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世の中には、二種類の人間がいる。
こんな言葉はよく聞くが、俺はこの区分は、『持つ者』と『持たない者』だと思っている。
この場合『持つ』のは確固たる『意志』だ。意志が無ければ何かを守る事も何かを奪う事も出来ない。しかし悲しい事に、今俺が生きている時代には、守る『意』を知る者も奪う『志』を持つ者もほんの一握りしかいなかった。これはどんな時代だってそうだ。
平和ボケした『持たない者』共の国。もう何個潰してきただろうか。何もかもを『持つ』俺には、好敵手の様な者がいた。
大国の主、***。
俺と同じ『持つ者』である***は、早くに両親を亡くしたものの、その優れた頭脳で数多の国を手中に収めてきた女帝だ。南半球が俺の庭だとすると、北半球は奴の庭だ。
そんな***が今日、突如我が国に訪ねて来るとの報があった。もしかすると、宣戦布告をしに来るのかもしれない。港に着いた異国の船を見下ろし、外套を翻した。
「お出迎えありがとうございます、ベクター様」
「いえいえ、このぐらい当然の事。」
王宮を歩く俺達の口振りはいやに親しげだ。薄っぺらい程に。
「ささっ、どうぞ」
「あら、すみませんね」
ドアを開け、さもレディーファーストを心掛けているかの様な素振りを見せる。俺は周りの兵士に目で合図をした。***の方も、心配そうにする同行人を目で制す。
「で、稀代の悪女様がこの俺に何の用だァ?」
二人きりになって早々、ソファに乱暴に座りながらそんな事を言った。
「勿論、これからゆっくりと話すわ」
あくまでもおしとやかに座った***は、向かい合った俺にそう言った。
「なんて、そう時間は取らせないわよ」
「へえ?」
「ベクター、貴方我が国の軍門に下りなさい」
「……………」
だんまりを決め込む。悩んでなんかない。悩んでるフリだ。
目の前の女は、俺と同じ、狂気を瞳に宿している。『持つ者』の眼だ。何かを手に入れるには、狂人になる他無いのだ。
「貴方の国も、私の国も、主義は一緒。なら、手を組んだ方が良いんではなくて?」
交渉する***に重なるのは、幼い頃のこいつ。***とは幼少期に何度も会っていて、所謂幼馴じみに近かった。イイ女になったなぁ、なんて、場違いな事を考えてみる。
「……ハッ、なぁに言ってやがる?そんな要求簡単に飲むかと思ったのかよ?」
「…そう、でしょうね」
断られた***はさして残念そうでもなかった。恐らく決裂は前提での話だったのだろう。
「なら、奪ってあげる」
「ハァ?何をだよォ?」
「あなた、よ」
ぴっ、と指が指される。
「…益々意味分かんねえなァ。」
「分かんなくても良いわ。精々藻掻いて足掻く事ね。」
「…おい、待てよ」
急に立ち上がり、そそくさと部屋を出ようとする***を引き留める。
「テメェの謀なんざ興味ねえが『奪う』っつーのが気に食わねえ。そんなに奪いたきゃ奪ってみろよォ。但し、その前に俺の方がお前を奪ってやる。」
少し低い視線を至近距離で見下し、声に毒と強欲を含ませて言う。***は目を見開き、顔を背けて言った。
「…良いわ、楽しみに待つ。」
「クヒヒヒッ」
結局、俺の方から宣戦布告しちまったなァ。
後日、両軍十全の国力を揃え、戦いの火蓋は切って落とされた。帝国主義国のぶつかり合いとあって、その規模はかつて無い程となった。我がベクター軍も、今までに無い程消耗する事となった。
「一人残さず滅し尽くせェ!ヒャハハハハハハハハ!」
ほぼ五分五分の勢力の中、我が新兵器は最高の活躍を見せてくれた。既に目の前には、大きな王城が構えている。
「…行くぞ」
城内の残党を殺しながら、最上にある奴の部屋を目指す。一人の側近も付けていないのだろう。扉の前に立っても、何かある気配は無かった。すっかり血に染まった右手でドアを開ける。***は一人、外を見ていた。
此方に気が付くとゆるりと向き、不思議にも微笑んだ。
「貴方の所の新兵器…凄いわね」
「あァ、有能なゴルゴン達だろう?あいつら育てるの結構大変だったんだぜェ?」
「……………」
「……………」
ふいに両者揃って押し黙る。俺を真っ直ぐに見つめる***には、一点の迷いも無かった。
「やーめた」
「えっ」
「本当はお前もブッ殺してやろうと思ってたんだが…お前、俺の妻になれ」
「…………」
「そして我が軍の参謀となれ。俺の手が回らない部分を全部補助しろ。」
***の右手を取り言う。他人の目を借りずとも、自分でもらしくないと思える行為だ。これではまるで、本物のプロポーズではないか。
「……はは、は…それ、本気で言ってくれてるの…?」
「? ああ」
「ちゃんとこの間の言葉の意味、分かってるじゃない」
