小ネタ(終)9
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***は未だに、俺に好かれていないと思っている節がある。
よほど相性が悪い戦闘以外必ずクエストに連れ回すのに、絆は13を超えたのに、バレンタインではあんなに手に入れたチョコを俺以外に渡さなかったのに、すぐベタベタ触ってくるのに、毎日一緒に寝てるのに!
ありえない精神構造だ、行動と感情が一致してない。無軌道にこんなことをしてるなら正さないといけない。俺以外にはしてないから、今のところ問題は起きていないが。
だから、問いただすことにした。ただし俺が自分でそんなことをした場合、嘘しか言えないせいで最大の効果を期待できない可能性がある。そう、仕方ないんだよ? そのため、マシュを頼ることにした。彼女に見える位置にこのような手紙を置いておく。
『マシュへ
突然の頼みだが、***にオベロンのことをどう思っているか訊いてみてくれないかな?
埋め合わせはオベロンがするから、終わったあと彼に要求してくれ。
具体的な内容としては───────────────────────────────────────
オベロンじゃない者より』
マシュはこの手紙を読み、何かを決意した。そしてその日の終業後、***はマシュの部屋へ呼び出された。
* * *
ひっそり気配を消し、小さくなって部屋の隅で待機する。マシュと***がやってきた。***はいつも通りの笑顔だ。
「改めてふたりで女子会なんて嬉しいよ!」
「はい! 今日はたくさんお話しましょう!」
***の言葉に嘘はない。マシュのことは後輩として、仲間として、友愛的に好きなのだ。
たわいもない会話が始まる。直近のイベントのことから、昔の思い出話まで。会話のエンジンがあたたまってくると、マシュがサーヴァントの近況の話題を繰り出した。実戦投入はあまりされていないメンバーも、己がカルデアでできることをそれぞれしている。***もそれを聞きながら、合間にマシュが出ていない戦闘での、皆の様子を伝える。初めて召喚したサーヴァントということでヘラクレスへの言及が多く、見ている点も詳細で、やはりその信頼は厚い。俺のことはわざわざ言う必要がないという感じで、何も言わなかった。
そしてテーブルの上の紅茶が半分ほどになった頃、マシュはついに切り出した。
「そういえば先輩は、最近オベロンさんのことをどう思ってるんですか?」
かなり自然な問い方だ。声のトーンも、あまり重さがなく、話題の流れに沿った結果この質問に至った雰囲気になっている。結果、***の答え方にも重さがない。
「ああ、好きだよ」
さも当然といった様子だ。エイプリルフールを境に俺に対してもよく好きだと言うようになったから、ここまでは想定内だ。問題は次にある。
「では、変な訊き方になってしまうのですが……オベロンさんは先輩のことを、どう思ってると思いますか?」
おやつのクッキーに伸ばしていた***の手が止まる。なんだか循環したような文言だったが、***は何を質問されているか理解したようだ。
どことなく『面倒くさい』の混じったような困った顔をして、***は返答を形作る。
「あー………………振り回されることに慣れてきた、感じ?」
答えたものの自分の返答に納得がいかないようで表情が苦々しい。マシュも、よければもっと詳しく教えてください、と続きを促す。
「オベロンってさ、なんだかんだ言っても面倒見がよくて、秋の森のみんなのこととか今でも大切に思ってるみたいじゃない? ……そういう感じで、私に対しても気持ちとしては、『情が湧いた』、って感じなんじゃないの?」
先程よりは***の表情から苦さが消える。言い終えて、彼女はティーカップに口をつけた。マシュが次の言葉に詰まっているのを見ると、口を潤した***は、さらに続けた。
「妖精王だから、っていうのを抜きにしても、オベロンはみんなに優しい と思うよ。だから私への対応も、その一部なんじゃないかな?」
────みんなに優しい。それは、俺が君に思って、でも立場上仕方ないと飲み込んで、何度も仕舞った言葉だ。
マシュは、やはり何と返したらいいのか悩んでいる。これは確実に俺のせいだ。この場を収めるために、俺は大きく手を振って、マシュに存在を思い出してもらうことに成功した。そして作る、『OK』のハンドサイン。
「……つかぬことを訊いてしまい、失礼しました。では話題を変えて、今年のクリスマスはどなたがサンタになるかの予想を────」
俺はそこで退出した。廊下に出て、いつもの背丈の、黒く、人間と違う姿に戻る。
やることは決まった。──確かに、今まで祝い事は、ほとんど***が提案したんだ。そろそろ俺から持ちかけるのも、道理だろう。
────トレジャーハンティングに続く
よほど相性が悪い戦闘以外必ずクエストに連れ回すのに、絆は13を超えたのに、バレンタインではあんなに手に入れたチョコを俺以外に渡さなかったのに、すぐベタベタ触ってくるのに、毎日一緒に寝てるのに!
