5000打企画小説
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「その汚い手で‥彼女に触れないでいただけますか」
心配していると言いながら、心のどこかで彼女なら大丈夫だと思っていた。
ヴィーノ程ではないが彼女は名の知れた殺し屋。
彼女はいつも明るく、振りまく笑顔は周りを巻き込む程で。
端から見れば雰囲気のいい明るい女の子、というところで誰も彼女が殺し屋だとは思わないだろう。
ミスもなく仕事に関しては淡白な彼女は、その職業に関わらず人に好かれた。
だからこそ、彼女から陰が見えないからこそ私は油断していたのだろう。
「ボス!ユウさんが連れ去られたそうです!」
そう部下から報告を受けた時、思わず兄たちと顔を見合わせてしまった。
「誘拐だァ?あのユウをか?」
「‥それは確かな情報なんですか?他に被害は」
「はい。下のモンが骨を折られましたが、一人引きずって来たようです」
「‥‥そうですか。その馬鹿をチックさんの部屋へ。洗いざらい、吐いてもらいましょう」
‥そうして、私たち三人は郊外の廃屋へやってきた。
ベル兄が扉を蹴破れば、一人のリーダー格の男がユウの髪と服に触れているところで。
「っ‥ラック‥?」
「なっ‥なんだテメェら!」
「同じことを二度言わせないでください。‥‥彼女から手を離しなさい」
張り付けていた笑みを外す。
男たちが怯んだ隙に歩みを進めると、一斉にナイフと銃を構えた。
「あ゙ぁ‥?やんのかゴルァァ!」
ビリビリと耳に響くベル兄の声に全員が視線をやる。次々となぎ倒していく兄たちを横目に、私はユウの元へ足を進めた。
「くっ‥来るなァ!」
とんだ雑魚だ。ただのチンピラの集まりらしい。
ユウに銃を突きつけ、他の二人が私にナイフを向けている。
両腕両足を縛られているユウと目が合う。珍しく、不安そうに揺れている瞳。
歩みを止めない私に両側から男たちがナイフを翳し、私は左腕で片方のナイフを受けながら右の男の脚を撃った。
続いて左の男、そして正面の男も。
「‥‥どうやら、貴方は私の許せない領域に足を踏み入れてしまっていたようです」
ちらりとユウを見れば、服が破れ胸元が大きく開いていて。
脚を押さえてうずくまる男を見下ろして、私は力を込め銃をこめかみに振り下ろした。
「、ラック‥」
「‥‥何かされましたか?」
縄を切ってやるとユウは小さく首を振る。私は自分の着ていた上着をユウに掛けながら、あることに気がついた。
「――ユウ、」
何故あの優秀な彼女がこんな奴らに――それが疑問でならなかった。
‥まさかそれが。
「貴女はバカですか!」
びくりと肩を竦めて、恐る恐る私を見上げる。
「こんなに熱があるのに、何故外に出たりするんです!貴女は自分の立場が分かってるんですか!?」
「だ‥だって‥」
「これほど高ければ視界も霞む‥もし彼らが強い組織の人間だったら死んでいたかもしれません」
「‥‥ごめんなさい‥」
しゅんとするユウを腕に収めながら、私は深いため息をついた。
「‥‥無事で良かった」
ぎゅうっと力を強める。
腕の中のユウは熱く、それでも背中に回された手が愛おしくて。
「すみませんでした、気づいてあげられなくて」
「そんなっ、ラックのせいじゃ‥」
「お願いします、ユウ」
強く言うと彼女は言葉を止めて腕の中から顔を上げる。
「貴女は殺し屋です‥命を狙われる事も少なくない。無理はしないでください。私を、頼ってください」
「‥‥‥」
「私は貴女の何です?」
「ラックは私のボスで‥‥恋人、」
恥ずかしげにぽつりと零された言葉に、私は彼女の額に口づけた。
「よくできました」
「っ‥!?」
私は不死者、彼女は人間。
それでも。彼女が年老いて死ぬまで、彼女を守るのは私でありたい。
きみがくれた存在証明
(‥‥38度で2日徹夜‥?)
(えへへ‥あの、ラック?)
((あれ?ラックの笑顔が黒‥い‥?))
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