20000打企画小説
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私は、たまらなく彼が好きだ。
どこがと言われれば、顔はもちろんあの自信満々なところとか、自己中心的なところとか、努力家なところとか、あとは考えが飛びすぎてて少しバカなところとかもう何あれ可愛い!って叫びたいぐらい。
『‥お前ら、すっげえお似合いだよ』
フィーロたちにその話をしたら、目を逸らしながらそう言われた。
ラックは遠い目をしてたし、ベルガなんかいつの間にか寝てた。
とりあえずベルガにはデコピンお見舞いしておいたけど‥
「よしっ、これで終わりっと」
味は完璧。火を止めて洗い物へ移ると、気配もなく後ろから抱きしめられた。
「ひゃあ!」
「今日のメシなに?」
「もうクレア!びっくりするからやめてって言ってるのに」
振り返って頬を摘むと、彼は心底不思議そうに首を傾げた。
「“火使ってるときは危ないから抱きつくのやめて”?」
「うん」
「約束は守ったぞ?火使ってなかっただろ」
‥‥確かに、火を止めて洗い物始めようとした時だったけど‥
「‥クレア、いつからいたの?」
「15分ぐらい前だな」
「‥‥ずっと待ってたの?」
「ああ。俺のために料理を作ってるユウの後ろ姿を見てた」
「声かけてよ!」
怖いから!全然気付かなかった。私は一般人で、気配なんて感じ取れないから。
「ユウの驚いた顔が好きでわざとやってるんだから、声かけたら意味ないだろ?」
「‥‥‥」
こういうところが可愛くて仕方ない。
なんて言うか、たまに大きな犬に懐かれたような気分になる。
だめって言ったことは守ってくれるけど応用が利かないっていうか、利かせるつもりないっていうか。
この間なんて、フィーロたちと話していたら突然キスするから注意したら。
次は皆が視線を外したほんの少しの瞬間にキスをされて、『誰も見てないならいいんだろ?』なんてきょとんとした顔で返されてしまった。
‥もう言い返す言葉も思いつきません。
彼の頭の中は理解しきれないけど、フィーロたちいわく私はかなり大切にされているらしい。
「今日のごはんはベーコンとアスパラのトマトソースパスタと、ミネストローネと、トマトとシーチキンのサラダだよ」
「野菜ばっかだな」
「できればトマトに触れてほしかった」
クレアは私の頭に顎を乗せながら、ひょいっとサラダをつまみ食い。
「トマトは好きだぞ」
「存じております」
もぐもぐしている顎をべしっと叩いて、私はふふっと笑った。
「ところで‥‥ねぇ、クレア?」
「ん?」
カウンターを背に、挟むように私を見下ろしているクレア。
「‥この手はなに?」
腰に回され撫でるようにお尻に移動した手を掴むと、クレアは視線でそれを追った。
「今からごはんっ」
「俺はユウが食べたい」
「ちょっ‥何言って、」
「イタダキマス」
本当に、まるで食べるかのように唇が塞がれた。
胸を押しても壁のようにビクともせず、それどころか後頭部を押さえられてもうセメントで固定されているみたいだ。
「んんっ‥‥ふっ‥」
死ぬかもしれない、と何度思ったか分からない。
クレアは力が強いから、固定されたらもうおしまいだ。
死因が窒息死、しかも窒息の原因はキスだなんて、恥ずかしくて口外できない。いや、死んだらできないんだけど。
唇が離されてくたっと力の抜けた体をクレアに預ければ、そのまま抱き上げられて。
「‥ばかクレア。もうごはん作ってあげない。ばかばかばーか」
「拗ねるなって、メシも食うから。ユウを食ってからな」
「クレアのばかーっ」
真っ赤になって暴れる私にお構いなしにクレアはにっと口角を上げた。
「ユウ、愛してる」
「‥‥‥私も!」
ふいっと拗ねたように口を尖らせれば、クレアは満足そうに私の服に手をかけた。
好きで、好きで、
(フィーロベルガラック聞いてよー!)
(‥またか)
(またかよ‥)
(‥すみません、私これから用事が)
(あっ!二人ともラック確保ぉ!)
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