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(仕事を押し付けられたと思った時には最悪だったけど、こういう場ができてラッキーだ! なら新しい服を用意して……スチームパンクなんて僕のイメージと真逆だけど、普段と違う姿こそ魅力的だもんね?
道中は暗く狭くして……、これなら言い訳ができるから、多少くっついても***も平気だろう。この機に手をつなごうかな? これなら押せばなんとかなる!
敵を配置してピンチも演出しよう。エネミーの種類はどうしようかな……、この場所らしいやつと……そうだ、***は僕が相性不利に対して意外とダメージ出せるとはしゃぐから、オートマタも用意しておこう。***なら見て分かるはずだ。
それで最後はいつもの僕らしい場所に。***もこういうところが好きだからね。
ああ、楽しみだなあ!)
そうして始まった冒険。***にとってこういう場所は趣味でないと思っていたけど、僕と一緒だから楽しいみたい。服への反応も上々で、いいなあ、同じジャンルの服着て来たかった、まで言っている。ステッキの冠飾りの色で思いっきり怪しまれたけど。
予定通り地下に入っていく。同時に、魔力を少し回して通信の妨害を始める。せっかく作った雰囲気を壊す要因は、全部潰しておかないと。階段が面倒なのは本音だ。だけど目的を果たすためには、多少の苦労はつきものだからね。
自然なふりをして遠ざかる。***の不安な声が聞こえてくる。後の展開のためとはいえ胸が締めつけられる思いだ! 恐る恐るとした様子の、不規則な足音が近付いてくる。暗闇でよく見えるこの眼で、こちらから少し距離を縮める。
狙い通り、***が僕にぶつかった。***の頭が僕の胸元にある。普段から分かっていることだけども、ヒール込みとはいえ、***は僕よりこんなに小さい。
ぶつかった***は一瞬安心で顔を緩めて、そのあとすぐ目を見開いて緊張が走り出す。みるみるうちに頬が赤くなった。わずかに、浅くなった呼吸が僕の顔に当たる。もう少しこの状況を楽しんでもいいけど、下手すると***はこのまま動けなくなる。だから、状況確認。……それだけで***はぐいっと顔をそむけて、あわてて両手で顔を覆い始めた。それでも一気に真っ赤になった肌は隠しきれない。なんなら指先まで赤く染まっている。それでも僕と向き合いたい気持ちはあるようで、闇の中で声を頼りに、視線は僕の方へ向いている。こんなにも、今にも爆発しそうな顔をしているっていうのに、自分から離れようとはしない。ああ、これだよ見たかったのは!
思わず笑ってしまったからついでにクールダウン。──だけどこんなんじゃ終わらない。むしろここからが本番だ。
ふたりぼっち、その言葉に***はうつむく。嫌だから、ではない。むしろ逆で、その重みに、そしてこの言葉のチョイスに、頭が耐えきれなくなったんだろう。ふたりきり、じゃなくて、ふたりぼっち。特別***のセンスに合わせようと思って使った言葉ではないけど、効果は覿面だ。言う前から分かっていた。だってそうだ、***が何度も言った通り、僕たちは同じなんだから。それでも、***なら照れ隠しに本音のどこかで『ある意味一番の敵はお前だろ!!』みたいなツッコミをすると思ったんだけど、そんな余裕すらないみたい。僕に聞こえてくる***の本音は、『嬉しい』『安心する』といった、温かい感情でいっぱいだ。
とはいえ距離が離れて、少し冷静になれたかな──なんて隙を与えたとみせかけて、これこそが、本命だ。
行く先を杖のほのかな光で確認して、僕は手を差し出す。***が反射的に半ば叫んだ。
「いっ、いいよ。今手汗すごいから!」
それでももう一押し、二押し。僕が言い終わった頃には、***はすっかり力が抜けて、煮込んだ葉野菜みたいにへにゃへにゃになった。そして眉を申し訳なさそうに八の字にしながら、そっと、左手を差し出してきた。その左手を、確かに握る。一回り小さい手が脱力でもっと小さい気がする。申告通り汗でじっとりしていたけど、嫌な気はしない。そんな手を、痛くないように、しかし離れないように、僕の手と繋ぎ合わせた。
歩を進めているうちに、さらに***の手が汗ばんできた。いざという時に汗で滑って離れるといけないから、なんて言ってもっと指を絡める案も浮かんだけど、今日はここまでで止めておこう。やりたかったことは達成したんだから。
そうだ、今日僕は、色々と仕組んだけれども、何よりも***と手を繋ぎたかった。
