黒き呪縛
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今日は私の誕生日。民が、家臣達が、盛大に祝ってくれていた。
前々から計画されていた豪勢な晩餐会も、夜も暮れいよいよ大詰めとなった。
「そちらの方は…」
「……ええ、貴方のお陰ですよ。ありがとうございます」
様々な国の指導者達が、政治的な話を交わし合っている。近隣の国の会合も兼ねているのだ。勿論、それには私の両親・この国の王と王妃も加わっている。
現在、この近隣諸国は平和だった。何処かの国で飢饉が起きれば、即座に物資を届ける。自国が飢えれば、また助けを乞う事も出来る。互いに支え合う関係が築けていた。
笑顔で溢れている会場。私は、こんな今がずっと続けば良いと思う。その為なら尽力しよう。幼い頃からそう考えていた。
「……!?」
ある人物が現れた事で、和やかだった会場が一瞬で凍りつく。皆が一様にざわめき、困惑している。一番驚いているのは私だ。まさか、そんな、
「何故…貴方が…」
漆黒のマント。素の身体に付けられた銀の装飾。片腕に付けられた金の鎧。腰に巻かれた紺の布。額に、真紅の輝き。そしてどの装飾物よりも、ロイヤル・パープルの瞳がぎらついていた。
「よォ」
薄笑いを浮かべた彼は、本能的な恐怖を煽る声で言った。
「ベクター…何故、貴方が…」
彼の名前と共に、再度疑問を口に出す。すると、ベクターは笑みを深めて。
「なぁんだァ? 来ちゃいけなかったのかァ?」
「い、いえ…」
冷や汗が頬を流れる。誰だって来るとは思わないだろう。この国は西方、それもどちらかと言うと北にある。ベクターの国とは反対だ。更に同盟国でもない寧ろ関係は悪い国の王女の誕生日など、祝いに来る筈無い。普通ならば、だが。
「お前の誕生日が今日だって事思い出してなァ。想いを寄せる身としては、遅れてでも祝いに行かなくちゃー、と思ってなァ。いやぁ本当に苦労したぜ。」
「…………」
そう、私は大分前から、ベクターから婚約を迫られていた。勿論、にべもなく断っていたが。だからこそ、今この場にこの男がいる事が危険で仕方ないのだ。
「そうだ、贈り物を持ってきたんだ。きっと喜ぶぜェ?」
コツ、コツ。響く足音と共にベクターが近付く。私は恐怖のあまりその場を動けなかった。歩を止め、至近距離でベクターは立ち止まった。突然上げられる手に、自然と肩が竦む。その時『贈り物』が目に入った。彼は右手に持ったそれを、器用に私の髪に括り着けた。最後に、さらり、一房の髪を撫でて。
「次会う時は婚約指輪をくれてやるよォ」
数歩下がった後、ベクターはくるりと後ろを向き言った。ひらり、手も翳して。
――――ああ、貴方は知っていたのでしょう。私が花を嗜んでいる事を。そしてこの花の意味を。
先程着けられた物に触れる。そう、『贈り物』とは、黒薔薇だったのだ。
黒薔薇の花言葉…貴方はあくまで私の物。
前々から計画されていた豪勢な晩餐会も、夜も暮れいよいよ大詰めとなった。
「そちらの方は…」
「……ええ、貴方のお陰ですよ。ありがとうございます」
様々な国の指導者達が、政治的な話を交わし合っている。近隣の国の会合も兼ねているのだ。勿論、それには私の両親・この国の王と王妃も加わっている。
現在、この近隣諸国は平和だった。何処かの国で飢饉が起きれば、即座に物資を届ける。自国が飢えれば、また助けを乞う事も出来る。互いに支え合う関係が築けていた。
笑顔で溢れている会場。私は、こんな今がずっと続けば良いと思う。その為なら尽力しよう。幼い頃からそう考えていた。
「……!?」
ある人物が現れた事で、和やかだった会場が一瞬で凍りつく。皆が一様にざわめき、困惑している。一番驚いているのは私だ。まさか、そんな、
「何故…貴方が…」
漆黒のマント。素の身体に付けられた銀の装飾。片腕に付けられた金の鎧。腰に巻かれた紺の布。額に、真紅の輝き。そしてどの装飾物よりも、ロイヤル・パープルの瞳がぎらついていた。
「よォ」
薄笑いを浮かべた彼は、本能的な恐怖を煽る声で言った。
「ベクター…何故、貴方が…」
彼の名前と共に、再度疑問を口に出す。すると、ベクターは笑みを深めて。
「なぁんだァ? 来ちゃいけなかったのかァ?」
「い、いえ…」
冷や汗が頬を流れる。誰だって来るとは思わないだろう。この国は西方、それもどちらかと言うと北にある。ベクターの国とは反対だ。更に同盟国でもない寧ろ関係は悪い国の王女の誕生日など、祝いに来る筈無い。普通ならば、だが。
「お前の誕生日が今日だって事思い出してなァ。想いを寄せる身としては、遅れてでも祝いに行かなくちゃー、と思ってなァ。いやぁ本当に苦労したぜ。」
「…………」
そう、私は大分前から、ベクターから婚約を迫られていた。勿論、にべもなく断っていたが。だからこそ、今この場にこの男がいる事が危険で仕方ないのだ。
「そうだ、贈り物を持ってきたんだ。きっと喜ぶぜェ?」
コツ、コツ。響く足音と共にベクターが近付く。私は恐怖のあまりその場を動けなかった。歩を止め、至近距離でベクターは立ち止まった。突然上げられる手に、自然と肩が竦む。その時『贈り物』が目に入った。彼は右手に持ったそれを、器用に私の髪に括り着けた。最後に、さらり、一房の髪を撫でて。
「次会う時は婚約指輪をくれてやるよォ」
数歩下がった後、ベクターはくるりと後ろを向き言った。ひらり、手も翳して。
――――ああ、貴方は知っていたのでしょう。私が花を嗜んでいる事を。そしてこの花の意味を。
先程着けられた物に触れる。そう、『贈り物』とは、黒薔薇だったのだ。
黒薔薇の花言葉…貴方はあくまで私の物。