真っ直ぐすぎる私の先輩
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『あれ…?』
「どうした」
『いえ…その…』
大切な書類がない。
どこを探してもない。
あの書類は個人情報が記載されているから
失くすなんてこと、あってはならない。
私の様子がおかしいのを感じた海堂先輩に
即座に落ち着くように諭される。
書類がないことを伝えると
一緒に探してくれることになった。
「昨日は、その書類どこに置いてた」
『えっと…課長に決裁印を貰わなきゃいけなかったのですが
ずっと外出されていて…
電話したら遅くなるから机に置いててと言われたので
そのまま机に置いて帰りました…』
「そのあとは」
『朝から課長に"昨日の書類机に置いたから"って
言われて探したのですが…』
「じゃあ課長の机に置いたあとはわからねぇんだな」
知らず知らずのうちに
自分の机にあった書類をどこかにやってしまったのか?
いや、そんなことはない。
朝来てすぐに自分の机に来たけどなにもなかった。
そもそも机に置いて帰った自分が悪い。
ちゃんと自分の手で渡すべきだった。
少しパニックになって、泣きそうになる。
「泣くんじゃねえ。お前は悪くない。
課長にもう一回聞きに行くぞ」
『……はい』
事情を課長に伝えると
驚くことに、課長は朝から私の机に確かに置いたと言う。
置いたあと暫く席を外したけど
風で飛んだりしないようにして置いたと。
やっぱり自分が失くしたのだ。
始末書ものだし、海堂先輩にも上司にも
他の皆にも迷惑を掛ける。
私のせいで、本店の士気がさがる…。
「お前は失くしてねぇ。俺はお前を信じる」
海堂先輩が真っ直ぐに見つめてくる。
課長も一緒になって話をしていたから
騒ぎを聞き付けた他の先輩達も何事かと集まってきた。
海堂先輩が事情を話すと
朝早くに出社していた先輩方がそういえばと口を開く。
「あ、営業サポートの子が来たよな」
「あぁ、下のコピーが調子悪いって来たな。
久我の机、コピー機近いしもしかして混ざったりとか…?」
「流石にそれはないんじゃないか?」
私が彼女達に嫌われていることを
知らない先輩方は笑っていたが
嫌な考えが脳裏をよぎる。
いや、まさかそんなことはないだろうと思っていたら
海堂先輩が勢いよく事務所を飛び出した。
『ちょっ、ちょっと海堂先輩!もしかして疑ってます?』
「あぁ?話を聞くだけだ」
『話を聞くだけって顔じゃないです!
流石にそんなことは…』
嫌がらせするために、書類を盗んだなんて考えたくもない。
なんとか営業サポート課に乗り込もうとしている
海堂先輩を止めていると課長がやって来て
ふたりで話を聞いてみるから
戻っておくようにと指示されてしまった。
それから一時間くらいして戻ってきた海堂先輩の顔は
とてつもなく暗い顔をしていた。
課長に呼ばれて事の真相を聞くと
私の嫌な考えは正しかった。
私への、嫌がらせだったのだ。
新卒で入社して給与も高いし
仕事もできるし
男性社員から可愛がられてるし
無視しても平気な顔をしていたのが気にくわなかったと。
泣きながら、課長と海堂先輩に自白したらしい。
ちなみに書類はシュレッダーされていて跡形もない。
課長と話を終えると
海堂先輩が私を待っていた。
「久我、悪かった」
『えぇ!?ちょっと、なんで頭下げるんですか!
顔、あげてください』
海堂先輩は私に対して、深く頭を下げていた。
「俺のせいだ。
俺がやったことは、逆効果だった。
そのせいで嫌な思いさせちまった…」
『海堂先輩のせいじゃないです。
寧ろ、ああやって助けてくれて嬉しかったです』
「いや…もう少し上手くやれたと反省してる」
『でも、すぐに行動してくれたり
私のこと信じてるって言ってくれたり…
海堂先輩が傍にいてくれなかったら
私は耐えられなかったと思います』
いつでも真っ直ぐな姿に助けられて
励まされて、憧れていたのに
いつの間にか惹かれていた。
「…お前は、初めてできた後輩だからな。
それに……守りたいって…いや、なんでもない」
言い淀んだ言葉はうまく聞き取れなかったけど
海堂先輩の頬は赤くなっていて
どうやら照れているらしい。
『私、海堂先輩が教育係で本当に良かったです。
一人前の営業になりますから
そのときまで、待っててください』
「あ?待つって何をだ」
『ふふ、内緒です』
不器用だけど、真っ直ぐで優しくて
私を引っ張ってくれる、少し照れ屋な先輩に
愛しいなあ、という気持ちを抱いていることは
暫く隠しておこう。
今はまだ、後輩は後輩らしく。
胸を張って隣を歩けるようになるまでは。
(お前……猫は好きか)
(はい。好きですよ。動物全般好きです)
(そう、か)
(そういえば駅前に保護猫カフェが出来たらしいですね)
(…あぁ、知ってる)
(…海堂先輩って、猫好きですよね?)
(べ、べつに好きって訳じゃ…)
(そうですか。猫カフェ、お誘いしようかと思ってたのですが
誰か他の人を誘うかひとりで、)
(い、行く)
(え?)
(今度の休み、行くぞ)
(いいんですか?)
(あぁ。他のやつと、行くくらいなら俺が行く)
(海堂先輩って………やっぱり猫好きなんですね!)
(え、あ、いや、ちがっ…、いや違わない…いや…
そういう意味じゃ…)
(?)
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