「お、お目覚めか」


ガラの悪い男が3人。
マイを見下ろして、にたにたと笑っている。



『ここはどこ？』


弱気を見せてはいけない、とマイは
取り乱すこともなく問いかける。
両手はだいぶ緩んでいて、外すことはできるが
足はまだ自由が効かない。



「どこだっていいだろ。
お前はこれから一生ここから出れねぇんだからよ」


キッ、と睨むと男達は笑う。


「いいねぇ、その強気な態度。
簡単に泣かねぇところが気に入ったぜ」

「なあ、少しくらい俺たちも
手ぇ出したってバレやしないよな」



背筋がヒヤリ、とする。
きっと仲間達がすぐに来てくれる、
あの私の匂いが付いたバッチをきっとラピードが見つけて
レイヴンかカロルがこのギルドに気づいてくれる…
そう信じて気丈を振る舞っていたがもう時間はない。
ぐいっと、１人の男がマイの身体を押さえ付けてきた。
マイはほどいた手で近寄ってきた男を殴る。


「くそっ！この女……！」

『うっ……！』

「おい、顔はやめろって！売りもんにならなくなるだろ」


殴られた男は逆上して殴り返し
乱暴にマイを床に叩きつける。
そしてぐったりした身体に馬乗りになり
マイの胸元を衣服ごと破いた。


『…！やめて……！いやだ、離して！』


必死に抵抗するも、男女の力の差は大きくびくともしない。
マイの脳裏には、レイヴンの顔が浮かぶ。


(助けて……レイヴン…！
いやだ、こんな奴らに弄ばれるなんて…！)


好きでもない男から触れられて
身体をまさぐられて
嫌悪感からマイは泣きそうになる。
そのとき、近くで大きな爆発音が聞こえた。



「なんだ！何が起きた！」

「ちっ……これからだってのに」

「何がこれからだって？」


ドスッと音がして男が2人倒れる。
そこにはレイヴンが立っていた。
マイは安堵と拭えない恐怖感とで
声が出せないままでいた。


「よかった！マイここにいたんですね！」


エステルの声に必死に頷く。
そんなマイの姿を見て、レイヴンの表情が固まり
すぐそばにいた、マイに襲いかかっていた
男に視線を向ける。
その瞳には、今まで見たことがないくらいの
怒りが感じてとれた。
レイヴンは男の胸ぐらを締め上げる。


「おたくら、ここで何しようとしてたわけ？」

「ぐっ……ビジネスだよ、ビジネス！
ここに閉じ込めて、女達に身体を売らせて儲けようって
計画だったんだよ！」

「常人には考えつかない、低俗な考えね」



ジュディスの発言にも珍しく怒りが含まれていた。



「あの子にも、そういうことさせようとしてたってわけ？」

「あぁ、そうだよ。
その前にちょっと味見してやろうと思ってたんだよ」



男の発言に、締め上げる力が強まる
レイヴンの殺気が立ち込める。


「おいおっさん、その辺にしとけよ。
本当に死んじまうぞそいつ」


ユーリの声にも反応しないレイヴンを見て
マイは後ろからレイヴンに抱きついた。


『もう、私は大丈夫、だから』


マイの声に我に返ったレイヴンが手を離すと
締め上げられていた男は気を失って倒れてしまった。
レイヴンは胸元が露になったマイに
自分の上着を羽織らせて、そっと抱き締めた。
レイヴンの体温を感じるとマイは
今まで張りつめていた感情が弛み、涙が溢れる。
強がっていても、怖かったのだ。


「もう誰もマイちゃんを傷つけるやつはいないから。
皆がいるから」


声にならない声でしがみつくマイを
レイヴンはいつまでも抱き締めていた。