ありえない精神構造だ、行動と感情が一致してない。無軌道にこんなことをしてるなら正さないといけない。俺以外にはしてないから、今のところ問題は起きていないが。
だから、問いただすことにした。ただし俺が自分でそんなことをした場合、嘘しか言えないせいで最大の効果を期待できない可能性がある。そう、仕方ないんだよ? そのため、マシュを頼ることにした。彼女に見える位置にこのような手紙を置いておく。
『マシュへ
突然の頼みだが、***にオベロンのことをどう思っているか訊いてみてくれないかな?
埋め合わせはオベロンがするから、終わったあと彼に要求してくれ。
具体的な内容としては───────────────────────────────────────
オベロンじゃない者より』
マシュはこの手紙を読み、何かを決意した。そしてその日の終業後、***はマシュの部屋へ呼び出された。
* * *
ひっそり気配を消し、小さくなって部屋の隅で待機する。マシュと***がやってきた。***はいつも通りの笑顔だ。
「改めてふたりで女子会なんて嬉しいよ!」
「はい! 今日はたくさんお話しましょう!」
***の言葉に嘘はない。マシュのことは後輩として、仲間として、友愛的に好きなのだ。
たわいもない会話が始まる。直近のイベントのことから、昔の思い出話まで。会話のエンジンがあたたまってくると、マシュがサーヴァントの近況の話題を繰り出した。実戦投入はあまりされていないメンバーも、己がカルデアでできることをそれぞれしている。***もそれを聞きながら、合間にマシュが出ていない戦闘での、皆の様子を伝える。初めて召喚したサーヴァントということでヘラクレスへの言及が多く、見ている点も詳細で、やはりその信頼は厚い。俺のことはわざわざ言う必要がないという感じで、何も言わなかった。
そしてテーブルの上の紅茶が半分ほどになった頃、マシュはついに切り出した。
「そういえば先輩は、最近オベロンさんのことをどう思ってるんですか?」
かなり自然な問い方だ。声のトーンも、あまり重さがなく、話題の流れに沿った結果この質問に至った雰囲気になっている。結果、***の答え方にも重さがない。
「ああ、好きだよ」
さも当然といった様子だ。エイプリルフールを境に俺に対してもよく好きだと言うようになったから、ここまでは想定内だ。問題は次にある。
「では、変な訊き方になってしまうのですが……オベロンさんは先輩のことを、どう思ってると思いますか?」
おやつのクッキーに伸ばしていた***の手が止まる。なんだか循環したような文言だったが、***は何を質問されているか理解したようだ。
どことなく『面倒くさい』の混じったような困った顔をして、***は返答を形作る。
「あー………………振り回されることに慣れてきた、感じ?」
答えたものの自分の返答に納得がいかないようで表情が苦々しい。マシュも、よければもっと詳しく教えてください、と続きを促す。
「オベロンってさ、なんだかんだ言っても面倒見がよくて、秋の森のみんなのこととか今でも大切に思ってるみたいじゃない? ……そういう感じで、私に対しても気持ちとしては、『情が湧いた』、って感じなんじゃないの?」
先程よりは***の表情から苦さが消える。言い終えて、彼女はティーカップに口をつけた。マシュが次の言葉に詰まっているのを見ると、口を潤した***は、さらに続けた。
「妖精王だから、っていうのを抜きにしても、オベロンは
────みんなに優しい。それは、俺が君に思って、でも立場上仕方ないと飲み込んで、何度も仕舞った言葉だ。
マシュは、やはり何と返したらいいのか悩んでいる。これは確実に俺のせいだ。この場を収めるために、俺は大きく手を振って、マシュに存在を思い出してもらうことに成功した。そして作る、『OK』のハンドサイン。
「……つかぬことを訊いてしまい、失礼しました。では話題を変えて、今年のクリスマスはどなたがサンタになるかの予想を────」
俺はそこで退出した。廊下に出て、いつもの背丈の、黒く、人間と違う姿に戻る。
やることは決まった。──確かに、今まで祝い事は、ほとんど***が提案したんだ。そろそろ俺から持ちかけるのも、道理だろう。
────トレジャーハンティングに続く