その理由は何か。それは──手を繋ぐという行為が、今の僕たちにとって一番重要だったからだ。
***は去年俺と対峙して、本音を言えるようになって、甘えられるようになっても──────心の底で、『オベロンは私が嫌い』という姿勢を、崩すことがなかった。
それもそうだ。俺への信頼は、『オベロンは私が嫌いだからこそ、同類と思えて安心できる』というところを出発点としている。ならこの基盤が崩れたら、信頼もなかったことになる。それが嫌で、自分からは好き好きと言いながらも、俺からの好意は本質的なところで見えないようにしていた。
だけどそんな姿勢は無理が出てくる。***が俺に好意を贈り続けて、俺がそれを受け取り続ければ、いくら外面というものがあろうと、その事実は積み重なり続ける。というか、好きでもなければ勝手に手を回してサポートしないし、バレンタインのチョコも受け取らないし、ましてや一日中夢の中に閉じ込めて一緒にサッカーしたりしない。
だけど、それでも。
君が僕の/俺の好意を、『情が湧いただけ』として扱うなら、否定できない行動で示そう。
────異性と手を繋ぐこと。それは、作戦などの特殊な理由がなければ、間違いなく恋愛感情の現れになる。こうすれば、僕/俺の感情は、***に対して、確実に伝わる。
それでも一応、逃げ道になる状況は作っておいた。はぐれない方が有益だとか、言われたから仕方なくとか、好きなように言い訳すればいい。
だけど***はそれを選ばなかった。今まで持っていた信頼の形が揺らごうと、僕/俺の好意を受け取ることを選びとった。
今まで否定していた理由は、『自分なんかにありえない』というものもあったんだろう。
だけど***、君はもう少し、幸せになったっていいんだよ?
俯き気味の***の瞳に、光るものが見える。本当に────よかった。
ここからは一本道に変わる。道幅も狭く、手を繋いだ状態で通ることはできない。惜しいけど、少しの間手を離さないと。
用意したとおりにエネミーが出てきた。そこまで強くはないが、とにかく数が多い。自然と***を先行させる位置になる。ギリギリ見える明るさかな、というタイミングで一体倒す。
そのまま走る。とにかく走る。──まずい落ちる、その瞬間に、***の手を取って、僕らは落ちた。
下へ下へ、僕と***は落ちていく。……なんでそんな、安心した顔してるんだよ。もちろんこういう反応をするだろうと、予測はしていた。だけど実際されると、こういう風に思わざるをえない。いつだってそうだ。敵対していた時も、罠にはめられたっていう時も。いつだって、何度だって君は、俺と落ちる時にはこんなに──嬉しそうだ。この状況が、永遠に続けばいいと、思っているほどに。……俺だって、同じ気持ちだよ。
残念ながら、普通に落ちる程度じゃそれは叶えられない。落下の衝撃に備えて、空中で姿勢を変えて、俺が下になるように備える。そして無慈悲にも、俺たちは地面に衝突した。
いった。奈落の虫だって落ちれば痛い。だけどすぐ***の安否を確認する。安全面もそうだが、こっちが先に言わないと、心配させて楽しい気持ちを台無しにするからだ。
***はすっかり目の前の花畑を気に入ったようだ。黄金に似たイエローと、降り注ぐ光。まさに祝福に相応しいシチュエーションで、***はじっくりと、僕の言葉に聞き入っている。このまま、ふたりの世界に浸りきってから移動してもいいんだけど────妨害をやめておいた通信から、ネモたちの声が響いた。
通信を妨害していた事実を知って、さっきの俺の言葉と合わせて、***は今全てが策略の上で行われていたことを噛み締めているだろう。また顔を真っ赤にして、口元を緩ませて……今度は、目を輝かせている。俺の本質に触れて嬉しい時の顔だ。それに加えて、今回は俺が意図して体を密着させていた事実もある。そのせいか***は、いつものようにはしゃがず、言葉も出せないでいる。
「…………!」
それでも俺にはしっかり、『オベロンがやりたくて全部やってくれたんだ』と、喜ぶ気持ちが視えた。
通信が終わって移動を始めて、***はようやく僕に話しかけられる状態に戻った。
「ねえ……流石に道がなかったところは、本当にアクシデントだよね?」
「うん、そうだよ?」
「っ……! 〜〜〜〜!!!」
ちょっとだけ怒る顔をしてたけど、***はそれ以上何も言わなかった。
今回の僕のプランは、何度も***を危険に晒すものだった。普通の英霊なら絶対に選ばない手段だ。でも仕方ないよね、***は僕のこういうところを好きになったんだから!
