定時まであと一時間
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
大阪支店の営業成績トップという話は伊達ではなかった。
財前君はかなり、仕事ができる人間だった。
私は事務職なので
彼がどんな営業をしているのかはわからないが
契約が難しいとされる案件も
すんなりと契約を取ってくる。
私は彼のペアなので、彼が取ってきた契約の
事務処理をするのだけど
私が処理しやすいように
ちょっとした気遣いも感じられるし
何者なんだろう、と本気で思う。
あと、PCスキルがめっちゃ高い。
なにその速さって、思わず見とれるくらい。
『ねぇ、財前君…。君ってすごいね…』
「なんですか、いきなり」
『いや、なんというか…私足引っ張ってないかな?
大丈夫?なんか言いたいことあったら言ってね?』
「………」
なに言ってるんだ、みたいな視線を向けられる。
でもここまで仕事ができると
私のサポートなんぞいらないのではないかと
思わざるを得ないのだ。
「足引っ張ってるどころか
これでも結構助けられてるんスけど」
『え?そうなの?』
「…こん前、永谷さん休みやったとき
別の人に処理頼んだんスけど」
『あぁ、あの子にお願いしてたよね』
「計算間違いは当たり前
誤字はあるわ、半角と全角混ざってるわ
書類の留め方汚いわ…全部作り直したりました」
あぁ、あの子の教育係りは私がしたのだけど
教え方がまずかったのか、財前君の言葉に耳が痛い。
『たまたま、じゃないかな?
ほら、財前君とは初めてだし緊張してたっていうか…』
「は?仕事っスよ?いくつやと思うてんスか」
『おっしゃる通りです…』
でも多分緊張したのは本当だと思う。
あの子は財前君のファンらしいから
きっと舞い上がってたんじゃないかな。
まあ社会人としてはダメだけど、まだ20歳そこらの子だ。
許してあげたい気持ちにもなる。
「……永谷さんは、仕事に私情持ち込まへんし
俺やなくて"仕事"として見てくれるんで。
事務処理も丁寧やし、商談の時に
アドバイスもくれるやないですか。
あれ、すごい助かってます」
『それは…まあ、もう8年も同じ仕事してるからね。
アドバイスは役に立ってて良かったよ。
営業やってたらそこまで調べる時間ないしね』
アドバイス、というのは
私が勝手にやっている簡単な調べもののことだ。
財前君が商談する相手の会社について調べる。
相手が社長の場合は、社長の好きなものとか。
ネットで検索すると社長インタビューとかで
けっこう情報は仕入れられる。
ただ、調べる。それだけのこと。
でも案外それが助けになっていたようで嬉しい。
「…永谷さんやないと、俺無理っスわ」
『えぇ!ちょっといきなりデレたね。
ビックリして照れるじゃん!』
「……ほんま
ムードもへったくれもないやっちゃなこの人…」
『ムード??』
「はぁ。
"仕事"としてちゃんと見てくれるんはありがたいんスけど
たまには"俺"も見てほしいんですけど」
綺麗な顔をずいっと寄せてくる。
見慣れない財前君のアップに戸惑って顔が熱くなる。
『いや、ちょっと、歳上からかわないでよ!』
「歳上言うても3つしか変わらへんやないですか」
『財前君が中1の時、私高1よ!?学校被ってないのよ!?』
「いや、どんな例えやねん。それなら小学生の時やったら
学校被ってるじゃないですか」
『あ、そっか、被ってるね。じゃなくて!』
一人でテンパっていると
財前君は、また声を押し殺して笑っていた。
「ほんま、おもろい人ですわ。
せや、今日飲み行きましょ」
『え、なんでいきなり』
「話し足りひんです。定時で帰りますよ。
…ええですね、湊さん」
『…う……はい…』
いきなりのお誘いと
いきなりの名前呼びにただただ流されて
それでも期待してしまっている自分がいる。
定時まであと1時間。
もう何も手につきそうにない。
(そういえば私大阪支店の支店長とはよく衝突してたなあ)
(へー…)
(ずさんなチェック体制だったからいつも注意してたの。
でも全く話聞いてくれなくて)
(店長、キャラ強い人っスもんね)
(そうそう。いつだったか入社間もない子が
そのせいでミスしちゃってね。
言い逃ればっかりするから私怒って言い争って…
いま思えば私めちゃくちゃ生意気だったわ)
(……正義感強いっスね)
(そうでもないよ。
ちゃんと私の注意が伝わってたら、その子が
嫌な思いすることなかったもの)
(湊さんのせいやないですよ)
(ふふ、ありがとう)
(湊さんは昔からほんま素敵です)
(へ?何言って…ん?昔?)
