その牙に宿るは
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ベクター様は、吸血鬼である。
正確に表すと、ある時敵陣の吸血鬼に血を吸われてしまい、それ以来自身も吸血鬼と化してしまわれた。
後天的な物である為、生活に支障は無い。太陽の光が少し苦手になっただけだ。大蒜も十字架も銀も弱点ではない。
ただ一つ、一ヶ月に一度程度、何者かの血液を摂取しなければならなくなった。そこで、私が選ばれた。
確かにベクター様の身辺のお世話をさせて頂いているが、その様な者は何人かいる。その中から私が選ばれた理由は、未だ判明しなかった。
満月の日。ベクター様に血を捧げる日だ。通常の責務を果たし、私はベクター様の自室へ向かう。
扉を開くと、ベクター様は寝具の上で片膝を立てて座っていた。大きな窓から月光が差し込み、美しい横顔を妖しく浮き上がらせていた。
…この部屋はいつ来ても慣れない。豪華な調度品と、ベクター様の匂い。個人的な領域に踏み込めるのは私だけ。そんな優越感が、心をくすぐる。
こちらに気付いた人物は、紫暗の瞳を向ける。満月の所為で昂った瞳は、いつもより強い狂気を孕んでいる。
にやりとした笑みに誘われるまま、寝具に乗り上げる。組んだ足に跨り、首筋を差し出す様に抱き着く。右腕を背中に回され、左腕でうなじを露出させ固定される。息を、飲んだ。
ぶつり。長い犬歯が、首筋に突き刺さった。引き抜かれ、血がとめどなく溢れ出す。それを舌で受け止め、傷口に舌が這わされる。舌先で傷口を抉られて痛い。ベクター様は喉を鳴らし、血液を取り入れていく。耳元で聞こえる息遣いがたまらなく官能的だ。傷口は痛むし、明日はいつも通り貧血になるのだろうけど、この瞬間が一番気持ち良い。もしかして唾液に媚薬でも含まれているのだろうか?そう錯覚する程であった。因みに、吸血鬼は同族を増やす吸血と食事としての吸血を使い分けるので、吸血鬼になる心配は無い。
「…なんで私を、この係に?」
命じられてから何度目かの問い。ベクター様は歯を出して笑って言った。
「そぉんな事も一々言わなきゃ分かんねえのかよ? この鈍感」
ほんのりと鉄の味がする唇。ベクター様を抱き締めたまま、私は身を委ねたのだった。
正確に表すと、ある時敵陣の吸血鬼に血を吸われてしまい、それ以来自身も吸血鬼と化してしまわれた。
後天的な物である為、生活に支障は無い。太陽の光が少し苦手になっただけだ。大蒜も十字架も銀も弱点ではない。
ただ一つ、一ヶ月に一度程度、何者かの血液を摂取しなければならなくなった。そこで、私が選ばれた。
確かにベクター様の身辺のお世話をさせて頂いているが、その様な者は何人かいる。その中から私が選ばれた理由は、未だ判明しなかった。
満月の日。ベクター様に血を捧げる日だ。通常の責務を果たし、私はベクター様の自室へ向かう。
扉を開くと、ベクター様は寝具の上で片膝を立てて座っていた。大きな窓から月光が差し込み、美しい横顔を妖しく浮き上がらせていた。
…この部屋はいつ来ても慣れない。豪華な調度品と、ベクター様の匂い。個人的な領域に踏み込めるのは私だけ。そんな優越感が、心をくすぐる。
こちらに気付いた人物は、紫暗の瞳を向ける。満月の所為で昂った瞳は、いつもより強い狂気を孕んでいる。
にやりとした笑みに誘われるまま、寝具に乗り上げる。組んだ足に跨り、首筋を差し出す様に抱き着く。右腕を背中に回され、左腕でうなじを露出させ固定される。息を、飲んだ。
ぶつり。長い犬歯が、首筋に突き刺さった。引き抜かれ、血がとめどなく溢れ出す。それを舌で受け止め、傷口に舌が這わされる。舌先で傷口を抉られて痛い。ベクター様は喉を鳴らし、血液を取り入れていく。耳元で聞こえる息遣いがたまらなく官能的だ。傷口は痛むし、明日はいつも通り貧血になるのだろうけど、この瞬間が一番気持ち良い。もしかして唾液に媚薬でも含まれているのだろうか?そう錯覚する程であった。因みに、吸血鬼は同族を増やす吸血と食事としての吸血を使い分けるので、吸血鬼になる心配は無い。
「…なんで私を、この係に?」
命じられてから何度目かの問い。ベクター様は歯を出して笑って言った。
「そぉんな事も一々言わなきゃ分かんねえのかよ? この鈍感」
ほんのりと鉄の味がする唇。ベクター様を抱き締めたまま、私は身を委ねたのだった。