たいせつな言葉
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深夜二時、特に理由も無く、ふと目が覚める。
辺りは闇に包まれている。草木も眠る、とはよく言ったものだ、痛い程の静寂が広がっている。
水でも飲んでくるか。そう思い、寝具から身を起こす。しかしそこで、静寂を打ち破る声が聞こえた。
「…ベクター……やだよ…おいてかないでよ…」
その声の主は同じベッドで眠っている***だった。縮こまって、目を硬く瞑りながらも、その言葉ははっきりと発音された。敬称の無い、俺のそのままの名前。『ベクター』。死んだ時だって言わなかったその言葉に、俺は感慨深いものを感じる。その声に応えて再び布団に潜ると、両腕で首元をホールドする様に、「もう離さない」とでも言う様に、逃げ場も無い程抱き締められた。
***。人間らしからぬ人間であった時も、人外として世界を陥れた時も、そしてまた人間になってからも、何度殺されたって俺についてきた、馬鹿な女。いつだってこいつは過剰なまでに肯定して、崇拝して、俺を奉った。その為には命すら投げ出した。どんな時でも俺の為になろうとした。こんな俺の為に。
俺の腕も、***の首へと回す。そのまま抱き寄せれば、お互いの体がこれでもかと密着した。体温も、鼓動も、命すらも、共有しているのだと錯覚させた。
「……好きだ」
言われ慣れた、さりとて自らが口にすることなど無かった、たいせつな言葉を口にする。これだけ心も体も占領しておいても、こんな初歩的なことすら出来ていなかった。しかし、***は今、幸せそうな心地で眠っている。寝言ですら俺を呼ぶなんて、どれほどまでに俺は愛されているんだ。改めて自分に向けられていた想いの強さが、脳を蕩けさせる様に伝わった。
必ずこの言葉を、***に言わなければ。温かな心地に包まれながら、俺は目を閉じた。
辺りは闇に包まれている。草木も眠る、とはよく言ったものだ、痛い程の静寂が広がっている。
水でも飲んでくるか。そう思い、寝具から身を起こす。しかしそこで、静寂を打ち破る声が聞こえた。
「…ベクター……やだよ…おいてかないでよ…」
その声の主は同じベッドで眠っている***だった。縮こまって、目を硬く瞑りながらも、その言葉ははっきりと発音された。敬称の無い、俺のそのままの名前。『ベクター』。死んだ時だって言わなかったその言葉に、俺は感慨深いものを感じる。その声に応えて再び布団に潜ると、両腕で首元をホールドする様に、「もう離さない」とでも言う様に、逃げ場も無い程抱き締められた。
***。人間らしからぬ人間であった時も、人外として世界を陥れた時も、そしてまた人間になってからも、何度殺されたって俺についてきた、馬鹿な女。いつだってこいつは過剰なまでに肯定して、崇拝して、俺を奉った。その為には命すら投げ出した。どんな時でも俺の為になろうとした。こんな俺の為に。
俺の腕も、***の首へと回す。そのまま抱き寄せれば、お互いの体がこれでもかと密着した。体温も、鼓動も、命すらも、共有しているのだと錯覚させた。
「……好きだ」
言われ慣れた、さりとて自らが口にすることなど無かった、たいせつな言葉を口にする。これだけ心も体も占領しておいても、こんな初歩的なことすら出来ていなかった。しかし、***は今、幸せそうな心地で眠っている。寝言ですら俺を呼ぶなんて、どれほどまでに俺は愛されているんだ。改めて自分に向けられていた想いの強さが、脳を蕩けさせる様に伝わった。
必ずこの言葉を、***に言わなければ。温かな心地に包まれながら、俺は目を閉じた。