る場所ではない。
なぜこの人は私が倒れたことに気付けたのだろうか。
『あの…よく気付きましたね。私が倒れたの』
「あっ、えーと………」
頭を掻きながら、彼はうつ向く。
おそらく上級生なのだろうが
仕草が少し子供っぽい。
「前な、たまたま自分の練習姿見たことあって…
めっちゃ綺麗やなー思うて
たまに、見させてもろうてたんよ。
しゃんとしとる姿見て、俺も頑張らなあかんなーって
励まされるなーって」
引かんといてな、ストーカーとかちゃうから!
って慌てる彼の姿を見て思わず笑った。
私の姿を見て
そう思ってくれてる人がいることが嬉しい。
それと同時に、涙が溢れてしまった。
「え!えぇ!ちょぉ……どっか痛いん?
やっぱ保健の先生呼んで…」
『違うん…です…』
「どないしたん?俺なんかしてもうた?」
『違う……私っ……』
泣きながら、私は初対面の人に
私の今の状況を話した。
どうしても誰かに「きつい」ってことを
話したくなってしまったのだ。
私の話は支離滅裂だったと思うが
黙って背中を擦って、話を聞いてくれた。
『いきなり・・・すみま、せん・・・泣いてしまって』
「ええんよ。泣きたい時は思い切り泣いたらええ。
・・・少し、頑張りすぎたんとちゃうかな。
ほら、心呼吸してみんせーね。
ひっひっふーって」
『・・・ふふっ、それ、違います』
「お、笑いんさった。
ええね。笑顔が一番やん」
優しい笑顔で、ぽんぽんと、頭を撫でられる。
徐々に、触れられたことと
泣いてしまったことに対して羞恥心が出でくる。
『ありがとうございます・・・。
すみません、取り乱してしまって。
少し、すっきりしました』
「がんばり屋さんなんやろうけど
たまには発散せんときついやん。
俺で良かったら、いつでも話聞きまっせ。
あ、せや。自己紹介しとらんね。
2年の毛利寿三郎言います。よろしゅう」
『美山舞です。よろしくお願いします』
その日から、
寿三郎さんはよく私の部活を見に来るようになった。
徐々に仲は深まり、学校で姿を見かければ話したり
サボり癖のある寿三郎さんに注意したり
売店で奢ってもらったり。
幸村くんの、お見舞いにもついて行ったこともある。
お見舞いといってもただ、スポーツドリンクを届けるだけ。
その時だけは、普段と違う寿三郎さんの雰囲気に
なにか、触れてはいけない気がして
ただ黙ってついて行っただけだった。
それから寿三郎さんが卒業する日に告白されて
付き合うことになったのだった。
『・・・・と、まぁこんな感じだね』
私が話し終えると、柳と幸村くんは
心底驚いているようだった。
「ほう・・・意外だった。
そんなことがあったのだな」
「美山さんはいつもしっかりして見えるから
俺もちょっと驚いたよ」
実は私自身も驚いたのだ。
元々人に愚痴を言ったり弱音を吐いたりしない…
というか
しないようにしていたから
初対面の先輩に、あんなに話すなんて
自分で自分がわからなかった。
そんなに切羽詰まっていたのか、それとも
「…余程、毛利先輩が話しやすい雰囲気だったのだろうな」
柳に考えを読まれていてドキッとする。
『そうかもね 』
柳達と話を終えて、寿三郎さん達と合流して食事をする。
終始種ヶ島さんが話しかけてくるのには困ったけど
寿三郎さんと大曲さんが
ちょくちょく助けてくれたので助かった。
そのまま休憩室へ移動して
皆で談笑していたのだったが
寿三郎さんの様子がいつもとは違うことに気がついた。
『寿三郎さん、どうかしましたか?』
「えっ!い、いや、なんもあらへんよ」
明らかに様子がおかしい。
具合が悪いのかもしれないと思い
部屋に戻ろうと言おうとした瞬間
種ヶ島さんにぐいっと肩を後ろに引かれた。
思わぬ動きに反応できず
ポスッと、種ヶ島さんに寄りかかってしまった。
そのまま肩を掴まれて動けない。
『わっ!ご、ごめんなさい!』
「舞ちゃんget☆」
わたわたしていると
寿三郎さんに腕を引かれて救い出される。
「……何してますん。触らんといて下さい」
聞いたことのないような声のトーンにビクッとする。
そのまま手を引かれて休憩室を出る。
後ろで大曲さんが種ヶ島さんを怒る声が聞こえた。