どういう事だ、そんな質問は、***のきつい抱き付きで消え去った。
こんな言葉はよく聞くが、俺はこの区分は、『持つ者』と『持たない者』だと思っている。
この場合『持つ』のは確固たる『意志』だ。意志が無ければ何かを守る事も何かを奪う事も出来ない。しかし悲しい事に、今俺が生きている時代には、守る『意』を知る者も奪う『志』を持つ者もほんの一握りしかいなかった。これはどんな時代だってそうだ。
平和ボケした『持たない者』共の国。もう何個潰してきただろうか。何もかもを『持つ』俺には、好敵手の様な者がいた。
大国の主、***。
俺と同じ『持つ者』である***は、早くに両親を亡くしたものの、その優れた頭脳で数多の国を手中に収めてきた女帝だ。南半球が俺の庭だとすると、北半球は奴の庭だ。
そんな***が今日、突如我が国に訪ねて来るとの報があった。もしかすると、宣戦布告をしに来るのかもしれない。港に着いた異国の船を見下ろし、外套を翻した。
「お出迎えありがとうございます、ベクター様」
「いえいえ、このぐらい当然の事。」
王宮を歩く俺達の口振りはいやに親しげだ。薄っぺらい程に。
「ささっ、どうぞ」
「あら、すみませんね」
ドアを開け、さもレディーファーストを心掛けているかの様な素振りを見せる。俺は周りの兵士に目で合図をした。***の方も、心配そうにする同行人を目で制す。
「で、稀代の悪女様がこの俺に何の用だァ?」
二人きりになって早々、ソファに乱暴に座りながらそんな事を言った。
「勿論、これからゆっくりと話すわ」
あくまでもおしとやかに座った***は、向かい合った俺にそう言った。
「なんて、そう時間は取らせないわよ」
「へえ?」
「ベクター、貴方我が国の軍門に下りなさい」
「……………」
だんまりを決め込む。悩んでなんかない。悩んでるフリだ。
目の前の女は、俺と同じ、狂気を瞳に宿している。『持つ者』の眼だ。何かを手に入れるには、狂人になる他無いのだ。
「貴方の国も、私の国も、主義は一緒。なら、手を組んだ方が良いんではなくて?」
交渉する***に重なるのは、幼い頃のこいつ。***とは幼少期に何度も会っていて、所謂幼馴じみに近かった。イイ女になったなぁ、なんて、場違いな事を考えてみる。
「……ハッ、なぁに言ってやがる?そんな要求簡単に飲むかと思ったのかよ?」
「…そう、でしょうね」
断られた***はさして残念そうでもなかった。恐らく決裂は前提での話だったのだろう。
「なら、奪ってあげる」
「ハァ?何をだよォ?」
「あなた、よ」
ぴっ、と指が指される。
「…益々意味分かんねえなァ。」
「分かんなくても良いわ。精々藻掻いて足掻く事ね。」
「…おい、待てよ」
急に立ち上がり、そそくさと部屋を出ようとする***を引き留める。
「テメェの謀なんざ興味ねえが『奪う』っつーのが気に食わねえ。そんなに奪いたきゃ奪ってみろよォ。但し、その前に俺の方がお前を奪ってやる。」
少し低い視線を至近距離で見下し、声に毒と強欲を含ませて言う。***は目を見開き、顔を背けて言った。
「…良いわ、楽しみに待つ。」
「クヒヒヒッ」
結局、俺の方から宣戦布告しちまったなァ。
後日、両軍十全の国力を揃え、戦いの火蓋は切って落とされた。帝国主義国のぶつかり合いとあって、その規模はかつて無い程となった。我がベクター軍も、今までに無い程消耗する事となった。
「一人残さず滅し尽くせェ!ヒャハハハハハハハハ!」
ほぼ五分五分の勢力の中、我が新兵器は最高の活躍を見せてくれた。既に目の前には、大きな王城が構えている。
「…行くぞ」
城内の残党を殺しながら、最上にある奴の部屋を目指す。一人の側近も付けていないのだろう。扉の前に立っても、何かある気配は無かった。すっかり血に染まった右手でドアを開ける。***は一人、外を見ていた。
此方に気が付くとゆるりと向き、不思議にも微笑んだ。
「貴方の所の新兵器…凄いわね」
「あァ、有能なゴルゴン達だろう?あいつら育てるの結構大変だったんだぜェ?」
「……………」
「……………」
ふいに両者揃って押し黙る。俺を真っ直ぐに見つめる***には、一点の迷いも無かった。
「やーめた」
「えっ」
「本当はお前もブッ殺してやろうと思ってたんだが…お前、俺の妻になれ」
「…………」
「そして我が軍の参謀となれ。俺の手が回らない部分を全部補助しろ。」
***の右手を取り言う。他人の目を借りずとも、自分でもらしくないと思える行為だ。これではまるで、本物のプロポーズではないか。
「……はは、は…それ、本気で言ってくれてるの…?」
「? ああ」
「ちゃんとこの間の言葉の意味、分かってるじゃない」
どういう事だ、そんな質問は、***のきつい抱き付きで消え去った。