20000打企画小説
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「‥‥‥ユウ?」
「、おかえりなさい」
ぽつりといつものように返ってくる声に反して、ソファーにいるのは謎の物体。
シーツを被り裾を結んで丸まっているユウは、目しか出ていない。
何事だ‥?ユウの行動はいつも私の予想を裏切るが、これは今までの中でもトップに食い込む不可解さだ。
「‥何してるんですか?」
「気にしないでください」
「気にしますよ」
これをスルーできる人がいたら是非お目見えしたい。
ネクタイを緩めながら隣に腰を下ろせば、心なしか‥端に寄ったような。
「‥‥‥」
「‥‥‥」
にゃあ。
「‥‥にゃー」
「‥‥ユウ?」
笑顔で語調を強めてみるとぴくりと身を固まらせ、その物体がもそもそと動いた。
にゃーって。まさか誤魔化せると思ってはいないと思うが、その挑戦には思わず笑いそうになる。
私の方に体を向けたまま、恐る恐る視線を上げては逸らしウロウロ。
私が結び目を解くとシーツがパサリと両側に開き、彼女の顔と手元が見えるようになった。
「このアパートが‥動物を飼えないのは知ってますよね?」
優しく問いかければ、ユウは腕に抱いた子猫を撫でながら小さく頷く。
「だって‥雨に濡れてたから‥」
寒そうに丸まっていて放っておけなかったと、ユウがしゅんと肩を落とした。
「‥懐かしいですね」
「え?」
抱き上げると、子猫は小さく鳴きじっと私を見る。
「幼い頃‥私も良く犬や猫を持ち帰って、その度に兄たちに返して来いと言われました」
「‥ラックさんが?」
「多分、寂しかったんですよね。その頃は母親ももういなかったですし、兄たちは構ってくれましたが‥」
一人の時間はたまらなく退屈で、そして寂しかった。
「なのでユウの気持ちも分かりますが、この子は返して来なければ。ですがまず飼ってくれる人を探してみましょう」
うちでは飼えない。ユウは小さく頷き、もう一度子猫を優しく撫でた。
悲しそうな彼女を見ていたら、不意に思い立って。
「将来‥一軒家に住んで、動物を飼いましょうか」
そう言えばユウはぱっと私を見上げたかと思うと頬を染め、こくりと頷いた。
「おや‥何故頬が赤く?」
「な、何でもないっ」
見透かしたように目を細めて見せれば、ユウは見る見る耳まで真っ赤にして。
「‥ラックさんの“将来”に、当たり前みたいに私がいるのが、嬉しくて」
本当に可愛いことを言ってくれる。
ユウの頬に手を添えこちらまで導き、唇の触れそうな距離で止めた。
「ユウの将来に、私は?」
「‥分かってるくせにー‥」
「ユウの口から聞きたいんですよ」
「‥‥キスは‥?」
「言うまでおあずけです」
クスリと笑えば、恨めしげにユウが私を見上げる。
「‥今も未来も、私はラックさんでいっぱいだよ?」
「では‥ご褒美を」
柔らかな唇に口付ける。猫の鳴き声を聞きながら、私は内心苦笑を漏らした。
彼女の気持ちは分かっていたはずなのに、言葉を聞くと何故こんなにも嬉しいのだろう?
「困ったな‥」
「? どうしたの?」
首を傾げるユウに、私はそっと囁いた。
「ユウを愛しすぎて」
「‥‥‥‥!!」
絶えない愛の証明
(ジルさんが子猫貰ってくれるって!)
(よかったですね)
(うん!猫屋敷だから一匹増えても変わらないからいいよーって)
(‥猫屋敷‥‥?)
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