20000打企画小説
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ラックさんは不思議だ。
傍にいるだけでほわっとして、幸せな気持ちになる。
甘えたい時にじっと見上げれば、見透かしたように頭を撫でてくれる。
だけど、抱き締めたりキスしたり‥そういうことは家以外ではしない。
私も恥ずかしいし、ラックさんはあまり外にプライベートを出す人ではないから。
‥それなのに。
「子供扱いされてんじゃねーか?」
「まぁ俺らからすりゃ、あいつもガキだけどなぁランディ!」
「違いねぇ!6年前まで生意気な小僧っ子だったんだからよぉ」
むっと唇を尖らせる。カモッラの皆は、色々な意地悪を言う。
ラックさんは気にしない、言わせておけばいいと言うけれど。
「‥そんなことないです」
「なら‥ラックを誘惑してみるってのはどうだ?」
「ヒヒヒッ、フィーロそれ面白そうだなぁ!」
「えっ‥‥誘惑?」
「‥できないのか?」
ニヤリと挑発的な笑みを浮かべたお兄ちゃんに、私は握り拳を作って勢いよく立ち上がった。
「できますっ!」
‥‥そうして、今現在。
「ラックさん、あのね、あの‥」
「はい?」
「‥‥‥」
「‥‥‥?」
「や‥やっぱり何でもないっ」
バタバタと傍を離れる。‥ラックさんの向かいでフィーロさんが笑うの耐えてるの、ちゃんと気付いてるんだからね。
啖呵を切ったはいいものの、誘惑の仕方なんて知らない。
洋画のワンシーンを思い出しても、熱っぽい視線で見つめたり抜群のプロポーションを妖艶に見せつけたり‥私には何の役に立ちそうもない。
「うぅ‥」
端のカウンターで机に突っ伏していると、カタンと隣の椅子が引かれた。
「なに唸ってるんですか?」
顔を上げると目の前にあるラックさんの顔に思わず仰け反る。
その拍子に椅子が傾き、転びそうになったところをラックさんが支えてくれた。
「はわ‥あ、ありがとう」
「いえ。大丈夫ですか?」
すごいびっくりした‥
無意識にぎゅっとスーツの裾を握ると、ラックさんがポンポンと背中を優しく叩いてくれる。
「ユウ、今日は何かあるんですか?」
「えっ、何で?」
「ユウが挙動不審なので」
「きょど‥‥?」
‥‥私ってそんなに分かりやすいの!?
オロオロと視線を巡らせていると、遠くにいるお兄ちゃんと目が合って。
ニヤリと、またあのバカにした笑み。
「‥ユウ?」
お兄ちゃんの視線から逃れるようにラックさんに身を寄せる。
不思議そうに首を傾げるラックさんは、無意識なのにかっこよくて私がドキドキさせられてしまった。
「ラックさん」
悔しいのでとりあえずじっと見つめてみる。
‥しばらくしたらぐりぐりと頭を撫でられた。
今度はそっと手に触れてみる。
‥大きな手が私の手に重ねられて、指を絡ませたら握り返してくれたから‥嬉しくなって頬が熱くなった。
じわじわと幸せに支配される。
重なったラックさんの手の骨をなぞってみたり、両手で挟んでみたり、そのままぎゅーっと力を入れてみたり。
開いた手を滑らせて大きさを比べると、やっぱりラックさんの手は私の一回り以上大きかった。
お兄ちゃんのごつごつした手も、キースさんの細くて骨ばった手も、エニスさんの柔らかい綺麗な手も好きだけど。
私はこのラックさんの手が、何よりも好きだ。
「、ラックさん」
「はい」
「あ、今のはね、呼んだだけ。んと、うまく言えないんだけど‥‥ラックって名前すごく好きだなーって」
不意に呼びたくなる。何度も何度も、用もないのに。
「きっと、私がラックさんを大好きだからだね」
見上げれば、目を丸くしていたラックさんが頭を抱えて大きなため息をつく。
「‥どこまで可愛いんですか、貴女は」
「へっ?」
「私にも我慢の限界があります」
後頭部に手が差し込まれたかと思うと唇を塞がれた。
カウンターの端、目立たない席で壁になったラックさんで私の体はすっぽり隠れているだろうけど。
「っ‥」
赤くなっているだろう耳を摘みながら、恥ずかしさに涙目でラックさんの服を握る。
「外では我慢出来ると思っていたんですが‥可愛い誘惑には勝てませんね」
「‥‥‥、知ってたの!?」
「まあ、あれだけ騒いでいれば」
少し遠くから誘惑がどうとか賭けがどうとか声が聞こえる。
‥‥でも私、途中から誘惑とかすっかり忘れてた。
悶々と考えていれば頬に手が触れて。
「無意識に男を誘惑するなんて‥悪い子ですね。ユウは」
「‥誘惑、できた?」
ラックさんはふっと目を細めると、耳に唇を寄せた。
「――狼を呼んだのはどこの誰かな?」
「!!!!」
頭がクラクラする。私がラックさんに勝てるはずがないんだ。
――だって、ほら。
彼のからかいはいつも容赦がない
(‥‥‥‥。)
(うわー‥‥あれはラックだけを攻められませんよロニーさん)
(煽ったのは貴方たちですしね。それよりフィーロ‥顔真っ赤ですよ)
(なっ‥‥!?)
((‥‥告白できない訳だ‥))
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