(なんでもないですわ)
財前君はかなり、仕事ができる人間だった。
私は事務職なので
彼がどんな営業をしているのかはわからないが
契約が難しいとされる案件も
すんなりと契約を取ってくる。
私は彼のペアなので、彼が取ってきた契約の
事務処理をするのだけど
私が処理しやすいように
ちょっとした気遣いも感じられるし
何者なんだろう、と本気で思う。
あと、PCスキルがめっちゃ高い。
なにその速さって、思わず見とれるくらい。
『ねぇ、財前君…。君ってすごいね…』
「なんですか、いきなり」
『いや、なんというか…私足引っ張ってないかな?
大丈夫?なんか言いたいことあったら言ってね?』
「………」
なに言ってるんだ、みたいな視線を向けられる。
でもここまで仕事ができると
私のサポートなんぞいらないのではないかと
思わざるを得ないのだ。
「足引っ張ってるどころか
これでも結構助けられてるんスけど」
『え?そうなの?』
「…こん前、永谷さん休みやったとき
別の人に処理頼んだんスけど」
『あぁ、あの子にお願いしてたよね』
「計算間違いは当たり前
誤字はあるわ、半角と全角混ざってるわ
書類の留め方汚いわ…全部作り直したりました」
あぁ、あの子の教育係りは私がしたのだけど
教え方がまずかったのか、財前君の言葉に耳が痛い。
『たまたま、じゃないかな?
ほら、財前君とは初めてだし緊張してたっていうか…』
「は?仕事っスよ?いくつやと思うてんスか」
『おっしゃる通りです…』
でも多分緊張したのは本当だと思う。
あの子は財前君のファンらしいから
きっと舞い上がってたんじゃないかな。
まあ社会人としてはダメだけど、まだ20歳そこらの子だ。
許してあげたい気持ちにもなる。
「……永谷さんは、仕事に私情持ち込まへんし
俺やなくて"仕事"として見てくれるんで。
事務処理も丁寧やし、商談の時に
アドバイスもくれるやないですか。
あれ、すごい助かってます」
『それは…まあ、もう8年も同じ仕事してるからね。
アドバイスは役に立ってて良かったよ。
営業やってたらそこまで調べる時間ないしね』
アドバイス、というのは
私が勝手にやっている簡単な調べもののことだ。
財前君が商談する相手の会社について調べる。
相手が社長の場合は、社長の好きなものとか。
ネットで検索すると社長インタビューとかで
けっこう情報は仕入れられる。
ただ、調べる。それだけのこと。
でも案外それが助けになっていたようで嬉しい。
「…永谷さんやないと、俺無理っスわ」
『えぇ!ちょっといきなりデレたね。
ビックリして照れるじゃん!』
「……ほんま
ムードもへったくれもないやっちゃなこの人…」
『ムード??』
「はぁ。
"仕事"としてちゃんと見てくれるんはありがたいんスけど
たまには"俺"も見てほしいんですけど」
綺麗な顔をずいっと寄せてくる。
見慣れない財前君のアップに戸惑って顔が熱くなる。
『いや、ちょっと、歳上からかわないでよ!』
「歳上言うても3つしか変わらへんやないですか」
『財前君が中1の時、私高1よ!?学校被ってないのよ!?』
「いや、どんな例えやねん。それなら小学生の時やったら
学校被ってるじゃないですか」
『あ、そっか、被ってるね。じゃなくて!』
一人でテンパっていると
財前君は、また声を押し殺して笑っていた。
「ほんま、おもろい人ですわ。
せや、今日飲み行きましょ」
『え、なんでいきなり』
「話し足りひんです。定時で帰りますよ。
…ええですね、湊さん」
『…う……はい…』
いきなりのお誘いと
いきなりの名前呼びにただただ流されて
それでも期待してしまっている自分がいる。
定時まであと1時間。
もう何も手につきそうにない。
(そういえば私大阪支店の支店長とはよく衝突してたなあ)
(へー…)
(ずさんなチェック体制だったからいつも注意してたの。
でも全く話聞いてくれなくて)
(店長、キャラ強い人っスもんね)
(そうそう。いつだったか入社間もない子が
そのせいでミスしちゃってね。
言い逃ればっかりするから私怒って言い争って…
いま思えば私めちゃくちゃ生意気だったわ)
(……正義感強いっスね)
(そうでもないよ。
ちゃんと私の注意が伝わってたら、その子が
嫌な思いすることなかったもの)
(湊さんのせいやないですよ)
(ふふ、ありがとう)
(湊さんは昔からほんま素敵です)
(へ?何言って…ん?昔?)
(なんでもないですわ)