熔融
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久々に微小特異点が観測された。しかも、オベロンが同行するサーヴァントとして最適と選ばれた。
早速レイシフトすると、しばらく歩いたところに小さな村があった。情報収集のために村の人たちに話を聞く。
仕方のないことだが……せっかくオベロンと一緒に旅をできる機会なのに、オベロンは村の女性に大人気だ。よく目立つアゲハの翅は劇衣装とか言って、僕たち劇団なんだ、旅をしながら作品のネタを集めてて、ついでに目立つ格好で宣伝もしてる、とか嘘をついている。女性たちは黄色い声を上げて、オベロンにいくらでも情報を話す。この事態の攻略にはとても効率的だ。そのための姿であることも、妖精國での旅から重々承知している。でもなんだか気に食わない。
そう思いながら調査をしていたら、村の少年の一人がお昼ご飯に誘ってくれた。
「まだなんだろ? 時間があれば、あなたたちがしてきた旅の話を聞きたいな」
少しぐらいいいだろう。食事の礼としては安いものだ。少年は同年代に見え、素直で、懐こく話を聞いてくれた。もちろんオベロンに対するような感情は湧かないが、このぐらいの人間の男の子と話すのは新鮮で楽しかった。
情報収集の甲斐もあって、特異点の解決は一昼夜もかからずに終わった。レイシフトから戻ると、先に帰還していたオベロンが、出てすぐの廊下で待っていた。
「あ、オベロン……」
オベロンは喜怒哀楽どれともつかない表情をしている。だが、穏やかだった。
そっと腕が伸びてきて、私を抱き締める。オベロンの、手触りの良いブラウスの胸元に、額がついた。
「いいこ、いいこ」
オベロンの手が私の髪を撫でる。その手つきは柔らかで、最早愛玩の色さえなく、まるで一つしかない宝物を触るかのようだった。
オベロンは私が特異点でどんな気持ちだったのかを完璧に見抜いている。だから、変に慰めず、ただこう言っている。オベロンの観察眼なら、たとえ妖精眼がなくとも、この行動を選んでいたに違いない。そうとすら思わされる的確さ。それに背筋が薄ら寒くなった。だが、この胸元から、大きな手から伝わる熱は、私の内側から溢れ出る気持ちと同じ温度で、まるでクリームのように溶けていきそうだった。
私の部屋に移動しても、オベロンの行為は変わらなかった。ベッドの縁で隣同士に座って、じっと見つめたと思うと、今度は微笑んで、横から私を抱き寄せた。
「いいこいいこ」
「い、いいこじゃない……」
嫉妬したし他の異性に目が行った。
しかしそれも飲み込んでの言葉だ。そんな思いをさせてごめん、という陳腐な言葉すら使わずに全てを表している。
顔と顔が近付いたことで、オベロンの髪が頬に触れる。オベロンの甘やかしはいつもこうだ。どこまでもどこまでも逃げ場をなくして、私の意志を尊重しながら、温かい寝具を巻き付けるような。依存のような毒すらないから質 が悪い。頭が熱くなって体が融かされる。肉体という境界線すらなくなってしまいそうになる。願っても許されるのなら、いつまでもこうでいたい。
早速レイシフトすると、しばらく歩いたところに小さな村があった。情報収集のために村の人たちに話を聞く。
仕方のないことだが……せっかくオベロンと一緒に旅をできる機会なのに、オベロンは村の女性に大人気だ。よく目立つアゲハの翅は劇衣装とか言って、僕たち劇団なんだ、旅をしながら作品のネタを集めてて、ついでに目立つ格好で宣伝もしてる、とか嘘をついている。女性たちは黄色い声を上げて、オベロンにいくらでも情報を話す。この事態の攻略にはとても効率的だ。そのための姿であることも、妖精國での旅から重々承知している。でもなんだか気に食わない。
そう思いながら調査をしていたら、村の少年の一人がお昼ご飯に誘ってくれた。
「まだなんだろ? 時間があれば、あなたたちがしてきた旅の話を聞きたいな」
少しぐらいいいだろう。食事の礼としては安いものだ。少年は同年代に見え、素直で、懐こく話を聞いてくれた。もちろんオベロンに対するような感情は湧かないが、このぐらいの人間の男の子と話すのは新鮮で楽しかった。
情報収集の甲斐もあって、特異点の解決は一昼夜もかからずに終わった。レイシフトから戻ると、先に帰還していたオベロンが、出てすぐの廊下で待っていた。
「あ、オベロン……」
オベロンは喜怒哀楽どれともつかない表情をしている。だが、穏やかだった。
そっと腕が伸びてきて、私を抱き締める。オベロンの、手触りの良いブラウスの胸元に、額がついた。
「いいこ、いいこ」
オベロンの手が私の髪を撫でる。その手つきは柔らかで、最早愛玩の色さえなく、まるで一つしかない宝物を触るかのようだった。
オベロンは私が特異点でどんな気持ちだったのかを完璧に見抜いている。だから、変に慰めず、ただこう言っている。オベロンの観察眼なら、たとえ妖精眼がなくとも、この行動を選んでいたに違いない。そうとすら思わされる的確さ。それに背筋が薄ら寒くなった。だが、この胸元から、大きな手から伝わる熱は、私の内側から溢れ出る気持ちと同じ温度で、まるでクリームのように溶けていきそうだった。
私の部屋に移動しても、オベロンの行為は変わらなかった。ベッドの縁で隣同士に座って、じっと見つめたと思うと、今度は微笑んで、横から私を抱き寄せた。
「いいこいいこ」
「い、いいこじゃない……」
嫉妬したし他の異性に目が行った。
しかしそれも飲み込んでの言葉だ。そんな思いをさせてごめん、という陳腐な言葉すら使わずに全てを表している。
顔と顔が近付いたことで、オベロンの髪が頬に触れる。オベロンの甘やかしはいつもこうだ。どこまでもどこまでも逃げ場をなくして、私の意志を尊重しながら、温かい寝具を巻き付けるような。依存のような毒すらないから