●真面目なあの子は
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レイヴンは【天を射る重星】で飲みながら
今日聞いた話を思い返していた。
一週間で、そこまでこの街の連中を
手懐けられた理由とはなにか。
レイヴン自身この街に、【天を射る矢】に
馴染むのに少し時間が掛かった。
リズルートは、何者なのか。
『私がどういう人間か、わかりましたか?』
レイヴンが振り向くと、そこにはリズルートがいた。
渦中の人物がまさかここに現れるとは。
言葉的に、どうやら監視していたことは
既にバレているようだった。
「いんや、ちっともわかんないわねぇ。
美人で真面目なお姉さん、ってことくらいかしら」
『あんなに聞きまわっていたのにですか?』
レイヴンは、ぐっ、と息を飲む。
好奇心もあり、ついつい聞きまわりすぎたか
と反省する。
「直接本人に聞かなきゃ色々と見えないことが多くてね」
『じゃあここで会えたのは、丁度良い機会でしたね。
隣に座っても良いですか』
レイヴンはリズルートの考えが読めなかったが
見張っていたことが露見した今、
今さら取り繕っても意味がない。
なるようになれ、という気持ちで
そして若干の下心を携えて
レイヴンはリズルートを隣に座らせた。
『名前は…もう知ってますね。
リズルートです。歳は20歳。
ここに来るまでは色んな街を転々として
旅をしていました』
「…20歳……えらく落ち着いてるのね。
(25歳くらいかと思ってたわ…)
えっと、旅ってなんで?」
『自分の知っている世界が狭いと知って
色んな場所で、色んなことを見てみたいと思ったのです。
そして、自分のすべきこと、したいことを探したい、と』
「ギルドには入らないって言ってたけど
何か理由があるの?」
リズルートはカラン、と音をたててグラスを傾ける。
『私は、騎士団にいました』
リズルートの思わぬ発言にレイヴンは思わず
酒を溢しそうになる。
『人魔戦争で故郷と家族を亡くしてから
騎士団に入り、人々を守るために…
と思っていましたが
統率も取れていない、横暴はする
理不尽な体制に辟易してしまって…』
「辞めちゃったってわけ?」
『はい。正しくは
横暴な態度の上官を殴り飛ばして辞めました』
リズルートの予想外の発言にレイヴンは固まる。
このすました顔をした彼女が
己の上司を殴り飛ばす姿。
想像してみて、思わず笑ってしまった。
そして同時に思い出した。
そういえば確か
下町の女性に手を出したとある隊長を
殴って叱責した女性隊員がいたと
報告を受けたことがあった。
あれはリズルートだったのか、とレイヴンは記憶が繋がる。
『先日から、ドンにも笑われましたし
あなたにもそんなに笑われるとは…』
心外です、と呟く彼女は少し可愛らしかった。
リズルート的には冗談を言ったつもりはなく
素直に答えていただけなのだ。
「だからギルドに入らないのね。
組織に属したくないってわけか」
『まぁ、そうです。
それに私の力がどれだけ通用するか
試しても見たかったので』
この真っ直ぐとした姿勢が
周囲に認められたのだろう、とレイヴンは感心する。
この真っ直ぐで、素直で
自分をしっかりと持っているリズルートの姿は
レイヴンには少し眩しかった。
自分にはないものばかりを持っている彼女の姿は
かつて背中を追ったあの人にも似ていて
どうにも話していて心が揺さぶられる。
「力試しはもう通用してるとは思うわよ。
ここらへんの奴ら、皆君にうちのギルドに
入ってほしいって言ってるもの。大したもんよ」
『いえ。私はまだまだ未熟で
知らないことも多いですから。
もっと精進しなければと思っています』
リズルートはグラスを置いてレイヴンと
視線を合わせる。
柔らかく微笑む彼女に、レイヴンはどきり、とする。
『さて。これでわかって頂けたでしょうか』
「充分わかったわ。…最後にもひとつ聞きたいんだけど…
今日、ここに来たのはどうして?」
『あなたと話がしたかったからです』
「へ?」
『私のことを知りたがっていたようですし
怪しんでいるのであれば、身の潔白を証明したかった。
だからこの店に出入りされていると聞いて
来てみたんです』
先程の柔らかい笑顔から一変して
どこかしてやったり、というような
挑発的な表情が妖艶で
レイヴンはこんな表情もできるのか、と思わず見とれた。
どこまでを見越して、ドンが彼女のことを
”面白い奴”と言ったのかはわからないが
今ならドンに同意だった。
「ねぇ、リズちゃんって呼んでもいいかしら」
『はい。お好きなように呼んでください。レイヴンさん』
ふたりは飲みかけた酒で再度乾杯し
その日は遅くまで語り合っていた。
レイヴンが新顔の女性と飲んでいて
デレデレしていたという噂は一気にダングレストに広まり
別の意味でもリズルートは一目置かれる存在になったのだった。
(じいさん、この依頼どうすんの?この人数じゃ厳しいでしょ)
(あぁ?そんなもんおめぇ、呼べばいいじゃねぇか)
(呼ぶって?)
(リズルートに決まってるだろうが)
(じいさん…リズちゃんお気に入りよねー)
(何言ってやがる。気に入ってんのはおめぇのほうだろうが)
(そ、そんなんじゃないって!)
