狂気の鎮魂歌
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素人でも分かる見事な旋律が、壁越しに耳に飛び込んでくる。豊富な倍音を含むそれは、この宮殿に勤め始めてから何度か聴いた物だった。
美しい音だ。これを作り出したのは誰なのだろうか。前々から気になっていた事を頭に浮かべながら、音源を辿った。
幾つかの扉を潜り、音が大きく聞こえる方を進んで行く。しかし、最終的に辿り着いた場所で、***は自らを疑った。
処刑場だ。ここ以外この方向に該当する場所は無い。恐る恐る扉を引き、血腥いそこへと一歩踏み出した。
その瞬間、何の隔たりも無い旋律が脳を震わせた。何時聴いた物よりも力強いメロディーは心を揺さぶり、荘厳さを感じられた。
ふと、音の創造主と目が合った。この国を統べる皇、ベクターである。
「どうした?お仕事サボって芸術鑑賞かァ?」
ニタリと笑って此方を見るベクター。全身に血を浴びている事から、処刑の直後なのだろう。愛用の大剣も近くにあった。
「も、申し訳ありません!あまりにも素晴らしい音楽でしたので、つい…」
「ヒャハハ、侍女の中にこれの良さが分かる奴がいたなんてなあ!いやー…気分が良いぜェ。」
そう言うと、手にしている楽器を構えて。
「気分が良いから、もうちょっと聴いて行けやァ。」
睨む様な目つきで此方を見てから、ベクターは再び奏で始めた。楽器には四本の弦が張ってあり、それを弓で撫でている。この辺りの国では見かけた事の無い物だ。独特の鋭い音をしており、その精神に突き刺す様な弾き方はベクター自身を表していた。刺々しい演奏ではあるが、艶があり芸術足り得る物だった。
「それは、他国の物ですか?」
一区切り弾き終えたのか、楽器を下ろすベクターに訊いてみた。
「ああ。西洋の方の物でなァ、暇潰しに始めたら弾ける様になったんだよォ」
その演奏の質が暇潰し程度の物ではない事を、***は理解していた。練習したのか、或いは直ぐに習得したのか…どちらもありえそうなのが凄い。***は、更に続ける。
「なんでこんな所で演奏を?」
「弾いてるんだよ、こいつらの鎮魂歌を。せっかく死んだのに成仏出来ねえなんてさみしーだろォ?」
だから俺は弾いてるんだ、とベクターは言った。無茶苦茶な理論だが、理解出来なくも無い。
『ちょっと』と言いながら次の曲を演奏しようとするベクターを前に、***は床に座りながら微笑んだ。
美しい音だ。これを作り出したのは誰なのだろうか。前々から気になっていた事を頭に浮かべながら、音源を辿った。
幾つかの扉を潜り、音が大きく聞こえる方を進んで行く。しかし、最終的に辿り着いた場所で、***は自らを疑った。
処刑場だ。ここ以外この方向に該当する場所は無い。恐る恐る扉を引き、血腥いそこへと一歩踏み出した。
その瞬間、何の隔たりも無い旋律が脳を震わせた。何時聴いた物よりも力強いメロディーは心を揺さぶり、荘厳さを感じられた。
ふと、音の創造主と目が合った。この国を統べる皇、ベクターである。
「どうした?お仕事サボって芸術鑑賞かァ?」
ニタリと笑って此方を見るベクター。全身に血を浴びている事から、処刑の直後なのだろう。愛用の大剣も近くにあった。
「も、申し訳ありません!あまりにも素晴らしい音楽でしたので、つい…」
「ヒャハハ、侍女の中にこれの良さが分かる奴がいたなんてなあ!いやー…気分が良いぜェ。」
そう言うと、手にしている楽器を構えて。
「気分が良いから、もうちょっと聴いて行けやァ。」
睨む様な目つきで此方を見てから、ベクターは再び奏で始めた。楽器には四本の弦が張ってあり、それを弓で撫でている。この辺りの国では見かけた事の無い物だ。独特の鋭い音をしており、その精神に突き刺す様な弾き方はベクター自身を表していた。刺々しい演奏ではあるが、艶があり芸術足り得る物だった。
「それは、他国の物ですか?」
一区切り弾き終えたのか、楽器を下ろすベクターに訊いてみた。
「ああ。西洋の方の物でなァ、暇潰しに始めたら弾ける様になったんだよォ」
その演奏の質が暇潰し程度の物ではない事を、***は理解していた。練習したのか、或いは直ぐに習得したのか…どちらもありえそうなのが凄い。***は、更に続ける。
「なんでこんな所で演奏を?」
「弾いてるんだよ、こいつらの鎮魂歌を。せっかく死んだのに成仏出来ねえなんてさみしーだろォ?」
だから俺は弾いてるんだ、とベクターは言った。無茶苦茶な理論だが、理解出来なくも無い。
『ちょっと』と言いながら次の曲を演奏しようとするベクターを前に、***は床に座りながら微笑んだ。