短編
名前の設定
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「ユウ」
「やです」
「なぜだ?」
「見てください、私本読んでます」
「そうだな‥‥それで?」
「だから、忙しいんです」
「ほう‥まあいい」
何が!?
本に影が降って横を見上げれば、楽しそうに上げられた唇が私のそれと重なる。
「顔が赤いな」
「‥‥気のせいです」
ぷいっと本に顔を戻せば、くつくつと笑うのが聞こえる。
ロニーさんはいつもこうやって私をからかう。
私は甘えるのが下手だからいつもそっけない態度をとってしまうけど、ロニーさんには全部見透かされているんだろう。
私が彼に適う日は来るんだろうか?
「なあ、ユウ」
「え?」
もの思いに耽っていた私は、フィーロの声に意識を戻す。
円卓を囲み向かいで飲んでいたフィーロが言いづらそうに頬を掻いた。
不思議に思って首を傾げながら隣のマイザーさんを見ると、彼はただ微笑むだけでフィーロを待つしかないみたいで。
「お前さ、ロニーさんと付き合ってるって‥‥本当か?」
「え、うん」
そんなこと?
私が目をぱちくりさせるとフィーロが何故かがっくりと肩を落とした。
「なに、どうしたの?」
「‥‥‥嘘だ」
え?なにその疑いの目。
ていうかフィーロ知らなかったの?
「全然気づかなかった。お前普通好きならもっとこう、なんていうか‥顔に出るだろ!」
「そんなこと言われても‥‥確かにフィーロはエニスの話になると顔にで」
「だーっ!俺の話じゃねぇよ!普通はって言っただろ!」
‥‥フィーロくん、既に真っ赤なんだけど‥
口には出さず、私は紅茶を一口こくりと飲む。
「ですがユウは本当に表に出ませんよね」
「特技ですから」
「それもどうなんだ‥‥あっ、ロニーさん!」
ぎゃっ、ロニーさん!?
私が勢い良く振り返ると、彼はくるりと私たちの方に方向を変え向かってくる。
「ロニーさん、ユウのどこがよかったんですか?」
「いやいやフィーロそれは失礼だよ私に」
「そうだな‥意思が強くて実は感情が出やすいところも」
「ちょっ、ロニーさんも真面目に答えるのやめてください!」
「え、感情が出やすい?ユウがですか?」
なにこの羞恥プレイ!マイザーさんも止めて!
私が泣きそうになりながらマイザーさんを見ると、マイザーさんは穏やかに笑っている。
私に味方はいないのか‥‥落ち込んでいると後頭部に手が差し込まれて、ぐっと上を向かされた。
「んっ‥‥!?」
突然重ねられた唇。
唖然とする私とフィーロ。マイザーさんは驚いたように動きを止めただけで、私たちほどではなかった。
「、ロニーさんっ!」
徐々に顔に熱が集まるのを感じながら睨め上げる私に、ロニーさんはふっと笑って。
「まあいい」
「よくない!」
もうやだ‥‥この口癖便利すぎてキライになりそう‥
机に顔を伏せてうなだれていると、誰かがロニーさんを呼びに来て何か話している。
「ロニーさん、呼び止めちゃってすみませんでした」
「いや。フィーロ、先刻の話だが‥‥」
「はい?」
先刻、ってどの?
私とフィーロが首を傾げると、ロニーさんはさも当然のように爆弾を落としていった。
言うなれば全部、だ
(ロニーもやりますね‥‥ユウ?)
(うわ、ユウが真っ赤になってる!)
(うるさいっ!)
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