(どのみちうちに入れるつもりだからな。
今のうちからうちの仕事どんどん入れとけ)
(リズちゃんも厄介な人に目ぇつけられたわね…)
今日聞いた話を思い返していた。
一週間で、そこまでこの街の連中を
手懐けられた理由とはなにか。
レイヴン自身この街に、【天を射る矢】に
馴染むのに少し時間が掛かった。
リズルートは、何者なのか。
『私がどういう人間か、わかりましたか?』
レイヴンが振り向くと、そこにはリズルートがいた。
渦中の人物がまさかここに現れるとは。
言葉的に、どうやら監視していたことは
既にバレているようだった。
「いんや、ちっともわかんないわねぇ。
美人で真面目なお姉さん、ってことくらいかしら」
『あんなに聞きまわっていたのにですか?』
レイヴンは、ぐっ、と息を飲む。
好奇心もあり、ついつい聞きまわりすぎたか
と反省する。
「直接本人に聞かなきゃ色々と見えないことが多くてね」
『じゃあここで会えたのは、丁度良い機会でしたね。
隣に座っても良いですか』
レイヴンはリズルートの考えが読めなかったが
見張っていたことが露見した今、
今さら取り繕っても意味がない。
なるようになれ、という気持ちで
そして若干の下心を携えて
レイヴンはリズルートを隣に座らせた。
『名前は…もう知ってますね。
リズルートです。歳は20歳。
ここに来るまでは色んな街を転々として
旅をしていました』
「…20歳……えらく落ち着いてるのね。
(25歳くらいかと思ってたわ…)
えっと、旅ってなんで?」
『自分の知っている世界が狭いと知って
色んな場所で、色んなことを見てみたいと思ったのです。
そして、自分のすべきこと、したいことを探したい、と』
「ギルドには入らないって言ってたけど
何か理由があるの?」
リズルートはカラン、と音をたててグラスを傾ける。
『私は、騎士団にいました』
リズルートの思わぬ発言にレイヴンは思わず
酒を溢しそうになる。
『人魔戦争で故郷と家族を亡くしてから
騎士団に入り、人々を守るために…
と思っていましたが
統率も取れていない、横暴はする
理不尽な体制に辟易してしまって…』
「辞めちゃったってわけ?」
『はい。正しくは
横暴な態度の上官を殴り飛ばして辞めました』
リズルートの予想外の発言にレイヴンは固まる。
このすました顔をした彼女が
己の上司を殴り飛ばす姿。
想像してみて、思わず笑ってしまった。
そして同時に思い出した。
そういえば確か
下町の女性に手を出したとある隊長を
殴って叱責した女性隊員がいたと
報告を受けたことがあった。
あれはリズルートだったのか、とレイヴンは記憶が繋がる。
『先日から、ドンにも笑われましたし
あなたにもそんなに笑われるとは…』
心外です、と呟く彼女は少し可愛らしかった。
リズルート的には冗談を言ったつもりはなく
素直に答えていただけなのだ。
「だからギルドに入らないのね。
組織に属したくないってわけか」
『まぁ、そうです。
それに私の力がどれだけ通用するか
試しても見たかったので』
この真っ直ぐとした姿勢が
周囲に認められたのだろう、とレイヴンは感心する。
この真っ直ぐで、素直で
自分をしっかりと持っているリズルートの姿は
レイヴンには少し眩しかった。
自分にはないものばかりを持っている彼女の姿は
かつて背中を追ったあの人にも似ていて
どうにも話していて心が揺さぶられる。
「力試しはもう通用してるとは思うわよ。
ここらへんの奴ら、皆君にうちのギルドに
入ってほしいって言ってるもの。大したもんよ」
『いえ。私はまだまだ未熟で
知らないことも多いですから。
もっと精進しなければと思っています』
リズルートはグラスを置いてレイヴンと
視線を合わせる。
柔らかく微笑む彼女に、レイヴンはどきり、とする。
『さて。これでわかって頂けたでしょうか』
「充分わかったわ。…最後にもひとつ聞きたいんだけど…
今日、ここに来たのはどうして?」
『あなたと話がしたかったからです』
「へ?」
『私のことを知りたがっていたようですし
怪しんでいるのであれば、身の潔白を証明したかった。
だからこの店に出入りされていると聞いて
来てみたんです』
先程の柔らかい笑顔から一変して
どこかしてやったり、というような
挑発的な表情が妖艶で
レイヴンはこんな表情もできるのか、と思わず見とれた。
どこまでを見越して、ドンが彼女のことを
”面白い奴”と言ったのかはわからないが
今ならドンに同意だった。
「ねぇ、リズちゃんって呼んでもいいかしら」
『はい。お好きなように呼んでください。レイヴンさん』
ふたりは飲みかけた酒で再度乾杯し
その日は遅くまで語り合っていた。
レイヴンが新顔の女性と飲んでいて
デレデレしていたという噂は一気にダングレストに広まり
別の意味でもリズルートは一目置かれる存在になったのだった。
(じいさん、この依頼どうすんの?この人数じゃ厳しいでしょ)
(あぁ?そんなもんおめぇ、呼べばいいじゃねぇか)
(呼ぶって?)
(リズルートに決まってるだろうが)
(じいさん…リズちゃんお気に入りよねー)
(何言ってやがる。気に入ってんのはおめぇのほうだろうが)
(そ、そんなんじゃないって!)
(どのみちうちに入れるつもりだからな。
今のうちからうちの仕事どんどん入れとけ)
(リズちゃんも厄介な人に目ぇつけられたわね…)
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