5000打企画小説
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『俺の存在は永遠なんだ』
両手を広げて語り始めたヤツに、私は思わず口を滑らせてしまった。
言わなければヤツが私に関心なんて持たなかったかもしれないのに‥
私はつい言ってしまったのだ。
今や口癖のようになってしまったこの言葉を。
「‥‥ばっかじゃないの?」
カウンター越しにお酒を煽っているクレアに呆れた視線を送れば。
「ユウ、そんなに色っぽい目で俺を見ないでくれよ。キスしたくなるだろ?」
信じられない言葉が返ってきた。
拭いていたグラスを棚に戻しながら、私は大きなため息を吐く。
「あのね、私仕事中なの」
「ああ、分かってるさ。だから俺はこうして仕事中のユウを見てる」
「お酒のお代は?」
「いつものようにツケといてくれ」
「‥早く払ってどっか行って」
「まあまあ、照れるなって」
「照れてないっ!」
だめだ‥全然会話が成立しない‥!
成立しない会話は会話じゃない。これが私の持論な訳で。
噛み合ってないクレアとのやりとりは会話だなんて認めない認めてやらない!
第一、いつまでもツケておく理由が彼いわく
『ツケておけばユウはそれだけ俺を思い出すだろ?』
‥‥‥らしい。
それを聞いて、冒頭の私の言葉。
どうしたら諦めてくれるんだろう‥
クレアだけの会話を全部スルーしたり、水割り頼んで来たときもロックで出したり、フォークが欲しいって言うから顔に投げてみたりしたのに全然めげない!
あろうことか、『なんだよユウ、そんなに俺に構ってほしいのか?可愛いやつだな』とか言ってくれやがった。
もう‥‥こうなったらあれしかない。
「クレア、あのね?私‥ベルガさんみたいな人がタイプなの」
クレアとベルガさんはまったくタイプが違う。(色々似てるけどクレアは絶対否定するから)
ちらりと見れば、珍しく口を結んでいるクレア。
「だから、諦め」
「分かった」
私の言葉を遮ったクレアの声。
くるりと種を返してお店を出て行ったクレアを唖然と見送って、私はふっと息を吐いた。
これでもう付きまとわれない。クレアに会う前の今までの生活に戻るんだ。
‥そう思ったはずだったのに。
クレアの残したコップを手に取ったら、なんだか無性に胸がざわついて。
「なに、私‥」
もしかして、寂しいの‥?
そんな訳ない、そう自分に苦笑したと同時に。
後ろから抱きしめられたと思うと、目の前に真っ赤な薔薇の花束。
「結婚しよう」
驚いて言葉も出ない私に、クレアは私の前に回り込んで肩を掴んだ。
「大丈夫だ、きっとうまく行く。なぜならタイプなんてのは所詮タイプで終わるんだ。現実は正反対の奴だったりする。だからお前もそうなればいい」
「ちょ、ちょっと待って、」
「ユウ、俺はお前を愛してる。お前も俺を愛してくれ」
「‥‥さっき、分かったって」
あの分かったは何だったの?
聞くと、クレアはきょとんと私を見つめた。
「ベルガがタイプなんだろ?」
「え、ああ‥‥うん」
「まあお前のタイプが変わってるとかは置いといて、俺にとってタイプなんて関係ないからな」
どうしよう、今更ウソとは言えないんだけど‥
しかもクレア今さり気なく失礼なこと言わなかった?
「お前は俺を好きになる。なぜなら‥」
「なぜなら?」
「お前は俺の世界に存在しているからだ」
「‥ばかじゃないの?」
なんて勝手なヤツなんだろう。
呆れて笑いを漏らしながら、私はカウンターに置いてある花束を手に取ってそっと触れた。
「それで、返事は?」
私はちらりとクレアを見上げて、ため息と一緒に呟く。
「初対面で結婚してくれなんて言われた時は、まさか自分がこんな答えを出すなんて思ってもみなかったな‥」
「ん?」
「‥‥結婚は、もっと考えさせて」
赤く染まる頬を隠すように俯くと、すごい力で抱き寄せられて。
苦しいと訴えても離してくれないクレアに、私は諦めてその胸に顔をうずめた。
1分違いで変わること
(よし、じゃあまずは一緒に住もう!)
(なんでそうなるのよ!)
(常に可愛いユウが見れるから)
((‥やっぱり付き合うのやめようかな))
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