もう一度地上に出ると、似たような景色が続く街に、***は不安そうな顔をしている。
「はぐれたらいけないから手、繋ごう?」
***はまた顔を赤くしながら、僕の手を取って、共に歩き出した。
(自然体の***を撮りたくて、何度かシャッター音を消してカメラを使ったことは、内緒だよ)
道中は暗く狭くして……、これなら言い訳ができるから、多少くっついても***も平気だろう。この機に手をつなごうかな? これなら押せばなんとかなる!
敵を配置してピンチも演出しよう。エネミーの種類はどうしようかな……、この場所らしいやつと……そうだ、***は僕が相性不利に対して意外とダメージ出せるとはしゃぐから、オートマタも用意しておこう。***なら見て分かるはずだ。
それで最後はいつもの僕らしい場所に。***もこういうところが好きだからね。
ああ、楽しみだなあ!)
そうして始まった冒険。***にとってこういう場所は趣味でないと思っていたけど、僕と一緒だから楽しいみたい。服への反応も上々で、いいなあ、同じジャンルの服着て来たかった、まで言っている。ステッキの冠飾りの色で思いっきり怪しまれたけど。
予定通り地下に入っていく。同時に、魔力を少し回して通信の妨害を始める。せっかく作った雰囲気を壊す要因は、全部潰しておかないと。階段が面倒なのは本音だ。だけど目的を果たすためには、多少の苦労はつきものだからね。
自然なふりをして遠ざかる。***の不安な声が聞こえてくる。後の展開のためとはいえ胸が締めつけられる思いだ! 恐る恐るとした様子の、不規則な足音が近付いてくる。暗闇でよく見えるこの眼で、こちらから少し距離を縮める。
狙い通り、***が僕にぶつかった。***の頭が僕の胸元にある。普段から分かっていることだけども、ヒール込みとはいえ、***は僕よりこんなに小さい。
ぶつかった***は一瞬安心で顔を緩めて、そのあとすぐ目を見開いて緊張が走り出す。みるみるうちに頬が赤くなった。わずかに、浅くなった呼吸が僕の顔に当たる。もう少しこの状況を楽しんでもいいけど、下手すると***はこのまま動けなくなる。だから、状況確認。……それだけで***はぐいっと顔をそむけて、あわてて両手で顔を覆い始めた。それでも一気に真っ赤になった肌は隠しきれない。なんなら指先まで赤く染まっている。それでも僕と向き合いたい気持ちはあるようで、闇の中で声を頼りに、視線は僕の方へ向いている。こんなにも、今にも爆発しそうな顔をしているっていうのに、自分から離れようとはしない。ああ、これだよ見たかったのは!
思わず笑ってしまったからついでにクールダウン。──だけどこんなんじゃ終わらない。むしろここからが本番だ。
ふたりぼっち、その言葉に***はうつむく。嫌だから、ではない。むしろ逆で、その重みに、そしてこの言葉のチョイスに、頭が耐えきれなくなったんだろう。ふたりきり、じゃなくて、ふたりぼっち。特別***のセンスに合わせようと思って使った言葉ではないけど、効果は覿面だ。言う前から分かっていた。だってそうだ、***が何度も言った通り、僕たちは同じなんだから。それでも、***なら照れ隠しに本音のどこかで『ある意味一番の敵はお前だろ!!』みたいなツッコミをすると思ったんだけど、そんな余裕すらないみたい。僕に聞こえてくる***の本音は、『嬉しい』『安心する』といった、温かい感情でいっぱいだ。
とはいえ距離が離れて、少し冷静になれたかな──なんて隙を与えたとみせかけて、これこそが、本命だ。
行く先を杖のほのかな光で確認して、僕は手を差し出す。***が反射的に半ば叫んだ。
「いっ、いいよ。今手汗すごいから!」
それでももう一押し、二押し。僕が言い終わった頃には、***はすっかり力が抜けて、煮込んだ葉野菜みたいにへにゃへにゃになった。そして眉を申し訳なさそうに八の字にしながら、そっと、左手を差し出してきた。その左手を、確かに握る。一回り小さい手が脱力でもっと小さい気がする。申告通り汗でじっとりしていたけど、嫌な気はしない。そんな手を、痛くないように、しかし離れないように、僕の手と繋ぎ合わせた。
歩を進めているうちに、さらに***の手が汗ばんできた。いざという時に汗で滑って離れるといけないから、なんて言ってもっと指を絡める案も浮かんだけど、今日はここまでで止めておこう。やりたかったことは達成したんだから。
そうだ、今日僕は、色々と仕組んだけれども、何よりも***と手を繋ぎたかった。
その理由は何か。それは──手を繋ぐという行為が、今の僕たちにとって一番重要だったからだ。
