真っ直ぐすぎる私の先輩
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この会社に総合職として入社し
配属されたのは、まさかの本店の営業。
総合職って聞こえはいいけれど
事務でも営業でもなんでもやらなければならないということ。
でもまさか、最初から営業だなんて思ってもみなかった。
人事の人も、最初は事務から~って言ってたのに。
しかも本店だし
しかも10人いる営業マンは全員男性で女性は私だけだし。
もう信じられない。
持ち前の前向き神経でなんとかやるしかない、と思い
なんとか3ヶ月を乗りきった。
『海堂先輩、準備できました』
「じゃあ、行くぞ」
4つ年上の海堂先輩は、私の教育係。
鋭い目付きが最初は怖かったけど
話してみると真面目で
少し不器用なだけの人なのかなと
最近は思えるようになってきた。
「今日は1日中外になるぞ」
『大丈夫です。いつもより動きやすい格好で来ました』
「…いつもと変わらねえだろ」
『こう見えてストレッチ素材のスーツです!』
「…そうか」
わかりにくいけど
"1日中外になるぞ"は海堂先輩なりの気遣い。
女性だからヒラヒラしたスカートや
ヒールとかだと動きにくい。
まあ、足手まといになるなって意味かもしれないけど
私は前向き思考なので良いように受け取る。
ただ、こんな私にも悩みのひとつやふたつある。
私たちがいるオフィスは5階。
外出するときや出勤するときは
ビルの構造上
必ず4階の営業サポートの課を通らなければならない。
営業サポート課は、文字通り
営業マンのサポートをしてくれる部署だ。
事務長以外、全員女性で20代から50代の女性がいる。
私はどうやらそこの女性陣から
嫌われているようなのだ。
「行ってきます」
「海堂さんいってらっしゃーい!」
『行ってきます』
「……いってらっしゃーい…』
出掛けるときは一声掛ける。
帰ってきたときは
「戻りました」と言えば「お帰りなさい」が返ってくる。
これが暗黙?のルールなのだけど
私が言うといつもこんな感じ。
今日は海堂先輩と一緒だったから返事があったものの
私一人のときは無視だ。
中心となっている所謂お局様と
その取り巻き数人は完全無視。
あとは逆らえず居心地悪そうにしている人が数人。
事務長は触れないって感じ。
ここを通るのが、けっこうストレスだったりする。
今日は本当にバタバタだったので
お昼ごはんは社用車の中でコンビニのサンドイッチ。
ラジオからは今週のヒットソングとか流れている。
二人とも無言で食べている中、アイドルの
可愛い歌声が聞こえているのがシュールだ。
「…なんかあったのか」
『え?なんですか?』
ボソッと呟かれた言葉がうまく聞き取れなかった。
「最近元気ねぇだろ」
海堂先輩とは普段からあまり会話はない。
もちろん仕事上の話はするけど
プライベートなことはあまり話したことがない。
だから元気がない、と言われて少し驚く。
『…元気がないように、見えますかね?
自分ではそういうつもりはなかったんですけど』
「……言いたくなかったらいい。ただ、そう見えただけだ」
『………少しだけ、愚痴を言ってもいいですか?』
私は無視されること、嫌われていることを話した。
こういうことは、あまり言いたくはないのだけど
今までで我慢していた分
話し始めると負の感情が溢れてきた。
「そうか…」
『すみません、こんな話』
「いや、いい。寧ろ早くに気付けなかった俺が悪い」
『いえ、先輩のせいじゃないです。
きっと私が何かしらしたんだと思います』
でも何をしたのかがわからない。
ミスをしたのか、失礼なことをしたのか
身に覚えがないのだ。
理由がわからないからこそ、どうしようもない。
「何かやらかしたとしても
後輩に教えるのは俺たち、先輩や上司の仕事だ。
久我が何かミスをしたなら
その時点で俺達が注意してやらなきゃならねえ。
それがなってねぇなら俺達が悪い」
海堂先輩はそう言うと、コンビニの袋から
猫のイラストのついた可愛らしいお菓子を取り出して
無言で私に渡してくれた。
『あ、ありがとうございます』
これもまた海堂先輩なりの気遣い。
渡してすぐ車を発進させたのは
照れ隠しなのだろう。
翌日、出社しようと会社の前まで来たら
海堂先輩がなぜか表に立っていた。
『おはようございます。どうしたんですか?』
「行くぞ」
『?』
どうして待っていたのだろう、と疑問に思いながら
4階の営業サポート課の前を通ろうとした時
先に行けと言われた。
待っていたり、なんなんだと思いつつ
4階の営業サポート課の前で
私はいつものように挨拶をする。
数人が顔をあげたと思ったら
くすくす笑いながら無視される。
ああ、もうやだ。
「おい。挨拶してんのが聞こえねぇのか」
海堂先輩のドスの効いた声が事務所に響く。
表情はいつもと変わらないが
いつも以上に目が怖い。
バツの悪そうな顔をして
女性社員たちはその場から逃げていった。
『海堂先輩、このために待っててくれてたんですね…
ありがとうございます』
「…たまたま寝坊しただけだ」
『でも先に行けって言ったり…』
「…たまたま靴紐がほどけただけだ」
ぶっきらぼうに突き放されたけど
