大雨時々笑顔

今日の天気予報は大雨。
でも案外天気予報も外れるのでは?と思って
登校するも、外は予報通りの大雨。

家を出て、ほんの数十秒で
足元はずぶ濡れだ。
風が強いため、
傘もほとんど意味をなしていない。
なんとか駅に着くと
アナウンスが鳴っていた。

『○○行きの列車は遅れ…』

10分遅れて電車が到着し乗り込んだ車両には

『あ…お、おはよう!財前君』

「…あ、ども」

密かに想いを寄せている財前君がいた。
財前君はクラスメートである蔵と
謙也くんの後輩でよくうちのクラスにくる。

3人のやり取りを見るのは面白くて、
たまに私も会話に入らせてもらっている。
少しずつ、財前君とも話すようになり
いつの間にか、好きになっていた。
謙也くんと席が近くてよかったと、席替えに感謝だ。

『雨、ひどいね』

「そっスね」

「「…」」


思えば、財前君と二人で話すのは初めてであり
正直なところ、何を話せばいいのかわからない。
部活のこと?勉強のこと?
やっぱり蔵と謙也くんのこと?
一人で考え込んでいたら
スッと何かを差し出された。


「…聴きます?」


そう言われてつい受け取ってしまったのは
片方だけのイヤホン。


どういうこと?
え、付けていいの?
片方ずつ付けるの?

ちらりと財前君を見れば
涼しい顔して曲を選んでいる。
恐る恐るイヤホンを付けると
アップテンポだけど
心地良い曲が流れている。

『あ…この曲いいね』

「…この曲よぉ聴くんスよ」

『お気に入りなの?』

「まあ。このバンドが好きで…
洋楽やし、あんまメジャーやないですけど
ええ曲多いんスわ」

そう話す財前君の顔は
普段とそんなに変わらないけれど
どこか楽しそうに見えた。

『…洋楽ってあんまり聴かないけど
この曲気に入っちゃった』

「CD貸しましょか?」

『いいの?』

「ええですよ。明日、持って行きます」

『ありがとう!』


『次は○○駅。電車遅れまして大変ご迷惑を…』
最初の心配はなんだったのか、
それから財前君とはとりとめのない話をしながら
ふたりで学校へ向かった。

『ぎりぎり間に合ったね』

「そっスね」

『でもまだ雨ひどいね』

「…もうちょい、電車遅れたらよかったのに」

『え?』

「……話したりひんので帰り、待っとって下さい」

『へ?』

「どうせこの雨じゃ部活あらへんやろうし」

『あの…』

「教室まで迎え行きますんで。…逃げへんで下さいね」

私の返事も待たず
さっさと行ってしまった財前君の耳は
赤くなっていて
少しだけ、期待している
自分が恥ずかしかった。

ああ、早く放課後にならないかな。



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