10000打企画小説
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‥‥‥もう、やだ。
嫌な笑みを浮かべて私を見る男たちを涙目で睨む。
「ヒャハハ!こいつあのレンチ野郎にはもったいねぇ上物だぜ!」
「売っても金になりそうじゃねぇ?」
どうして私がこんな目に遭わなきゃならないの‥?
別に付き合ってたわけじゃないのに、あいつが毎日毎日毎日毎日会いに来るから勝手にあいつの彼女だと思われて誘拐されて!
『ユウが呼ぶなら世界中の廃工場でもトイレでもその辺の喫茶店でも行ってみせる!要するにだ‥何が言いたいかといえばだな、俺はユウのためならどこへだって駆けつけられるということだ!やべぇ‥俺超スーパーマンっぽい!超かっこいい話だと思わないか!?』
『‥‥‥場所が微妙だね』
結局私がかっこいいって言うまでしつこく聞いてきたクセに‥
「っ‥呼んだらさっさと来てよバカグラハム!!」
ぐすっと鼻をすする。
突然叫んだ私に男たちは顔を見合わせて、ゲラゲラと嫌な笑いを響かせた。
「お前バカかぁ?そう簡単に場所が割れるはずねぇだろ」
「震えちゃってかわいー」
キュッと唇を結ぶ私の顎を、一人の男が持ち上げた時だった。
「なあお前ら‥俺は今猛烈に悩んでいるんだがどうしたらいいと思う?」
影となった入り口から聞こえる足音と、パシリパシリと聞き覚えのある効果音。
「なっ‥!?」
「グラ、ハム‥?」
「悲しい話と嬉しい話が混じり合って俺はどちらの話をメインに話せばいいんだ‥?悲しくて嬉しい話か?それとも嬉しくて悲しい話か!?おいお前ら!」
上へ上へと投げていたレンチを肩に預けて、グラハムはかくりと首を傾けた。
「人生で最後の選択だ‥‥どっちがいい?」
低く小さく、掠れた声。
それは恐怖を煽るように、空気を震わせた。
「はっ‥ははっ!」
「勝手にしろよ!行くぜェ!」
ナイフや鉄パイプを手にグラハムへ向かっていく男たち。
それを華麗にかわして、レンチを振り回す度悲鳴と金属音がする。
ピッと足元まで血が飛んできて小さく悲鳴を上げた私のことはお構いなし。
私を助けに来たんじゃなかったのかと嬉々とレンチを振り回しているヤツを涙目で睨み付けていれば、段々と私は目が離せなくなっていった。
‥‥ああ、どうしよう。
こうなったのも全部あいつのせいなのに、責めてやるって思ってたのに
揺れる金髪は綺麗で、不覚にもかっこいいなんて思ってしまった
「わ‥‥なに、これ」
顔が熱くて、私は慌てて俯く。
気のせいだ気のせいだなんて頭の中で繰り返しているうちに事は終わっていたらしい。
縄を解かれる感覚に顔を上げれば目の前にグラハムの顔があって、思わず息をのんだ。
「ユウ、無事か!?」
「う、んっ‥」
目の前が真っ青に染まる。抱きしめられてるんだと知って、私はまた顔に熱が集まるのが分かった。
「悲しい‥悲しい話だ‥‥俺としたことがユウを巻き込むなんて俺は最低で最高に悲しいぞ!」
「あの、グラハム‥とりあえずここ出たい‥」
俯いたまま呟くと、グラハムは納得したように頷く。
レンチを回すグラハムの半歩後ろを歩きながら、広がらない歩幅に私は無意識に頬を緩めた。
「それで来る時考えてみたんだが‥」
ぶつぶつと話すグラハムに耳を傾ければ、さっきの続きらしい言葉が紡がれている。
「シャフトに、俺がユウに付きまとわなければいいんじゃないかと言われた。それは名案だとも思ったが考えてみたら悲しい答えにたどり着いた‥‥それじゃ俺がユウに会えない!」
頭を抱えて唸るグラハムに、思わず呆れて笑う。
私は立ち止まって、グラハムの服を掴んだ。
「おっ?」
「、いいよ」
振り返ったグラハムの碧い瞳が私を捕らえる。
「もしさらわれても、また今日みたいに助けに来てくれるんでしょ?」
「ああ‥え?‥うん」
私はにこっと笑って、グラハムの二歩前まで進んで振り返った。
「呼んだらすぐに来て守ってね、スーパーマン」
意味を理解してぱあっと表情を明るくするグラハムは幼く見えて、さっきの時とはすごいギャップだ。
すぐに私を追い越したグラハムは、帰り道。
手を繋いだ反対の手でレンチを回しながら延々嬉しい話をしていて、その話によれば私は“ラッドの兄貴”さんに匹敵するほどの存在らしい。
‥‥それってすごいの?
後日シャフトに聞いたら、肩を叩いて憐れまれた。
説明できないこと
(ユウ!一緒に解体しよう!)
(‥‥どこを好きになったんすか?)
(うん‥‥どこだろうね‥)
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