優しさがじわじわと身に染みる。
でも、海堂先輩のこの行動はひとつの波乱へと繋がった。
配属されたのは、まさかの本店の営業。
総合職って聞こえはいいけれど
事務でも営業でもなんでもやらなければならないということ。
でもまさか、最初から営業だなんて思ってもみなかった。
人事の人も、最初は事務から~って言ってたのに。
しかも本店だし
しかも10人いる営業マンは全員男性で女性は私だけだし。
もう信じられない。
持ち前の前向き神経でなんとかやるしかない、と思い
なんとか3ヶ月を乗りきった。
『海堂先輩、準備できました』
「じゃあ、行くぞ」
4つ年上の海堂先輩は、私の教育係。
鋭い目付きが最初は怖かったけど
話してみると真面目で
少し不器用なだけの人なのかなと
最近は思えるようになってきた。
「今日は1日中外になるぞ」
『大丈夫です。いつもより動きやすい格好で来ました』
「…いつもと変わらねえだろ」
『こう見えてストレッチ素材のスーツです!』
「…そうか」
わかりにくいけど
"1日中外になるぞ"は海堂先輩なりの気遣い。
女性だからヒラヒラしたスカートや
ヒールとかだと動きにくい。
まあ、足手まといになるなって意味かもしれないけど
私は前向き思考なので良いように受け取る。
ただ、こんな私にも悩みのひとつやふたつある。
私たちがいるオフィスは5階。
外出するときや出勤するときは
ビルの構造上
必ず4階の営業サポートの課を通らなければならない。
営業サポート課は、文字通り
営業マンのサポートをしてくれる部署だ。
事務長以外、全員女性で20代から50代の女性がいる。
私はどうやらそこの女性陣から
嫌われているようなのだ。
「行ってきます」
「海堂さんいってらっしゃーい!」
『行ってきます』
「……いってらっしゃーい…』
出掛けるときは一声掛ける。
帰ってきたときは
「戻りました」と言えば「お帰りなさい」が返ってくる。
これが暗黙?のルールなのだけど
私が言うといつもこんな感じ。
今日は海堂先輩と一緒だったから返事があったものの
私一人のときは無視だ。
中心となっている所謂お局様と
その取り巻き数人は完全無視。
あとは逆らえず居心地悪そうにしている人が数人。
事務長は触れないって感じ。
ここを通るのが、けっこうストレスだったりする。
今日は本当にバタバタだったので
お昼ごはんは社用車の中でコンビニのサンドイッチ。
ラジオからは今週のヒットソングとか流れている。
二人とも無言で食べている中、アイドルの
可愛い歌声が聞こえているのがシュールだ。
「…なんかあったのか」
『え?なんですか?』
ボソッと呟かれた言葉がうまく聞き取れなかった。
「最近元気ねぇだろ」
海堂先輩とは普段からあまり会話はない。
もちろん仕事上の話はするけど
プライベートなことはあまり話したことがない。
だから元気がない、と言われて少し驚く。
『…元気がないように、見えますかね?
自分ではそういうつもりはなかったんですけど』
「……言いたくなかったらいい。ただ、そう見えただけだ」
『………少しだけ、愚痴を言ってもいいですか?』
私は無視されること、嫌われていることを話した。
こういうことは、あまり言いたくはないのだけど
今までで我慢していた分
話し始めると負の感情が溢れてきた。
「そうか…」
『すみません、こんな話』
「いや、いい。寧ろ早くに気付けなかった俺が悪い」
『いえ、先輩のせいじゃないです。
きっと私が何かしらしたんだと思います』
でも何をしたのかがわからない。
ミスをしたのか、失礼なことをしたのか
身に覚えがないのだ。
理由がわからないからこそ、どうしようもない。
「何かやらかしたとしても
後輩に教えるのは俺たち、先輩や上司の仕事だ。
久我が何かミスをしたなら
その時点で俺達が注意してやらなきゃならねえ。
それがなってねぇなら俺達が悪い」
海堂先輩はそう言うと、コンビニの袋から
猫のイラストのついた可愛らしいお菓子を取り出して
無言で私に渡してくれた。
『あ、ありがとうございます』
これもまた海堂先輩なりの気遣い。
渡してすぐ車を発進させたのは
照れ隠しなのだろう。
翌日、出社しようと会社の前まで来たら
海堂先輩がなぜか表に立っていた。
『おはようございます。どうしたんですか?』
「行くぞ」
『?』
どうして待っていたのだろう、と疑問に思いながら
4階の営業サポート課の前を通ろうとした時
先に行けと言われた。
待っていたり、なんなんだと思いつつ
4階の営業サポート課の前で
私はいつものように挨拶をする。
数人が顔をあげたと思ったら
くすくす笑いながら無視される。
ああ、もうやだ。
「おい。挨拶してんのが聞こえねぇのか」
海堂先輩のドスの効いた声が事務所に響く。
表情はいつもと変わらないが
いつも以上に目が怖い。
バツの悪そうな顔をして
女性社員たちはその場から逃げていった。
『海堂先輩、このために待っててくれてたんですね…
ありがとうございます』
「…たまたま寝坊しただけだ」
『でも先に行けって言ったり…』
「…たまたま靴紐がほどけただけだ」
ぶっきらぼうに突き放されたけど
優しさがじわじわと身に染みる。
でも、海堂先輩のこの行動はひとつの波乱へと繋がった。