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05



「今‥何て‥?」


「あれはいざとなった時の話だ。お前の両親はかなり離れた場所に住んでいるようだし特別問題もないだろう」


やっと落ち着いて恥ずかしくなってきた頃、ロニーから頭領のあれはお前を試したのだと聞かされた。


「人間は追い込まれた時ほど性根の出るものだ。お前は頭領に認められた。この業界で生きるにはそれで充分だ」


詰まれた木箱に座っていた私の頭をロニーの手が押し撫でる。

私はと言えば、唖然とロニーを見上げていたのだけど。


「本当に‥本当に、両親に嘘つかなくていいの?」


スーツを引いて更に確認。頷いたロニーに心底ほっとして、両膝を抱え大きく息を吐いた。


「なんだぁ‥」


「恋人だろうが家族だろうが、組織の邪魔になれば殺す。そういう世界であることには変わりはない。覚悟しておけ」


厳しい世界。今まで生きてきた価値観をすぐに変えることはできないけれど、私は‥慣れていけるんだろうか。


「時間はかかってもいい。だが‥決して組織を裏切ることはするな。そうなる前に俺に言え」


「ロニーに‥?」


「俺はお前の飼い主だからな」


ニヤリと浮かべた嫌らしい笑みに思わず身を引く。私のこと完全に面白がって遊んでる。


「ふっ‥まあいい。戻るぞ」


‥私は全然良くないんだけど。あくまで心の中で文句をいいながら木箱から降りてロニーに続いた。


「お、戻ってきたな」


「何やってたんだよ!ったく‥おーい皆!準備できたかぁ?」


ガヤガヤと集まっている様子に思わず立ち止まる。全員顔が怖い。近付きたくないと本能が告げている。

しかしそんな私の本能を無視してロニーに腕を引かれ、輪の中に押し込まれるとおどおどと視線を巡らせた。


「まるで狼の餌場に放り込まれた羊みたいだねぇ」


セーナさんが笑うと周りからもつられたように笑い声が上がる。セーナさんとリアとは昨日少し話したのだけど、二人ともすごくいい人だった。

‥今まで何度殺されかけたかと笑って話せるくらい胆が据わりすぎているところ以外は。


「ほら、リズ」


「あ‥フィーロ、ありがとう」


「皆さん、グラスは持ちましたね?では新しい仲間を歓迎して‥乾杯!」


「「「カンパーイ!」」」


皆がグラスを私に向けてくれる。“仲間”という言葉が何だか暖かくて、今こうして笑顔を向けてくれている彼らときちんと向き合いたいと思った。


「皆‥ありがとう。これからよろしくね」


返ってくる声に破顔すれば、フィーロに頭をグシャグシャとかき混ぜられて悲鳴を上げた。



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