酒は飲んでも呑まれるな
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ベクター様はよく酒を嗜まれる。特に、何か嫌な事があった日に。
今回も例に違わず、やけ酒をしながら愚痴を零している。ナッシュがどうとか、税収がどうとか、公も私も一緒くたに。私は嫌な気もしないので、相槌を打ちながら聞いている。
私は何故かベクター様に気に入られている。その為こういう時は、酒を運ぶ係も兼ねて私が呼ばれる。周りがベクター様を忌み嫌う中、私だけは好意を抱いていたので、願ったり叶ったりだった。
「ったくあいつら…本当にこの国の事考えてるのかねェ」
酒瓶を片手に、ベクター様は言う。ベクター様はお酒に強い。やけ酒をしても酔ってない場合が殆どだ。しかし今回は違う様で、珍しく顔も少し赤くなっている。
とはいえ、こんなに飲んだら誰だって酔うだろう。ワインの瓶が4本ほど、床に転がしてある。手に持っているので5本目だ。しかもその飲み方がまた豪快で、平民に生まれれば一生飲む事の出来ない様な高価な物をラッパ飲みする。更に言うなら、その動作が妙に似合っているのだ。
ぷはぁ、と酒瓶を逆さに息を吐く。5本目も飲み終わられた様だ。次を取りに行くべく、私は立ち上がる。が。
「…………行くな」
頬を紅潮させたベクター様が、ジト目の様な、上目遣いの様な、どちらの意味も含めた視線で此方を見る。逞しい両腕で左腕を捕まれているが、拘束する様な強さは無い。
「でも………」
「良い。良いから、少し隣にいろっ」
幼げな口調。そこには、人々に狂気の皇として恐れられている様な面影は無かった。
言われるがまま腰を降ろす。すると、慣れない素振りで体重を此方に預けてきた。どうしたものかと判断を遅らせていると、何時の間にか眠ってしまわれていた。
目を閉じ寝息を立てている姿は純真その物で、とても愛おしく思われた。しかし、このままでいる訳にもいかないので、一旦体から外す。流石に寝具に運ぶのは無理そうなので、枕と布団を取って来てその場で寝られる様にする。瓶は後で纏めて持って行ける様にしておく。
本当に、本当にかわいらしい寝顔だ。殿方にこんな感情を抱くのは失礼なのかもしれないが、かわいい物はかわいいのだ。こんな無防備な姿を見られるのも、信頼の証だと言えるだろう。人間不信の彼に信じられる。これ程特別な事などあるだろうか。
しかし、このまま放っておくのも、何か違う気がする。ベクター様は仰られたではないか。隣にいろと。
そんな理由をこじつけて、ベクター様の隣に潜り込む。温かい。天使の様な寝顔を前に、私も眠りに着いた。
今回も例に違わず、やけ酒をしながら愚痴を零している。ナッシュがどうとか、税収がどうとか、公も私も一緒くたに。私は嫌な気もしないので、相槌を打ちながら聞いている。
私は何故かベクター様に気に入られている。その為こういう時は、酒を運ぶ係も兼ねて私が呼ばれる。周りがベクター様を忌み嫌う中、私だけは好意を抱いていたので、願ったり叶ったりだった。
「ったくあいつら…本当にこの国の事考えてるのかねェ」
酒瓶を片手に、ベクター様は言う。ベクター様はお酒に強い。やけ酒をしても酔ってない場合が殆どだ。しかし今回は違う様で、珍しく顔も少し赤くなっている。
とはいえ、こんなに飲んだら誰だって酔うだろう。ワインの瓶が4本ほど、床に転がしてある。手に持っているので5本目だ。しかもその飲み方がまた豪快で、平民に生まれれば一生飲む事の出来ない様な高価な物をラッパ飲みする。更に言うなら、その動作が妙に似合っているのだ。
ぷはぁ、と酒瓶を逆さに息を吐く。5本目も飲み終わられた様だ。次を取りに行くべく、私は立ち上がる。が。
「…………行くな」
頬を紅潮させたベクター様が、ジト目の様な、上目遣いの様な、どちらの意味も含めた視線で此方を見る。逞しい両腕で左腕を捕まれているが、拘束する様な強さは無い。
「でも………」
「良い。良いから、少し隣にいろっ」
幼げな口調。そこには、人々に狂気の皇として恐れられている様な面影は無かった。
言われるがまま腰を降ろす。すると、慣れない素振りで体重を此方に預けてきた。どうしたものかと判断を遅らせていると、何時の間にか眠ってしまわれていた。
目を閉じ寝息を立てている姿は純真その物で、とても愛おしく思われた。しかし、このままでいる訳にもいかないので、一旦体から外す。流石に寝具に運ぶのは無理そうなので、枕と布団を取って来てその場で寝られる様にする。瓶は後で纏めて持って行ける様にしておく。
本当に、本当にかわいらしい寝顔だ。殿方にこんな感情を抱くのは失礼なのかもしれないが、かわいい物はかわいいのだ。こんな無防備な姿を見られるのも、信頼の証だと言えるだろう。人間不信の彼に信じられる。これ程特別な事などあるだろうか。
しかし、このまま放っておくのも、何か違う気がする。ベクター様は仰られたではないか。隣にいろと。
そんな理由をこじつけて、ベクター様の隣に潜り込む。温かい。天使の様な寝顔を前に、私も眠りに着いた。