***は去年俺と対峙して、本音を言えるようになって、甘えられるようになっても──────心の底で、『オベロンは私が嫌い』という姿勢を、崩すことがなかった。
それもそうだ。俺への信頼は、『オベロンは私が嫌いだからこそ、同類と思えて安心できる』というところを出発点としている。ならこの基盤が崩れたら、信頼もなかったことになる。それが嫌で、自分からは好き好きと言いながらも、俺からの好意は本質的なところで見えないようにしていた。
だけどそんな姿勢は無理が出てくる。***が俺に好意を贈り続けて、俺がそれを受け取り続ければ、いくら外面というものがあろうと、その事実は積み重なり続ける。というか、好きでもなければ勝手に手を回してサポートしないし、バレンタインのチョコも受け取らないし、ましてや一日中夢の中に閉じ込めて一緒にサッカーしたりしない。
だけど、それでも。
君が僕の/俺の好意を、『情が湧いただけ』として扱うなら、否定できない行動で示そう。
────異性と手を繋ぐこと。それは、作戦などの特殊な理由がなければ、間違いなく恋愛感情の現れになる。こうすれば、僕/俺の感情は、***に対して、確実に伝わる。
それでも一応、逃げ道になる状況は作っておいた。はぐれない方が有益だとか、言われたから仕方なくとか、好きなように言い訳すればいい。
だけど***はそれを選ばなかった。今まで持っていた信頼の形が揺らごうと、僕/俺の好意を受け取ることを選びとった。
今まで否定していた理由は、『自分なんかにありえない』というものもあったんだろう。
だけど***、君はもう少し、幸せになったっていいんだよ?
俯き気味の***の瞳に、光るものが見える。本当に────よかった。
ここからは一本道に変わる。道幅も狭く、手を繋いだ状態で通ることはできない。惜しいけど、少しの間手を離さないと。
用意したとおりにエネミーが出てきた。そこまで強くはないが、とにかく数が多い。自然と***を先行させる位置になる。ギリギリ見える明るさかな、というタイミングで一体倒す。
そのまま走る。とにかく走る。──まずい落ちる、その瞬間に、***の手を取って、僕らは落ちた。
下へ下へ、僕と***は落ちていく。……なんでそんな、安心した顔してるんだよ。もちろんこういう反応をするだろうと、予測はしていた。だけど実際されると、こういう風に思わざるをえない。いつだってそうだ。敵対していた時も、罠にはめられたっていう時も。いつだって、何度だって君は、俺と落ちる時にはこんなに──嬉しそうだ。この状況が、永遠に続けばいいと、思っているほどに。……俺だって、同じ気持ちだよ。
残念ながら、普通に落ちる程度じゃそれは叶えられない。落下の衝撃に備えて、空中で姿勢を変えて、俺が下になるように備える。そして無慈悲にも、俺たちは地面に衝突した。
いった。奈落の虫だって落ちれば痛い。だけどすぐ***の安否を確認する。安全面もそうだが、こっちが先に言わないと、心配させて楽しい気持ちを台無しにするからだ。
***はすっかり目の前の花畑を気に入ったようだ。黄金に似たイエローと、降り注ぐ光。まさに祝福に相応しいシチュエーションで、***はじっくりと、僕の言葉に聞き入っている。このまま、ふたりの世界に浸りきってから移動してもいいんだけど────妨害をやめておいた通信から、ネモたちの声が響いた。
通信を妨害していた事実を知って、さっきの俺の言葉と合わせて、***は今全てが策略の上で行われていたことを噛み締めているだろう。また顔を真っ赤にして、口元を緩ませて……今度は、目を輝かせている。俺の本質に触れて嬉しい時の顔だ。それに加えて、今回は俺が意図して体を密着させていた事実もある。そのせいか***は、いつものようにはしゃがず、言葉も出せないでいる。
「…………!」
それでも俺にはしっかり、『オベロンがやりたくて全部やってくれたんだ』と、喜ぶ気持ちが視えた。
通信が終わって移動を始めて、***はようやく僕に話しかけられる状態に戻った。
「ねえ……流石に道がなかったところは、本当にアクシデントだよね?」
「うん、そうだよ?」
「っ……! 〜〜〜〜!!!」
ちょっとだけ怒る顔をしてたけど、***はそれ以上何も言わなかった。
今回の僕のプランは、何度も***を危険に晒すものだった。普通の英霊なら絶対に選ばない手段だ。でも仕方ないよね、***は僕のこういうところを好きになったんだから!
もう一度地上に出ると、似たような景色が続く街に、***は不安そうな顔をしている。
「はぐれたらいけないから手、繋ごう?」
***はまた顔を赤くしながら、僕の手を取って、共に歩き出した。
(自然体の***を撮りたくて、何度かシャッター音を消してカメラを使ったことは、内緒だよ)